ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第168話〝無邪気な叱り〟

「しかし――「暴獣海賊団」とやらのナワバリに関しては別じゃ」

 

「「「!!」」」

 

 議長がキッパリとそう言い切った。その姿勢に人々が目を見開くのに対して彼が真剣に続ける。

 

「その件ではうかつに結論を出す訳にはいかんじゃ――〝バシレウス〟の命運がかかっているからじゃ」

 

「まず、その海賊団の者と話してみなければならん。どういう集団なのか分からんじゃからな」

 

 〝バシレウス〟を統治する者として議長が一歩も引かない姿勢をとる。そんな彼に対して人々は――真剣に頷いた。彼らにもその考え方がもっともだったからだ。

 それに……想定内の事態でもあったからだ。現にレイ達はその事態に対してほとんど動揺せず、そしてある者達に一気に視線を向ける。

 その視線を浴びた者達、特にある2人は頷き、議長の前に出る。その登場に目を細める議長に対してその2人の口が開く。

 

「初めまして――」

 

「私達が「暴獣海賊団」の者です……!」

 

 ――ペインとテゾーロがそう名乗りを上げた。

 

「ほぅ……そなた達が」

 

 そんな彼らに議長は微笑みを浮かべ――しかし目を鋭くする。

 当然だろう。〝バシレウス〟をナワバリにしようとする海賊団の者達が目の前にいるのだ。どのような者達なのか分からないが、少なくとも海賊を前にして見苦しい振る舞いをみせる訳にはいかなかった。

 そう考えた議長はできるだけ居住まいを正しくし――

 

「こんな様で申し訳ない。病弱じゃからな」

 

「ええ、それは理解しておりますとも」

 

「ああ、たからご無理なさらず――そのような状態でも話はできるですし」

 

 今の状態な故に十分な礼節をわきまえられない事を詫びる。それに対してテゾーロとペインな理解を示す。

 その態度に議長は内心感嘆する。

 

「ほぅ……海賊にしては丁寧な振る舞いだと思ったが、なかなかの対応じゃないか」

 

 海賊といえば、横暴な振る舞いをイメージしやすいのでテゾーロとペインの予想外の振る舞いに驚かざるを得なかった。そんな彼に対してテゾーロは朗らかな微笑みを浮かべ、ペインは肩をすくめる。

 それもその筈だろう。まずテゾーロはエンターテイナーで、そして金庫係をも務めている。その仕事の中には金に関しての交渉を行う事もあって、それに伴ってそれなりの振る舞いを心がけているのだ。

 そしてペインは諜報機関「CP9」の者だ。言わずもがな潜入するのに伴いいかなる振る舞いをもする等、お手のものだろう。

 そんな背景から十分悪くはない振る舞いをみせる2人に議長が感嘆するが、同時に警戒感を覚えた。

 

「(うむ、あの振る舞い……十分社交的じゃな。これなら何を企んでようが人々の懐に入り込められるんだろうな)」

 

 2人の姿勢からその事を察した彼はこれからの議論に向けて気を引き締める。

 

「(さて、「暴獣海賊団」……果たしてつながりを持つべきか否か、見極めてもらうぞ)」

 

 「暴獣海賊団」の性質次第じゃ〝バシレウス〟が滅ぼされるのもあり得る事から議長は真剣に熟考して取り組むようにする。

 そんな彼の雰囲気を受けてペインもテゾーロもまた姿勢を正しくする。

 

 そうして――会談が始まった。

 

 まず、ペインが口を開く。

 

「私達、「暴獣海賊団」は確かに凶暴な海賊だ。それは否定しない――現に敵には容赦なく叩きのめしてきたからな」

 

「!」

 

 その事をごまかさずにあっけらかんと口にするペインに議長もさすがに固まった。が、それに構わずに続けられる。

 

「だが――味方とナワバリに対しては悪く取り扱っていない」

 

「……ほぅ?それはなぜかな?味方はとにかく、ナワバリにはそうする理由があるとでも?」

 

 その事に議長は目を細め、疑問を投げかける。味方はとにかく、ナワバリでは思うがままに振る舞ってもおかしくはない筈。

 その疑問にペインは

 

「ある」

 

「!!」

 

 まさかの即答に議長が驚愕するのをよそに続けられる。

 

「――っていうか、扱いが悪いとオレ達「暴獣海賊団」の思うがままに物事が運べなくなる危険性があるからな。それが分からない程にオレ達はバカでもない」

 

「ええ、それで良い関係にしておかないと利益より負担が高くなってしまいますからね!」

 

 彼がそう語り、そしてテゾーロが続いて説明し出す。その内容に議長は片眉を上げる。

 

「――負担とは?」

 

 2人が口にする負担とやらに関しての詳細を知りたい彼はあえてそう問いかけてみた。その意図を理解できるペインとテゾーロが率直に語る。

 

「悪く取り扱うと反乱を招く事になる。それは十分な負担だろう」

 

「仮に反乱を鎮められても金がかかってしまいますからね!そうなるぐらいなら、良い関係を作る方が利益になりますからね!」

 

 その答えから「暴獣海賊団」の考え方を理解できた議長はつい呟く。

 

「……確かに合理的で効率が良い」

 

「だが、まさか海賊がそんな考え方ができるとはのぉ」

 

 その呟きにペインは顔を少し暗くする。

 

「……それはそりゃそうだろう」

 

「!」

 

 重々しく言い出す彼は議長と目を合わせて続ける。

 

「そもそも――「世界政府」による統治より悪党の統治の方がマシなところが存在するメチャクチャな世界だ。こんな世界じゃ善意だけじゃいけないだろうよ……」

 

 そう語るペインの目は暗かった――海の底のように。そんな目に議長も目を細める。

 

「(ああ……彼はあの若さで世界の有り様を身をもってしまったんじゃな……)」

 

 長生きするだけはあって色々な経験をしてきた故に世界の無常を知っている議長はまだ若いのにも関わらずにその事実を知ってしまったペインに同情の念を抱いた。

 何か暗くなってしまったその雰囲気を吹っ飛ばすかのようにテゾーロが言い出す。

 

「まぁ!このような世界で生きなければならない運命を嘆きたい気持ちは分からないでもないんですが!いつまでも嘆き続けるのはしんどいですよ!」

 

「それなら、できる事とやりたい事をやってみればいい!そうすれば、少なくとも気分が紛れるんでしょうし!」

 

 彼はそう語り、朗らかな笑みを浮かべてウィンクする。

 そんな彼からの言葉、姿勢に議長もさすがに目を見開いた。すると彼に続いて声をかける影があった。

 

「――おじいちゃん!」

 

「「!!」」

 

 その呼びかけに人々がハッと視線を向けるとそこには――幼い子供が議長をまっすぐ見つめていた。

 その事に人々が呆気に取られるのをよそに子供は胸を張る。

 

「パパたちはだいじょうぶだよ!だからしんばいしない!めっ!」

 

 子供が実に真面目な態度でそう語り、しまいには議長に向けて指を指して叱った。その可愛らしい姿勢に人々はつい吹きかけた。

 そんな中でテゾーロが慌ててその子供にこえをかける。

 

「の、ノヴァ!?何をやっているの!?」

 

「あ、パパ」

 

 父の呼びかけを受けて子供――ノヴァは顔を明るくする。その姿にテゾーロは一瞬顔をほころばせるが、すぐ真面目な顔つきになる。

 

「ノヴァ、どうして私達の話し合い中に出てきたのかな?」

 

「……だって、おじいちゃんがパパたちをきらっていたみたいだから、いいたくて」

 

 真剣な態度の父からの問いかけに対してノヴァはシュンとし――ボソボソと理由を説明する。

 ノヴァにとって父テゾーロと「暴獣海賊団」は優しくていい者達だという認識だ。だからこそ彼らを疑う議長に不満を感じたノヴァが物言わずにはいられなかったのだ。

 そんな我が子の姿勢にテゾーロはぽかんとし――そして苦笑を浮かべた。

 

「ハハ……そうだったのか、ノヴァ」

 

「うん」

 

 ついそう言われたのに頷いたノヴァの姿が愛しくてテゾーロもその頭をなでる。

 

「わざわざありがとな、ノヴァ――でも、今回は大丈夫だけど危ない奴と話し合う時もあるからね、気を付けようね」

 

「……うん」

 

 もしも危険な者との話し合い中に口をはざむ可能性がある故にテゾーロは我が子にそう釘を刺すようにする。

 父からの戒めにノヴァはシュンとしながらも頷く。そんな様子にテゾーロは苦笑しながらステラに視線を移す。

 

 ――どうしてこの子を止めなかったのかい?

 

 ノヴァを止める事ができただろうにそれをしなかった妻にテゾーロは疑問を抱いた。夫からの視線からその疑問を察したステラは苦笑して――

 

 ――あなたの疑問ももっともわね。

 

 理解を示す。が、直後に微笑む。

 

 ――でもこの子が思う事をそのまま言わせる方が良いと思ったから、あえて止めなかったの。

 

 そんな考えを抱いたステラがテゾーロと目を合わせる。その曇りがない目から感じ取れる意思にテゾーロも片眉を上げる。

 

「…(話の先行きが私達の都合が良い方向に進む事になるんだろうから、ノヴァのおしゃべりを止めなかった?だが、それは一体?)」

 

 その考えにテゾーロが首を傾げるところでその答えを出されるかのように

 

「ふぉふぉ」

 

「「「!」」」

 

 議長が朗らかに笑い出した。突然の事に人々が目を見開くのをよそに議長は穏やかに微笑んで

 

「――まさか、幼い子供にここまで言われるとはのぉ〜」

 

「!申し訳ない!何せ、まだ幼い子供な「いや」んで――!」

 

 ノヴァに説教じみて言われた事を彼がちゃかすかのように話すのにテゾーロが慌てて釈明しようとするが、それを遮られる。

 

「だからこそかな?少しは君達の事を理解できたような気がするのじゃ」

 

 そう語る議長の顔には不快感がなく穏やかだった。そんな表情に人々が少し安堵する。

 そして議長が真剣な表情になり、語り続ける。

 

「――確かに善意よりビジネスで関わる方が逆に信用できるじゃのぉ」

 

「今の状況……いや、今の世界のあり様じゃ――かえってじゃ」

 

「「「…!」」」

 

 語られる内容からある可能性を察した人々はハッとする。それに構わずに議長はペインとテゾーロに顔を向けて

 

「――君達、「暴獣海賊団」のナワバリの統治に関して詳しく聞かせてくれるのかな?もちろん話せる限りでじゃが」

 

 「暴獣海賊団」の事を積極的に知りたくなった彼はそう頼み込む。それを受けてペインとテゾーロも笑みを浮かべる。

 

「ああ、そちらの政治との統合を考えなければならないんでしょうからな」

 

「もちろん!――ナワバリの経済事情についても説明しましょう!」

 

 彼らもその頼みを問題なく受け入れ、「暴獣海賊団」――「百獣海賊団」支配下のナワバリでの統治関連の事を話せる限りで詳しく説明する。

 その説明を議長は漏れなく聞き、そして〝バシレウス〟の政治とあり様を含めて議論をも行われていった。

 そして――

 

「――よし、決めたぞ」

 

 どうやら議論を滞りなく終了させられたらしいその場で議長は堂々しい態度でそう言い放った。それはもちろん〝バシレウス〟の今後に関して彼は結論を出したのだ。

 その姿勢に人々は息を飲む。

 

「――では?」

 

 そんな中でムジカが確認の為にあえてその問いかけを投げかけてみる。それに対して議長は深く頷く。

 

「うむ、私は――」

 

        ●

 

「この私――〝バシレウス〟評議会議長は!!!」

 

「ここ〝バシレウス〟が「暴獣海賊団」の傘下に入る事を宣言する!!!」

 

 ――場面は「暴獣海賊団」と〝バシレウス〟と「ビッグ・マム海賊団」の戦いが繰り広げられる場で議長がその事を大きく宣言するところに戻る。

 その内容にその場が驚愕に包まれる中で議長が凛としながら宣言を続ける。

 

「故に!!!「暴獣海賊団」の海賊への攻撃を直ちに止めよ!!!」

 

「「「!!?」」」

 

 大声でそう言い放たれた事で人々はようやく理解した――本当に〝バシレウス〟が「暴獣海賊団」の軍門に降したという事実を……

 その事実がその場に浸透されていくうちに〝バシレウス〟の者達はしばらく呆然とする――が、やがて愕然とするようになっていった。

 

「ば、バカな……!!我々が海賊に……!?」

 

「ッツ……!!」

 

 今知らされた事実から〝バシレウス〟の敗北、それも海賊に負けたともいえる故に兵士達は並ではない敗北感に襲われた。中には膝をつく者もいた。

 ――だが

 

「――認めんぞ!!」

 

「「「!!」」」

 

 突然響き渡られる怒鳴り声に人々が視線を一気に向ける。そこには――

 〝バシレウス〟の、どうやらそれなりの地位に就いているらしい兵士が身を震わせて、しかも鬼の形相を浮かべていた。

 

「我々が海賊ごときに負けたなんて――認めんぞぉぉぉ!!」

 

「……そなたの不服は理解できる。じゃが、こうする方が〝バシレウス〟の為になると考えて決めたのじゃ。そう――」

 

 そしてそんな彼に対して議長は重々しくも真剣に語り出す。

 

「――他でもなぬこの私が決めたのじゃ。つまり、非は全て私にある。そして君達に非はないのじゃ」 

 

「だが、戦いを続けようとすると事態が収められなくなるのだろう」

 

「それを避ける為に、ここは受け入れて武器を置いてくれるかのぉ」

 

 議長は彼――否、兵士達に向けて真剣に穏やかに説得している。

 ……「暴獣海賊団」支配下に降るのを決めたのは〝バシレウス〟の為なんだが、かといって彼らの不満感はもっともだ。

 何せ、〝バシレウス〟の為に海賊と戦ってきたのにも関わらずに勝手に受け入れがたい方針を決められたんだ。そりゃ腹は立つのだろう。

 その事を深く理解している議長は方針を決めた張本人として兵士達を説得してその不満を鎮めようとする。

 そんな彼に対して兵士達は――

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