ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第167話〝議長〟

「暴獣海賊団」の襲来をきっかけに混乱を極めてしまった〝バシレウス〟

そんな中で〝バシレウス〟を統治する評議会を討ち倒そうとするスサノオ達とさらわれた仲間を救出しようとするエマ達とは違う道をレイ達が駆け進めていた。

その向かう先は病で倒れ寝込む〝バシレウス〟の統治者――議長の元であった。

〝バシレウス〟のあり方を変えるには彼に会う必要があるレイ達は立ち塞がる壁を突破してまで進行を続けられた。

そうして――議長がいる部屋の扉にレイ達は辿り着けた。

 

「……ここに議長がいるのは間違いないのか?」

 

 その扉を前にするレイ達の中からソンジュがそう言い張る。

 オレ達は自身達の為にここまでやってきたんだ。今更間違いだったのは勘弁だ。

 そう考えた彼はそう声を上げずにはいられなかった。本来細かいのをどうでもよいと考える彼も今回に限っては慎重にしていた。

 そのもっともな疑問にすぐ答える声が上げられた。

 

「間違いない――〝感じる〟」

 

「うん、確かに」

 

 ペインがそう断言した。どうやら〝見聞色〟で認知したようだ。同じく持っているアイシェも賛同する。

 その断言によりその場にいる人々は緊張感に包まれるようになる。

 

「――よし。お前達入るぞ」

 

「「「ああ」」」

 

 念に出すその言葉に人々が肯定するのを確認したペインはドンからもらった鍵でその扉を開ける。

 そうしてその中にペイン達が歩を進める。

 そこは実に荘厳な雰囲気のある部屋になっていた。そして、その中心には――

 

「……あれがそうか」

 

 それを目視したペインがそう呟いた。そう、それはペッドでもちろん――議長が寝込んでいた。

 そんな彼の元にペイン達が近寄る。そしてその状態を確認してみると……

 

「――ほ、本当に具合が悪そうだわ……!」

 

 ムジカがそう心配の声を上げる通りに議長は顔色を悪くして苦しそうに唸っていた。これなら確かに復活できると思えないのも無理もないだろう。

 それ程になっている彼の姿に人々が眉をひそめる中でレイがペインに向けて真剣な表情を浮かべ、そして重々しく口を開く。

 

「……こんな状態だが、それでも復活させられるのか?」

 

「ああ、可能だろう」

 

 前もってそう聞いたが、今の議長の状態を目にすると不安にならずにはいられなくなった彼がそう問いかけるが、それを聞いてペインがそう断言する。

 そのハッキリな断言にレイが冷や汗を流しながらも頷き――

 

「……じゃ、やってくれ」

 

「ああ」

 

 その合図でペインは議長に近付き――そして彼自身に手を掲げる。その途端に手が光り出し――やがてその場が光に少しあふれる。

 その光にレイ達が目を細める――それでも続く。

 やがて――

 

「……う、う〜ん」

 

「「「!!」」」

 

 その声が響く。それに人々が目を見開くのをよそに議長のあれ程に悪かった顔色が少しずつ良くなり――やがてその目が見開く。

 

「――おや?」

 

 さっきまでの苦しそうな様子がウソだったかのように元気になった議長の姿にレイを含む人々が喜びを感じる。

 

「す、すごい。本当に元気になった」

 

「さすがですね!ペインさんの能力は!」

 

 その事態にレイが驚愕し、ムジカが喜びながらその状況を作り出したペインを賞賛する。その賞賛に対してペインが口を開く。

 

「――いや、確かにオレの能力に関わるが……それより力になったのが――議長自身の生きようとする力だ」

 

――ペインが議長に対してやった事。それは……

彼の〝悪魔の実〟――〝エネエネの実〟による影響を議長の身体機能に付加する事であった。

まず、人間の身体にはいかなる働きが多く存在していて、その中には身体を健康にしようとする働きも存在する。

その働きも議長が病にかかった事と老いの影響で弱化してしまっているが、そこにペインの能力により新たなエネルギーを付加させられてみたのだ。

もっとも、あくまで身体を健康にしようとする働きが強化されるきっかけをもらっただけだ。

それ以上は議長自身の力にかかる事になる。

 

だが、それもどうやら心配無用だったようだ。老いたといえ〝バシレウス〟の議長に就くだけはあってそれなりの力はある。

それによって議長が復活できたのだ。

 

 そのようにめでたい事態だが……

 

「ただしな。説明したが……効果は一時的だからな」

 

 柔らかい雰囲気に包まれる場を戒める為にペインが重々しくそう警告する。

 

――そうなのだ。今の議長の状態はあくまで〝悪魔の実〟の能力によってそんなふうになっているのに過ぎない。

それ故か……効果は一時的になる。つまり時が過ぎれば切れてしまうのだろう。

まぁ、若い者の場合ならば少々調子が悪くなろうが、無問題になるんだろう。

だが、年老いた議長ではほとんど元通りにならざるを得なくなる。

 

 その警告に人々も事態を理解し、少々俯く――が

 

「――うん!だったら、今のうちにできる事をやりましょう!!」

 

 そんな中でムジカが声を高くしながらそう言い張る。その姿勢はしっかりしていた。

 そんな彼女の姿勢を受けて人々もハッとし、そして確かにと言わんばりにすぐ気を引き締める。そんな雰囲気に議長はつい気後れする。

 

「……あ〜すまぬが、君達は一体……?」

 

 彼は今まで寝込んだのもあって目の前の事態はもちろんだが、今〝バシレウス〟が遭遇している状況を認識していない事から戸惑いながらもそう言わざるを得なかった。

 そんな議長に向けて人々が背筋を伸ばし――その中からムジカが代表するかのように前に出る。

 その事に訝しげにする議長に対して彼女が恭しく頭を下げる。

 

「――初めまして、議長。私はムジカと申します」

 

「おお……そなたはムジカというんじゃな。初めましてじゃ」

 

「はい」

 

 その行儀良い会釈を受けて実は混乱していた議長も少しずつ落ち着けるようになっていく。

 ――議長と会談を始める前にまず緊張を解きほぐす必要がある。そして今いる人々の中でその役目に最も適するのがムジカである。

 心穏やかな彼女がほとんど誰にも温和に接しているからのもそうだが、それに加えて民想いでつながりを重視する議長を尊敬しているからであった。

 彼の言葉を大切にしている程だ。そういう事情からムジカが議長への会釈を買って出たのだ。その甲斐はあって場の雰囲気も少々柔らかくなっていった。

 自身に頭を下げたムジカに対して優しく微笑む議長はすぐ真剣な表情を浮かべる。

 

「すまぬが、今どうなっているのか教えてくれるのか?もちろん知る限りじゃが」

 

「はい」

 

 〝バシレウス〟の統治者を務める自負な故か彼が威厳をもってそう問いかけるのを受けてムジカが滞りなく答える――議長が倒れてから起こった事を。

 機会として評議会メンバーが議長の座を狙って行動し始めた事、その中のハイレインが行った〝サンモン〟への侵略、それがきっかけで「暴獣海賊団」の怒りを買い現在〝バシレウス〟がその殴り込みを受ける最中であるのを説明した。

 その内容に議長が衝撃を受けた。

 

「おお……まさか、そのような事が起こったとは……」

 

「はい、それで――」

 

 説明してくれた出来事をゆっくり理解しようとする議長に向けてムジカは――否、子供達が背筋を改めて伸ばす。

 

「ここ――〝バシレウス〟を「暴獣海賊団」のナワバリにしませんか!?」

 

「!?」

 

 ムジカが言い出した提案に議長もさっきより激しく驚愕した。

 無理もないだろう。今〝バシレウス〟が大変な事になっているというのに、そこに予想外の提案をされたんだから。しかも、その内容は――

 

「……そなたは――海賊の軍門に降れというのか」

 

「はい!」

 

 衝撃を何とか抑えつけて真剣な表情を浮かべる議長が念を入れてそう確認するが、それに対してムジカがごまかさずに即答する。彼女、そして子供達が真剣な目でまっすぐ議長を見つめる。

 その真剣さに議長は眉を微かに上げたものね――

 

「……何故にそうすべきだというのだ。欲のままに暴れ、海を乱し人々に苦痛をもたらす海賊の軍門に降れというのだ?」

 

 さっきより気迫を出しながらそう問いかける。その迫力――確かに〝バシレウス〟を統治する議長の名に恥じないものだった。

 だが、それ程の態度になるのも当然だろう。何を血迷ったのか〝バシレウス〟を横暴を働く不法者に託せと直で言われたのだ。

 国はもちろん民の運命を背負う統治者としてそれを受け入れる訳はなかった。

 大きく気迫を放つ彼に子供達は息を飲むが……

 

「「「――はい!!」」」

 

 それでも何とか自身を奮い立たせてハッキリ言う。そんな姿勢に再び眉を上げた議長に向けてレイが口を開く、ら

 

「――そもそも、ここは海賊のナワバリにする以前に治安がそれ程に良くはない筈。その事はあなたがよく分かりじゃ?」

 

「!」

 

 彼が重々しく口にするその事に議長もさすがに顔をしかめざるを得なかった。

 それもそうだろう。彼が倒れてから評議会が暴走し出したのはもちろんだが……それ以前に健在な彼も上手く是正できなかった有り様だったのが〝バシレウス〟だ。

 これでは確かにそれ以前の話だろう。まぁ、だからって海賊のナワバリにするのはどうかなんだというが。

 その事実につい口をつぐむ議長に向けてレイが続ける。

 

「そりゃ、海賊のナワバリよりマシかもしれませんが、実際オレ達がここからの逃走を考えて実行に移したぐらいですから結局同じかもしれませんよ」

 

「ぬぅ……」

 

 続いて言い放たれてしまったその言葉に議長も唸る。そこにムジカが口を開く。

 

「ですが、「暴獣海賊団」の皆さんは海賊にしては誠実なところもあるんです!――完全に信用はできなくても見込みがあると思います!!」

 

「…」

 

 彼女がそう言い張るのを受けて議長はついに口を閉じる。

 しばらくその場を静寂が支配するが……

 

「――確かにのぉ。ここ〝バシレウス〟のあり方は辛うじて共存しておるが、どこか歪んでおった」

 

「故にわしはわしなりに是正を試みたつもりじゃが……力及ばなかった」

 

「それなら、お前達が薦める海賊団に託すのも一つの手かもしれん」

 

 議長が重々しくそう語る。その内容にレイ以外の子供達は顔を少し明るくするが……

 

「――しかしじゃ」

 

 そこにその言葉を口にされる。子供達が目を見開くのをよそに議長は真剣な表情を浮かべる。

 

「……所詮海賊は海賊だという事もあるんじゃからな……完全に信用を置く訳にはいかんじゃ」

 

「……まぁ、それはそ「それに」う――!」

 

 その言葉にレイが反感せずに相槌を打とうとするところで言葉を続けられる。

 

「――君達は果たして本当に〝バシレウス〟の者なのか?この老いぼれをハメそうとしているのではないかな?」

 

「「「!?」」」

 

 議長がそう言い張るのに子供達が動揺する。

 

「な、何を」

 

「まず、君達を見た事がない」

 

 そこでその中から反論の声が上げられようとする前に議長が続ける。

 

「次に、ここに私を世話してくれた顔知りがいない」

 

「こういう状況でそう言われると……わしを騙して〝バシレウス〟を手にしようとしていると考えても仕方がないのではないかな?」

 

 そう指摘する議長の目は鋭かった。その視線に子供達も息を飲む。

 

「そ、それは……!!」

 

「え、えーっと……」

 

 そして何とか反論しようとしても口からなかなか出なかった。その指摘に彼らも理にかなっていると考えたからだ。

 ――さすがは〝バシレウス〟を統治してきただけはあってその場は議長に制されていた。そんな雰囲気の中で誰もが口を開けなかった――否

 

「――別にどうでもよいでしょう」

 

「「「!!?」」」

 

 突然レイがそう言い出した。そんな彼、そしてその内容にその場にいる人々が驚愕する。それに構わずに彼は冷静に続ける。

 

「仮にオレ達があなたを騙して〝バシレウス〟を手にしようとする場合だとして、あかたが断っても――どうにもならないのでしょう」

 

「例えば、今行われている「暴獣海賊団」の攻撃が止む事はないのでしょう」

 

「それに攻撃がなくても評議会に任せられない筈」

 

「こんな状況下での選択肢が限られるのでは?」

 

「まぁもっと言うと――あなたを騙す必要なんかないぐらいだ。ただ、今こう議論しているのは〝バシレウス〟を少しは良くしたくてやっているからです」

 

「……これであなたを騙すのには及ばない事を理解できましたか?」

 

 レイが今時点の状況における道理を語った。その内容に議長は目を鋭くし、しかし唸った。その道理は実につじつまが合うように感じた故に唸らざるを得なかった。

 その場の緊張感がさらに高まった。そのまま続く――かと思われた時だった。

 

「……フフッ」

 

「「「!!」」」

 

「ハッハッハッハッ!!」

 

 議長が笑い出した。突然で予想外の事に呆気に取られた人々に議長は穏やかな笑みを向ける。

 

「いや、すまんすまん。少し君達の事を試みたくて厳しい態度をとらせてもらったのじゃ」

 

「「「!!」」」

 

 そして言い放たれたその事実に人々が目を大きく見開く。そんな彼らに議長は穏やかに語り出す。

 

「これでも議長として多くの者と顔を合わせてきたから確かな目を持つようになったのじゃ。この目で君達を見た結果を話そう」

 

「確かに君達とは初めてじゃが……信用を置いてもいい、そう判断したのじゃ」

 

 議長として様々な経験をしてきた彼はレイ達の言動からその判断を下した。それを受けてレイ達も顔を明るくする。

 

「では」

 

「しかしじゃ」

 

 それで声を上げられかけるのをしかし議長が厳しい調子で遮る。

 

「しかし――「暴獣海賊団」とやらのナワバリに関しては別じゃ」

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