ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第166話〝自由への推進〟

「――ギーランという奴の見定めは任せたぞ。フドウ」

 

「ええ」

 

 オレ達「暴獣海賊団」――否、「百獣海賊団」のナワバリにする事になっている〝バシレウス〟の統治に関しての方針がある程度定められていく中でオレはフドウに向けてそう指示し、彼も問題なく受け入れる。

 これで話がまとめられたと思われたが……

 

「……議長もいれば、もっと何とかなるかもしれないが……」

 

 そこにレイがさり気なくそう呟いたのをオレが聞き取れた。

 

「〝議長〟?……確かに穏健派だと聞いているが……お前らが信頼を置ける程なのか」

 

「……ああ」

 

 その内容からそう察したオレは興味を惹かれた。それ故にオレがそう言ってみたのを受けてレイは目を見開く――が、しばらくしてから頷く。

 

「……ギーランと同じ、いやもっと高潔なのだからな、あの方は――」

 

 

議長――

 

彼は〝バシレウス〟評議会のリーダーにして〝バシレウス〟を統治する男である。

そんな彼はギーランと同じく民の事を想える高潔な穏健派である。その高潔さにより民から尊敬を寄せられている。

また思慮深い部分もあって民と政治と国のあり方に関して深く考えてその繋がり、バランスを重視していた。

 

『生きとし生けるもの全てに敬意を示し、利を分け合う事』

 

彼は民にその考えを伝えて〝バシレウス〟を導こうと試みていた。

 

「――まぁ、評議会メンバー――ギーラン以外の奴らが野心家だからな。そんな奴らの存在のせいでうまくできなかったんだ。だからこそオレ達が亡命を考える程になっちまったんだ」

 

 そんな議長でも手に余る〝バシレウス〟の実情に関してレイが苦虫を噛み潰したような表情でそう説明した。その話を聞いたオレはしばらく考え込み――そしてこぼす。

 

「……議長が健在だったら、もっとオレ達に有利に動くようになるのか?」

 

 議長の詳細からついその可能性を考えたオレの呟きを聞き取れたレイは真剣な表情になる。

 

「……あの方は柔軟な考え方をもしているようだからな、海賊でも――話が通じていて筋を通す者なら積極的に議論をしようと考えるぐらいだろうからな。もしかしたら、可能性はあるかもな」

 

「まぁ、彼が病で倒れた今では無意味な話だがな」

 

「……そうだな」

 

 あえてその可能性を認めた彼だが、続いて今の事情から無駄だと断言する。その事にオレも賛同し、そのまま話を切り上げようとする。

 

 

 

 ――だが

 

「……議長が元気になれば、有利になるんだな?」

 

「「!」」

 

 突然響いたその声にオレ達が目を見開きながら視線を向けると――

 ――真剣な表情を浮かべるペインがいた。

 どうやら、彼はそばでオレ達の話を聞いたようだ。それで突然言い出したのだろう。そんな彼が固まったレイに向けて話しかける。

 

「どうなんだ?」

 

「……断言できないけど――可能性はあると思う」

 

 その問いかけにレイが訝しげにするものの、しばらく考えてからそう答える。その内容にペインは重々しく頷く。

 

「……そうか」

 

「……お前、まさか――議長を復活させる手段を持っているのか

?」

 

 そんな彼の態度、言動にその可能性を思い浮かべたオレが問い詰める。それを受けてペインはごまかさずにしっかり肯定した。

 

「ええ――オレの能力をもってすれば……!」

 

 堂々とそう言い張るペインの掲げる手が光り出していた……

 

        ●

 

それから場面は「暴獣海賊団」が〝バシレウス〟へ殴り込みをかけるところに移る――

 

 〝バシレウス〟を率いる評議会メンバーを討ち倒しに向かうスサノオ達とさらわれた仲間を救出しに向かうエマ達とは違う道をレイとその仲間、彼らに同行している数人が駆け進んでいた。

 そんな彼らの目的は――

 

「――本当に議長を復活させられるんだろうな!?」

 

「保証しよう。だが、それより議長を説得する方が重要だろう?」

 

 レイとペインが駆けながらそう確認し合った。そう――彼らは議長を復活させて〝バシレウス〟を「暴獣海賊団」のナワバリにする事を認めさせる事であった。

 そうすれば、「暴獣海賊団」にとって優勢になり――〝バシレウス〟統治も障りなくできるようになるんだろう。

 それを果たす為に議長の元に向かおうとする彼らはその重要性から気を引き締める。そんな彼らの前に兵士達が立ち塞がる。

 

「誰だ!?貴様らは!!」

 

「敵か!!」

 

「だが、これ以上好き勝手はさせんぞ!!」

 

 侵攻を進める「暴獣海賊団」に兵士達が立ち向かおうとするが――

 

「おっと!!申し訳ないが、我々の邪魔をしないでもらいたい!!」

 

「――引っ込んでもらおう」

 

 前に出るテゾーロとペドロによって撃破されていった。

 

「――ありがとうございます。テゾーロさん、ペドロさん」

 

「なぁに!!君達は気にする事なく進もう!!」

 

「ああ、君達は肩の荷を少しは抜いておけ」

 

 自身達に手を貸してくれる2人に紫色い長髪でその毛先をそれぞれ結んで、目元に仮面をかける少女――ムジカが感謝を告げる。

 そんな彼女に2人共微笑みながらそう言っておく。その柔らかい空気が周りにも広がっていく。

 そのまま進行を続けるが――

 

「…!」

 

 その中の1人――クリームイエローの長髪を右側に寄せて流して目は水色で顔の右半分に大きな痣がある少女――アイシェが突如その目を鋭くし上方を見上げる。

 突然の彼女の動作にそのそばにいる者が驚く。

 

「!?――どうした?アイシェ」

 

「……〝いる〟」

 

 そう問いかけられた彼女はそれに答えるかのようにそう呟く――

 

        ●

 

「おのれ、賊共が……排除してやる」

 

 天井付近の壁には穴が空けられていて、そこには1人の兵士がいた。

 彼は下部の廊下を我が顔だといわんばかりに勢いよく駆け進む賊共――「暴獣海賊団」を憎々しげに睨みつける。

 そして銃を構え――「暴獣海賊団」に狙いを定めていた。

 

「まずは――筆頭を走っている奴をやるか……!」

 

 駆け進む「暴獣海賊団」の筆頭にいる者――ペインを撃とうと兵士が銃を構える。

 その瞬間――

 彼の前に――ウルフレイドな赤茶色でもみあげを伸ばす長身の少年が突然姿を現した。

 

「…へ?」

 

「よぉ」

 

 突然の事に呆気に取られた兵士に向けてその少年――ソンジュが八重歯をむき出しにする程の獰猛な笑みを浮かべ、そして手にする棒を勢いよく振った。

 

「おらぁ!!!」

 

「!?――ギャアアアアア!!」

 

 激しく叩き込まれた兵士が悲鳴を上げながら落とされていった。それを見届けたソンジュはニヤリとする。

 

「へっ……さぁて、あとは」

 

 そう呟く彼は続いて後ろの壁に視線を移す。そこには――

 

「チッ!」

 

 同じように空けられてる穴に兵士がいた。その者がソンジュに向けて銃を構え直していた。その兵士の存在にソンジュももちろん気付いているが、今まさに撃たれようとしていた。

 

「調子に乗ん――ギャ!?」

 

 彼を容赦なく撃とうと引き金を引きかける兵士だが、そんな彼が突然雷に打たれたかのような様子をみせ――そして力なく落ちていった。

 そんな光景を目にするソンジュはニヤリとする。

 

「ククク……やるじゃねぇか――アイシェ」

 

 そう賞賛の言葉を口にする彼は下にいるアイシェに視線を移す。

 彼女は――銃を構えていた。そう、さっきの兵士はアイシェによって撃たれたのだ。

 その実に目覚ましい活躍をみせたアイシェとソンジュに海賊達が感心を覚えた。

 

「大した奴じゃないか。ソンジュは……あの動き、身体能力が高いのももちろんだが――余程に鍛えられたんだろうな」

 

「ああ、アイシェもいい腕をしている。感知能力も悪くない」

 

 ペドロがソンジュに対して、ペインはアイシェに対してそれぞれ高い評価を下した。

 ソンジュは子供にしては並外れた身動きで上部にいる兵士の元に向けて壁を登っていき、そこで放った攻撃の威力もなかなかから大したといえよう。

 アイシェだって上部にいる存在に勘付く事、それこそ――ペインぐらいだ。それ故に練度が高い〝見聞色〟を持っているだろう。その上に遠くのものを撃った程の良い腕をも持っている。

 それ程の実力を持つ2人に海賊達が感心を覚える事に対して子供達が誇らしげにする。

 

「ええ、ソンジュとアイシェは私達の中でも実力者にあたるんですからね」

 

「おう!!オレ達なんかとは比べられない程にな!!」

 

「ユーマ兄ちゃんと同じく強いんだ」

 

 ムジカが微笑みながらそう説明し、活発的な褐色肌の少年――ドンと彼より幼い褐色肌の男子――フィルが自分事のように2人の事を誇った。

 そんな彼らの説明を聞いたステラが微笑み、しかしどこか鋭い目をしながらそう問いかける。

 

「それはすごいわね――それもここで鍛えられたからなの?」

 

「……そうですね、皮肉な事に」

 

「「…」」

 

「……そう」

 

 その問いかけにムジカは何ともいえない表情を浮かべながらそう答える。ドンとフィルも少し暗くなった。そんな彼女達の様子にステラも目をますます鋭くする。

 そんな妻の様子にテゾーロも深く頷き――

 

「……君達が嫌だと思う事をしなくてもいいようにする為に今議長の元に向かおう!!」

 

「「「!――はい!!」」」

 

 彼がそう言い張るのを機として一旦止まった彼らも駆け始める。

 その際にステラが夫に話しかける。

 

「……やっぱりここは好きじゃない」

 

「そうだね。だからこそ、何としてでもここをナワバリにしよう!!」

 

 妻のその気持ちにすごく同感できるテゾーロはそう言い張る。

 彼らは子持ちであるのはもちろんだが、エンターテイナーとしての気質もあってか子供にはすごく優しい。

 だからこそ、今の〝バシレウス〟の子供達に対して過酷なあり方を容認できなかったのだ。それ故にその事を何としてでも変えてみせようと意気込む。

 そんな2人の熱意が周りに伝わったのか他の者も熱心に駆けていく。

 そして――

 

「!……どうやら着いたようだ」

 

 ペインがそう呟いた通り、彼らは議長の元へ辿り着けた。なぜならば……

 

「……うむ、当然だが多くいるな」

 

 そう呟くペドロが凝視するその場には――兵士が多くいた。

 何せ、議長がいる場だ。そこを守る者がいるのも当然だろう、それも敵襲という非常事態が起こった今ではかえってだ。

 そんな彼らが突然現れた海賊達に驚くものの素早く身構える。

 

「!!賊か!!ここは通させんぞ!!」

 

「「「オオ!!」」」

 

 そして侵入者達を排除しようと兵士達が攻め入る。

 

「!――君達はここで待ちなさい!!」

 

 その姿勢を受けてテゾーロは能力で妻子とレイ達の前に黄金の壁を作り、その身を守ろうとする。

 その黄金の壁に驚愕し、つい足を止めてしまった兵士達に対してソンジュとアイシェを含むペイン達が勢いよく駆け寄り、攻め込む。

 

「――オラオラぁ!!!」

 

「フン!!」

 

「「「うわあああああ!?」」」

 

 まず、ソンジュとペドロが力に物言わせる激しき戦い方を展開する。その激しさにより議長のいる場を守るだけはあってそれなりの実力を持つ筈の兵士達もさすがに吹っ飛ばされざるを得なかった。

 

「ー」

 

「がっ!!」

 

「ぐぁ!!」

 

 その一方でペインは――立っている場から動かずに攻めてくる兵士達をいなし、鋭く攻撃していた。そんな様に兵士達も恐れ入った。

 

「ぜ、全然動いていないのに、何で倒せていないんだ!?」

 

「…」

 

 実は後にやるべき事があるペインはその体力を温存する為にほとんど動かずに戦ってみせた。困難な行為だが、やり遂げたのは彼が「CP9」である故だろう。

 そんな彼を倒せず指をくわえるしかない兵士達だが、突然倒れた――アイシェからの射撃を受けたのだ。

 

「…」

 

 そのように「暴獣海賊団」と子供達の猛攻に兵士達が敵わずにただ圧倒されるしかなかった。

 

「ぐ!!――お前達!!気合を「――君達!聞いてくれるかい!!私の歌を!!」――……は?」

 

 それでも負けじと態勢を整え直そうとするところでその声が響き渡る――テゾーロが黄金の台上に立ちながら人々に向けて言い張った。

 突然目立つ彼の姿勢に混乱するものの警戒を解かない兵士達をよそにテゾーロは……歌い出した。

 

「おお〜〜♪」

 

「人を守ろうと戦う君達は立派だぜ♪」

 

 まさかの歌に兵士達が呆気に取られる――ところでその場に数々の黄金の塊が湧き出た。

 

「「「!!?」」」

 

「だからよ〜〜♪おとなしくしてくれ〜〜♪」

 

「〝黄金の拘束〟!!!」

 

 突然出てきたその塊に驚きで固まった彼らをテゾーロが能力で操る黄金が包んだ。そうして兵士達は全員身体を黄金で固められる事で拘束された。

 

「な、何だ!?これは!!」

 

「黄金!!?」

 

「――〝悪魔の実〟か!?だが、これは……!!」

 

 身動きできず喚くしかできなくなっている彼らに向けて台から降りるテゾーロが微笑む。

 

「悪いね、君達。だが、ここで騒ぎをこれ以上起こす訳にはいかないからね……!」

 

 そう言い張る彼の元に戦っていた者達、そしてステラ達も近寄る。

 

「よくやったな、テゾーロ」

 

「何の何の!――まぁ、最後まで歌いきれなかったのが残念だがね!!」

 

「ええ、いい歌声だったから残念だったわ」

 

 ペインが労いの言葉をかけるのにテゾーロがそう言い、しまいには最後まで歌えなかったのを残念がる。ステラも同感な故に同じく残念に思う。

 その様子につい笑みを浮かべるペインはドンに視線を移す。

 

「それでどうだ?――ドン」

 

「はい!手にしましたよ!――鍵を!!」

 

 その確認にそう胸を張るドンの掲げる手には――鍵があった。

 実は彼は手先が器用でスリの技術をも持ち合わせているのだ。その技術でドンは――議長の部屋の扉の鍵を兵士達から手にしたのだ。

 それを目にしたペインは頷き――

 

「うん、あとは……議長と会うのみだな」

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