ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第160話〝様々な果て〟

レグラヴァリマ――

 

彼女は〝バシレウス〟評議会メンバーの1人にして最強の戦士として知らしめされる女傑である。

――だが、それ程の彼女でも〝暴獣のスサノオ〟と〝盤石のカタクリ〟との戦い、「七武海」ハンコックと〝赤熱のオーブン〟との戦いで大ダメージを次々に負わされ続け、その果てにもはや再起不能になっていた。

そのまま戦場から退場かと思われた彼女だが……せめてのお返しとして自身に最後の攻撃を仕掛けた張本人であるフドウに「ダイモーン」の爪を投げ放ったのだ。

……だが、その爪が彼のマスクを剥がしその素顔が少し露わになった事で事態は急変した。

 

実はどのようなものさえをも食いたいという強い衝動を抱えている上にその特殊な体質を持つ「ルナーリア族」を叶えるのなら食ってみたいと考えていた彼女がフドウの素顔を目にした途端に狂気に陥った。

冷静と理性を失ってなお自らの欲望に素直に従うようになってしまった故に「ルナーリア族」の悲惨な運命等構わずに自らの食欲を口にするレグラヴァリマの姿勢にフドウは怒りを爆発させ、今度こそ跡形もない程に焼き尽くそうとする――より素早く何者かが彼女を蹴りつけた……

 

「「!?」」

 

 突如のその事態にフドウとギーランも目を大きく見開く。そしてレグラヴァリマを蹴りつけた何者かに素早く注視する。それは――

 

「……どういうつもりなんだ……!?」

 

 その光景を目にした事で激しき怒りをすっかり収められたフドウが続いて抱いた疑問を口にする――その名を呼びながら……

 

「――ハンコック……!」

 

「…」

 

 ――そう、ハンコックが彼より素早く動き――そして、レグラヴァリマを蹴りつけたのだ。

 

「……なんという様だな……レグラヴァリマ……」

 

 〝それ〟を目にしたギーランは何ともいえない表情を浮かべながらそう呟く。

 そんな彼が凝視する先には……数々の石ころが散らばっていた――実はそれこそがレグラヴァリマの果ての姿である。

 ……ハンコックが彼女に対して放った蹴りは――〝メロメロの実〟の石化効果を付加した強大な蹴り……〝大芳香脚〟だ。

 その大技を身に受けたレグラヴァリマはすぐ石像にされてから木っ端微塵にされたのだ。おかげであれだけ恐ろしかった彼女も今――無残な数々の石ころに成り下がってしまったのだ。

 レグラヴァリマが迎えた末路とそれを成し遂げた「七武海」の力にギーランも息を飲まざるを得なかった。

 そんな彼をよそにフドウはハンコックを凝視する。それより気になる事があるからだ。それは……

 

「……お前、一体何を怒っているんだ?」

 

「…」

 

 フドウがそう指摘する通りに彼女は険しい表情を浮かべていて――そう、随分と怒っていた。ただ、その態度が彼にはらしくないと感じていた。

 唯我独尊な彼女の事を知っているフドウはその理由に見当付けられない故に――率直に問いかけてみた。

 彼がわざわざ疑問を抱いた程のハンコックの怒り、それは……

 

「…(これでもう――その薄汚き口が聞くに耐えられん事をほざく事はあるまいな……)」

 

 彼女がそう考えながらレグラヴァリマだったものを冷たく見下ろす。

 ――実はハンコックはフドウと同じように自らの食欲と狂気を口にするレグラヴァリマの姿勢に怒りを覚えたのだ。それ故にその姿勢をもうこれ以上目にする事がなくなる為に彼女を物言わぬ石像と化させ、そこから永遠に蘇る事がないように綺麗さっぱり破壊したのだ。

 ……なお、ハンコックがレグラヴァリマに対して怒りを覚えたのは彼女の言動、狂気を含む全てが気に障るからのもあるが……それだけではない。それとは……

 

「…(貴様ごときが「ルナーリア」……否、フドウをものにする筋がどこにもないわ!!)」

 

「(そもそも、あ奴は――スサノオさんの腹心じゃ!!すなわち、あの人のものじゃ!!それに恐れ多くも手を出そうとするとは……もはや万死に値するわ!!)」

 

 レグラヴァリマだった数々の石ころを前にする彼女の心内にはそんな考えが湧き上がっていた。

 まず、ハンコックはスサノオに忠誠を誓っていてその腹心として行動するフドウの事を気に喰わなく思う事があっても――一応認めている。

 愛しき人の為に動くその忠誠心を認めない訳にはいかなかったのだから……

 その事に加えてフドウの素性、境遇は彼女自身のと似てていた為につい共感を覚えてしまった。

 それ故に、彼の威厳を踏みにじるようなレグラヴァリマの言動と姿勢にハンコックも怒りを爆発させ、容赦なく〝大芳香脚〟を猛烈な勢いで放ったのだ。

 

 ――そうして、おぞましき食欲と衝動を秘めた狂気の女傑は更なる食欲と狂気を満たそうとしたが……

 そんな彼女の姿勢が〝海賊女帝〟の怒りを買ってしまい、最後に数々の石ころに変えされる末路を迎えたのだ……

 

 ……それはさておき――

 

「……ハンコック?」

 

 実に不快そうに数々の石ころを見下ろしているハンコックの姿にフドウも訝しげにしていて、それ故に呼びかけを試みた。

 その声が届いたのか彼女がフドウの方に顔を向け――

 

「……あまりにもやかましくて――つい黙らせてやったわ」

 

 自身がやった事に関してハンコックは気後れせずにつまらなそうな表情を浮かべながらそう言い放った。

 その内容と態度にギーランは顔を険しくする。

 

「なんと……」

 

 腐っても、それどころかとんでもない秘密を抱えていたといえ一応同僚であった者をあのように無残な目にされておきながら、その理由があまりにもあっけらかんとする事に彼も不快感を覚えずにはいられなかった。

 

 ――やはり、「世界政府」に所属する「七武海」も所詮海賊か……

 

 ギーランがそう考える一方でフドウは目を細める。

 さっきの様子とは違って実にらしい理由になっていると思った彼はだからこそか、違和感をも少し感じた。

 

「…(だが、ここはやめておこう――気になるが……)」

 

 しかし、その違和感にフドウはあえて蓋をする事にした。今の状況を進める為に――

 そう判断した彼は口を開く。

 

「それで?お前はこれからどうするつもりだ?」

 

「……フン、確かにここに長居してしまったな……疲れたし――帰る」

 

 フドウからの問いかけを受けて、その意図を察したハンコックは何の事はなくそう宣する。その姿勢にフドウは……ついやれやれと思った。あまりにもらしい態度だったのだから。それ故に少しおかしく感じたのだろう。

 ただ、ギーランの方はその言葉をそのまま受け取らず、仮にも何かを仕掛けてきてもそれに備えて身構えていた。彼的には海賊の言葉をそうそう受け取る筋がないのだから。

 そんな2人を前にハンコックは……

 

「…」

 

 別に何の事はなく――ただ歩いていた。

 その姿勢にギーランもさすがに衝撃を受けた。

 

「――いや!!帰るんかい!?」

 

 何かを仕掛けてくるんだと思われた「七武海」がこれ以上何もせずに帰ろうとするのが彼には信じられなかった。本当にそうならば……海賊っていうのは本当に自由すぎる――彼はそう考えずにはいられなかった。

 とにかく混乱するギーランにフドウがすぐ声をかける。

 

「……分かってると思うが――手を出すなよ?」

 

「っ……分かってる……!」

 

 真剣に言い放たれたその言葉に彼も顔をしかめるものの、自身も新たな面倒事を招きたくないと考えている為にとりあえず大人しくする。

 そんな2人とそれを気にかけずに歩を進めるハンコックだが――

 

「「…」」

 

 一瞬だが――フドウの目とハンコックの目が合った。

 ただそれだけだが、その瞬間に2人共今後何をすべきなのかを察し合った。

 

「「(後で連絡を取り合おう)」」

 

 ……実は今身を置かれる状況に関しても詳しく話し合いたい2人だが、あいにく今その場には様々な人々がいる。その前でうっかり議論をする訳にはいかないのだ。

 そんな背景から今回の件が終わった後で連絡を取り合うようにしようと彼らは決めたのだ。

 そう話が決まった以上、あとはハンコックがその場から颯爽と去るのみだ。これ以上面倒事を作らない為、そして彼女と「暴獣海賊団」の関わりを他の奴らに悟られない為に……

 そういうつもりでハンコックは急いでここを出ようと歩を進めた――ただその前にまず妹達と合流しなければ。

 そうして彼女は妹達の元に歩み寄った。するとそこには妹達――戦っている筈のサンダーソニアとマリーゴールドが堂々と立っていた。

 よくみれば、彼女達と戦っていた〝チェス戎兵〟は全て床に倒れ伏せていた。

 やはりというか、「七武海」〝海賊女帝〟の妹達にして腹心である彼女達の前では所詮兵士にすぎない〝チェス戎兵〟も敵わなったようだ。

 自身の強さを思い知らせてやったといってもいい状況に満足気に微笑むサンダーソニアとマリーゴールドだが、そこに歩み寄ってくるハンコックの姿に気付く。

 

「姉様!」

 

「……当然だけど、無事のようね」

 

 姉の無事な姿に安堵感を覚える妹達にハンコックも頷く。

 

「うむ。待たせたな、お前達――行くぞ」

 

 凛々しくそう言い、さらに歩を進めるハンコックにサンダーソニアとマリーゴールドも一瞬呆気に取られたが、すぐ気を取り直し腹心として彼女についていった……

 

 その姿が遠のいていくのを見届けたフドウは口を開く――隣のギーランにも聞こえるように。

 

「……「七武海」は自ら去ってくれた。あとは「ビッグ・マム海賊団」の海賊共、それにまだ戦っている奴らだな」

 

 今時点の〝バシレウス〟の状況に関してフドウはそう分析する。その内容にギーランは目を細め

 

「……それで次はどうするんだ?「ビッグ・マム」の海賊と戦うのか?それとも……?」

 

 今後の動向に関して問いかけてみた。それに対してフドウは微かに思案に耽け――

 

「……そうだな、まずは――」

 

 そして、判断を下した――

 

        ●

 

「リュドドド!!」

 

「…!」

 

 ――あちこちて起こり、激しく行われていた数々の戦いもそろそろ収まりそうになっていく中で――その戦いはさらに激化していた。

 スサノオ――オレが目前の敵に対して「神武」を勢いよく振り回していて、それに対して敵――カタクリもまた「土竜」を振り回していた。

 勢いよく振り回された互いの武器が次々に衝突し続け、その場に衝撃波が発生する。

 

「リュドドド!!――レグラヴァリマの奴も悪くはなかったが、やはりお前は最高だ!!」

 

「――フン!ルーキーが何をほざく」

 

 そんな戦況からオレは改めて目前の男の強さを実感し、かえって戦意をますます燃やしていった。一方でカタクリは冷静に対応していた……ただ、心なしかそんな彼から少々楽しげな雰囲気が出てる気がしていた。

 何だかんだ2人はその戦いを楽しんでいるのだ。それにより激化していく……

 

「――フン!!」

 

「!」

 

 やがてカタクリが「土竜」でオレの「神武」を弾かし、そして膨らませた足を猛烈な勢いで蹴り上げた。

 その蹴りをオレは――辛うじて腕で防いでみせた。

 

「オォォ!!」

 

 といえ、その重さによりオレの身体が後ろに下がらせられた上に痛みをも感じた。

 

「〜いてぇな!!――ハッ!!」

 

 それに顔をしかめたオレはハッとする。

 ――カタクリがオレの元へ飛びかかりながら、もう既に大きく膨らませている手が「土竜」を構えながら捻じっていた……

 彼は〝モチ突〟を放つつもりだ。

 その事を察したオレはもちろん黙って身に受けるつもりはない。

 

「〜〜オラァ!!」

 

「!!」

 

 オレが雄叫びを上げながら拳を勢いよく振り上げてみせるが――その拳に違和感を感じたカタクリは目を見開く。

 それに構わずにオレの拳とカタクリの〝モチ突〟が激突した。

 その場に衝撃波が響かれた。

 

「「ウオッ!!」」

 

 その衝撃によりオレ達が揃って後ろに吹っ飛ばされた。それでも何とか体勢を整え直しながら着地し、すぐ身構える。

 

「……さっきの拳――どうやら、面白い事をやっているようだな?」

 

「……リュドドド!まぁな!」

 

 先程オレが放った拳に関して何かに気付いたカタクリがそう指摘する。それにオレはあえてそう言ってやる。

 

 ――〝これ〟は少々扱いが難しいが、だからこそ効果は確かだ。

 

 さっきの事態からそう考えたオレは戦意をさらに燃やしながら改めて「神武」を構える。その姿勢にカタクリも戦意をらしくもなく燃やしながら「土竜」を構える。

 ――そうして停滞された戦いを再開させようとする2人……なんだが

 

「…!!」

 

「?……!」

 

 突如オレは目を見開き、その方向に視線を素早く向ける。

 一変されたオレの様子にカタクリは訝しげにするが、遅くながら気付く――

 

        ●

 

 ある場では――やはり戦いが行われていた。そこには……

 

「ウィッウィッウィッ!!お前を汁の材料にしてやるよ!!――ヤマトォォォ!!」

 

「はん!!できるかなぁ!?――ブリュレェェェ!!」

 

 ヤマトとブリュレ――スサノオとカタクリの妹達が激突していた……

 

「んオラァ!!!」

 

「っつ!!」

 

 そんな中でヤマトはブリュレに金棒を猛烈な勢いで振り抜いた。その攻撃をブリュレの手元にある鏡が受け止めるが、その衝撃により少し後ずさらざるを得ない。

 その事実にブリュレは不気味な笑みを浮かべながらも眉をひそめる。

 

「……ウィッウィッウィッ!!思ったより少しはやるんじゃないかい……!」

 

 彼女が苦しげに言い放つ言葉にヤマトも不敵な笑みを浮かべる。

 

「――当然だ!!この僕はスサノオの妹なんだからね!!」

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