「ウォロロロロ!!荘厳な景色だ!!」
カイドウはそう感銘の声を上げた。
何せ――彼の目前には海賊王への道のりを記した石〝ロード歴史の本文〟が、それも2つあるからだ。1つは元々ワノ国にあったもので、もう1つはモコモ公国から手にしたものである。これで海賊王の座にさらに近付けたといえよう。残りの2つのうちの1つの在処は分かっている。いずれ〝ビッグマム〟と戦う時に奪えばいい。あとは最後の1つの在処を把握して手にするのみ――
カイドウの頬がつい崩してしまう。世界中の海賊達より――大嫌いな〝ビッグマム〟と〝白ひげ〟より最も海賊王の座へ一歩を踏んでいるからだ。
「ウォロロロロ!スサノオ!キング!クイーン!よくやった!!」
カイドウ――親父が振り返ってオレ達を褒めてくれた。今回の航海で大きな成果を出した者達を褒めずにはいられないのだ。
「リュドドド!いや、元を辿ればヤマトがおでんの日誌を見つけたかげさ!」
「ウォロロロ!いんやぁ、在処を知るのと実物を手にするのとはまるで違う!そういう意味ではよくやってくれた!お前ら!」
親父から褒めてくれたオレがヤマトの手柄の事を言っても、親父がオレ達の成果の重要性を説明し、また褒めてくれた。ニャリとするオレをよそにキングさんが親父に声掛ける。
「いいのか?カイドウさん、2つの〝ロード歴史の本文〟を揃ってここに置いて――」
キングさんが2つの〝ロード歴史の本文〟の置き場所に懸念を見せた。
オレ達が今いるのは――水没した「本来の」ワノ国の洞窟であった。
いや――ビックリしたぜ。以前ワノ国の海底を潜水してきたジャックから聞いてたが、まさか本当にワノ国の海底にワノ国もあったなんてな……
そう、魚人のジャックが試しにワノ国の海底を潜水してみた事があったのだ。そして「本来の」ワノ国、〝ロード歴史の本文〟の存在を知らせてくれた。全くジャックは本当にやってくれたぜ!!
――聞けば約800年前まではワノ国が普通の島だったが、ある時期に高い壁を島中に囲い鎖国体制を敷くようになった事で事態が変わった。雨水が溜まってきた為に土地を捨てて山の中腹で新たに土地を広げて都を築いた――なんだってな。現在のワノ国の地形にはそんな秘密があったとは……しかし、そうまでしてワノ国を守るとは……約800年前は一体何を相手取っているのか……?
今いる場所そしてワノ国の歴史に関しての思案に耽っているオレに気付かず親父はキングさんの懸念に対して説明した。
「確かに一度奪われてしまった事がある以上、同じ場所に置き続けるのはどうかと思っていたが……」
「ロジャーの時は将軍の後継ぎのおでんの奴がいたからな……奪われても仕方がなかった。すなわちロジャー海賊団は特例なんだ。それによく考えてみれば、ここ以上の隠れ場所はねぇ……理解したか?」
「……あぁ、確かにここ以上はねぇな」
親父の説明にキングさんは一応納得した。そばで聞いていたオレも理解できた。
確かにワノ国の海底にワノ国が存在するなんて発想も出ないし〝ロード歴史の本文〟をここに置くのは無問題だよな〜
そういうわけでオレ達の間には〝ロード歴史の本文〟の置き場所はここでいいんじゃねという空気が漂っていた。あとは――
「ウォロロロ……ミンク族の処遇はどうなっている?」
親父は後始末を担当しているキングさんとクイーンさんにミンク族の処遇を問いかける。その問いに2人は答える。
「あぁ……ミンク族はオレ達に反抗的なんだ。とりあえず――」
「ムハハ!戦士達は全員、囚人採掘場に送っておいたぜ〜♪」
「……住民を方は5組に分けてそれぞれ白舞、鈴後、希美、兎丼、九里に送った。ただその中でも使える奴は――」
「オレ達百獣海賊団に入ってもらったぜ!たとえ嫌でもな!!」
「これが百獣海賊団に入る事になったミンクのリストだ」
キングさんからリストを受け取った親父にオレはついぼやいてしまった。
「でもよ……ミンク族を無理矢理連れて行ってしまったからな……快く戦力になってくれるのはなかなか難しそうだな……」
そうなのだ。〝生まれながらの戦士の一族〟とまで謳われたミンク族の強さを見込み、戦力にしようと考えるまではいいが、連行方法があまりにも強硬的だ。何せ――故郷を滅ぼしてしまったから――このやり方では反感を買ってしまった……彼らを戦力にするのには骨が折れるだろうな……
オレのその呟きを聞き拾った親父はオレの方を向いて話す。
「しょうがねぇだろう!――それなら、反抗の意思を折らせればいい!いつものようにな!」
「――だが……」
いつものやり方を示す親父にオレは眉をひそめるが親父は突如ニャリとする。
「それに――今のミンク族に期待しにくくても――ガキ達がいる!」
「!」
「少なくともまだ物心つかないガキを教育すれば――戦力になれる筈だ!!」
親父がそう言い放つとオレも頷く。
「――確かにそういうやり方なら例え時間がかかるだろうが――戦力になる期待はできる……」
自身の考えを肯定するオレにニャリとする親父は続いてオレにミンク族についての希望を問いかけてきた。
「それはそうとして……スサノオ、ミンク族について何か希望はあるのか?」
何せ〝生まれながらの戦士の一族〟だ、オレがそれに何の興味を持たない訳がないだろうと踏んでだろう……そして親父のその直感は正しい。もう既にミンク族に関しては考えがある!
「リュドドド……「こいつだ!」とビビッと来た奴が5人いてな……そいつらを暴獣海賊団に入れようと思う!」
●
半球状の黒い檻に囲まれた広い空間にオレを含めた数人が立っていた。ただその数人は2組に分かれて向かい合っていた。オレが率いる組ではオレはもちろんヤマトとフドウとハッテンが揃っている。対しての組ではオレが見込んで選んだミンク族であった。このオレが見込んだのは――
ライオンのミンク、シシリアン。
シマウマのミンク、ジョバンニ。
キツネのミンク、コンスロット。
ライオンのミンク、ペコムズ。
そしてジャガーのミンク、ペドロ。
彼らは国の仇であるオレを睨み付けている。だが威嚇するだけに留まってオレ達の意図を探っているようだ。
うむ、いい殺気だ。それでこそ見込んだミンクだ。
「来てもらったのは他でもねぇ……オレ達、暴獣海賊団がお前らを迎え入れる為だ」
オレがそう言った途端にミンクの怒りが爆発した。
――まぁ、無理もねぇか。国を滅ぼした者の下に付けと言われたら、そりゃ殺意が湧くわ。
「何だと⁉お前達の仲間になれというのか⁉全力でことわわぁぁぁぁぁるぅ!!!」
「あぁ、シシリアンの言う通り。断る!!」
「あぁ⁉オレ達をナメんじゃねぇぞ!!」
しばらくミンクがオレに怒鳴り続けていた。オレが黙ってそれを聞き続けていたのは彼らの怒りが間違っていないからだ。聞く義務はある。
といえ……そろそろ止めさせないとな……オレを慕ってくれているフドウとジャックが自身を抑えられずにミンクを皆殺したがっている……一応オレが彼らに手を出さないように指示してある為に動かないようにしているが。
「……分かってるよな?お前ら……」
「……はい、しかし……」
「チッ……」
オレの言葉をフドウとジャックは理解はできているが、納得はできていない様子だった。まぁ尊敬しているオレをバカにされて黙っている訳にはいかぬからな……本来は。
だがオレを尊敬してくれている上で指示を聞いてくれるなんてありがたいよな……
そう考えているオレは事態を切り替える為に大声を出す。その大声にミンクもビクッとする。
「おい!!」
「「「⁉」」」
「お前らの意思は分かった。それに関して詳しい話をしようじゃねぇか」
オレの言葉に一旦口を閉じるミンクはしかし、オレを睨み続ける。
「お前らとオレ達で勝負をしようじゃねぇか」
「「「⁉」」」
「ルールは簡単だ。どちらかが全滅したら負けだ」
「お前らが勝ったら自由の身だ。オレ達も追いかけないようにしよう」
「ただ――お前らが負けたら暴獣海賊団に入ってもらう。文句を言ってもだ」
「どうだ?飲むか?」
オレの提案にミンクは息を呑む――そんな中、1人が叫ぶ。
「その勝負、乗った‼」
「⁉シシリアン!勝手に決めるな!!」
ミンクが相談する間もなくシシリアンが勝負を受けたと宣言してしまった。彼の勝手さにブチ切れたペドロが怒鳴った。だが――
「だが!勝ったら自由の身だぞ!受けない選択肢はないぞ!!」
「く…それはそうだが……」
シシリアンの言い返しにペドロも呻く。そんな彼に弟分のペコムズも声掛ける。
「兄貴!オレも受けようと思うんだ!」
「!お前……」
「ペドロ、受けるのはミンクの為なんだと思うぞ」
「あぁ……それに国の憎き仇を討てる機会……それを逃したくない」
「お前達……」
ジョバンニ、コンスロットもシシリアンの意見に賛同だった。自身以外の意図にペドロも呻くが――
「……そうだな、やろう」
ペドロも腹を決めて勝負を受ける事に決めた。
「おう、決まったのか」
「あぁ!我々ミンクが自由への道を歩くのをな!!」
そう叫んだシシリアンは与えられた剣を抜き、オレの元へ駆けていった。残りの4人も続き、オレも「王武」を手にし構える。
「……(まずはあのスサノオを――)」
そう考えながらオレに駆けていくペドロの前に影が現れた。
「⁉何だ⁉」
「僕はヤマト!カイドウの息子でスサノオの弟!君の相手は僕だ!!」
その影は〝百獣のカイドウ〟の「息子」でオレの「弟」、ヤマトだった。「彼」が金棒を構えていた。
「「「⁉」」」
「我はスサノオさんの盾――」
「スサノオさんに逆らう不届き者が……破壊してやる」
「ふふっ、相手を願おうか」
コンスロットの前にはフドウが、ジョバンニの前にはジャックが、ペコムズの前にはハッテンが立ち塞がっている。
「!!」
「おいおい、何してる?お前らの相手はオレだけじゃねぇぜ?」
冷や汗をかくシシリアンにオレはミンクのミスを指摘する。指摘を受けたシシリアンは――
「(相手はあのイヌアラシさんとネコマムシさんと2対1で持ちこたえていた怪物……なら――)」
シシリアンは真剣な表情でオレを見つめ、剣を両手で握る!
「(オレの持てる限りの全力をこの剣に込める!!)ウォオオオオオ!!」
そう雄叫びを上げたシシリアンは右上へ両手を振り上げ、そして剣に電流を流す。
オレも「王武」を構える――
「くらえ!!〝獅子の爪〟!!!」
シシリアンはオレに向けて電流と全力を込めた剣を打ち下ろす――が。
「〝雷光八卦〟!!!」
オレの斬撃がその渾身の一撃を破った。剣を折り、シシリアンの身体にも傷を負わせた。
「⁉が…っ!」
渾身の一撃を破られ、傷を負わされたシシリアンはそういうダメージにより倒れてしまった。
「く…強い……!」
「悪いな、オレはカイドウの息子として負ける訳にはいかねぇんだ」
オレがシシリアンを見下ろし呟く。その呟きを耳にしたシシリアンは悔しそうに唸る。
「み、皆は……?」
そしてシシリアンは仲間の状況を知ろうと周囲を見回す。オレも周囲を見渡る。
●
「く…いい加減にしろ!!」
「そっちこそ!」
ヤマトとペドロは自身の得物でアイテに向かって振り回していた。相手に向けて振り回して攻撃し、相手からの振り回しを防御するの繰り返しだった。
「(こんなに幼い子が……予想外だ!!)」
幼い筈の相手の強さにペドロは焦った。
「(どうすれば無力化させられるのだ……!)」
そして終わらない対決にヤマトも苛立つようになった。
「(むぅ~なかなか終わらないな!なら……)」
ヤマトはある作戦を思いついた。
そしてしばらく振り回しの繰り返しを続ける2人。
すると――
ペドロの剣がヤマトの肩にかかった。
「うっ⁉」
「!!(今だ!!)」
ペドロは剣を由来してヤマトに電撃を加えた。
これで無力化させられる!
だが――
ヤマトの左手が剣を握った。剣を掴まれたペドロは目を見開く。ヤマトは肩へ剣をかかられて電撃を加えられても――諦めない目をしていた。そして金棒を持つ右手を上方に構える。その金棒をつい見上げてしまうペドロをよそにヤマトは右手を打ち下ろす。
「〝雷鳴八卦〟!!!」
ヤマトの金棒がペドロの頭を叩き込んだ。
「が……!」
打ち下ろされた金棒に頭を叩き込まれたペドロは気絶しながら倒れた。倒れたペドロを見下ろすヤマトは宣言する。
「僕の勝ちだ!!」
●
「くそくそ!!」
「無駄なり」
コンスロットがフドウに剣を振り回していた。普通に考えればフドウがそれによってダメージを受けてる筈が――彼にはダメージが見受けられず、ただ微動だにしない姿勢だった。
何せルナーリア族であるフドウの身体は頑丈でできている。もちろん、その事実を知らないコンスロットは更なる力を込めて剣を振り回していく。
そして――嫌な音がした。
「……え?」
振り回していたコンスロットの剣が折れてしまった。それを呆然とコンスロットは見つめていた。そんな彼をよそにフドウがついに動き出す――
「スサノオさんに手を出す者に裁きを――」
そう呟くフドウが両手で剣を上方に構える。そしてその剣が燃え上がっていく。
絶句するコンスロットに向けてフドウがカッと目を見開いて剣を打ち下ろす。
「〝裁火一閃〟!!!」
その一撃をコンスロットがただ身に受けてしまった。彼が気絶しながら倒れていくのを見つめるフドウが宣言する。
「スサノオさんの敵はオレの裁きにより滅ぶのみ」
●
「…」
「はぁ!!」
ジャックとジョバンニも自身の得物で相手に向かって振り回していた。しかし――
「うがぁぁあ!!」
突如雄叫びを上げたジャックは両鎌を投げ捨てた。
突然のその行動に驚くジョバンニの剣をジャックの左手が握り――
「なぁ⁉剣が……!」
ジョバンニの剣を折れさせた。その事態に驚愕するジョバンニの顔をジャックの右拳が突いた。その衝撃で飛ばされていくジョバンニを見つめるジャックが宣言する。
「このオレが……スサノオさんの敵を……破壊する!!」
●
「くそ!素早い!」
「皆がもう終わらせたようだし、そろそろ終わらせよう」
ハッテンの高速移動に惑われながら攻撃を受けてしまっているペコムズの腹をハッテンのキックが突いた。その衝撃で飛ばされていくペコムズを見つめるハッテンが呟く。
「しかし……目、可愛かったよな……」
●
「そ、そんな……」
「いい戦いだったな」
仲間の敗北に絶句してしまうシシリアンをよそにオレはヤマト達の奮闘に満足する。
正直心配だったが、ヤマト達も大きくなってきたし――そろそろ甘やかしは程々にしなければならねぇ……海賊として生きる以上、敵との戦闘を体験しなければならねぇと考えていた。
ヤマトが剣を受けた時は背筋が凍ったが……いやはや、ああいう作戦を思いついただけでも大したもんだ!
フドウもジャックもハッテンも頼もしくなってきて……これで敵との更なる戦闘を体験させても大丈夫だな……
思案に耽っているオレは俯くシシリアンに視線を移す。
「勝負ありだな」
「…」
「シシリアンよ、オレはいつまでもお前らの挑戦を受けてやる」
「!」
オレの言葉にバッと顔を向けてくるシシリアン。
「お前らの国を滅ぼされた怒りと恨みは全てオレが受けてやる!!」
「悔しけりゃ、オレ達の元で腕を磨け!!」
「そんでオレに溜まった怒りと恨みを喰わせてみろ!!勝ってみせろ!!」
オレがそうシシリアンに言葉を送りつけてやる。
オレからの言葉を考え込むシシリアン。やがて――
「勝負は勝負――お前達、暴獣海賊団に入って働いてやる……」
シシリアンがそう呟く。
「だが!!」
シシリアンがオレをビシッと指差す。
「憶えとけ……!いつか――必ず……必ずだ……お前の首をとってやる!!」
シシリアンがそう宣言する――その宣言にオレはニャリとする。
――こうしてミンク族の将来有望な若者達が暴獣海賊団に加入した。