黒炭オロチと「百獣海賊団」に支配される「ワノ国」。
かつては広大に緑々と広がる森、生い茂る花と草木、その源には清らかに流れる川そして美しい海――〝生命〟があふれていた国だった。
それが彼らの圧政によってすっかり荒れ果てて――荒地と化してしまった。
……ただ、ある男の影響により息を吹き返し――〝生命〟を取り戻せた上で発展できた地域もまた存在するようだが。
とにかく、ほとんど荒れ果てた地になっているのが今の「ワノ国」のあり様だ。そんな荒野をトボトボ歩く少女が1人いた。
「……」
荒野をたった1人で歩く故か心細そうに見受けられる青緑色の髪の少女。
名は光月日和。
ワノ国最強の侍だった光月おでんの娘だ。
彼女はつい4年前までは平穏な生活を送っていた。
優しい母と父。立派な侍になってみせると意気込む兄と賑やかな家臣達。そういう人々に囲まれる彼女は幸せだった。その幸せがこれからも続くのだと――そう思っていた。
それが4年前のあの日、全てが変わってしまった。
そう――城が燃えたあの日で。
城が炎に包まれる中で怯える兄と私を母が必死で抱きしめてくれた。そんな私達の前にあの怪物が現れた。
『光月おでんの家族だな?』
あの強かった父を討ち破った怪物が母を殴り倒し、兄を捕まえ――そして何やら失望して投げ捨てた。その直後に今も私の心を蝕む言葉を残した。
『憶えとけ、お前らがそんな目に遭うのは単に弱いからだ』
『この世は弱肉強食、どうかにするには力を身につけなきゃならねェ……』
怪物が去った後に炎を斬り裂いて現れた家臣達と起き上がった母。
そしてー…
全てを失った。
兄と家臣達は母の〝力〟で未来へ去ってしまい、母は詩を残して死んでしまった。
自身に残されたのは家臣の1人〝河童の河松〟のみ。
それから4年。燃え上がる城から脱出した私と河松は「百獣海賊団」と黒炭オロチの手から逃げながら放浪生活を送った。
『姫!!カッパ踊りでござい〜〜♪』
『……』
喪失感に涙を流す私を慰めようと彼は必死におどけて食べ物をとってきてくれた。
だが、そんな彼も刺客と盗賊の襲撃を逃れながら私を優先する故に少しずつやせ細くならざるを得なかった。その姿を見続けるしかなかった私は実に心苦しかった。
そもそも、彼は刺客と盗賊をも容易に退ける腕を持つ強者である。にも関わらずに疲弊している。なぜそうなったのか?
――私だ。私の存在が彼を縛っているのだ。
力がない弱者である私が強者である筈の河松の足手まといになって彼を苦しめている……
その事実に心を掻き乱される私の頭にその声が響く。
――そんな目にあうのは単に弱いからだ。
……もうこれ以上河松を苦しめてはいけない!そうするには……彼の元から去るしかない。
少しずつやせ細っていく河松の姿に自身が彼を追い詰めるようで、そして自分の無力さを見せつけられるようでとうとう耐えられなくなった私は彼の元から去った。
『河松は1人で生きて……私はどうにか生きてみるから』
それから――獰猛な野獣と凶悪な盗賊がうつろく荒野をたった1人で歩くのは怖くて心細かった。それでもなんとか足を進めてみせた。
荒れ果てたこの国でも整っているらしい「花の都」に一度足を運んでみたが……
『ムッハッハッハッハッ!!』
『……!』
間の悪い事にその入口にちょうどどこから帰還したらしい黒炭オロチがいた。
『黒炭オロチ……!!』
全ての怨敵である黒炭オロチの姿に私が憎々しげに歯を食いしばるのをよそに彼は上機嫌で高笑いした。
『今日も「光月家」の支持者が無様に処刑されたな!!ムハハハハ!!』
『全く!!落ち目の奴らを支持するなんて――それが自らの死を招いたから、笑いものだ!!なァ、お前もそう思うだろ!!――狂死郎!!』
『――はっ、全くもってその通りでございますね……』
処刑された「光月家」の支持者を嘲笑うオロチに〝狂死郎〟という侍も相槌を打つ。
『……』
オロチが「花の都」に入ったのを目にした私はそこに入ってみる気が完全に失せ――踵を返した。
それから、どこかの貧しい村に身を隠そうと思いながら適当に歩いた。刺客と盗賊などに見つかる危険性を考え、それを避けるために森の中を歩くようにした。
やがて――
ガルルルル……
「きゃッ!?」
突然の唸り声に驚いた私が尻もちをついた。唖然とする私の目の前には……
大人を数人も食えるであろう大きな獣が唸りを上げて私を睨みつけていた。
「あ、あ……」
「ガルルルル……」
私の顔が青ざめ、慌てて後ずさろうとする。しかし恐怖のあまりに腰が抜けたらしくその動きは遅かった。
逃げようとするエサを獣は見逃すつもりはもちろんなく、食おうと素早く襲いかかろうとする。
「あああああ!!!」
自身に迫ろうとする獣の姿、むき出される牙に私は自分の命の終わりを感じずにはいられず絶叫した。
――ここで死ぬの……?
――獣のエサとして無様に死ぬ……?
――何もできないただの弱い女の子として……?
――何も成し遂げていない何者でもない子供として……?
獣が自身を噛みつこうとするのをただ見つめるしかできない私の頭に数々の冷ややかな言葉が容赦なく浮かんだ……
――その瞬間
プツン
私の中の何かが切れた。
そして――熱きものが込み上げた。
――ふざけるな。
――私は何としてでも生きてやる。
――絶対にここから生き延びて強くなってやる。
――強くなって強くなってオロチとカイドウを討ってやる。
――奴らを討って全てを見返してやる。
――私こそが弱者なんかじゃなく強者なんだと!!!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
私の中の何かが劇的に変化したのに伴って上げた絶叫も雄叫びへ声色が変わった私は近くにある石を掴み、獣の口内に勢いよく投げた!!
「!?」
エサからの思わぬ攻撃と喉に感じる強烈な違和感により飛びかかっていた獣は私の後ろへぶつからざるを得なくなった。
「ゲホッ!!ゲホッ!!」
「はァ…はァ……!」
瀬戸際で免れた私はむせる獣の隙を抜かりなく突き、すぐ近くにある大きな石を抱こうとする。
「ゲホッ!!」
一方で喉に詰まった石を吐き捨てて喉の強烈な違和感が解消できた獣はすぐエサを見ようとする。そしてその目が見開いた。
何せ、そこには女の子が持ち上げられない程の大きな石を抱き上げている私の姿があったからだ。
鬼気迫る表情をする私の目がギロリと獣を睨みつけた。その鋭く突き刺すような視線、そして――強き〝
そう……ただの幼い少女に獰猛な野獣が怯えたのだ。
恐れ入るあまり、なりふり構わずにすぐ逃げようとする獣に向けて私が石を力いっぱい投げつけた。勢いよく放たれたその石が獣の目に見事当たった!!
片目あたりを傷付けられ、その痛みに悶える獣を容赦なく威嚇するために私は雄叫びを上げた。
「アアアアア!!!」
「……!!!」
ただのエサと思われた少女からの思わぬ攻撃、そして放たれる強き〝圧〟により心が折れてしまった獣は私の元から尻尾を巻いて逃げ去っていく。
危機を辛うじて乗り越えた私はその途端に緊張の糸が切れ、へたり込んだ。
「はぁはぁ……やった……」
だが、自身が成した事に私の口角を上げずにはいられなかった。達成感に浸る私――に近付く影が1つ。
「!」
その影に私はハッとし、素早く視線を移す。そこには――
「間違いねェ、今のは……」
若い大男が唖然とする様子で立っていた。
彼はただの少女が獰猛な野獣を打ち負かしたという事実はもちろんだが、私が先程放った〝圧〟の正体に心当たりがある故に心から驚愕していた。
「今のは……〝覇王色〟……!!この子が……」
「〝覇王色〟……?……っていうか、あなたは……?」
彼が口にした聞いた事がない言葉に私は首を傾げたが、すぐ警戒して目の前の男に身分を問いかけてみる。
すると彼は平静に答えた。
「ああ、オレはスサノオだ。お前は?」
「私は……ひ……」
彼――スサノオが名乗り、逆に問い返す。それを受けて私は最初こそ率直に名乗ろうとするが……
……いや、もしかしたらこの人は刺客とか盗賊かもしれない……なら、ここは――
「ひ……名はありません……」
「……そうか」
用心のために私は名を口にしない事にした。
その答えにスサノオさんは眉をひそめた。その様子に私はある可能性を考慮した。
もしかしたら、彼は見かけによらず優しいかも……
スサノオ――オレは今、強大な素質を秘めると思われる少女と対面している。
いつものように「ワノ国」の何もねェところを散歩していたら、大きな獣が幼い少女に襲いかかろうとする事態に遭遇した。
その危機をすぐ救おうとしたら――なんと、他でもならぬ少女が〝覇王色の覇気〟を覚醒させ獣を打ち負かしたのだ!!
実に並大抵ではない事を成しやがった少女に興味を惹かれねェ訳がねェ。まさか、ただの散歩で思わぬ人材に巡り会うとはな……
それはそうとして、名を問いかけたら名がないと答えられたが……これはウソだな。
その答え、そしてその際の少女の様子から察しておそらくオレ達とオロチに知られてはまずい身分だな。
……だが、せっかくの有望な人材を逃したくねェし……よし、ここはウソに乗ろう。
そう判断したオレは少女に向けて微笑みを浮かべる。
「よし、オレがお前の名を考えても?」
「は、はい……」
「う〜ん」
オレは空を見上げて少女の名を真剣に考え込む。
少女の名――いや、女性のもしかしたら生涯使うかもしれない名を決めるからな。慎重にしなければな……
女性の名には花の名前が似合うんだろう。さて、どの花が良いか……よく見れば少女の容姿は良い、むしろ美しい……そういえば、あの花……
そこまで考え込んだオレはふと以前「花の都」を散歩する時に花屋で自身の目を最も引き付けた花の事を思い出した。
美しき薄紫色の花をー…
「〝小紫〟――小紫はどうだ?」
「〝小紫〟……いいんですか?そのような素敵な名を……」
「無論!良いに決まってんだろ!」
オレは決めたその花――〝小紫〟の名を口にしてみると気に入ったのか少女が顔を輝かせた。その輝きにオレも笑みを浮かべる。
気に入って何よりだ。さて、ここからだな……
そして少女――改め小紫に対してオレは気を引き締める。
「名は決まったし――小紫」
「はい」
「お前、「暴獣海賊団」に来ねェか?」
「「暴獣海賊団」……?」
そう、オレは小紫に勧誘を試みた。突然の事で、しかも初めて聞く名に彼女は首を傾げる。
「まァ、「百獣海賊団」の傘下だがな」
「ひ、「百獣海賊団」⁉」
だが、その際に「百獣海賊団」の名を上げると小紫が激しき嫌悪感を示した。
……まァ、彼女の身元が推測通りであれば確かに仇敵の元へ行くなんて考えられねェんだろうな。だが――
「別に「百獣海賊団」に入れとは言わねェよ。オレが率いる「暴獣海賊団」に入ってみねェかと言っただけだぜ?」
「いや何、お前と年の変わらねェ子供がたくさんいる。気まずさを感じる事はねェんだろうよ」
「お前なら強くなれる。それ程の素質が埋もれるのは嫌だしな!」
「で、でも……」
彼女を何としてでも欲しいと考えているオレは根気強く勧誘を続ける。それを受けて小紫は俯く。
彼女はその勧誘に乗るべきか否か考え迷った。だが、そんな彼女の様子を目にするオレはこう考える。
……小紫が勧誘を断らずに悩むという事は……
オレがそう睨むのをよそに小紫が言い出す。
「あ、あの……考えさせてください……」
「ああ、構わねェぞ」
その要求をオレは異議なく受け入れる。ただし、アドバイス……のような言葉を付け加えて。
「オレはお前の意思を尊重するが……他に行き場所があるとは思えねェがな」
「……」
その言葉を聞いた小紫は黙り込む。そして彼女が思案し始めるのをオレも黙って見る。
さて、どんな決断をしてくれるか……
私が父上、母上の仇――「百獣海賊団」……の傘下といえ、「暴獣海賊団」に入る?
っていうか、そもそも……私が海賊になる?女子の私が?そんなの……あれ?そういえば……
父上も、そして女の母上も海賊だったっけ?それならば私が海賊に……いやいや。
「百獣海賊団」に関係する海賊になんて……
海賊になるか否かという選択肢を受けた私は考えに考えてみせた。それでも決められず、苦悩する始末だ。
苦慮する私の頭にある声が甦る……
『憶えとけ、お前らがそんな目に遭うのは単に弱いからだ』
『この世は弱肉強食、どうかにするには力を身につけなきゃならねェ……』
……そうだ、そうだよね。もうこれ以上奪われないため、そして新たに何かを手に入れるには強くなるしかない!
それに父上だって、その父上を討ち破った海賊だって海を渡って強くなったんだ。ならば、私も海を渡って強くなるんだ!
ついに決断を下した私はスサノオさんをまっすぐ見上げる。
「――スサノオさん」
「ん?」
「私を――「暴獣海賊団」に入れてください」
私の決断を聞いたスサノオさんは笑みを浮かべた。
「リュドドド!!よく決断してくれた!!」
「はい」
彼が喜ぶのを受けて私は背筋を伸ばし、しっかり頷いた。
これから……私は海賊なんだ!
その覚悟を決めた私はスサノオさんの言葉を待つ。そんな私に向けて彼は言う。
「よし、じゃあ行くか。「鬼ヶ島」へ」
「!!?」
その途端に私の目の前でスサノオさんの姿が変わっていく。人間の姿から――大きな竜の姿へ。
その姿を目にした私は――感銘を受けた。
……なんて大きい。大きくてたくましくて――綺麗……
立ち尽くした私に竜に変身し終えたスサノオさんが話しかける。
「よし、小紫。オレの背中に乗れ」
「あ、あ……は、はい」
その言葉に従って私は彼の背中に乗り込んだ。その途端にスサノオさんは羽ばたき、飛び立った!
「!!?わぁ……!」
空を飛ぶスサノオさんの背中にしがみつく私の目に入ったのは――
形容する言葉が見つからない、また「ワノ国」の荒れた現状さえも気にならない程の絶景だった。
地に足をつける時はあまりに遠く感じる雲が今は手が届きそうな距離にあり――
さっきまで歩いてきた地が遠くに見えて――
何より……太陽の姿を地に足をつける時より近くに感じられた。
その絶景に私の魂が揺さぶられた。
「リュドドド!!驚いたか!!これが空から見える景色ってやつだ!!」
「はい!綺麗……」
先程までに抱いた不安も吹き飛んだ程に幸先が良かった――
「着いたぞ」
私はしばらく空からの景色をたっぷり楽しんだが、とうとうスサノオさんは「鬼ヶ島」に到着してしまった。
景色の鑑賞が終わってしまった事でガッカリする私の姿にスサノオさんが苦笑を浮かべる。
「リュドドド……ガッカリすんなよ。時間があれば空へ連れていってやる」
彼は変身を解きながら私を慰めてくれた。その言葉に私の顔が明るくなるもののハッと我に返る。
いやいや!私は強くなるためにここに来たんだ。景色を見て楽しむ場合じゃない!しっかりして!私!
この場に来た理由を思い出した私は自分に喝を入れる。そんなところに突然歓声が湧き起こった。
「おっ!お帰りなさい!若様!」
「散歩は楽しめましたか!」
「若様!若様!」
「鬼ヶ島」の入口あたりにいた海賊達がスサノオさんを歓迎した。そんな事態に面食らった私に海賊が気付く。
「若様?そのガキは……?」
「おう、将来有望だから拾ってきたぞ」
「またッスか!物好きですね〜」
「でも、確かに若様が拾ってきたガキは年齢の割には中々強いよな……」
私の存在に関しての疑問に対してのスサノオさんの答えに海賊達が笑みを浮かべた。そんな彼らの言葉を耳にした私は冷静に考察する。
どうやら私を拾ってくる事柄は珍しくないようだ……そういえば、「暴獣海賊団」には私と年の変わらない子供がたくさんいると言ったっけな……
もしかしたら強くなるには他の子達との競争をしなければならないかも……
そう考えを巡らせる私はふとある事に気付き、海賊達に声をかけてみる。
「すみませんが、若様って……?」
「あァ?知らねェのか……お前を拾ったスサノオ様はな、「四皇」〝百獣のカイドウ〟様の息子だぜ」
「百獣海賊団総督の息子だからオレ達は〝若様〟って呼んでいるぜ」
「お前はどうも若様に気に入れられてるようだが、調子に乗らねェ事だぜ」
「ああ、ここは〝力〟こそが全てなんだからな。弱かったらこき使うからな?せいぜい頑張って力を付けろよ?」
「……!!」
海賊達から様々な事を聞いた私はその内容により頭を殴られたような衝撃が走った。
何せ、私を拾ったのがよりにもよって――あの怪物の息子だったんだから……
愕然とした私はゆっくりスサノオさんに視線を移す。そしてその姿が目に映った途端に私の中に熱きものが込み上げた。
父上を討ち破り――私の全てを破壊した怪物……の息子!!……ここで仇を討つ……!!
私が怒りのままに動き出そうとし――その瞬間に私のわずかな理性がささやく。
待て。これは――好機だ。カイドウの息子のそばなら誰も私に手を出せないだろうし、過酷かもしれないが強大な力を手にできるかもしれない!
そう考えた私は自分を抑えるために深呼吸し――辛うじて口を開く。
「スサノオさん……カイドウ……様の息子だったんですね」
私が俯きながら重々しくそう言うのを受けて彼は――なぜか困った顔をする。
「……まァな……だが、オレはその事で色眼鏡で見られたくはねェな……」
「親父は親父、オレはオレなんだからな――オレはただ、オレ自身として動きたいんだ」
「……!!」
自らの素性、あり方に関してスサノオさんが真剣な表情でそう語る。その考えに対して私は複雑な思いを抱いた。
……この私は大名の娘として生まれた。その事に誇りはある。
だけど、私自身は何者でもない自分として動きたいと考える事もたまにある。だからその考えにはつい好感を持った。
だが、両親の仇の子の考えに賛同してしまったという事実に私は苦悩せざるを得なかった。
そんな私をスサノオさんは真剣な目で見る。
「お前も――〝お前〟として動け。たとえ、どのような動きだろうが……オレは受け入れるぜ。ちゃんと分かっててそれでも拾ったんだからな」
「!!!」
彼が言い放ったその言葉に私は息を飲む。その内容はまるで私の正体を分かっているというように感じたからだ。故に私の心臓を鷲掴みにされたかのような気がして冷や汗をかいた。
「……どういう意味でしょうか?」
辛うじて何事もなかったように振る舞う私がその問いかけを投げかけてみた。
それを受けてスサノオさんは――あっけらかんとした。
「ん……お前が何を考えてここに来てるんだろうが、オレがそれを受け入れる!!オレの陰にいろ!!だからよォ」
「だから安心して強くなれ!!」
「!!」
そう言い放ち、豪快に笑ってみせたスサノオさんの態度と言葉に私はさっきまでのとは正反対の感情――そう、安堵感を覚えた。
「それはそうとして、さっさと行くか。オレ達「暴獣海賊団」へ」
「え、は、はい……」
スサノオさんの思わぬ態度とそれに抱いた自身の感情に戸惑った私をスサノオさんが連れて「暴獣海賊団」の元に向かう……
「あ!お兄さん!」
「スサノオさん……」
スサノオさんと私がある部屋に足を運ぶとそこで「暴獣海賊団」らしき子供達が迎えた。
少し目を見開く私に向けてスサノオさんは「暴獣海賊団」を紹介する。
「紹介しよう。こいつはヤマト……オレの「弟」だ」
「……ん?「
ヤマトの事を紹介された私はカイドウの息子がもう1人いるという事実に衝撃を受けるも一瞬、ある事に気付き呆然とする。
「弟」として紹介されたヤマトさんはどう見ても……「
「僕は「
「まァ、そういう事だ」
「……あ、そうですか……」
そういう趣味を持つ方もいるんだな……
衝撃のあまり頭が真っ白になった私もそういう事にして思考を止めた。そんな私をよそにスサノオさんは紹介を続ける。
「で、こっちはフドウでこっちはハッテンだ」
「……」
「よろしく」
続いて紹介された黒ずくめの男達――まずフドウさんは何も言わずに私を見下ろす。ハッテンさんの方は礼儀正しく挨拶してくれたが。
「こっちはジャック」
「……」
「……?」
ジャックさんもフドウさんと同じく無言で私を見下ろした。
2人がとる凄みのあるその態度にさすがに疑問を抱く私にスサノオさんが話しかける。
「他にもまだまだいるが……多いから紹介は後でな」
「はい」
他の者達の紹介に関してそう言われるのに私は承知した。その反応に笑みを浮かべて頷いたスサノオさんは「暴獣海賊団」に顔を向ける。
「さて、皆。こっちは小紫。面白い素質を持っていたから連れてきた」
「あ、小紫です!よろしくお願いします!」
スサノオさんが私の事を紹介するのにつれて私も新入りとして挨拶する。
そんな私を「暴獣海賊団」の方々は――受け入れてくれた。
「うん!よろしくね!!」
「……スサノオさんの足手まといにならないのならば何でもいい」
「兄上はまた……」
「ムカつくが、そればかりは焼き鳥に同感だ」
「は、はい!スサノオさんの期待に応えて強くなってみせます!!」
立ち話をする私達の様子をしばらく見るスサノオさんはやがて私に声をかける。
「これからお前に働いてもらうのはもちろんだが、鍛えておくからな!」
「は、はい!よろしくお願いします!」
スサノオからの激に対して私は一礼する――が、その胸中では冷ややかに考えを巡らせていた。
……あなたがおっしゃった〝受け入れる〟って言葉……甘えさせてもらいますね……
本当によろしくお願いしますね……スサノオさん……♪
――百獣の棲み処の中で密かに私は妖しく笑う……
――幼く弱かった少女は〝力〟を求めて修羅道を歩もうとする
☆海賊の道を歩き始める光月日和ー改め小紫!!