ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第169話〝慌ただしい終わり〟

「――そうか、お前は……ニセモノだな!?」

 

「「「!?」」」

 

 ――議長が決めた〝バシレウス〟が「暴獣海賊団」支配下に降るという方針に兵士達の中から不服を唱える者が現れた。

 そんな者達に対して議長は張本人としてその不服を鎮めようと真剣に説得を行った。だが、そんな彼に対して兵士がそう言い出した。

 その内容にその場にいる人々は目を見開く。だが、それに構わずに兵士が続ける。

 

「――そもそも!!病で寝込んでいる議長がここにいらっしゃる訳がない!!」

 

「ああ、そ「薄汚い海賊共が……!!ニセモノを用意して我々を騙そうとするが、そうはいかんぞ!!」れは――……!!」

 

 議長がその場に堂々と立っているという事態への指摘に議長自身がその背景を説明しようとするのを兵士が遮って思いのままに言い張る。

 

「我々、〝バシレウス〟が貴様らを排除し!!ここに誰にも手を出す事ができないのを教えてやる!!!」

 

「「「!!」」」

 

 しまいに兵士がそう宣言し槍を勢いよく掲げる。

 その姿勢、そして宣言に兵士達もハッとする。

 

「――そうだ。オレ達は〝バシレウス〟なんだ……!」

 

「ああ、それを――海賊に負けていい筈がない……!」

 

「…!!」

 

 そして彼らもそう言い始める。熱意が波及して兵士達の士気も復活していった。そんな事態に議長は顔を険しくする。

 

「……危惧した事態になってしまったのぉ」

 

「ああ、そういう事になるな」

 

 彼が重々しくそう呟いたのにペインがごまかさずに肯定し、身構える――否、「暴獣海賊団」の海賊達が抜かりなく身構えた。

 ……実は議長の説得が通じない場合をも想定している故に動揺もしなかったのだ。

 そんな海賊達と戦いを続けようとする兵士達の間には一触即発な空気が漂っていた。

 

「――行くぞぉ!!」

 

「「「オオ〜〜ッ!!」」」

 

「やれやれ……!!」

 

 そして兵士達が海賊達に向けて攻めかかろうとするところで――突然会議室の壁が新たに粉砕された。

 

「「「!?」」」

 

 突然の事にその場にいる人々が敵味方関係なく視線を向けざるを得なかった。その中から誰かが叫ぶ。

 

「――今度は何だぁ!?」

 

「オオオオオ!!」

 

「「「!?」」」

 

 叫ばずにはいられなかったであろうその疑問に答えるかのように咆哮がその場に響かれた。その声に目を見開く人々の前に粉砕された壁から現れたのは――

 

「「「ええ〜〜っ!?か、怪物!?」」」

 

 恐ろしげな外見をする怪鳥だった。だが、その姿を目にする者が言う。

 

「!!と、トゥプクスアラ……!!」

 

 そう、それは怪鳥ではなく翼竜である。そして

 

「ハッテンか!!」

 

「やぁ」

 

 「暴獣海賊団」の海賊達がそう呼びかけるのに対してトゥプクスアラが和やかに応えた。そう、それはハッテンが〝悪魔の実〟の能力で変身した姿であった。さらに――

 

「「――レイ!皆!」」

 

「!エマ!!――ノーマン!無事だったか!!」

 

「チカちゃんも……!良かった……!」

 

 彼の背からエマとノーマン、子供達もその顔をみせる。その無事な姿にレイ率いる子供達も驚愕し、安堵した。もちろんそれだけに留まらず――

 

「……確かに、見たところ結構面倒な状況になったわね……!」

 

 同じくハッテンの背に乗っていたブラックマリアとハクジとキサメも今の会議室の状況――「暴獣海賊団」と〝バシレウス〟の戦いに「ビッグ・マム海賊団」も混じっている事態を目にする事で顔を険しくし、降りながら臨戦態勢を取る。

 

「!マリア……!やったのね……!」

 

「おう、ハクジとキサメもよくやったじゃねぇか」

 

「ハッテン……フッ」

 

 それだけに姿に「暴獣海賊団」の海賊達、小紫とフドウ、スサノオ――オレも笑みを浮かべた。

 ――そう、「暴獣海賊団」が〝バシレウス〟に殴り込みをかけた目的の一つである〝ノーマンとチカ救出〟を見事果たしたエマとブラックマリア達だが、「暴獣海賊団」と〝バシレウス〟の戦いが「ビッグ・マム海賊団」の参戦によって混迷を極めたのを受けてじっといてられない為に地下から飛んでまで戦場に向かっていったのだ。

 そして……ハッテン達の登場がその場に少し影響を及ぼした。

 

「ま、まさか!?あの怪物も海賊なのか!?」

 

「こ、これはまずいんじゃないか……!?」

 

「くっ……!?」

 

 さっきは戦いを続けようとやる気満々だった兵士達も新手、それも強力な〝悪魔の実〟の能力者の登場により士気を大分落としていった。

 そんな彼らに向けて新たに加わったハッテン達も戦意を向ける。

 

「――君達、やる気なんだ?なら、相手になってあげるよ」

 

「あら、そのつもりなら踊ってあげましょうか……」

 

「……!!な、ナメんじゃない!!」

 

 臨戦態勢を取りながらそう口にするハッテンとブラックマリア達の姿勢に兵士達は物怖じしながらも何とか自身を奮い立たせてみせる――ところに突然凄まじき圧がその場に響き渡らされた。

 

「「「!!!」」」

 

 その圧によりほとんどの人々が泡を吹きながら倒れ、辛うじて倒れなかった者達もその凄まじきに戦慄した。〝それ〟を知る「暴獣海賊団」の海賊達もさすがに冷や汗を流さざるを得なかった。

 それ程の〝圧〟を放ったのは――

 

「――そろそろ、ここで見納めにしようじゃねぇか……!!お前ら」

 

 そう、オレが〝覇王色〟を放ってその場を取り仕切ろうとしていた。

 ……実は物事を進める為にオレはそれなりの地位に就く兵士の意識を奪わないように手加減はしてある。

 それでもかなりの凄まじきにまだ意識を失っていない者達も絶望感に包まれざるを得なかった――それこそ、気絶した方が幸せだといえる程に。

 その時点でもはや心が完全に折れたといえよう。

 そんな者達に向けてオレは重々しく言う。

 

「……この場に及んでも戦おうとするその意気良しだ……!!」

 

「そのつもりならば、このオレが直で叩き潰す。さぁ、どうする……!?」

 

 オレは〝覇王色〟をさらに濃くしながらハッキリと言い放つ。

 その宣言を受けた兵士達は――

 

「……いや」

 

「……降参します……」

 

「「「…」」」

 

 さっきまであれだけ踏ん張っていた兵士は今すっかり意気消沈していて、敗北を認めた。他の者達もその宣言に異議はなかった――

 

――こうして〝バシレウス〟は「暴獣海賊団」に敗北した……

 

        ●

 

 兵士達が敗北を認めたのを見届けたオレは笑みを浮かべる。

 

「――これで〝バシレウス〟を制圧したか?」

 

「ええ、そうですね」

 

「そうか!」

 

 そしてオレがその事に関してそう口にしてみると小紫も否定せずに相槌を打つ。それを受け取った事で今の状況を認識できたオレは満足する。

 そのまま一息つくところなんだが……

 

「……おい」

 

 だが、そこに待ったをかけられた。

 響かれたドスの利いた声にオレが顔を向けると――

 

「まさか、オレ達の事を忘れた訳じゃねぇよな……!?」

 

「そうだよ!!私達を忘れるなんて許さないよ!!」

 

 カタクリとブリュレ、「ビッグ・マム海賊団」がオレを睨みつけていた。

 そう、〝バシレウス〟が屈してもまだ彼らがいる。にも関わらずに何やら終わったような雰囲気を漂わせるオレ達に怒りを覚えた。

 そんな彼らに向けてオレは苦笑を浮かべる。

 

「……いやぁ、お前らを忘れたつもりはねぇが……不快にさせちまったのなら、謝るよ……!」

 

「……今の状況を確認するだけのに――随分余裕がないんですね」

 

 オレが率直にそう言う一方で小紫が冷静にそうツッコんだ。どうやらその態度がナメたように感じたのかカタクリは眉をひそめ――

 

「――なら、その余裕をなくさせてやる……!」

 

 カタクリはそう言い放ち、オレのにも負けない程に凄まじき〝覇王色〟を放つ。それに伴ってブリュレも態勢を整える。

 

「ウィッウィッ!――お前達!やるよ!」

 

「「「はっ!!」」」

 

 そして彼女は生き残った〝チェス戎兵〟にそう檄を飛ばし、彼らもそれに従って臨戦態勢を取る。

 そんな姿勢を受けてオレも笑みを浮かべる。

 

「……リュドドド、やんのか……!いいぜ、やろうぜ!!」

 

「はん!返り討ちにしてやるよ!!」

 

「「「オオッ!!」」」

 

 オレがそう言い放つのに伴いヤマト達もまた臨戦態勢を取る。

 そのまま、「暴獣海賊団」と「ビッグ・マム海賊団」の戦いが始まる――かと思われた。

 

「――待たれよ!!」

 

「「「!!」」」

 

 だが、そこに声が響かれた。

 その源にその場にいる人々が視線を向けるとそこにはイヌアラシが立っていた。そしてその隣には

 

「!!まさか、そいつは――!!」

 

 カタクリが驚愕する――否、彼だけではない。「ビッグ・マム海賊団」が驚愕する。

 何せ、それは大きくて貫禄がある風貌の鳥……「ビッグ・マム海賊団」が探し求めた〝ネロコルヴィーノ〟であった。

 それが今目の前にいる。驚きに固まったカタクリ達をよそにその鳥を連れてきたイヌアラシがオレ達に視線を向ける――否、小紫を見て頷いた。

 それに頷き返した彼女はすぐオレに話しかける。

 

「これは私の判断です。物事を進める為に」

 

「!」

 

 ――実は「ビッグ・マム海賊団」が現れた事態、その背景を知った小紫はイヌアラシに彼らの目当てであるネロコルヴィーノを手にするように命じた。「ビッグ・マム海賊団」を追い払う為に……

 そもそも、「暴獣海賊団」が〝バシレウス〟に殴り込みをかけた目的の一つがここをナワバリにする事である。その邪魔になるものを避けなければならなかった。

 

「――申し訳ありません。あなたがカタクリとの戦いを楽しんでいるのは理解していますが……」

 

「…!!」

 

 小紫が説明したネロコルヴィーノを手にするように指示を出した理由にオレは目を見開く。

 そんなオレを前に彼女は独断、そしてカタクリとの戦いを邪魔してしまった叱りを受けるのを覚悟で頭を下げる――が

 

「……いや、よくやってくれた」

 

「!」

 

 そんな彼女にオレは労いをかけた。驚いて頭を上げる小紫にオレは微笑む。

 

「……願ってもない戦いだったからな、つい興奮しちまったが――」

 

「そうだな、そもそもここをナワバリにする為にやってきたんだ」

 

 そう――カタクリとの戦いという自身にとって絶好の機会に遭遇した故に冷静さを失い、本来の目的を忘れてしまった。そんな状態を小紫が修正してくれた。だから彼女には感謝している。

 

「危うく忘れかけたところだった――助かったぜ」

 

 それを込めてオレは小紫に向けて笑みを浮かべた。その朗らかな笑みを受けて彼女も頬を赤らめる。

 

「〜〜お褒めに預かり光栄です//」

 

「おう!」

 

 そんな小紫の可愛らしい姿につい笑みを抑えられなくなったオレだが、すぐ真剣な表情になり

 

「――カタクリ、お前ら目当てのネロコルヴィーノは見ての通りにここにいる」

 

「お前らが撤退するならば、これをくれてもいい」

 

「ああ、撤退するお前らに手を出すつもりはねぇ。それはあまりにもつまらねぇからな……!」

 

「「「!!」」」

 

 カタクリ達に向けてその提案を出す。その内容に彼らは衝撃を受け、そして考え迷ってしまう。

 

「お、お兄ちゃん。どうするの!?」

 

「…」

 

 ブリュレもさすがに判断がつけられず、兄に確認を取らざるを得なかった。妹からすがられるカタクリも渋い顔をする――が

 

「…(だが、そもそもママが興味を惹かれるネロコルヴィーノを求めてここまでやってきた。すなわち、戦いを続ける暇はない)」

 

「(これ以上遅れを取る訳にはいかねぇ……それにわざわざネロコルヴィーノを渡してくれるんだ。今程にいい条件はねぇ筈……なら、ここは)」

 

「……いいだろう。ここは引いてやる」

 

「「「!」」」

 

 事情、今身を置かれる状況もあって彼はその提案を飲む事にした。その結論に目を見開く人々、特にブリュレ達に向けてカタクリが言う。

 

「しょうがないだろう。これ以上ママを待たせてはいけねぇからな……!」

 

「「「!!……はい!!」」」

 

 言い放たれた理由にブリュレ達もハッとする。

 ――確かにママ、〝ビッグ・マム〟を待たせてはマズイ!!

 その事に異議はなかった彼女達は素早く撤退準備に取り掛かった。もちろん、イヌアラシから確かに譲られたネロコルヴィーノを連れ出して。

 そのように賑やかになっていく中でカタクリはオレを凝視する。その視線に気付くオレも視線を向ける。そうしてオレ達はしばらく見つめ合う。

 

「「…」」

 

 その間に2人共考えを巡らせる。

 カタクリは過去に出会った時に感じた通りにオレが強くなった事を感慨深く感じていた。

 ――そして

 ニヤリと彼は笑みを浮かべる。

 

「――良い仲間に恵まれたじゃねぇか……!」

 

「!……リュドドド!!そうだ!!最高の仲間だ!!」

 

 カタクリはオレ達――「暴獣海賊団」に対して賞賛を送った。それを受けてオレは目を見開き、そして笑みを浮かべた。

 

 ――そうだ!!それこそがオレ達「暴獣海賊団」だ!!

 

 自身の海賊団を誇るオレの姿勢を受けてカタクリも笑みを深くする。そして後ろを向く。

 

「……今回は中断しちまったが、次こそは決着をつけてやるよ……!」

 

「リュドドド!望むところだ!!」

 

 互いに再戦を誓い合ったオレ達はニヤリとし――一旦別れる。

 

 

――そうして「暴獣海賊団」と「ビッグ・マム海賊団」の戦いは終結した

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