ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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☆憩いのひと時を過ごす「暴獣海賊団」ー


第172話〝今を生きる〟

「バシレウス」での抗争から数日――

 

 「暴獣海賊団」は今「百獣海賊団」のナワバリのある島を訪れていた。

 そこで「暴獣海賊団」の海賊達が散らばってそれぞれ思いのままに過ごした。そんな中で船長スサノオ――オレはあるオープンカフェで一息入れていた。

 

「……リュドドド、ここは活気があるな」

 

 オレはその席から眺める街の風情に対してそう評した。その通りにその街、というより島では人々が悠々自適に暮らしていた。

 それもその筈だろう。その島は「百獣海賊団」のナワバリとして確立された事で安全は守られ、そして秩序に関しては「百獣海賊団」の合理的な統治によって円滑に機能できている。

 だからこそその島は平和だった。その事実を証明する光景にオレも笑みを浮かべる。

 

「やっぱ、力ずくで支配するより合理的に統制する方が利益になれるんだよな」

 

 自分の考えが実を結んだともいえる事実にオレは充実感を覚えた。そこに声をかけられる。

 

「ええ、力ずくで支配すると反感を買って面倒な事になりかねないのでむしろ良いと思います」

 

 オレの隣の席に座している小紫が微笑みを浮かべながらオレの考えに賛同する。そんな彼女にオレも笑みを深める。

 そう、オレと小紫はそのカフェで一服して会話を楽しんでいたのだ。最初こそ他愛ない話題でオレは笑い、小紫も微笑んだ。

 ……ただ、彼女はふと何やら難しい顔をする事も度々あった。

 

 ――やがて

 

「……スサノオさん」

 

「ん?」

 

 小紫がオレを呼びかける。それに応えてオレが意識を向けると居住まいを正した小紫がオレをまっすぐ見つめる。

 

「少々真面目な話をしたいんですが、よろしいんでしょうか?」

 

「――おう!構わねェよ!」

 

「ありがとうございます」

 

 小紫が真剣な面持ちでそう言い放ってきたのを受けてオレは笑みを浮かべながら態勢を整える。

 ……実は最近小紫が何かを考え悩んでいるのにオレは気付いた。ただ問い詰める必要がある程に深刻でもなさそうだったのでしばらく様子見していた。

 そして今、ついに彼女から声をかけられた。小紫にあてにされてるんだという事を喜ばしく思うと同時に彼女が一体何を考え悩んでるのかとも思っているオレは真剣に耳を傾げる。

 

「それで何だ?」

 

「ええ、それは――」

 

 オレに問いを投げかけられた事で意を決した小紫が重々しく口を開く。

 

「私が目指す新たな国の事なんです」

 

「!」

 

 その回答につい片眉を上げたオレに向けて小紫は続ける。

 

「事は「バシレウス」での戦いが終わった後でした」

 

 

「バシレウス」での抗争が終わってしばらくして――

 

「――失礼します」

 

「ん?」

 

 それは事態が収束したのを受けてバシレウス評議会議長が部屋に戻り、そこでゆっくり落ち着く時の事であった。そんな彼の元に小紫――私が姿を現したのは。

 突然の私の登場に議長は目を細めながらも臆せず微笑みを浮かべる。衰弱してなお貫禄を漂わせる彼に対して私は深々と頭を下げる。

 

「初めまして、私は「暴獣海賊団」の海賊〝狂獣の小紫〟と申します。あなたにお聞きしたい事がある故に参上いたしましたが、今少しお時間よろしいでしょうか?」

 

「おお、それはご丁寧に挨拶を頂き恐縮じゃ……この老いぼれに聞きたい事とは?」

 

 私の挨拶に議長は挨拶を返し、そして話を聞く姿勢を取ってくれた。そんな彼に私はもう一度頭を下げてから口を開く。

 

「……ある国の話なんですが」

 

 私は議長に向けて〝ある国〟――「ワノ国」に関して語り出す。

 

 「ワノ国」は腐敗している。

 何せ、黒炭オロチとカイドウ率いる「百獣海賊団」に蹂躙されようとする国を救うために戦った筈の光月おでん達をその国の民達は事もあろうに――罵倒したのだから。

 それだけに留まらず人を差別・迫害し、その挙句に死に至らしめた。

 それこそがその国の民達――悍ましく醜い者達だ。そんな者達の国こそが「ワノ国」だ。

 

 その「ワノ国」に全てを奪われ、親友達を殺された私は自身の故郷でもあるその国を何の未練もなく見限った。そして「ワノ国」を滅ぼして新たに作り変えるという企みを抱くようになった。

 その考えを変えるつもりは別にないが……たまに思うのだ。なぜ、豪快な侍おでんの故郷である「ワノ国」の民がそんな風になり果てたのか?そして、人と国とは一体何だろうか?

 時々そう考えずにはいられなくなった私は新たな国を作るために色々勉強するついでに検証もしてみたが、それでもその答えを得られないまま時が過ぎた。

 

 だがそこに今回の件が生じ、そして議長と邂逅した。彼の姿勢を目にした私は長らく「バシレウス」を統治してきたその風格から予感を感じた。

 

 ――あの方ならば、私が求める答えを与えてくれるかもしれない。

 

 そう考えた私は議長の元を訪れ、そこで彼に問いかけてみようとしたのだ。

 そうして私は「ワノ国」の事と新たな国を作りたいという事をある程度ごまかしながら議長に向けて語った。その内容に最初こそ驚愕した彼も真剣な表情になり、興味津々で耳を傾げるようになった。

 

「――以上でございます」

 

 そして大体語り終えた私は続いて長らく考えていた事を口にする。

 

「なぜその国がそんな風になってしまったのか、そしてその国と同じようにしないには何をやらねばならないのか……」

 

「賢明であるとお見受けするあなたならご知見を拝借できるかと考えた故なんですが……いかがでしたか?」

 

「……うむ」

 

 私は内に秘める熱意を込めてそう申し上げる。

 そんな私の姿勢を受けてか議長は険しい表情を浮かべて唸る。私はそんな彼からの返答を待つためにただ待ち構える。

 

 

「(想像以上じゃった)」

 

 返答を待つべく端然と座する小紫を前に議長は心からそう思った。

 無理もないかもしれない。まさか、ただの一海賊が国のあり方に関しての事を真剣に考えていてその答えを求めるためにわざわざ自身の元を訪れてきたのだから。

 その事実に議長も戸惑わざるを得なかったが……

 

「(……じゃが)」

 

 同時に納得していた。何せ――

 

「(海賊にしてはどこなく品格があると思ったが……もしかしたら、そういう事かもしれんのォ)」

 

 一海賊である筈の目前の女性の振る舞いから品格を議長は感じ取っていたのだ。その事が引っかかった議長は小紫の語りを聞く事である可能性を考えついた。

 

 ――彼女は高い身分だった者かもしれない。

 

 そう考えると腑に落ちる。小紫が他人事のように語るその国もおそらく彼女の本国あたりだろう。

 だが、だとしたらそのような者がなぜ海賊、それも四皇配下になったのか……

 

「(いや、それ以上は触れない方が良かろう)」

 

 そこまで考えた議長だが、そこで踏み止まる事にした。他人の事情にいたずらに首を突っ込むものではないからだ。

 目前の彼女の事情に関しては様々な意味で荒れている世界だ。そういうのは悲しい事に珍しくはない。

 それ故に議長はその件はここまでにして小紫が語る国の事に意識を向ける事にした。

 

「(しかし、そのような国が存在するとはのォ)」

 

 ただその国、「ワノ国」の負の面に議長も嫌悪感を抱いた。まァ悪人の血筋だけで何もやっていない筈の子供を殺す程の民度だ。その感情も当然であろう。

 

「(そして彼女はその国を変えたい……いや、滅ぼしたいんじゃな)」

 

 議長は目前の女性を真剣に見つめる。危ういものをはらむ目をする小紫を……

 

「(彼女の内に危ういものを秘めておるな……幸いというか理性を完全に失っていないようじゃが)」

 

 小紫の内に潜む〝それ〟を感じ取れた議長はだからこそ自身に知見を仰ぐ彼女を力の限り導いてみようと決意する。

 

「……そなたが語った国じゃが」

 

 さっそく議長は「ワノ国」、その民性がなぜそうなったのかその要因を小紫に説明しようとする。

 

「聞いた話になるが」

 

 そして議長は語る。

 「ワノ国」が取った鎖国政策の欠点の要因ともいえる話を……

 

人々は生きるために一所に留まり、そして身を守るために外とのつながりを断ち続けるようにする傾向が少なからず存在する。

確かにそうすると少なくとも安全は守られるんだろう。だが、外に長らく触れずにいると新しいものを生み出しにくくなり、また考えも常識も一所で完結し停滞する事になる。

そんな環境で生きる人は思い込みが激しくなり、狭量になっていく。

そのような事例が多く挙げられる故に確実性は高いだろう。

 

「――故にじゃ。人は一所に留まらず少しでも外に触れるべきじゃ。それが視野を広げるのじゃから」

 

「……なるほど」

 

 議長が語るその話に小紫――私は深く頷いた。

 

 ――それならば、外を知らない「ワノ国」の者が腐りやすくなるのも道理だ。

 

 その事実に合点がいった私はその途端に眉をひそめる。

 

 ――しかし、そもそも鎖国政策は「ワノ国」そのものを守るためのものだという。

 

 ――その結果が今の「ワノ国」とは……皮肉だな。

 

 「ワノ国」を守る筈の政策が無残な結果に終わったというある意味滑稽な事実に私は呆れ果てる。そんな私を議長が静かに見つめる。

 

「――小紫殿」

 

「!」

 

 突然議長から声をかけられた私は軽く驚きながらも意識を向けると彼が真剣な面持ちで私を見ていた。

 

「……そなたはその国を滅ぼして新しい国を作りたいようだが」

 

「それならば、ぜひとも覚えてほしい事があるのじゃ」

 

「!――それは?」

 

 議長が真剣な様子でそう言い張るのを受けて私はさっきよりさらに真剣な姿勢で耳を傾げる。そんな私に向けて議長は重々しく口を開く。

 

「誰もが心に光と闇が存在する。それが人間じゃ」

 

「その人間が集まる国にも光と闇が存在するのもまた理じゃ」

 

「そなたはその闇を毛嫌いするあまりに何としてでも消したがるようじゃが……人間の心から闇が決して消えんよ」

 

「この世に「絶対」と「完璧」は存在しない。そなたが作る新たな国も時が過ぎれば腐敗するかもしれん。誰も何もがその理から逃れんよ」

 

「大事なのは人々が怠惰にならず、何かに容易に踊らされずに考えて考え抜く事じゃ」

 

「自らの手で新たな未来を作り上げて守るのじゃ……ご理解して頂けたかな?小紫殿」

 

「……!!」

 

 議長が語る人と国のあり方と真理、そして心構えに私は……言葉が出なかった。しばらく固まった私だが、辛うじて小さく頷いた。

 

「え、ええ……完全に理解できた訳でもないんですが、考えさせられる内容でした」

 

「おお、それは上々じゃ」

 

 私がどうにかそう答えたのに議長は微笑みを浮かべ、そして続ける。

 

「見たところあなたはその理を理解していないようで理解しているようでふわふわな域に立っているようじゃ」

 

「今は理解できなくても、いずれ活かせてくれば幸いじゃ」

 

 議長は私にまるで教え子に向けるような微笑みを浮かべて激励の言葉を送った。そんな彼の姿勢に私は目を大きく見開くものの

 

「……ご教示いただき感謝します」

 

 深々と頭を下げて海賊である私の問いに真摯に取り組んでくれた事に対する感謝を議長に伝えた……

 

 

「――という訳なんです」

 

「……なるほどなァ〜」

 

 小紫が語る議長との議論の事を聞いたスサノオ――オレは得心した。

 まさか、小紫が議長とそんな議論をしていたとはな。それにしても……

 

「やはり、議長はなかなか面白ェ奴のようだな……!」

 

「ええ、彼の言葉は実に考えさせられます」

 

 オレは議長に対して率直にその評価を下す。それに小紫も賛同する。

 議長とは「バシレウス」が「百獣海賊団」のナワバリになる件で少し会話した事があったが、小紫の話から改めて彼の思慮深さを認識したオレはついニヤリとする――が

 

「……それで?一体お前は何を考え悩んでるというんだ?」

 

「……ええ」

 

 それはそうとして小紫の事に意識を戻すオレは改めてそう言ってみる。その途端に小紫は険しい表情を浮かべ、重々しく口を開く。

 

「……私は新たな国を作ろうと考えてきました」

 

「それはただの国ではなく、誰にも手を出させずに永遠に続く国を作るつもりだったんです」

 

「――なのに、それがいずれ腐敗して滅ぶかもしれないんだと……!!」

 

「それならば、私のやろうとする事が全て無駄になるのではと考えて仕方がないんです……!!」

 

「!……なるほどな」

 

 小紫が苦悶の表情を浮かべながら語る内容にオレは今の彼女が抱く悩みの核をようやく理解し、納得できた。

 国を作るまではいい。だが、小紫は純粋にその国が永遠に続いていくんだと信じていたんだろう。

 そこに滅びの可能性を突きつけられた彼女は自分の考えを実行する意義が分からなくなり、苦悶してしまったんだろう。そんな小紫の姿にオレは眉をひそめる。

 

「……かつて親父から言われたんだが」

 

「!」

 

 やがて語り出すオレに小紫が視線を向ける。そんな彼女をオレは真剣な目でまっすぐ見つめる。

 

「ある男の受け売りらしいんだが、そいつがこう言ったそうだ。「永遠に続く権力などこの世にゃねェんだ」だとよ」

 

「それを聞いてオレは一理あるかもと思ったな。実際の話、今までにどれだけ多くの国が滅んでいった事か……約800年も続いてきた「ワノ国」だって今はああいう様だしな」

 

「……!!」

 

 オレが述べるその意見に小紫は動揺し、そして俯いてしまった。このオレにも無駄だったと断じられてしまったと思ったんだろう。打ちのめされる小紫に対してオレは……しかしニヤリとしていた。

 

「だがな、それがどうした?」

 

「……!?」

 

 オレが続いて言い放つその言葉に小紫は驚愕に顔を跳ね上げる。突然訳が分からない言葉を言い放たれた故に混乱が収まらない小紫にオレは構わずに続ける。

 

「オレ達が作る国の未来は未来を生きる者達が決める事だ!!!」

 

「今を生きるオレ達は今できる、やりたい事をやればいいだけだ!!!そうだろ!!?」

 

 ――そうだ。オレ達が生きていない未来をどれだけ考えてもしょうがねェだろ。

 

 ――ならば、オレ達が生きる〝今〟を生き抜いていこうぜ!!!

 

 オレが言い放ってやったその見解に小紫はハッとし目を大きく見開く。その様子を目視したオレは試しに言ってみる。

 

「それとも、お前は「ワノ国」を滅ぼして新たな国を作るのをやめるのか?」

 

「!!!――いいえやめません!!!「ワノ国」を滅ぼして新たな国を……あなたの国を作ってみせましょう!!!」

 

「じゃあオレ達のやる事に変わりはねェな!!」

 

 その言葉に小紫は一瞬固まったものの素早く迫真の表情を浮かべ、毅然と宣言する。その姿勢にオレもそう言い放ち、不敵に笑う。それにつれて小紫もようやく笑みを浮かべた。

 

「……うふふっ、やっぱりあなたには敵えませんね。スサノオさん……!」

 

「リュドドド!!ようやく笑ってくれたな!!やはりお前は笑顔が一番だ!!」

 

 悩みが解決できた事で心から笑うようになれた小紫の姿にオレも満足感を得る。そうしてオレ達は明るい雰囲気を漂わせながら笑い合う。すると

 

「――スサノオさん」

 

「「!」」

 

 突然声をかけられた。オレ達は軽く驚きながら視線を向けるとそこには――ハンコックが立っていた。その姿にオレは驚くものの笑みを浮かべる。

 

「おッ!ハンコック!お前も来てたのか!!この席にー…!?」

 

 ハンコックをも会話に招こうとするオレだが、気付く。彼女は迫真の表情を浮かべていて、その雰囲気もただ事ではなかった。それを察したオレはすぐ真剣な表情になる。

 

「……どうした?」

 

 改めてオレが居住まいを正して問いかけるとハンコックは目を閉じて大きく息を吸い大きく息を吐き始める。

 普段は堂々とする彼女の緊張する姿にオレは眉をひそめ、再び声をかけようとするところでハンコックは意を決した面持ちになる。

 

「――あなたに話があるのじゃ!!」

 

「!!」

 

 ハンコックがオレに向けてはっきりそう言い放った。その言葉と雰囲気からやはり重大な話なんだろうと察したオレは応えようと考える。

 だが小紫の反応が気がかりになったオレは彼女に視線を向けると……

 

「……?」

 

 肝心の小紫は真剣ながらどこか何かを待っていたような顔つきをしていた。その様子にオレが驚くうちに小紫が立ち上がる。

 

「……私は席を外しますね」

 

「!?小紫!?」

 

 なんと、小紫は席を離れる――否、オレとハンコックを二人きりにしようとする。いつもハンコックといがみ合ってきた筈の小紫が取る行動に戸惑うオレの手をハンコックが掴む。

 

「――あそこに行こうぞ」

 

 

 ――そこは砂浜。今夕陽に染まっている事で神秘性に溢れていた。

 そのような場をオレとハンコックが並んで歩を進めていた。

 

「「……」」

 

 一見するとデートのようだが、それにしてはオレ達の雰囲気は張り詰めていた。

 

「……(一体どうしたんだ?ハンコックも小紫も……)」

 

 さっきの彼女達の姿勢にオレはその意図が今も分からず首を傾げざるを得なかった。それでもオレはその意図を掴もうと考えるところに突然ハンコックが口を開く。

 

「――スサノオさん」

 

「!」

 

 重々しくも呼びかけられたのにオレが視線を向けるとハンコックは遠い目をしていた。

 

「思えば、あなたと妾が出会ったのはあの忌々しき地での事件の時じゃったな」

 

「……おう、そうだな」

 

 本人にとっては思い出したくない筈の事をあえて口にするハンコックにオレはその真剣さを察し、気を引き締める事にした。それをよそにハンコックが続ける。

 

「あの時救って頂いてから妾はあなたに恋い焦がれ、そばに立ちたいと思うようになったのじゃ」

 

「小紫の存在を知った事でますます情熱を燃やし、あなたへのアプローチを強めたものじゃ」

 

「リュドドド、そうだな。お前の熱いアプローチには参ったもんだ」

 

 ハンコックが懐かしそうにその事を挙げるのを受けてオレも思い起こす。ハンコックがオレにアタックした事を。小紫への愛をようやく自覚できたオレに対してそれでも諦めずにアタックを続けてくれたハンコックの姿勢を……

 

「……それ程にお前はこのオレの事を愛してくれていたんだよな」

 

「……」

 

 そこまでする程の情熱を持つハンコックにオレは改めて感謝を覚えた。

 

 ――お前のような女がオレを愛してくれるなんて幸甚の至りだ。

 

 ――だが……

 

 そこでオレは浮かない表情を浮かべた。

 それでもオレが心から愛してると思えるのは小紫だけなんだ。ハンコックの事は別に情がない訳でもないが、どれだけ努めようとしても……彼女の事は仲間としか思えないんだ。

 それ故にハンコックの想いには応えてやれない事を悔しく思うオレはそれでも彼女にその事実を突きつけねばならない。

 そう腹をくくったオレは彼女に向けて口を開こうとする。

 

「だがすまん、ハンコック。オレは「スサノオさん」ー…!?」

 

 だがオレが言いかけるのを遮られ、そしてハンコックはオレと正面から向き合った。彼女と視線を交わしたオレは見た。

 

 ――ハンコックの強き覚悟を宿した目を。

 

「妾は――」

 

「あなたの事を愛しております!!!」




☆1人の女としての全身全霊を捧げた告白!!
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