ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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☆そこはただの島だが…?


第192話〝行かせてください〟

 ある海にその島が存在していた。

 そこはそれなりに発展しているようだが、それだけの島だ。だが、そんな島に人々が悠々自適に暮らしていた。

 その人々がそれぞれの日常を過ごしてる故にその島は活気に満ち溢れていた。そんな賑わいに誘われるように様々な者達が訪れ、島はさらに活気づいていった。

 そんな島だが、その中にはある者達がいた。

 

「「「……」」」

 

 その者達とはギルド家とジニーとボニーだ。

 彼女達はあるオープンカフェで一息入れていた。ただ、その場は緊張感に包まれていた。

 なぜ彼女達が緊張しているのか、そもそもなぜその場にいるのかというと

 

「……おかーさん」

 

 少々真剣な表情を浮かべる彼女達の間に張り詰めた空気が漂う中でボニーが言い出す。それに母ジニーを含む人々が視線を向けるとボニーは顔を引き締めてみせていた。

 母達からの視線を一気に浴びたボニーは一瞬口を一文字に結ぶが、意を決して言う。

 

「あたし、ほんとうにおとーさんとあえるよね?」

 

 緊張した面持ちでボニーが確かめるようにそう言ってみる。

 そう、ボニーとジニーは今待ち合わせをしているのだ。それもまだ見ぬボニーの父だという者とだ。

 今までは〝電伝虫〟を通してという形で話し合ってきた父といよいよ直で顔を合わせるという事実を受けてボニーはそわそわしたのだ。そんな娘の姿にジニーは優しい微笑みを浮かべる。

 

「ふふっ、そうだぞ。お前はこれからお父さんと会えるんだぞ」

 

 ジニーがボニーに向けて優しく、しかしはっきりそう言い放った。そんな母の姿勢、言葉にボニーは顔を明るくする。

 

「そっか」

 

「ふふっ」

 

 もうすぐまだ顔を知らない父と本当に会えるという事により、ますますそわそわするようになったボニーをジニーは優しく見守る。

 だが、ジニー自身も平然としているように見えて心中では娘と同じくそわそわしていた。何せ、長らく顔を合わせられなかった大事な人とようやく再会できるのだから。娘の前では悠然と構えているが、実は密かに緊張しているジニーだった。

 そんなジニーだが、ふとして隣にいるギルド家に顔を向ける。

 

「皆、本当にありがとう。ここまでしてくれて、ウチ達とは何の関係もないというのに」

 

 ジニーがギルド家に対して頭を深く下げる。そう、ジニー達が今その島にいるのは他でもならぬギルド家が彼女達を連れていってくれたからだ。

 その事実に加えて〝青玉鱗〟を治すなど色々な事をしてくれたのもあってジニーは感謝の念に堪られなかったのだ。

 そんなジニーに目を見開いたギルド家だが、すぐ微笑みを浮かべる。

 

「頭を下げないで!ジニー!私達の仲でしょ!」

 

「ステラの言う通りだよ!君達のお力になれて良かったよ!」

 

「そうそう!だから気にしないでよ!ジニーさん!」

 

 ギルド家が朗らかに笑いながらそれぞれ言ってジニーに顔を上げるように促す。

 

「いや、だけど……」

 

 それでもジニーは顔を上げる気にはなれなかった。何せギルド家、そして彼らが所属する組織からの援助には本当に随分と助けてもらった。

 なのに、その礼を十分に返せられずぜいぜい頭を下げるしかできなかった。その事がジニーには心苦しく感じずにはいられなかった。

 そんなジニーの姿にその気持ちが理解できるステラとテゾーロは苦笑を禁じ得なかった。

 

「あはは、気にしすぎない!ジニー!」

 

「ああ、それに君達の事を救ったのはあの方の気まぐれなんだからね」

 

 といえ、そこまで頭を下げられると気が引けてしまう。ジニーの顔を上げさせるためにステラは朗らかにそう言い張り、それに賛同するテゾーロが苦笑しながらその事をも言う。

 そんな2人の態度、何よりテゾーロがその事を口にしたのを受けてジニーはようやく顔を上げる。ただ、その顔つきは真剣になっていた。

 

「……だけど、その気まぐれによってウチ達がどれだけ助かった事か……!!」

 

 ジニーが思いを込めてその事実を口にする。そんな姿勢と言葉にテゾーロとステラも同じく真剣な顔つきになる。

 

「確かにね。あの方にとっては気まぐれでも、あの方からお手添えを頂いた者には忘れがたいものなんだからね……!!」

 

 ジニーが言い張るその事に共感するテゾーロは過去を思い返し、物思いに耽る。そんな夫の姿に含み笑いをするステラがジニーの方に顔を向けて言う。

 

「でも話はまとまった筈よ。これ以上気にしすぎるとかえって体に毒よ」

 

 そう言い、朗らかな笑みを向けてくれるステラにジニーは口を閉じ、しばらしくしてから重々しく頷く。

 

「まァ、それはそうなんだけど」

 

 そう言うジニーは空を見上げる。そして思い起こす。あの男――〝暴獣のスサノオ〟との対談を。

 

■

 

時は遡って――

 

 それはジニーが長年その身を苛んできた病〝青玉鱗〟をようやく完治し、ボニーと一緒に仲間達の元へ帰る決意が固まった後の事だった。

 その決意を果たすためにジニーは――

 

「よォ、すっかり元気になって何よりだ。ジニー」

 

「ああ、おかげさまで」

 

 ジニー達を「ワノ国」に連れていった張本人にして「四皇」〝百獣のカイドウ〟の息子であるスサノオ――オレとの対談に臨んだ。

 報告通りに全快できたジニーの姿を目にしたオレは朗らかな笑みを浮かべ、率直にそう言う。そんなオレからの言葉にジニーはそう返し、笑みを浮かべる。ただ、その額には冷や汗が流れていた。

 一見毅然としているように見えるジニーだが、その胸のうちは張りつめていた。だが、それもその筈だ。

 

「(まさか、このウチがあの「四皇」〝百獣のカイドウ〟の息子である大海賊〝暴獣のスサノオ〟を相手にするとはな……!!)」

 

 そう、ジニーは今あの「四皇」の息子にして大海賊である男と対談しようとしているんだ。その状況にジニーが戦慄するのも道理である。

 だが、凄まじきプレッシャーを感じているジニーはそれでも気をしっかり引き締めようとする。

 

「(だけど、ここさえを切り抜けばウチ達は皆――くまちーのところへ帰れるんだ!!だからしっかりしろ!!ジニー!!)」

 

 愛する娘と一緒にあの人達の元へ帰る。それを叶えるためにジニーは怯んだ自身をなんとか奮い立たせ、オレに対して身構えようとする。そんなジニーの姿勢にオレはニヤリとする。

 だが、すぐ表情を少し引き締めたオレが言い出す。

 

「お前が〝青玉鱗〟を完治できたのが理解できたから」

 

「これからは真面目な話をしようぜ」

 

「……!」

 

 雰囲気が変わったオレの姿勢を受けてジニーは息を呑む。それに構わずにオレは続ける。

 

「話は聞いたが、お前らはここを出て向かいたいところがあるんだってな?」

 

 オレが重々しくそう言うとジニーは素早く真剣な表情で応える。

 

「ああ、ウチ達にはどうしても会いたい人達がいるんだ」

 

 その事をはっきり口にしたジニーが続ける。

 

「あんたらに助けてもらった礼は必ずします。だから、その人達の元へ行かせてもらいたいんだ……!!」

 

 ジニーがオレに対してその要求をストレートに伝える。その時の彼女は真剣な眼差しでオレをまっすぐ見つめていた。そんなジニーの姿勢にオレが片眉を上げるのに構わずに彼女が続ける。

 

「この希望を聞いてくれるならば、このウチにできる事であれば何でもやる」

 

「だから、ウチとボニーを行かせてください……!!お願いします……!!」

 

 語気を強めてそう言い張ったジニーが頭を深く下げる。その姿と懇願からなんとしてでも娘と一緒にその者達の元へ帰るんだという強き意思を感じさせられた。

 その事にオレはニヤリとし――

 

「いいぞ!!」

 

 あっけらかんとそう言い放った。そんな回答にジニーが顔を跳ね上げて

 

「――はッ!?」

 

 呆気に取られる顔になった。何せ、ジニーは要求をそう簡単に聞き入れられず交渉が難航するであろうと考えていたのだ。だからこそ要求を認めるような回答を速やかに出されたのに戸惑わずにはいられなかった。

 混乱するジニーの姿からその心情を察したオレは苦笑しながらもさっきのような回答を出した理由を語り出す。

 

「いや、そもそもお前がここで療養生活を送るようになったのはこのオレが独断でお前らを連れていったからに過ぎねェ。それもお前の承諾を得ずにだ」

 

「だからお前らがここを出るのをオレ達が止める筋合いがどこにもねェんだ」

 

「!!」

 

 オレが語ったその事実にジニーはハッとする。そうだ。よく思い返せば、別にジニーがスサノオ達に助けてくれと頼んだ訳ではない。むしろスサノオ達からの手助けを拒んでいた。

 そんなジニーをスサノオがほぼ強引に連れていったのだ。その結果としてジニーが助かったのはそうだが、その事実を考えれば確かにジニー達が出たいのを止めるいわれがないのは道理だろう。

 といえ、その事実を突然突きつけられた故かジニーは戸惑い続けていた。

 

「で、でも。あんたはウチ達を見捨てずに助けた。無関係な筈のウチ達を」

 

「リュドドド。そうだな」

 

 辛うじてジニーがそう言うのを受けてオレは笑う。そう、あの時スサノオは確かにジニー達に手を差し伸べた。

 ただ、スサノオとジニー達には何の関係もない。だから彼女達を助ける義務が存在しない筈だ。にも関わらずにスサノオがジニー達を助けた。

 それは何らかのメリットがあったからに違いない。その事実に対してジニーはそう考えたのだ。そんなジニーにオレは朗らかな笑みを向ける。

 

「ジニー、オレはな」

 

「赤ん坊を抱きながら苦しんでる女を見捨てるなど、さすがにできねェ。ただそれだけだ」

 

「!!」

 

 オレがその事をあっけらかんと明かしたのを受けてジニーは再び呆然とする。その反応にオレはニッとし、そしてチラ見する。

 その視線先にはアマノムとボニーが無邪気に遊んでいて、それを小紫が見守っているという光景が展開されていた。

 

「これがおひさまだぞ〜!」

 

「だー!」

 

「ふふっ」

 

 まずボニーは描いた太陽の絵をアマノムに見せてあげていた。その絵は幼い子供が描いたために下手だが、不思議に温かさを感じさせられる。

 それ故かアマノムがその絵を気に入り、満面の笑みを向けた。そんな子供達の姿に小紫は優しい微笑みを浮かべる。

 そんな風に子供達がオレとジニーの対談が行われるすぐ近くで和気藹々としていた。

 実はジニーには対談が重要なのは分かっているが、幼い娘から目を離す訳にはいかなかった。またボニーもせっかく元気になった母から離れたくなかった。

 そんな母娘の心情を考慮して対談の際にオレ達のすぐ近くにボニーを置く事、そして対談中の退屈を紛らわせるためにアマノムと遊ばせて、その様子を小紫に見守ってもらう事にしたのだ。

 肝心のボニーが問題なく楽しんでいるという事実にオレはニッとした。そんなオレにつれてその光景に視線を向けたジニーも同じく笑みを浮かべた。

 そうしてその場に和やかな雰囲気が流れるようになるが。

 

「それに」

 

 そんな中でオレが少し真剣な表情で言い出す。それを受けてジニーもすぐ気を引き締める。そんな姿勢にオレは笑みを深める。

 

「あんな体になってなお、あんたは我が子を守るために自らを奮い立たせようとした」

 

「そんな意気が嫌いじゃねェんだ。オレは」

 

「……!!」

 

 あの時〝青玉鱗〟にかかり、もはや死ぬしかない状態になってしまったジニーは我が子をなんとしてでも安全なところに連れていこうと全身全霊を傾けようとしていたが、そんなジニーの姿勢がスサノオにすっかり気に入れられたようだ。

 ジニー達を助ける理由になったその事を明かして朗らかな笑みを浮かべるオレの姿にボニーは唖然とする。

 

「……(本当に目の前の男があの〝暴獣のスサノオ〟なのか?)」

 

 ジニーは目前の男に対してそんな思いを抱いた。

 だが、ジニーがそう考えても無理もないだろう。何せ、海賊とは自らの欲望のままに暴れ回るならず者である。それこそが常識だ。

 ジニー自身もたまにそんな海賊と交戦した事があるためにその常識に間違いはないと認識している。それに彼(・)女(・)は(・)あ(・)る(・)事(・)件(・)で(・)常(・)軌(・)を(・)逸(・)し(・)た(・)凶(・)悪(・)な(・)海(・)賊(・)達(・)を(・)目(・)に(・)し(・)た(・)過(・)去(・)を(・)持(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)。

 また今ジニーの前にいるのは海賊の頂点「四皇」の1人で最も凶暴だと称される〝百獣のカイドウ〟の息子で百獣海賊団配下の海賊だ。

 

 その訳もあってジニーは要求を出す時にそれを聞き入れられる代わりに無茶苦茶な条件を突きつけられるんだろうと考え、前もって身構えていたのだ。

 なのに、その予想を裏切ってスサノオが人当たりの良い振る舞いをしてきたのだ。そんな事態にジニーが戸惑わずにはいられなかった。

 混乱を極めたジニーの姿にオレはその背景を察し、苦笑を禁じ得なかった。

 確かにオレには甘いところがある。実際、親父からも「お前は甘ェな」と言われている。そんな自分の事をオレは別に歯がゆく思った事はない。

 

 ――なぜならば、これこそがオレだからだ。

 

 海賊がよく行っている人を虐げる行為がオレには性に合わない。それよりジニーのように度胸がある者には手を貸したいと考えずにはいられない気質だ。まァ、努力もせずに甘えるような奴には全く容赦しないが。

 だが、それでいいと思う。オレはオレらしく振る舞うまでだ。

 

 そう考えたオレは獰猛な笑みを浮かべながらジニーを凝視する。

 といえ、オレもれっきとした海賊だ。さすがにただで手を貸す訳にはいかねェな。

 その考えを固めたオレは姿勢を整えてジニーと向き合う。

 

「まァ、ただある条件を呑んでもらわなきゃならねェがな」

 

「……!!」

 

 突然真剣な顔つきになったオレの姿勢とそこから言い放たれたその言葉にジニーは素早く気を引き締め直した。さっきまでとは一変して緊迫する状況になったが。

 

「(やはり、結局こうなるか!!)」

 

 ジニーにはむしろ案の定の事態だといえよう。ジニーがそこまでそう考えているのは相手が海賊だからなのもあるが、それだけではなく彼女自身の立場にも関わってるからだ。

 実はジニーはある組織に所属しているのだ。その組織こそが「革命軍」である。

 

革命軍――

 

それは「世界政府」を打倒しようとする反世界政府組織だ

最近加盟国と非加盟国問わず各地でクーデターと反乱が勃発しているが、その裏には「革命軍」が関わっているという

今時点では未だに目立たないようだが、その暗躍と影響力を重く見る「世界政府」にその存在を警戒されている

 

 そんな「革命軍」には東西南北の海と〝偉大なる航路(グランドライン)〟にそれぞれ配置される5つの軍が存在する。そのうちの一つ「東軍」をまとめる軍隊長こそがジニーである。

 まァ、そんなジニーは訳あって今は「革命軍」を離れているが……いずれにせよ、「革命軍」のメンバーであるのに変わりはない。

 ジニーのそんな経歴に彼女と関わってきたスサノオ達が気付かない筈がない。そう、ジニーがスサノオ達の素性に気付いたように。

 そしてジニーの立場に「百獣海賊団」が目を付け、これ幸いと利益を得るために一方的な条件を突きつける可能性がゼロではない。

 そんな予想を裏切る事態がさっき生じた事で戸惑ったが、ついにその状況になったのに直面したジニーはこれから突きつけられるであろう条件に対して身構える。

 そんなジニーに向けてオレは獰猛な笑みを浮かべる。

 

「リュドドド、お前に出す条件。それは――」

 

 そして言う。

 

「貸しにしてもらう事だ」

 

「!!?」

 

 オレが出した条件の内容にジニーは驚愕する。




☆ジニーに対してスサノオが出した条件
 それはー貸し!?
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