ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第165話〝宣言〟

 ――最初は一騎打ちしていた〝暴獣のスサノオ〟と〝盤石のカタクリ〟だが……

 それぞれ自らにとっての大切な存在が危機的状況に陥ったのに気付いたその2人は戦いを中断させてまでその救助に向かっていった。

 そうして救出できた2人はそれぞれその無事を喜び、談笑した――かと思ったら

 

「……中断させちまった戦いを再開するのか?――カタクリ」

 

「……フン」

 

 そのまま終わる訳でもなく――一触即発の状況に戻った……

 

「……女と妹との楽しい歓談に集中しているように見えたからオレ達の事に気付いていないと思ったぞ」

 

 オレの呼びかけに反応したカタクリは意外そうに言い放つが、その態度にオレはニヤリとする。

 

「ハッ!何を言う!お前の事だ――オレ達がお前らの動きに注意を払っているのに気付いているんだろうが」

 

「……フン」

 

 オレがそう言い返すのをカタクリは別に否定もせずに鼻を鳴らす。

 ――そう、さっきヤマトが駆けてきた時にカタクリ達の存在に気付いたオレと小紫はヤマトと会話しながらも注意を払っておいたのだ。

 その事実に練度の高い〝見聞色の覇気〟使いであるカタクリが気付かない道理がない。互いにその事を分かっているからこそオレ達は皮肉を言い合ったのだ。

 とにかく、改めてオレとカタクリが対峙する事でその場の雰囲気が完全に変わった。

 オレとカタクリはもちろんヤマトと小紫、ブリュレも互いに身構え、いつでも戦えるようにしていた。

 

「――何かごちゃごちゃになったようだけど……続きをやるか!」

 

「ふふっ、ぜひ挨拶しましょうか――」

 

「……はん!お兄ちゃんがいる以上、今度は勝てると思うなよ!」

 

「――円滑に終えるとは思わない事だ……」

 

「リュドドド!!お前が相手である以上そう思った事がねぇな!!」

 

 オレ達はそれぞれ見得を切った。そうしてその場に熱気が湧き出した事で戦いが再び始めようとする――

 

 

 

 ――その瞬間だった。

 

「――静まれよ!!!そなた達!!!」

 

「「「!!?」」」

 

 その場――というか、会議室にその声が響き渡された。

 それによって会議室内でそれぞれ動いていた者達も全員動きを止め、その声の源に視線を向ける。

 そこは大きな扉で――その前に数人が立っていた。

 その姿を目視したオレは――ニヤリとした。

 

「…リュドドド、どうやらうまくできたようだな――レイ達、テゾーロ」

 

 満足気にそう呟いたオレが視線を向ける数人は――レイとその仲間、そしてテゾーロ達であった。

 彼らはある事を果たす為に評議会と戦おうとするオレ達とノーマン、チカ救出に向かおうとするエマ達とは別に動いていたが、そんな彼らがこの場に現れるという事は――つまり、そういう事だろう。

 そう考えたオレに気付いた彼らは――サムズアップをした。その事からうまくできたのが分かる。

 そんなオレ達の密かな会話を知る由もない人々が混乱する中で新たに現れた数人の筆頭に立つ者が前に出る。

 それは豊かな顎髭を生やす穏健そうな老人だった。

 その老人の姿に海賊達が首を傾げる一方で生き残った〝バシレウス〟の者達が驚愕する。何せ、彼は――

 

「ぎ、議長……!!?」

 

「「「…!!」」」

 

 そんな彼らの中の誰かが言ったその言葉によってその場が驚愕に包まれた。そう、その老人こそが〝バシレウス〟の統治者――評議会議長であった。

 そんな人物がこの場に姿を現してきたという事実に人々が衝撃を受けずにはいられなかった。何せ……

 

「――議長!!」

 

「!――おぉ、ギーランか」

 

 突然、議長の元へ駆けつける者がいた。その者を目にした議長は優しい微笑みを浮かべながらその名を呼びかける。

 そんな彼から呼びかけられた者――ギーランは驚愕、喜び、困惑等といった数々の感情を込められる表情を浮かべながら議長のそばに着き、頭を下げる。

 

「はっ!――だ、大丈夫でしょうか!?あなたの身体は病で動きにくくなった筈……!」

 

 議長に会釈した彼は続いてその身を案じた。

 ――そう、そもそも議長は病に伏されている筈だった。それも再起不能だろうといわれる程だ――にも関わらずに今の彼は少々元気な姿でしっかり立っているように見受けられた。

 その事実にギーランはもちろん〝バシレウス〟の者達が並ではない衝撃を受けて混乱していた。

 そんな彼らに向けて議長は優しく微笑む。

 

「うむ、お前達の心配と驚きももっともじゃ。じゃが、見ての通り今の私は少しぐらいは動けるのじゃ――ほんの少しだがな」

 

 自身の状態に関して彼がそう説明する。なお、その際にある男に一瞬チラッと視線を向けた。それに対してその男――ペインは微かに頷いた。

 とにかく議長はすぐ真剣な表情を浮かべる。

 

「その話は今は置いといて――お前達にこの場を借りて知らせなければならない事がある!!」

 

「「「!?」」」

 

 彼がそう言い張った事でその場にいる人々がますます混乱する。するとギーランが素早く議長に今の状況に関して説明しようとする。

 

「ぎ、議長!!この事態をご覧になっていないんですか!今はそういう場「分かっておるよ」――……!!」

 

 だが、それを議長が遮り、そしつ言う。その顔は真剣だった。

 

「…!?」

 

 その真剣さにギーランが息を飲むのをよそに議長が人々に向けて居住まいを正し――口を開く。その事を人々に知らせる為に。

 

「この私――〝バシレウス〟評議会議長は!!!」

 

「ここ〝バシレウス〟が「暴獣海賊団」の傘下に入る事を宣言する!!!」

 

「故に!!!「暴獣海賊団」の海賊への攻撃を直ちに止めよ!!!」

 

「「「!!?」」」

 

 彼がその事をハッキリ口にした。その内容に人々が大きな衝撃を受けた――否、よくみれば……「暴獣海賊団」の海賊達だけは平然としていた。

 まるで、今のような事態が起こるのを分かっていたかのように……

 ――そう、実はこれもまた「暴獣海賊団」の計画の一部であった。

 

        ●

 

時は「暴獣海賊団」が〝サンモン〟を出て〝バシレウス〟へ向かう最中に遡る――

 

 海を進む〝カイリュー号〟の上でオレ達はエマとレイが率いる子供達と海兵のオサムを加えて〝バシレウス〟への対処に関しての議論を行っていた。

 

「――〝バシレウス〟の情報を大体把握できたな?お前ら――改めて目指す目標を確認するぞ」

 

 そんな中でオレはエマ達から情報をほとんど受け取ったのを機にまず目標を定めようとする。

 

「まず、お前らはさらわれたノーマンとチカという仲間を救出したいんだな?」

 

「「「はい!」」」

 

 それでオレが改めて子供達の望みを口にしてみると勢いよく肯定してきた。そしてエマが続いての望みをも口にする。

 

「私達は全員穏やかに生きれば、それだけでいいなんです!!だから、まずノーマンとチカちゃんを……!」

 

 彼女がそう言い張り、子供達も共感の声を上げる。そんな彼女達に対してオレは――真剣な表情を浮かべる。

 

「……お前らの希望は分かった。だが――」

 

 子供達の話を聞くうちに気付いた問題点をオレは容赦なく口にする。

 

「仲間を救出できたとして、その後はどこに逃げるつもりだ?どこで生きるというんだ?」

 

「「「!!」」」

 

 その指摘に彼女達はハッとする。

 そうだ、〝バシレウス〟から逃走するまではいい。だが、その後は?どこに行けばいいというのだ?

 

「お前らが亡命先として選んだ〝サンモン〟もああいう様だしな」

 

 オレはオサムにチラ見しながらそう言う。まるで海軍G-3の事を悪く言われた気がした彼は顔を詳しくするが、今の事情から否定ができない故に悔しげに口を閉じるしかなかった。

 そしてその事実を受けて子供達も俯く。

 

「……そうですね。〝バシレウス〟から逃げられても、肝心の目的地がなければ、それは自由とはいえないもんですね……」

 

「「「…」」」

 

 苦悶の表情を浮かべるエマがそう言い、子供達もその事に苦悩する。

 彼女の言う通りだ。逃走できても、目指す場所がなければ――長い逃走生活を送る事になってしまう。穏やかさと自由を求めるエマ達にはそんな生き方なんか望むものではない。

 ……だが、どこに逃げればいいんだろう……?

 世界の秩序を守ると謳われる「海軍」が存在する地を頼っても――仲間をさらわれたどころか、助けてもらえない始末だ。

 その事実から苦悩せざるを得ない子供達……なんだが、その中に1人だけ真剣な表情を浮かべる子供がいた。

 

「……もしかしてなんだが――」

 

「「「!」」」

 

 その子供――レイが突然口を開き始めたのにその場にいる人々が全て視線を向ける。

 視線を浴びたのを彼は気にせずにオレをまっすぐ見つめながら言葉を続ける。

 

「もしかして、あんた達は……」

 

「――〝バシレウス〟をナワバリにするつもりなのか?」

 

「「「!!」」」

 

 レイが口にしたその言葉に子供達とオサムが驚愕する。一方でオレはニヤリとし、試すかのように問いかけてみる。

 

「……なぜ、そう思う?」

 

「……〝バシレウス〟はオレ達にとっては自由が存在しなかったが……その技術、軍力はそれ程に悪い訳でもなかった――あんた達にとって価値があるぐらいに」

 

「だから、海賊である筈のあんた達がオレ達に手を貸そうとするのはそういう事じゃないか?」

 

「「…!!」」

 

 自身達を巡る状況、その事情に関してレイがその推測を口にする。その内容に子供達が目を見開く。そしてオレは――笑った。

 

「――リュドドド!!お前らに手を貸したいのは嘘じゃねぇが、オレ達は海賊だからな!!利益を求めずにはいられねぇからな!!」

 

 その推測をオレは否定しないどころか、海賊としての道理を恥も見聞もなく言い放った。そして不敵な笑みを浮かべながら続ける。

 

「それで?――この船に乗ったのを後悔したか?」

 

「――いや?」

 

 オレが茶化すのを受けてレイは――しかし不敵な笑みを浮かべた。

 

「むしろ、それもありだと考え始めたところだ」

 

「「「!?」」」

 

 そんな彼が口にしたその言葉に子供達が驚愕し呆然と見つめる。

 だが一方でエマは合点のいった顔をしていた。

 

「た、確かに!?それはありかも……!?」

 

「「「!?」」」

 

 レイが言い出した奇抜な言葉にエマが賛同するという事態に子供達もますます呆然とする。子供達からの視線を浴びたエマはビクッとしながらも口を開く。

 

「さ、〝サンモン〟に亡命してもダメだったのならば、どこでも同じだと思うの」

 

「それならば、今私達とこうして関わってるこの人達に〝バシレウス〟を統治してもらってみるのもありなんじゃないかな〜」

 

「「「…!!」」」

 

 彼女がためらいがちに語るその事に子供達が目を大きく見開く。

 だが、そこにオサムが介入する。

 

「ま、待って!!それでいいのかい?君達!!海賊のナワバリで生きるなんて……」

 

「だが、ここはあんた以外の「海軍」と違ってオレ達に手を貸そうとしてくれたんだ。他の海賊と違うと思うんだ。たからこそ賭けてみようと判断した」

 

「っ!!」

 

 海兵である彼はもちろん危惧するが、レイが冷静にそう指摘すると口をつぐんだ。そんな彼、そして子供達に向けてもレイは言葉を続ける。

 

「もちろん、気を抜くつもりはねぇ……この人達との関わり次第じゃ、散々な目に遭う事になる可能性もあるからな……!!」

 

「……リュドドド」

 

 気を抜かず鋭く見つめてくるレイの姿にオレもニヤリとする。

 

「(やはり、コイツらはガキにしては聡明で度胸がありやがる……!!)」

 

 そう――少なくともレイはオレ達の出方と状況を見極めているのだ。そもそも、好意を示しているオレも所詮――海賊だ。完全に信用する訳にはいかないだろう。

 おそらくその好意が本物だろうとしても――何かが起こってもおかしくはない。それでも自身達の有利になるように少しでも誘導しておきたい――レイがそう考えていた。

 そういう意図で海賊を前にして頭を全力で巡らせるレイを含む子供達の行動と判断に感心を覚えたオレは続いて試してみる事にした。

 

「それで?どうしようと考えてる?」

 

 その挑発めいた言葉に対してレイは――

 

「……〝バシレウス〟をナワバリにする事には何も言わない。ただ――」

 

「統治するのは難しいと思うぜ?」

 

 彼がオレに向けて怯まずにそう言い張るのにオレは笑う。

 

「確かにな。〝バシレウス〟を統治するのは手間かかりそうだぜ――なぁ?フドウ」

 

「……ああ、そのところの体制が特殊になっている。ああいう体制ではオレ達が統治するのが困難になるな」

 

 その意見にオレは相槌を打ち、フドウも賛同する。

 そうなのだ。〝バシレウス〟のあり方、体制は他の国々と違って独特的になっている。その詳細、特性を考えるとオレ達が統治しようとしても民の反感を買い、上手くいかなくなるのがオチだ。

 そういう理由から統治が困難であると判断したオレにレイが声をかける。

 

「じゃあ、どうするつもりなんだ?」

 

 さっきとは逆に試すかのように問いかけてきた彼に対してオレは笑みを浮かべる。

 

「リュドドド、なぁに――〝バシレウス〟の上層部、評議会の奴を使えばいい!!」

 

「そいつの統治ならば、民も反感せず従うだろうよ!!」

 

「……そうか、それはいえるな」

 

 オレの考えにレイはハッとし納得する。

 そういう形の統治ならば、確かに可能だ。

 深く頷いた彼にオレは真剣な表情を浮かべる。

 

「――そこでだ。統治を任せられる奴、お前らに心当たりあるか?」

 

 オレが重々しくそう問いかけるところで突然エマが声を上げる。

 

「あっ!!――いるかも……」

 

「「「!?」」」

 

 そう言い出す彼女に人々が驚愕する。視線を向けられたのにエマは構わずに言う。

 

「―いるかも評議会には〝ギーラン〟という人がいるんです!!」

 

――そうして〝バシレウス〟統治に関する話が進められていく

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