ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第163話〝本物の牙と爪〟

 〝ミラミラの実〟の能力で自身の姿を〝大口真神〟に変身したヤマトのに変えたブリュレは模倣したその力を他でもならぬ彼女本人にぶつけようとしたが――

 

「――だが!!所詮真似事!!本物には敵わない!!」

 

 その攻勢にヤマトはしかし何の事はなく、逆にブリュレの顔を強く叩いて返り討ちにしてやった。

 

「オォォ!?」

 

 その思わぬ攻撃を受けたブリュレは勢いよく駆けていたのも重ねてすごく吹っ飛ばされた。そして床に叩き付けられた彼女は激しく動揺し、ヤマトを凝視する。

 その反応、そしてそんな様を前にヤマトは堂々と立つ。

 

「――はん!例え、力をコピーできても……本物の牙、爪には敵えると思うなよ……!」

 

 鏡に写し込まれたものを利用する事で発現したに過ぎない獣擬きに対して彼女はそう言い放ち、自らの牙と爪をキラッとさせながら見せつける。

 その威容は実に野性的で――しかも、神の獣の如くだった。その野性で神々しさにブリュレも息を呑まざるを得なかった。

 

「っ……なんの!野蛮な害獣めが……!自らの牙と爪で排除してくれるわ!!」

 

 目前の敵に対してつい感じてしまった恐れをごまかすかのようにそう声を上げた彼女が負けじと起き上がり――さっきよりさらに勢いよく駆け回ってみせる。

 

「!」

 

「ウィッウィッウィッ!!覚悟しろ!!ヤマトォ!!」

 

 その姿勢に目を見開くヤマトにニンマリとするブリュレが両腕を勢いよく振り、口を大きく開けて噛みつこうとする――が

 

「……いや、やっぱり真似事だよ」

 

 ……ブリュレの攻撃が空振りになった。

 そして、襲い掛かられる筈のヤマトは――ブリュレの上方に飛び跳ねていた。その動きは実に素早くて身軽かった。

 

「…!!」

 

「所詮、鏡の魔女さんじゃ――獣の力をマネできないって事さ♪」

 

 その動きに呆気に取られたブリュレにヤマトはニンマリとし――身体を勢いよく回転させ、そこから腕を大きく振った。

 その凄まじき攻撃がブリュレを――さらに大きく吹っ飛ばした。

 

「ウギャアアアアア!!」

 

 それにより大きなダメージを負わされた彼女も悲鳴を上げ――しかも、その身体も元の姿に戻されていった。そうして床に叩き付けられる――が

 

「ぐ……!」

 

 意外にそれでも気を失わないブリュレは弱々しくも負けじとヤマトを睨みつける。

 

「……なかなかやるじゃないか……!」

 

「フン!そうさ!何せ――最強の妹だからね!!」

 

 彼女が辛うじてそう言うとヤマトは胸を張り――そしてドヤ顔をみせた。その姿勢にブリュレはもちろんイラつきを覚えた――そんなところに

 

「「「ブリュレ様!!」」」

 

 新たな〝チェス戎兵〟数人が姿を現し――彼女の元に駆けた。そのままブリュレの前に立ち、そしてヤマトに対して抜かりなく身構える。

 

「ブリュレ様に手を出させんぞ!!」

 

「……悪いけど、どれだけ現れてもガラクタ如き!!僕の敵じゃないよ!!」

 

 果敢にそう宣する〝チェス戎兵〟の姿勢にヤマトはそう言い放ち威嚇する。

 そのまま戦いが起こるのかというような一触即発な状況だが……

 

「――お前達!!」

 

「「「!」」」

 

 そんな中でブリュレが〝チェス戎兵〟に呼びかけをする。それに反応して振り返る彼らに言葉を続ける。

 

「力添えをしてやるよ!!だから、あいつに目をみせてやれ!!」

 

 そう言い放つ彼女の手元の鏡が光り、その光が〝チェス戎兵〟を照らす――そして

 

「「「――オォオオ〜〜!!」」」

 

 そんな彼らの姿が全員、大きく白い狼に変貌した。

 突如大きく白い狼――〝大口真神〟の群れだという光景を前にしてヤマトもさすがに目を丸くした。

 

「わっ!!わわっ!!――すげぇ!!」

 

 その白一面の光景に感嘆の声を上げた彼女の姿にブリュレも笑みを浮かべる。

 

「ウィッウィッウィッ!!――ビックリしてくれて何よりだよ……!!」

 

 微かに得意気になった彼女は〝大口真神〟に変身した〝チェス戎兵〟にチラ見してからヤマトを鋭く見つめる。

 

「――さすがにこいつらはお前の能力を使えないけど……劣るだろうが牙と爪を持ったのは確か!!」

 

「そして、それがいくらもあれば――お前に傷ぐらい負わせられる筈!!」

 

 ……そう、〝ミラミラの実〟の能力で鏡に映ったものの使用する能力の一部まで模倣する事ができるが、それは能力者本人しか発動できないものだ。

 他のものが姿を変えられる事はできても、能力の一部さえを使える事はないのだ。

 だが、その問題点をブリュレは数で補って対応してみせようとしたのだ。さらに〝大口真神〟の姿を写し込んだからこそその肉体、牙と爪を得られた。

 それならば、ヤマトに届けられる筈だ。そう考えたブリュレとそれを受けて意欲を示す〝チェス戎兵〟の姿勢にヤマトもつい笑みを浮かべた。

 

「――へぇ!よく考えるな〜!……でも」

 

 一応その姿勢を褒め立てる彼女だが

 

「それでも僕には届けられないよ?」

 

 そう不敵な笑みを浮かべ――覇気を放つ。その凄まじさにブリュレ達も一瞬怯むが……

 

「――言ったな!?お前達!!やるよ!!」

 

「「「はっ!!」」」

 

 それでも態勢を整え直したブリュレが〝チェス戎兵〟にそう激を飛ばす。それを受けた彼らも奮い立たせ――ヤマトに牙を剥こうとする。

 数匹の〝大口真神〟が勢いよく駆けて迫ろうとしてくるのにヤマトは怯まず、ニヤリとする。

 

「あははは!!――返り討ちにしてやるよ!!」

 

 ――そうして神獣〝大口真神〟の力を宿るヤマトが数匹の〝大口真神〟擬きと激突する……

 

 

 

 ……かと思われた。

 

「…!」

 

 だが、自身に迫る攻撃に対して態勢を整え用とするヤマトがそれに気付き、横方向に素早く顔を向ける。その動作に〝チェス戎兵〟が反応する。

 

「――隙をみせたな!!チャンスだ!!」

 

「!?いや待て!?」

 

「ああ、一体何を見ているんだ……!?」

 

 その様子を隙だと見なした反応が最初こそ出たが、やがて訝しげにするようになる。それで彼女の視線先に〝チェス戎兵〟が揃って視線を向けてみると……

 ――ライオンをベースとして左部にはヤギ、右部には竜、背中には竜の翼、尻尾として蛇が生えているという恐ろしい風貌の獣が猛烈な勢いで〝チェス戎兵〟に駆け向かっていた。

 

「「「…へ?」」」

 

「ガアアアアア!!!」

 

 その事に呆気に取られた〝チェス戎兵〟をその獣――〝キマイラ〟が容赦なく襲いかかった。

 

「ガアアアアア!!!」

 

「「「ギャアアアアア!!!」」」

 

 〝キマイラ〟の嵐の如き激しくメチャクチャな攻撃に曲がりなりにも〝大口真神〟に変身した筈の〝チェス戎兵〟が呆気なく――木っ端微塵にされた。

 その事態にブリュレが目を丸くし口を大きく開けた。

 

「え、えええ〜〜〜っ!!?な、何が起こったぁ!!?」

 

 突如すぎる事で彼女が衝撃のあまりにそう叫んだ――が、すぐ気付く。

 

「――って!?ディーゼル!?ランドルフ!?」

 

 よく見れば、木っ端微塵にされながら吹っ飛ばされている〝チェス戎兵〟の近くにはなんとディーゼルとランドルフもボロボロな姿で吹っ飛ばされていた。

 その事実も加えられた事でブリュレがますます衝撃を受けた。その一方でヤマトは……苦笑していた。

 

「……あはは、随分暴れたんだね!ー―小紫!」

 

「!?――小紫ぃ!?あの獣がぁ!?」

 

 その言葉を耳にしたブリュレは一見恐ろしい獣が自身が見惚れる程の美女、小紫であるという事実を受けて激しく驚愕した。

 その反応、そしてヤマトの呼びかけにキマイラは気付き――微笑む。

 

「ああ、失礼――」

 

 その獣は恐ろしい風貌に似合わしくない程に穏やかに喋り出した。そしてその姿が縮み始めた。少しずつ続けられ、やがてキマイラがいたところに美女が姿を現した――それは確かに小紫であった。

 彼女が微笑んでくるのに目を見開くブリュレだが、すぐ真剣な表情を浮かべる。

 

「――お前も能力者だったか!しかも、さっきのあの姿……確かにまさに〝狂獣〟わね……!!」

 

「ええ」

 

 目にした事態からその事実を察した彼女に向けて小紫が肯定するかのように微笑むとヤマトに顔を向ける。

 

「また邪魔したのかしら?――でも、そろそろこれ以上は無益だと思ってね……全て片付けてみたの」

 

 彼女がおそらくヤマトの邪魔を再びしたのであろうという事に関して詫びを入れるものの、そうしようと判断した理由を説明する。

 その内容にヤマトも眉を上げ、そして周りを見渡し――しまいにはブリュレを凝視し、しばらく思案に耽る。

 

「……ん!確かにね〜」

 

 やがて彼女がその意見に相槌を打ちながら――その姿、〝大口真神〟の姿から変わろうとする。

 

「どうにも、事態が少し落ち着いてきたようだし――これ以上のいらない手間はむしろ白けるからね!」

 

「ええ」

 

 元の姿に戻ったヤマトがそう言うと小紫も頷く。そして2人共ブリュレに顔を向ける。突如2人から視線を向けられたブリュレはビクッとし、冷や汗を流した。

 

「っ!!――ナメるな!!私はまだやれるぞ!?」

 

 だが、それでも踏ん張り見栄を切った。その姿勢にヤマトと小紫は――

 

「……その意気は買うんだけど、さすがに難しいんじゃない?」

 

「見たところ、あなたも戦うのが難しくなっているようですし――部下の方々もあの通りですし」

 

 真面目な表情を浮かべるヤマトがそう言い、続いて小紫もそう指摘する。一見ナメてるようなその姿勢にブリュレが歯ぎしりするが、否定はできなかった。

 実際、彼女自身は「ビッグ・マム海賊団」に所属するだけはあってそれなりの実力を持っているが……ただし、戦闘向きではない。サポート向きだ。

 だからこそ戦闘時では戦闘向きの部下を従える事でその問題点を補ってきたが、その部下は今ぐったり倒れている。その無残な様子から復活してくれる期待はできない。

 その事に加えて目前の2人は並ではない実力者だ――もはや〝万事休す〟だ。

 身を置かれてる状況に冷や汗を流した彼女に対してヤマトと小紫が言葉を続ける。

 

「……別にこれ以上はしないよ?」

 

「ええ、ただおとなしくし「黙れ」て――……はい?」

 

 2人がそう勧めようとするのを重い声に遮られる。目を見開く2人に対してブリュレは……大鎌を構え、そして鋭い目をした。

 

「ナメるなよ、この私は「ビッグ・マム海賊団」の海賊なんだよ……!!そんな私が見くびられて黙ってられるか……!!」

 

「「!!」」

 

 彼女がそう怒鳴り――そして決して軽くはない覇気を放ってきた。

 その濃さ、特に姿勢に2人が目を見開くのをよそにブリュレはギロリと睨みつける――ヤマトを。

 

「――そもそも、お前は私を倒して最強の妹になるつもりなんだろ!!なら、最後までちゃんとやれ!!この小娘が!!」

 

「!!」

 

 ブリュレからそう怒鳴りつけられ、そして真剣な目で見つめられたヤマトはハッとし固まった――しばらくして笑みを浮かべる。

 

「……あはは、まさかお前にそう言われるとはね……!!ブリュレ……!」

 

「……フン!ムカつくけど、さすがにお前を小娘扱いし続ける訳にはいかないからね……!ムカつく事にねぇ……!」

 

 彼女もブリュレをまっすぐ見ながらそう言う――その笑みは獰猛であるが、どこか嬉しそうだった。それに対してブリュレは不服そうに鼻を鳴らす――が、その口の端が少し上がっていた……

 そうして――対峙する2人の間には緊張感が走るが、ただどこか爽快さもまた存在した。

 その雰囲気を感じ取った小娘は微笑み――その意思を汲んで後ろに下がろうとする――が

 

「…!!」

 

 突如顔色を変え、素早く振り返る。するとそこには――

 

「「オォオオオ!!」」

 

 ――倒された筈のイヴェルクとノウムが小紫に襲いかかろうとしていた。

 確かにその2人は河松とイヌアラシとネコマムシによって撃破され戦闘不能になるところだが――さすが評議会メンバー、それもレグラヴァリマの補佐に就くだけはあって少々タフだったようだ。

 それに加えて……

 

「「(レグラヴァリマ様が死んでしまった以上、我々はおしまいだ!!――なら!たくさん道連れにしてやる!!)」」

 

 仕えたレグラヴァリマの死という事実によって追い詰められてしまった2人はヤケクソになっていた。ただ、その影響で残された余力を発揮して瀕死の状態から発狂しながらも復活できたようだ。

 そしてたくさんの者を道連れにしようとする2人はまず近くにいる者――小紫を襲いかかろうとしたのだ。

 正気を失ったように見受けられる2人が攻めてきたのに対して小紫は……

 

「……ふぅ〜くたばり損ないが、おとなしくしていなさい」

 

 冷静に、しかも呆れながら刀を抜こうとする。

 それもその筈。目の前の相手は鬼気迫っているが、それだけだ。もう力がそれ程に残されていない。それに対して彼女はまだ余裕がある。その事から結果が見えているといっていい。

 それ故に小紫がイヴェルクとノウムに対して刀を抜こうとする――

 

 

 ――その瞬間だった。

 

 彼女の身体に鋭い痛みが走ったのは。

 

「…!!」

 

 その痛みに小紫が顔をしかめ固まった。それ程に彼女を襲った痛み、それは……

 

「く……!(ヴィザとの戦いでのダメージがここで……!)」

 

 そう、ヴィザ戦によるダメージが響いたのだ。

 確かにヴィザという歴戦の猛者との戦いで深手を負わされたが、それが完全に癒されず時々小紫の身体を襲っている。それがよりにもよって今、出てしまったのだ。

 それによって身動きできなくなった彼女をイヴェルクとノウムが容赦なく襲いかかる。

 

「「オォオオオ!!」」

 

「…!!」

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