〝妖精伝説〟の真偽を確かめるためにそのルーツと思わしき「グリーンビット」に向かったオレ達。
その最中で起こったいかなる出来事に遭遇してなお、その島に辿り着けたオレ達はそこで〝妖精〟――「小人族」と出会った。
一時は一触即発になったが、常軌を逸する程に信じやすい小人達の招待を受けて彼らの国「トンタッタ王国」に行く事になったオレ達だが……
「「「……」」」
「トンタッタ王国」に行く筈だったオレ達はなぜか険しい表情で何もない地にあぐらをかいでいた。
実はオレ達は「トンタッタ王国」に入る事ができなくて、そうせざるを得なかったのだ。
ではなぜ入れられないのかというと
「申し訳ないれす!!まさかこんな事になるなんて!!」
「「「申し訳ないれす!!」」」
「……いや、これはしょうがねェよ……!」
小人達がオレ達に対して頭を深く下げる。そんな姿勢にオレは苦笑を浮かべる。そう、小人達もオレ達も予想がつけられなかった。まさか――
「まさか、オレ達の体が大きすぎるから入れられないとはなァ……!!」
オレが苦笑しながらもそう言う。
そう、まず「トンタッタ王国」は「グリーンビット」の地下に存在している。そのためにその国に入るには地下に降りる必要があるんだが……
だが、オレ達のうちの数人は人間の数倍も大きい。そんなオレ達が人間の手のひらサイズの「小人族」の国に入るなど不可能なのだ。
だからオレ達は「トンタッタ王国」の真上の地面に腰を下ろすしかなかった。その事実にはオレも苦笑するほかなかった。
「「「……」」」
今のような状況にあのフドウとジャックもさすがに微妙な顔をせざるを得ず、そしてブラックマリアは頬を膨らませていた。
マリアは可愛らしい小人達の国を直で見てみたいと考えていた。だからこそそれが叶わない事がマリアにはすごく不満だった。そんな親友の姿にそばで寄り添っている小紫も苦笑を禁じ得なかった。
「はは、マリア……」
ちなみに小紫は普通のサイズなので「トンタッタ王国」に入る事は可能だ。だが、彼女は入れられない夫と親友に配慮して入らず地に座している。他の可能な者達も小紫と同じようにしていた。
そんなオレ達の実情を汲み取って小人達は地上で対談を行う事にしてくれた。
「申し訳ないれす。「トンタッタ王国」は我々が住み着くために作られたのであんた達のように大きな大人間が入るようにできてはいないのれす」
オレの目下に立つ小人達の筆頭にいる長らしき年老いた小人がそう説明して詫びを入れる。その謝罪にオレは苦笑を深めた。
「いや、それは仕方がねェよ!!お前らが気にする事じゃねェ!!」
そう、こればかりは仕方がない事だ。にも関わらずに真面目に頭を深く下げる小人達の姿勢に苦笑を禁じ得ないオレが堂々とそう言い放ってやった。そして続ける。
「その話は置いといて、お前らが「ドレスローザ」で伝わる〝妖精〟の正体か?だとしたらなぜそういう事になったんだ?」
オレは真剣な表情を浮かべてその疑問を口にする。
その外見と動きからこの「小人族」こそが〝妖精〟の正体なのは間違いないのだろう。
だが、だとしたらなぜ「小人族」が「ドレスローザ」から物を盗むという行為をして、そしてその事が〝妖精伝説〟として伝わられるようになったのかまでは見当がつかなかった。
だからオレは小人達に向けてその疑問を率直に口にしてみたのだ。その問いを受けて小人達、老小人が頷く。
「うむ、そうれすな……」
そして真剣な表情を浮かべる老小人が語り出す。
「我々――「トンタッタ族」がなぜ「ドレスローザ」で物をもらい受けるのを許されて〝妖精〟とされるようになったのか」
「事は約900年以上前に遡るのれす」
――かつてトンタッタ族は住んでいた国にない資源を求めて海へ出て世界を放浪していた
だが、その希少ゆえか小人を捕まえようとする人間に追いかけられて絶滅の危機に瀕していた
それが900年前、当時の「ドレスローザ」の王がトンタッタ族に声をかけた。その王の名は〝ドンキホーテ〟
ドンキホーテ王家がトンタッタ族に資源と安全の保障を約束する条約を提案した。それをトンタッタ族が承諾した事で「ドレスローザ」に住み着くようになった
それがトンタッタ一族最悪の歴史、〝奴隷時代〟の始まりだった
条約の実態はトンタッタ族に強制労働を強いる悪質なものでトンタッタ族が奴隷として「ドレスローザ」の繁栄を影で支える事になってしまったのだ
トンタッタ族が人知れず地下深く働きに働かされた〝奴隷時代〟は〝空白の100年〟まで続いた
そして〝空白の100年〟の後になぜかドンキホーテ一族が消えた「ドレスローザ」をリク王家が治める事になったが、その初代リク王はトンタッタ族への仕打ちを知ると涙を流しトンタッタ族に深く謝罪した
その償いとしてリク王はトンタッタ族が生活必需品を国内から盗む事を許し、その行為を〝妖精の仕業〟として黙認するようにした
それによって「ドレスローザ」に〝妖精伝説〟が広まるようになったのである
そんなリク王家の行為に感銘を受けたトンタッタ族はその見返りに国の外に花畑を作って「ドレスローザ」を緑豊かな島にしていった
民達も妖精達が国の守り神を務めてくれていると実態を認知して見守るようにもなっていった
こうしてトンタッタ族とリク王家の絆により「ドレスローザ」は決して豊かとはいえなくなったが、平穏な時代が訪れた
「――これこそが「ドレスローザ」に伝わる〝妖精伝説〟の真実れす」
トンタッタ族と「ドレスローザ」にまつわる歴史を語る老小人――トンタッタ王国国王ガンチョがそうして話を締める。
それを受けてオレは興味を惹かれた。
「なるほどな……!!」
語られた歴史の内容にオレは納得した。何せ〝妖精伝説〟を形作ったカラクリはもちろんだが、なぜドフラミンゴが「ドレスローザ」を選んだのかその理由が思わぬ形だが分かったからだ。
同じ思いを抱いたらしい小紫がオレに小声で話しかける。
「これであの男の事が少し分かってきましたね」
「ああ」
小紫が口にするその言葉にオレは同意する。
さっきドフラミンゴと会って直で見定めたところ、どうにもあの男は虚栄心が強い。そんな男が本来ならば持てた筈の国を支配できない事に我慢できない筈だ。
だからこそ、ドフラミンゴは今「ドレスローザ」の王として君臨したのだろう。
「(やはり、あいつはうさんくせェな)」
今知った事実によって海賊であるドフラミンゴが「ドレスローザ」をまんまと手にしてその王として君臨できているという事実に闇を感じたオレは険しい表情を浮かべる。
その一方で小紫が真剣な表情で呟く。
「しかし、あの男の一族と「ドレスローザ」にもあの〝空白の100年〟が関係していたかもしれないとは」
自分が強き関心を寄せている〝空白の100年〟による影響が「ドレスローザ」にも少なからずとも生じていたという事実に小紫も驚かざるを得なかった。そして考える。
「ドンキホーテ・ドフラミンゴ……もう少し調査が必要ですね」
ドフラミンゴの異質な経歴に〝空白の100年〟の件が加えられた事で小紫はその考えを抱くようになる。
その考えにオレは異議はなかった。同感だからだ。やはりドフラミンゴには何かある。そう考えたオレは小紫の考えを支持した。
そこでふとオレは気付く。
「……お前ら、「ドレスローザ」が今どんな状況になっているか知っているか?」
オレは真剣な表情で小人達に向けてそう問いかけた。
そう、「ドレスローザ」の今の王座はトンタッタ族の宿敵ドンキホーテ一族の者が就いている。トンタッタ族にとっての悪夢が蘇ったといっていい事態を彼らがどう認識しているかのを知りたかった。
そう考えたオレからその問いを投げかけられたガンチョは深く頷く。
「ええ、知っております」
「まさか、あの優しいリク王家が暴走して国に害をなさそうとしていたとは」
「そしてその暴挙をあのドンキホーテ一族が止めて国を救ったとは……」
「いやはや、まことに思いがけない事になりましたれすね……!!」
「「「……」」」
ガンチョがそう語り、物事の変化に思いを馳せる姿にオレ達は何ともいえない思いを抱いた。
小人達が「ドレスローザ」での出来事をちゃんと知っていた。それは別にいい。ただ、その事を少しは疑わずに信じるその姿にそろそろ言葉を失わずにはいられなかった。ドンキホーテ一族との因縁がある以上そこは疑うところであるのだが……
小人達のあまりにも度を越した気質にオレ達が頭を悩ませられるところで感慨に耽けていたガンチョが言い出す。
「いずれにせよ、「ドレスローザ」に新しい王が生まれたのは確か。だから我々はしきたりに従って新たな王の元に挨拶しに向かったのれすが……」
「「「……!!」」」
ガンチョが語ったその事によって事態が変わろうとするのを感じ取ったオレ達は目を細める。
「それで?」
その続きが気になったオレがそう伺うとガンチョが真剣な表情で続ける。
「――ドフラミンゴ殿への挨拶を無事に終えて帰ろうとした時だった」
「我が娘マンシェリーと仲間500人が姿を消したのれす!!」
「「「……!!」」」
ガンチョが言い放ったその内容にオレ達は目を少し見開く。少しほのぼのとした空気がついに物々しいものになり始めたからだ。
そのためにますます興味を持つようになったオレ達に応えるかのようにガンチョが言う。
「そこにドフラミンゴ殿が言ったのれす」
「「「……」」」
耳を傾げるオレ達に向けてガンチョは言った。
「マンシェリーが重い病にかかり、その治療のために仲間達が残る事になったと!!」
「わしも残って娘のそばにいたかったが、どうやらかなり重い病らしくて影響を受けるかもしれないから下手に近付かない方が良いと言われたので帰らざるを得なかったのれす……!!」
「「「だあああああ!!」」」
ガンチョが実に真剣な表情で言い放ったが、その内容を耳にしたオレ達はズッコケかけた。
それもその筈。ようやく真面目な話になったと思ったら結局アホくさい事だったのだから。唖然とするオレ達に気付かないガンチョが続ける。
「かわいそうなわしの娘……!!今もいまだに病にかかっているらしい。残った仲間達がなんとか頑張ってくれているらしいが……」
「「「……」」」
娘の身を案じるガンチョと小人達の姿にオレ達は何ともいえない表情を浮かべた。普通ならば誰でも疑ってかかるところを小人達は信じきっている。
その信じやすさは度を越してると思っていたが、ここまでくるともはや大病を患っているとしか思えなくなってきた。ざわめく小人達をオレ達は得体の知れないものを見たように凝視する。
「(なるほどな、これ程に便利な労働力はそうそうねェもんな……!)」
そんな中でオレはそう考える。オレ達が「グリーンビット」に向かおうとする事に対してドフラミンゴが抵抗をみせた理由が理解できるからだ。
さっき少々もめた時に目にした小人達のスピードと力などのスペック、それに加えて病的に信じやすい気質だ。そんな彼らを上手く騙せば得難い労働力になり得る。
これ程の人材をドフラミンゴが独り占めにしたいのも理解できる。そしてせっかくの労働力をオレ達の余計な関与によって失われるのを恐れるのも。
そう考えたオレはふと皆が自身をチラ見してきているのに気付く。
皆はオレがドフラミンゴが取ったようなやり方を好ましく思っていないのを知っている。だからこそ小人達をオレがどう取り扱うつもりなのかを確認したいのだ。
その意図を察したオレはもう既に決めている事を皆に示す事にした。
それは――ドフラミンゴに関する疑惑を、その本性をトンタッタ族に教えないという事だ。
オレが微かに首を振るのを目にした皆は平然と普段通りに振る舞うようにしてくれた。そんな皆に感謝を覚えるオレは微笑みながら考える。
そう、確かにドフラミンゴのトンタッタ族に対する仕打ちはオレにとっては気に入らない。
だが、オレ達は聖者じゃねェ。それにドフラミンゴとは契約を結んでしまっている。同盟者の損失になる事を行う訳にはいかねェ。
そういう訳で「ドレスローザ」におけるトンタッタ族に対してはそういう事にした。
そんなオレ達の思惑を知らない小人達は純粋な笑みを浮かべてオレ達に向けて話しかける。
「それであんた達は一体何者のれすか?〝妖精伝説〟を調べに来たのは分かったれすけど」
小人達はその問いを率直に投げかける。彼らはオレ達の目的が分かったが、その身分はまだ知らないのだ。そのもっともな疑問にオレは笑みを浮かべる。
「リュドドド!オレ達は海を旅する者達でな。旅の途中で寄ったここを観光しているんだ」
オレは小人達に向けて正体を隠してそう回答した。ここで海賊だと明かした場合の利が別に存在しないからだ。
そんなオレの胸内を知らない小人達がその回答を耳にした途端に朗らかな笑みを浮かべた。
「それはすごいれす!!海を旅しているんれすね!!」
「我々が行った事がない外の世界を回っているんれすね!!」
どうやら「ドレスローザ」の外に出た事がない小人達にとってオレ達が海を旅しているという事に刺激を受けたようだ。目を輝かせる小人達の姿にオレもつい笑みを深めた。
「リュドドド!何だ、お前ら。海に興味があんのか?」
「「「はいれす!!」」」
それでオレがその問いを投げかけてみると小人達が元気に即答する。その答えと勢いにオレ達は笑う。
「――おう!!おんしらは海に惹かれちゅうのか!!まァ分かるぜ!!わしらもそうじゃったからな!!」
「うむ!!見た事がないものだらけだった冒険の日々!!心躍ったものだ!!」
「さよう、これまでの常識が打ち砕かれた時の爽快感。なかなか得難いものだ」
特に似たような境遇であるネコマムシとイヌアラシと河松はその気持ちに共感すると共にその時を思い出し、それに伴って気持ちが高揚したままに語り始める。
そんな3人の熱演を受けた小人達はその内容に感極まる。
「そうれすか!!そんな事があったのれすか!!」
「それで!?それからどうしたのれすか!?」
「おう!!詳しく説明しちゃる!!よ〜く耳を傾げていろ!!」
語られた冒険の物語に感動を覚えた小人達が続きを要望した。それを受けて3人は気を良くして自らが経験した更なる冒険の日々を語っていく。
そうして話が盛り上がっていったその場にオレ達は笑みを深める。
「うんうん!!やっぱり海の冒険には心躍らさせられるんだよね!!」
「ええ、海はいかなる意味で刺激的なんですからね」
ヤマトと小紫も同じような経験を持っている故に小人達の心情に理解を示す。オレも同じように考える。
同時にオレの頭にある考えも浮かんだ。
「……リュドドド」
その考えにオレはニヤリとし、その場に向けて言い出す。
「オォイ!!トンタッタ族!!」
「「「!!」」」
突然のオレの大声にその場にいる者達は驚きながらも視線を一気にオレの方に向ける。それを目視したオレは笑いながら小人達に話しかける。
「お前らは……海に、世界に興味あるのか?」
「「「!」」」
オレが投げかけたその問いに小人達は驚愕する。が、その直後に答える。
「「「はいれす!!」」」
そう回答した小人達は朗らかに笑っていた。
「見た事がない外の世界を見てみたいと思っているのれす!!」
「皆さんが世界の事を話してくれたのでますます興味が高まったのれす!!」
小人達が海への興味を率直に口にする。そんな姿勢にオレは笑みを深める。
「そうか!ならよ……」
「オレ達の船に乗らねェか?」
「「「!!?」」」
☆〝暴獣〟からの〝妖精〟への勧誘!!