――オレ達の船に乗らねェか?
オレが口にしたその提案によってその場は驚きに包まれた。
「「「!!?」」」
特に提案を受ける相手、トンタッタ族は驚愕した。
「大人間の船に乗る……れすか……!?」
「それはつまり、我々が海を渡るのれすか!?」
「ああ」
小人達が驚きをみせるのに対してオレは笑みを浮かべる。
一方で皆も同じく驚いたもののそれ程ではなかった。皆はオレがどういうつもりでその提案を出したか分かっているからだ。
そう、オレは小人達を百獣海賊団配下の新たな戦力として迎え入れるつもりだ。
何せ、見たところ小人達の身体能力は悪くはない。むしろスペックが高い。それに加えて卓越した栽培技術を持つというんだ。欲しくない訳がない。
……信じやすい気質が気がかりだが、まァそれは教育などで何とかしよう。
とにかくそう考えたオレは小人達にその提案を投げかけてみたのだ。それによる小人達の反応を確認してみると彼らは突然の事な故かすごく動揺していた。
「……船に乗って海を渡る……でも、それはつまり」
「ここを離れるって事れすよね」
「そうれす!ここを出て見知らないところに行くのはちょっと……」
「そりゃ外に興味があるのはそうれすけど……」
今まで海へ出た事がなく「グリーンビット」で長らく生きてきた小人達にとって外の世界に興味あるものの住み慣れた故郷を離れて全く未知なる世界へ旅立つという事には物怖じしてしまうのだ。
そういう訳でオレからの勧誘に対して消極的になった小人達だが
「……でも、大人間が話した冒険の話は楽しそうだったれすよね?」
「そうれす!見た事も聞いた事もない外の世界!!ドキドキしたれす!!」
「知らないところへ行くのは怖いけど……やっぱり海へ出たいのれす!!」
さっき皆が冒険の日々を楽しく語った影響もあってか海への想いを完全に捨てられず、心を寄せ始める者達が現れる。
そんな状況にオレはニヤリとし、まだ迷う小人達に向けて後押しするように言い出す。
「リュドドド!!別に無理強いはしねェよ!!お前らの意思を尊重するつもりだ!!」
「だが!!言っとくが、こういうチャンスはおそらく一度きりと思うぜ!!」
「未来の自分が後悔しないようにじっくり考えて決めろ!!」
「「「!!!」」」
オレが堂々とそう言い放った。その勢い、そして内容に小人達は目を大きく見開いた。
だが、その心はしっかり揺さぶられたらしい。さっきまでは迷っていた小人達の目つきが変わってきたからだ。それを感じ取れたオレは笑う。
「(やはり、こういうのは自分で踏ん切りをつける方が良いもんな!!)」
そう考えたオレは今の小人達の姿に笑みを深める。
――そして
「「「――トンタ長!!」」」
自身の今後に関しての答えを決めた小人達のうちの百数十人がガンチョの前に集まり、そこで背筋を伸ばして言う。
「ぼくは大人間の船に乗りたいれす!!海へ出たいのれす!!」
「おれも!!」
「わたしも!!」
その小人達がその決意を堂々と口にした。
――やっぱり海へ出たい!!
――世界を回って色々なところをこの目で見てみたい!!
その昂ぶりを抑えずに従って旅立ちたいと考えた小人達は国王に海へ出る許可を求めたのだ。そんな小人達の姿勢にガンチョは真剣な表情を浮かべる。
――やがて
「……うむ、お主らの決意はよく分かった」
小人達が大きく示したその決意をしっかり受け止めたガンチョは空を見上げる。
「「ドレスローザ」の王座がリク王家からドンキホーテ一族の手に戻ったこの時期にこのような機会が出るのも何かの縁」
その事実をガンチョが噛み締めるように言う。そして身を引き締めて小人達の方に向き直って言う。
「お主らが海へ出るのを許可するれす!!」
ガンチョが堂々とそう宣言する。他でもならない国王の許可を得た小人達は歓声を上げる。
「「「オオ〜〜!!」」」
「やった!!これで海を渡るのれすね!!」
「ありがとうれす!!」
「グリーンビット」の外、広い海へ出て冒険ができるという事実に小人達は胸を躍らせる。その姿にガンチョが微笑んで頷く。そこにオレがガンチョに声をかける。
「――オレが言うのもあれなんだが、よく許可を出したな?」
オレが片目を少し見開きながらそう言う。そう、病的に素直なトンタッタ族でも未知の世界へ旅立つのを許可されにくいであろうと考えていた。
なのに国王が即座に許可を出したという事に提案を出した張本人であるオレもさすがに驚かざるを得なかった。オレが抱いたその率直な疑問にガンチョはそれが分かるというように苦笑を浮かべる。
「ふぉふぉ、確かにれすね」
そう言うガンチョは小人達を見て微笑む。
「広い海へ出る、それは危うい挑戦になる」
「それ故に物怖じするのも分かるのれす」
海へ出る事そのものに対してガンチョはその懸念を率直に口にする。が、その目が細められる。
「じゃが」
「だからってあの者達が考えて決めた意思を認めないなんてできないれす」
「そもそも、我々の先祖も新しいものを求めて住み慣れた地を離れて海へ出たのれす。ならば同じように旅立とうとする者達を止める筋合いはますますあるまい」
ガンチョはその考えを堂々と言い張る。そして盛り上がる小人達をじみじみと眺める。
「ついに外へ出るのれすね!」
「ドキドキするなァ」
「このぼくが世界を回っていくのれす!!」
海へ出るのを心待ちにする小人達がそれぞれ思った事を口にする。そんな中で茶色のボブで先っぽが折れ曲がった王冠のようなものを被る小人が堂々とそう言い放つ。
そんな風に和気藹々とする小人達の姿にガンチョが朗らかに微笑む。そこでふとオレの方に視線を向ける。
「それにあんた達がいる」
「だから心配無用れす!!」
「……そ、そうか」
やはり自身達の事を信じ切っているガンチョが言い張ったその言葉にオレは再び苦笑を禁じ得なかった。
――こうして「ドレスローザ」に伝わる〝妖精〟もとい小人達が「暴獣海賊団」の船に乗る事になった
それから――
「大分集まったか?」
「ドレスローザ」のある広場でオレがそう言う。
つい先程「グリーンビット」で用を終えたオレ達はドレスローザ本島に戻り、その中の広場で他の仲間達と待ち合わせていた。
そうしてその場に集まった仲間達の人数をオレは確認してみる。すると
「スサノオさん、テゾーロ達がまだのようです」
同じく確認を行っていたフドウがその事を知らせてくれた。その内容にオレは片眉を上げる。
「あいつらが?めずらしいな。テゾーロは時間をしっかり守るようにしている筈だったよな」
そう、テゾーロは「暴獣海賊団」の金庫番を務めている。そんな立場ゆえかテゾーロは時間を厳守して余裕を持って行動するのを心がけている。
そんな男が来ていないという事実にオレは目を細める。
「……といえ、大事でもなさそうだ。少し待つか……それでジャック」
だが、今テゾーロ達が深刻な事態に巻き込まれた訳ではないのを感じ取れたオレはそう判断し、続いてジャックの方に視線を向ける。
「
オレが含みのある目線を向けながらその問いを投げかけたのを受けてジャックが頷く。
「ええ、大人しくしています」
そう言うジャックの両肩には大きな箱がそれぞれ担がれていた。実はその中にはオレの船に乗る決意をした小人達が入っている。その数は百数名。
そもそも、小人達は人間に姿を見られてはいけない事になっている。それが百数名も〝カイリュー号〟に移動するとなると目立たざるを得なくなり人目を引いてしまう。
だから小人達が入る2個の大箱をジャックが運ぶという形で移動する事になっているのだ。
ジャックがその2個の大箱をしっかり担いでいるのを目視したオレは満足するものの一応確認してみた。
そんなオレからの確認に応えたジャックは続いて2個の大箱にそれぞれ頭をコツコツと打ちつける。
「お前ら、静かにしろよ?」
「「「はいれす」」」
「静かにするれす」
ジャックが2個の大箱に向けて密かにそう言うとそれぞれの中からそう声が返ってきた。
実は移動を滞りなく進めるために大箱の中で静かにする小人達だったが、これから船に乗って海へ出られるんだと思ったら胸が踊ってしまい、少々ながらも和気藹々としていたのだ。
大箱の中にいる小人達の昂りを感じ取れたオレは笑みを浮かべた。かつて「暴獣海賊団」を率いて初めて海へ出た時もまさにそういう気分だったから分かるのだ。
新たな、それもあまりにも素直な仲間達ができた事をオレが嬉しく思うと
「――スサノオさん!!お待たせいたしました!!」
ようやくテゾーロとその妻子がその場に現れてきた。その姿にオレは笑みを深める。
「おう!テゾーロ!めずらしく遅れてきたな?」
オレがテゾーロ達を迎えるとさっそくその事を茶化す。それを受けてテゾーロとステラは頭を深く下げる。
「それは申し訳ありません」
「何せ、思わぬ展開に遭遇したので少々時間をかけてしまいましたので」
「ん?思わぬ展開?」
2人が頭を下げて詫びを入れたのを受けてオレはその真面目さに苦笑を禁じ得なかったが、その時に耳にしたその言葉に眉をひそめる。
そんなオレに2人は真剣な表情で頷く。
「ええ、実は」
「我々に入るのを希望する者が現れたんです」
「「「!!」」」
2人から明かされるその事にオレ達は目を見開く。
それもそうだろう。ついさっき小人達を新たな仲間として迎え入れたばかりなのに仲間になりたいという者が他にも現れてきたのだから。
その事実にオレ達もさすがに少し驚いたところにテゾーロがその者を連れてきたらしくその紹介をしようとする。
「こちらがその者です」
テゾーロがそう言うのに伴ってオレ達の前にその者が姿を現してきた。
「「「……!」」」
その登場にオレ達は目を見開く。
時は遡って――
スサノオ達が「グリーンビット」でトンタッタ族と出会った頃にギルド一家はドレスローザ本島の道を歩いていた。
「――きれいだったね。花畑」
「ええ!本当に感動したわ!」
テゾーロとステラは朗らかな笑みを浮かべながらそう言葉を交わした。実はギルド一家はさっきまでは「ドレスローザ」の観光名所の一つ「花畑」を訪れていたのだ。
その花畑はまだギルド一家が知る由はないが、トンタッタ族によって長らく栽培されてきたために見事な出来栄えになっている。その美しさにギルド一家は魅せられたのだ。
「いやはや、見事に鮮やかだったね。あの花畑は……!」
「ええ、見ただけでも丹精込められてるのがよく分かるわ。一体誰が手入れをしたのかしら?」
余程花畑の出来栄えが良かったらしく、さっきまでその場を直でたっぷり満喫したのにも関わらずに今も花々の色鮮やかな咲きっぷりを思い返すテゾーロとステラは顔を見合わせて花畑に関して楽しく語り合う。
そうして少々熱中していく2人だが、そこに声をかけられる。
「……確かにあの花畑は素晴らしかったけど」
「でも、そろそろ新しい事に目を向けようよ!お父さん!お母さん!」
「「!」」
その不満気な声にハッとするテゾーロとステラは揃ってその者に視線を向けて苦笑を浮かべる。
「ハハッ!すまんすまん!退屈させてしまったか!」
「ふふっ、ごめんなさいね。だからそんなふくれっ面しないでね――ノヴァ」
その者に向けてテゾーロが朗らかにそう言い、ステラは優しく微笑みながらそう宥める。
そんな2人の視線先にいる者――王子のような雰囲気が漂う可愛らしい金髪の美少年、ノヴァは頬を膨らませる。
「全く、お父さんとお母さんがいつまでも花畑の話をしているからつまらなかったよ!」
そんなノヴァが両親に対して文句を言い張った。
確かにノヴァも花畑の見事な咲きっぷりに感動を覚えた。だが、子供ゆえか心の移り変わりが早いノヴァはすっかり花畑への興味が失せたのだ。
なのに花畑に関して未だに語り合う両親にノヴァは不満を募らせた。そんな我が子の姿にテゾーロとステラは苦笑を禁じ得なかった。
「ハハ、ならば次はここのダンスでも見に行こう」
テゾーロはノヴァの機嫌を直すためにもそう提案する。その内容にステラは朗らかに笑う。
「それはいいわね!さっきちょっと見たけど、実に情熱的なダンスで素晴らしかったわ!後学のために見るのもいいわね」
テゾーロを支えるエンターテイナーを目指すステラは「ドレスローザ」の情熱的で華のある踊りに興味を惹かれた故にその提案に賛同する。
そしてノヴァはさっきまで不機嫌だった筈の態度を一変させて朗らかな笑みを浮かべる。
「わぁ!ダンスを見るんだ!」
明るくそう言うノヴァの目は輝いた。彼はエンターテイナーであるテゾーロとステラの息子だけはあって歌とダンスに興味を持っている。
そんなノヴァが初めて行く国に存在する未知のダンスに興味を惹かれるのも道理である。すっかり機嫌良くなったノヴァはさっそくその場を駆ける。
「なら、さっさと行こうよ!お父さん!お母さん!」
すぐダンスを見たいが故に急ごうとする我が子の元気な姿勢にテゾーロとステラは苦笑する。
「ハハッ!元気だな!ノヴァは!」
「ふふっ、そりゃそうでしょう。ノヴァは男の子で、しかも私達の息子なんですもの」
だが、2人は暖かい目をする。それもそうだろう。愛する者との間にできた子供が元気にやっているんだ。微笑ましくない訳がない。
それ故にノヴァの姿を暖かく眺めるテゾーロとステラだが
「――私達も行きましょう!」
「おぉッと、そうだね!」
先を駆けているノヴァに続いて2人も駆けようとし――
突如怒声が響いた。
「「「!?」」」
その声にテゾーロとステラ、そしてノヴァも目を見開いて素早くその方向に視線を向ける。
そこには店が存在していた。見たところその店は宝飾品専用のようだが、そこで何やらもめ事か起こったらしい。
その騒ぎについ立ち止まったテゾーロとステラ、そんな両親の元に駆け戻ったノヴァが耳を傾げてみる。
すると
「――これが198万ベリーだァ!?高ェじゃねェか!!」
「ヒィッ!!」
粗暴な男が目下に置かれる宝飾品を指差しながら店員にそう怒鳴りつけた。
「これなら100ベリーはするだろ!!」
「ひ……い、いやァそれは……」
どう見ても高い金額になる宝飾品に関して男はあまりにも無茶な主張を口にして、それを受ける店員は怯えながらその内容に困り果てた。
そんな事態を目にしたテゾーロとステラは顔をしかめる。
「……下劣わね」
「ああ、品がないよ。全く」
ステラがそう言い捨てるのにテゾーロは同意する。するとノヴァが眉をひそめながら両親に話しかける。
「お父さん、お母さん。あれは一体何してるの?」
ただ事ではないのは分かるが、どんな状況なのかとノヴァは疑問に思った。それに対してテゾーロは態度を一変させて微笑む。
「ああ、それはね」
「あの男は198万ベリーもする商品をああやって脅す事で安く買おうとしているんだ」
「まァ、低俗な真似事さ」
今チンピラが行っている行為に関してテゾーロはそう説明して、しまいにはそう言い締めた。その内容にノヴァは納得する。
「なるほどね〜」
頷くノヴァだが、直後に顔をしかめる。
「っていうか、そんなせこいマネをする人もいるんだね」
「全くだよ」
「ええ、あんな風になってはダメよ。ノヴァ」
「は〜い」
無作法な振る舞いを恥もなくやってるチンピラに対してギルド一家は心から軽蔑する。否、彼らだけではない。その場にいる人々もチンピラに対して同じ思いを抱いた。
それに気付かないかチンピラは脅迫を続ける。
「認めねェのか!?金額をでっち上げるのを!!」
「い、いや……我が店は…金額を偽る事は決してございません……!」
だが、店員はビビりながらも商人根性にかけてチンピラからの脅迫に対してそう返した。そんな姿勢に激しきイラつきを覚えたチンピラだが、いやらしくニヤリとする。
「いいのかァ?このオレ、「ドフラミンゴファミリー」の者に向かってそんな無礼な態度を取ってよォ」
「「「!?」」」
チンピラがニヤニヤしながら放ったその言葉によってその場は驚愕に包まれる。何せ、乱暴な振る舞いをするチンピラが「ドレスローザ」を救った英雄ドフラミンゴの部下だったのだ。
その事実に人々が驚愕するのにチンピラは下卑た笑みをみせる。
「ハハハ!!いいのかァ!?このオレに金額をでっち上げてよォ!!」
「ヒィィィ!!そ、それはァ!!」
チンピラが店員に向けてそう言いながら迫る。その状況を目にするステラは顔を激しく歪める。
「――あなた」
「ああ、これは
ステラが険しい表情で声をかけてくるのにテゾーロは真剣な表情で頷き、そして店に向かっていく。
「……おや?あれは……するる」
☆暴挙を前に看過できないと動くテゾーロ!!
その裏では…?