「王下七武海」ドフラミンゴが支配する国「ドレスローザ」。
そんな島の北に小さな島が存在していた。その名は「グリーンビット」といって自然に恵まれる島だ。
その島とドレスローザ本島の間には橋が結ばれているが、ただその周辺海域には「闘魚」という獰猛な魚が生息している。その力は実に凶暴で鉄で組み上げられた筈の橋も当てにならなかった。
その事実から200年前から誰もが本島から橋を渡ってまで「グリーンビット」に向かおうとはしないようになり、橋も朽ち果てざるを得なくなった。
そんな橋――をオレ達は渡っていた。ある目的をもって「グリーンビット」に向かうために。
「わ〜…本当にボロボロだね。この橋は」
「ああ、まァ200年も修繕されなきゃそりゃこうなるんだろうよ」
歩きながら橋を眺めるヤマトはその状態に対して率直にそう言うが、その事にオレも賛同する。それ程に橋は傷みきっていた上にあちこちが破損していたのだ。
それもそうだろう。「闘魚」の襲撃によるのはもちろんだが、その影響で橋が使われないようになって修繕の必要性もなくなり、その結果として橋が老朽化せざるを得なくなったのだから。
そんな状態の橋をオレ達はまるで散歩するかのように気楽に歩を進めていた。
「あはは!すごい!鉄の柵がすごく曲がっているよ!」
「確かに頼りの鉄の柵がこれじゃ、ここを渡ろうとは考えなくなるな」
そんな中でヤマトがある光景――大きく湾曲された鉄の柵を面白そうに眺め、フドウもその光景から橋が使われなくなった理由に改めて納得する。そして小紫が続ける。
「このような鉄の柵さえをも圧せる程の力を持つ魚、「闘魚」……興味をそそられますね」
「リュドドド!!確かにな!!ますますその姿を見てみたくなってきたぜ」
小紫は目にするその光景からそうさせる程の力を持つ「闘魚」に興味を持つようになり、それにつれてオレも元々持っていた興味がさらに高まった。
話に聞いてみれば「闘魚」の生態は面白いと思ったのにその光景を目にしたら気分が高揚せずにはいられなかった。
オレがそう感じた時だった。ジャックと河松が口を開いたのは。
「スサノオさん」
「――皆、気付いていますか?」
その2人が真剣な表情で重々しく言い出す。そんな姿勢に皆が眉をひそめる中でオレはニヤリとする。
「おッ、やはりお前らは
「「ええ」」
オレがそう言うのを2人は肯定する。何せ、2人とも魚人だ。だからこそオレが感じ取れたその気配を2人もすぐ感知できたのだろう。それを証明するように2人は言う。
「「来ます」」
ジャックと河松がそう言い放った途端に橋の外側の海から何かが勢いよく現れてきた。
「「「!!」」」
突然の事に皆が目を見開くが、そんな中でオレは獰猛な笑みを浮かべる。
「リュドドド!!これが――」
笑うオレの目に映るのは牛のような鋭い角と牙を持つ魚だった。
「「闘魚」か!!」
オレがそう言った瞬間に「闘魚」が吠えながらオレ達の元に向かって獰猛な勢いで突っ進んできた。闘魚は本能のままにオレ達を粉砕しようとする。
たが、その突進は鉄の柵に阻まれた。
「フゴゴ!!フゴゴ!!」
「わわッ!!」
「おお……」
ただ闘魚の力がやはり尋常ではなかったらしくオレ達の元にまで進められなかったものの鉄の柵を大きく湾曲させた。そんな事態にヤマトが思わず声を上げ、他の者達も声を漏らした。
そしてオレは笑みを深めた。
「おーおー!!随分と元気そうじゃねェか!!こういう面白ェ魚が存在していたとはなァ!!」
オレは他の魚とはまた違うような闘魚の姿形と獰猛な力にたまげる。
そんなオレの反応をよそに闘魚はこれ以上進められないのが分かったのか海にあっさり戻り、泳ぎ回る。
そしてその個体以外にも多くの闘魚が次々と姿を現してオレ達がいる辺りの海域を泳ぎ回るようになる。そんな光景にオレはニヤリとする。
「リュドドド、「闘魚」の力を直で確かめるか」
オレは「闘魚」の力を見定めるために闘魚の群れに対して態勢を取ろうとする。そんなオレの姿勢に感化されたのかジャックと河松も続いて構えを取る。
「スサノオさん、オレもやります。こいつらが使えるかどうか知りたいんで……!」
「「闘魚」、「魚人島」でもいない魚。その力、見させてもらおうか」
2人も同じくその力を知りたいが故に闘魚の群れに対して臨もうとしていた。それに伴って他の者達もほぼ身構え始める。
「僕も僕も!さ〜て!いつまでも来ていいよ!君達!」
「……来るぞ」
ヤマトが金棒を構えてウキウキするが、その時にフドウが冷静にそう言い出す。その瞬間に海を泳いでいた数匹の闘魚が跳ねてオレ達の元に向けて獰猛な勢いで突進する。
「「「フゴゴゴ!!」」」
そんな闘魚の猛進に対してオレは獰猛な笑みを浮かべる。そして
「――んおらァ!!」
オレはすぐさま勢いよく跳躍して闘魚の顔を殴りつけた。
「フゴォ!?」
まさか標的から攻撃、それも重いものを食らうとは思わなかった闘魚が驚きながら吹っ飛ばされ、しかも未だに海を泳ぐ他の闘魚と激突してしまった。
その激突がさらに違う闘魚をも巻き込んで混沌とした事態が生じた。だが、それだけに留まらない。
「はい!!ホームラン!!」
「おとなしく力を見せてみろ……!!てめェら」
「フン!」
ヤマトが金棒を勢いよく振って闘魚をまるでボールを打つように大きく吹っ飛ばし、ジャックは闘魚の額を強く掴んでから投げつけ、河松は掌で闘魚を突っ張って弾いた。
「「「フゴゴォ!?」」」
オレ達からの攻撃によって猛進を阻まれた闘魚の群れは動揺する。このような事態は初めてだったからだ。だが、闘魚の群れは負けじと本能のままに突進を続けようとする。
「リュドドド!!まだやるか!!その意気よしだ!!」
そんな姿勢にオレは朗らかに笑いながら態勢を立て直す。他の者達ももちろん問題なく身構えて闘魚の群れの新たな猛進に立ち向かう。
そうしてオレ達と「闘魚」の合戦が始まった。
「リュドドド!!やはり面白ェな!!こいつらは!!」
オレは大笑いを上げていた。そんなオレの視線先には多くの闘魚が海を泳ぎ回って、しかしオレ達の事を睨みつける。
あれからも闘魚の群れは突進を続けたが、それさえをもオレ達はものとせずに返り討ちにしたのだ。そんな状況を受けて闘魚の群れはこれ以上無駄な事を避けるために一旦攻撃をやめて海を泳ぐ事にしたんだろう。
そんな闘魚の群れはオレ達を粉砕する意思がまだ消えないものの、その強さを警戒して泳ぎ回りながらその隙を伺っている。
そんな群れの姿勢にオレは笑みを深める。するとジャックが話しかけてくる。
「スサノオさん。こいつらの強さと獰猛さ、使えます」
ジャックが「闘魚」の猛襲に対応する時に感じた事を率直に伝える。その意見にオレも頷く。
「おう!お前もそう思うか?オレも――」
オレがそう言いかける瞬間に一匹の闘魚が跳ねてオレに向かって突進してきた。おそらくオレがジャックと会話する今こそが絶好の機会なんだと判断しただろう。だが
そんな闘魚の襲撃に対してオレは視線を向けずとも殴り返してやった。
「フゴォ!?」
思い切って攻撃したところをあっけなく返り討ちにされてしまった闘魚が無残に海に落ちたのをよそにオレは何事がなかったように続ける。
「悪くはねェなと思ったんだ!」
オレがそう言ったのを受けてジャックは真剣な表情を浮かべる。
「では」
「ああ」
その内容からオレの意図を察したジャックが確認のためにそう言うが、それに応えてオレは笑って言う。
「後でドフラミンゴに「闘魚」を注文しなきゃな……!」
合戦でその強さを見させてもらった事でオレは「闘魚」の事をすっかり気に入り、「ワノ国」の海域に導入するのを決意した。オレが堂々と口にするその考えにジャックは頷く。
「分かりました」
ジャックがその事を承った途端に小紫が声をかけてくる。
「スサノオさん」
「!」
その声にオレが視線を向けると小紫が微笑みを浮かべていて、そして彼女が抱っこするアマノムが目をすごくキラキラさせて興奮していた。
「アマノムがあなたの勇姿に感服していますよ〜」
「だーだーだー!」
小紫が嬉しそうにその事を伝え、それを証明するかのようにアマノムが興奮しながらオレに満面の笑みを向ける。
どうやら闘魚の群れの襲撃に立ち向かう父親の無双ぶりにアマノムが感動したようだ。そんな我が子の姿にオレもつい顔を綻ばせた。
「リュドドド!そんなに良かったのか?オレの暴れぶりがよ、アマノム!」
「だ!」
「そうかそうか!」
「ふふっ」
オレが朗らかに笑いながらそう問いかけると肯定するかのようにアマノムが満面の笑みで手を大きく上げた。そんな姿から我が子が本当に自身の戦いぶりに感動してくれた事を理解したオレが嬉しく思い、笑みを深めた。
そんな父子の微笑ましい姿に小紫も微笑み、周りの人々もつれて顔を綻ばせる。その場は和やかな雰囲気に満ちていた。
だが、その瞬間
「「「オオッ!?」」」
オレ達が立つ橋が大きく揺れた。突然の事に皆が驚くが、そんな中でその実情を察したオレと数人は片眉を上げる。
「リュドドド、オレ達を直接潰せないのが分かると今度は橋そのものを壊してオレ達を海に沈めさせるつもりだな!!」
そう、オレが口にした見解通りに闘魚の群れはオレ達を直接倒せないのを悟り、それならば今度はその足場を奪おうと橋そのものに突進しているのだ。
そんな闘魚の猛襲にオレは笑みを深める。その獰猛さはそうだが、利口でもあるのが分かってますます気に入ったからだ。
「リュドドド!!お前らが「ワノ国」に来れば、ますます盛んになるな!!」
抱いたそんな考えから頭に浮かぶ景色にオレはつい笑う。だが、その直後に少し真剣な表情になる。
「――だが、お前らの能力は分かった」
「それにオレ達はそろそろ「グリーンビット」に向かなきゃならねェんだ」
オレはその事をハッキリと口にする。そして
「だから、ここまでだ……!!」
オレがそう宣した途端に〝覇王色の覇気〟を放った。
「「「!!?」」」
その辺りに広げられた凄まじき〝圧〟によってオレ達を何としてでも落とそうと殺気立った多くの闘魚が恐怖に襲われ、そしてあっけなく気を失った。
そうして闘魚の群れが一匹さえも残らずに死んだように海面に浮く。そんな光景がオレ達の前に展開されるが。
「だーだーだー!」
アマノムが興奮して声を上げる。父親が闘魚の群れを壊滅させた事にますます感動したようだ。
そんなアマノムの可愛らしい姿にオレ達も微笑みを浮かべた。改めてその場に和やかな空気が漂うようになった中でオレは言い出す。
「よし、「グリーンビット」に行くか。お前ら」
「「「おお!」」」
オレが言い張るその事に皆は賛同し、橋での歩行を再開した。多くの闘魚が海に浮く光景を気にかけずに。
「――もし、スサノオ様」
オレ達が橋で歩を進める最中で河松がオレに話しかける。視線を向けると河松が真剣な表情を浮かべていた。その姿にオレは片目を少し見開く。
「おう、どうした?」
オレがそう問いかけると河松が真剣な態度で口を開く。
「「闘魚」を「ワノ国」に導入する件なんですが……」
「どの海域に入れてどのような役割を与えるつもりでございましょうか?」
どうやら、河松は「闘魚」が「ワノ国」のどの海域でどのような役割を与えられる事になるのか気になったらしくオレにその疑問を率直に投げかけたのだ。
そのもっともな疑問にオレは笑みを浮かべる。
「おう!!その件だが、オレは「闘魚」を防衛のために周りの海域に放とうと考えているんだ」
「ああ、「オプルリング」で闘魚と戦う舞台を作るのもいいな!!」
オレがその考えを言い張ると河松は頷く。
「さようでございますか」
その考えには別に異議もなかったために河松が納得する時だった。オレがニヤリとしたのは。
「……それに」
「「闘魚」の肉を食べてみてェしな!!」
オレはその事を隠さずに堂々と言い放った。
そりゃそうだろ?鉄橋をものとしない程の強さを持つ魚だぜ?その味が気になって仕方がねェんだ!
闘魚の味を予想してみて顔を綻ばせるオレの姿に河松は呆気に取られた。
「さ、さようですか……」
辛うじてそう言った河松は苦笑を浮かべる。小紫に仕えるようになって以来スサノオの事を見続けてきたが、それでもその豪快さに未だに驚かせされるものだ。
戸惑わせられた河松だが、やがて清々しい笑顔をするようになる。
「(このお方だからこそ、小紫様が恋い焦がれるんだろうな)」
小紫が愛したスサノオに対して河松はその考えを抱くようになる。それを察してか小紫がオレと河松に微笑みを向ける。
「ふふっ……スサノオさん。それでしたら私が闘魚を料理してきましょうか」
小紫はオレの希望に沿ってそう提案する。その内容にオレは目を輝かせる。
「おお!!それはぜひとも頼む!!」
小紫の腕前を知ってるオレは今からでもその事を楽しみにする。何せ、小紫の料理は最高だからな!
胸を躍らせるオレの姿勢に小紫は嬉しそうに微笑む。
「ふふっ、はい!」
そんなオレ達の語らいによってその場が和気藹々とする。そんな中で
「――あ〜」
ヤマトが呻き声を漏らす。その顔は空腹感をにじませていた。
「お兄さんが「闘魚」の味とか、小紫が料理を作るつもりだと聞くと」
「今すぐに闘魚を食べたくなっちゃったよ!!」
どうやらオレ達の会話を受けてヤマトは空腹感と「闘魚」の味への興味を刺激されたようだ。そんな妹の姿にオレは苦笑を浮かべる。
「リュドドド、もうおなかがすいたのか?」
「……そうかも」
オレがそう言ってみるとヤマトはしばらく考え込んでからそう答える。そろそろいい時間だ。空腹を感じてもおかしくはない。
それ故の回答に伴って今度は小紫が微笑みながら言う。
「ふふっ、大丈夫ですよ。私の料理を持ってきていますよ」
そう、これから向かう「グリーンビット」は自然だらけの島だ。つまり食事が用意されないと考えていいだろう。だから小紫が作った料理を持参してきたのだ。
小紫の料理を気に入ってるヤマトはその事に朗らかな笑みを浮かべる。
「それもそうだね!!」
すっかり機嫌を直したヤマトが突然走り出す。
「なら!早く行こうよ!!」
ヤマトは小紫の料理を早く食べるために「グリーンビット」へ急いでいった。そんなヤマトの姿勢にオレ達は苦笑を浮かべた。
「リュドドド、ヤマトの奴はいつまでもヤンチャだな」
「ええ、ですが。私の料理をそこまで気に入ってくれるとは嬉しいですね」
それぞれ思った事を口にするオレと小紫は顔を見合わせ、笑い合う。そしてヤマトに続いて少し急ぐ。そうして和気藹々とするオレ達の散歩だが
「――へ?」
先を走った筈のヤマトはすぐ立ち止まり、そして驚愕の表情を浮かべた。やがて追いつけたオレ達はそんなヤマトの姿に疑問を抱く。
「?ヤマト、どうし――!」
オレがヤマトに対してその疑問を口にしようとするところで気付く事になる。
オレ達の目の前に展開されるのは橋が途切れているというものだった。闘魚の襲撃と老朽化によってもたらされたものだろう。オレ達がいる側から向こう側とは距離があった。
だが、何よりオレ達が注視するのは向こう側に一匹の闘魚が上げられてるという光景だった。よく見ればその体には縄付きの銛が数本も貫かれていた。
その事から何者が闘魚を獲ろうとしていて、その場面にオレ達が遭遇したのだろう。その事をオレ達が理解した途端にその声が響く。
「――よーし、引け〜〜!」
「獲れた獲れた」
「今日は闘魚シチューだ!」
「「「!」」」
闘魚を獲ったのを喜ぶその声にオレ達は目を見開く。闘魚が獲れられた以上その張本人がいるのは当然の事だが、それが妙な事にその姿が全く見えなかった。ただ声が聞こえるだけだ。
その事実にオレ達は訝しげにする。そしてオレ達が抱いた疑問をヤマトが口にする。
「誰かいるの!?」
「「「!?」」」
ヤマトの声がその場に響くと獲った闘魚を引き上げようとする動きがピタッと止まった。
「!?人間だ!!」
「急げ!!逃げろ!!」
「……!」
すると闘魚がさっきより素早く向こう先に引きずられていった。おそらく闘魚を引きずる何者はオレ達と顔を見合わせるのを避けるためにその場を早く離れるつもりだろう。
その状況にオレ達が驚愕する。そんな中でヤマトが叫ぶ。
「も、もしかして」
「――妖精!?」
☆妖精現る!?