フレバンス王国――
その国は〝北の海〟の〝白い町〟と呼ばれる裕福な国の事を指す。
地層から採取される〝珀鉛〟という鉛の影響で国全体が童話の雪国のように真っ白であり、人々の憧れの国である。
そんな国は今――
「何としてでも〝珀鉛病〟を世界に広げられるな――!!!」
「くそっ!!黙って滅ぼされてたまるか!!!」
戦争の最中で滅亡寸前の危機だった――
以前にいつものようにさりげない日常が始まると思われたフレバンス王国だが、何やら身体に白い痣が出てくるという奇病が登場する事で事態は変わってしまった。
それは〝珀鉛病〟。珀鉛による重金属中毒だ。それには他の金属中毒と違う大きな特徴があった。それは体内の珀鉛濃度が一定値を超えるまでは自覚症状が出ないという事である。1人の若者に毒が溜まり続けたとして、その若者に子供ができた時、実は子供の寿命が短くなっており、さらにその子供が大人になり子供ができた時、もっと寿命の短い子が生まれてしまう……そして国中で中毒が一気に発症してしまった。
そもそも――フレバンス王国が一大産業としていた珀鉛に含まれる毒は適度に掘り起こす事で人体に悪影響を及ぼすという事実が王族と世界政府の産業が始まる100年以上も前の国の地質調査で判明したのだ。だが王国と政府は珀鉛が生み出す巨万の富に目が眩み、事実を隠蔽していたのだ。そして国民全員が珀鉛病を発症すると政府は王族だけを脱出させ、国民は治療させる事もなく見捨ててしまった。
それだけに留まらず、〝珀鉛病〟を伝染病と思い込んだ周辺諸国はフレバンス王国から他国へ通じる通路を八方から封鎖し距離処置を取り、他国への亡命と治療を希望する者達を射殺し彼らを迫害するようになってしまった。もちろんそれに憤ったフレバンス住民は戦争を起こした。皮肉な事に〝鉛〟が手元にたくさん存在していた。だが――これに対する反撃という口実を得た周辺諸国から一斉攻撃を受け周囲から火を放たれてしまった――
そんな中での広場に子供達がいた――
「ひっく……お父さん……お母さん……!」
「うわぁぁあん!!」
「シスター……まだなのかな……!」
生まれ育った故郷がこういう状況に陥り、親等の親しい者を失い、心細くなっていた子供達をシスターが慰めていた。
「皆!大丈夫!この世に絶望等ないのです!必ず希望があります!」
そう言い、優しく微笑んだシスターにつれて子供達も笑った。希望を信じて――
すると背後に多くの足音がして、子供達を逃がしてくれると言ってくれた兵士達が来たんだと表情を明るくしたシスターが振り返る――
「え……」
「「「!!」」」
シスター達の表情は絶望に染まっていく。何せ――助けてくれる筈だった兵士達がシスターと子供達に向けて鉄砲を突き付けたからだ。助けるつもりなんかなかったのだ。
「……何で」
その中の1人の子供はつい呟く――
「……何でだよ!!オレ達が何かやったんだよ!!」
あまりにも理不尽な自身達の運命にシスター達は嘆いてしまう。その嘆きが聞こえなかったのか兵隊が引き金を引こうとする――
その瞬間
大きな熱線が放たれた――
「「「!!?」」」
その熱線が兵士達を焼き尽くした。その景色にシスター達は呆気に取られる――背後から唸り声を耳にした途端にハッとして振り返った。そこには――
大きなダークグレーの竜がいた。想像上の生物が目の前にいる状況に目を丸くするシスター達に竜は叫んだ――人間の言葉で。
「お前ら!!生きたければオレについて来い!!逃がしてやる!!」
●
時は遡る――
「リュドドド……ようやくフレバンスか!長かったな……」
オレ達、暴獣海賊団は百獣海賊団のフレバンス王国のある商人との珀鉛等の取引を視察しようと同行していた。
話に聞いた〝白い町〟の珀鉛……それを目にするだけでもわざわざワノ国からの遠い航海に参加する甲斐はあるもんだぜ!!……ん?
「お兄さん!〝白い町〟に行けるんだよね!!」
「お!リュドドド!そうだな!だが前に言ったが、百獣海賊団の船で行く訳にはいかねぇから商船を借りて、それで入国する事になっているんだ。なぁ?ステラ」
「はい!海軍にバレちゃダメですから!……ウフフ」
ヤマトのフレバンス入国についての確認にオレはそう応え、ステラに確信した。ステラもそう肯定した。
ここでテゾーロの妻ステラが何故オレ達といるのかと言うと――テゾーロは暴獣海賊団はもちろん百獣海賊団の金、経済担当もしている為に今回の取引に出向かっている。妻のステラも同行して船に乗ったのだ。海賊等の悪事を嫌う彼女が最初は百獣海賊団の活動によく眉をひそめていたもの――今は微笑んでいるのだ……腹の内はどうであれ。
とにかくそうなのだ、オレ達は海賊。そして海賊は略奪する者だ。だが略奪するだけではなく、取引する事もあるのだ……ただし、海賊と取引するんだ。交流相手も真っ当な訳がねぇ。即ちその相手が裏世界の人間であるのが想像に難しくない。
百獣海賊団にとってフレバンス王国は〝白い町〟と謳われるだけはある程の利益を生み出す珀鉛は使えるとみてて一時の利益しかもたさない略奪はせずに多くの利益をもたらすだろう取引を行う事にした。幸い、豊かで差別もない国にももっとさらに多くの利益を求める欲張りがいる。その人間と取引をして多くの珀鉛を手にできたのだ。また更なる珀鉛を手にしようと今回の航海を立てたという。取引自体は海軍に知らされないようにどっかの島で行っているが、〝白い町〟に行ってみたいと考えてるオレ達はそこで商船に乗りフレバンス王国に入国する手筈になっている――その筈だったが……
「何ですと!?そういう事になっているんですか!!?」
「「「!?」」」
船内からテゾーロの大声が響いて、その声にオレ達もビクッとした。
一体何があったんだ……?テゾーロを驚かせる程の事とは一体?
オレがそう考えるうちにテゾーロがオレの元へ駆け寄ってきた――電伝虫を持って。
「スサノオさん!カイドウさんから!フレバンス王国が大変な事になっていると!!」
『あぁ、その通りだ……全く……!!』
テゾーロが冷や汗をかきながら、そう知らせてくれて電伝虫の先の親父もそう言ってくる。
「!?フレバンス王国が大変な事になっているって……何があったんだ!?」
「あぁ……それは……」
『テゾーロ、オレが説明する』
オレの問いかけにテゾーロが何やら言い淀んでいるようだが、親父が説明すると言ってきた。そしてオレ達は知ってしまった。フレバンス王国の悲劇を――
「「ひ、ひどい……」」
ヤマトとステラがそう呟き、涙を流す。
「チッ……世界政府の奴らめ……」
「…」
フドウが世界政府に嫌悪感を抱いてしまう。
ジャックも無言だが、眉をひそめてしまう。
そしてオレは――
「……ふ……」
「ふざけんじゃねぇぇぇぇえ!!!」
激怒していた。それも国民を見捨てて逃げた王族と100年以上前から事実を知りながら隠蔽していた世界政府に。
激怒しているオレに親父は声掛けてくる。
『――それで……お前はどうする?』
「知れた事!世界政府に嫌がらせをする……つまりフレバンスの民を助けるぞ!!」
オレが獰猛な笑みを見ながらそう宣言する――その宣言にヤマト達も頷く。
「そうだね!助けよう!」
「フッ……世界政府に嫌がらせ……いい響きだ」
「スサノオさんがそのつもりなら……」
『ウォロロロ!いいだろう!オレも世界政府の奴らにムカついてるんだ……できるだけフレバンスの奴らを救って来い!!それが世界政府への嫌がらせになる!!』
親父がオレ達の考えに賛同し後押しもしてくれた。
こうして百獣海賊団と暴獣海賊団はフレバンス国民の救助に動いた――
●
「〝無侍氷牙〟!!!」
大口真神に変身したヤマトがフレバンス国民を焼こうとする火炎に氷のブレスを放って、その勢いを弱らせようとする。火炎が弱っている隙を狙ってヤマトが呆気に取られる人々に呼びかける。
「皆!僕について来て!!逃げるよ!!」
●
「〝黄金螺旋〟!!!」
「ほわぁぁ……!」
「ぎぎぃぃ……」
テゾーロは両手をそれぞれ黄金のドリルで覆り、そのドリルを回転させながら障害物を破壊していく。そのドリルが障害物に当たる瞬間に金が発光しており、破壊力を強化していた。フドウもジャックも獣の姿に変身して、テゾーロに共助して障害物を破壊していく。そんな3人に気付いた兵士達をフドウとジャックが吹っ飛ばした。
「お前達!!何して――うわぁ!?」
「ま、まさか〝ホワイトモンスター〟を助けるつも――ぐあ!?」
「わかってるのか⁉奴らはウイルスだぞ!世界に広げられると大変な事に――ぎゃあ!!」
「やかましい――世界政府への嫌がらせの為だ。それに……」
「それに政府の手先に理解されたくねぇな……」
そんな事をほざいてくる兵士達にそう言い捨てるフドウとジャックはまだ障害物を破壊し続けるテゾーロに協力しようと駆け寄る。
●
「おらぁ!死にたくなければ来い!!」
「ヘトヘトすんな!!置いていくぞ!!」
百獣海賊団の海賊がそう怒鳴りつけながらフレバンスの民を連れて、待ち合わせ場――オレが円を動き回って、自身を目印とする広い所まで走り抜いた。そしてヤマトを含む海賊が民をできるだけ連れ終えたのを感じ取ったオレはある建物の屋根に着いて、下に集まられている民に向けて言い広める。
「しばらく待て!!もうすぐ〝道〟ができる!!」
オレのその言葉に民がざわつく。
「道?……って、どの道も燃え上がって兵士がいるぞ?」
「どうやって逃げるんだ……?」
「そもそも……何者なんだ?こいつらは……?」
民のそういう不安をよそにオレは真っ先にそれを感じた。
「――来たな!」
オレがそう呟いた途端にある建物が大きな音を出しながら崩壊した。そして崩壊した建物の跡から出てきたのは――
「――よし!間に合った!!」
「何とかできたようだな」
「……ふぅ~」
テゾーロとフドウとジャックだった。彼らがここに辿り着いたという事は――
民がざわついた。3人の背後には――彼らが障害物を破壊して掘った事でできた一本道があった。そしてその先には――
「その先には船がある!!生きたい奴はこの道を通って乗れ!!」
オレがそう言い広める。民がその言葉を聞いた途端に一本道に足を運んで走り抜く。
油断できねぇと周囲に注意しながら一本道を走り抜く民を見て満足気に頷くオレはヤマトからの呼びかけに気付く。
「お兄さん!」
「⁉何だ!」
「僕達が連れられなかった人はどうするの?」
ヤマトのその言葉にオレは顔をしかめながら、それでも言う。
「――時間切れだ、もうこれ以上は無理だ」
「っ!!でも……」
「ヤマト……オレは海賊だ、聖者じゃねぇ……今回の人助けはオレ達に利があるからやっているだけだ……分かったな?」
オレが厳しく言いつけるとヤマトは何も言い返せずに俯く。
……ヤマトの優しさは美点といえてオレも悪くはないと思ってるが……海賊として生きる以上、見知らぬ他人より仲間と部下を優先して考えなければな……
オレがそう考えていると俯いたヤマトが振り返って燃え盛るフレバンスを見つめる。しばらく見つめたヤマトが首を戻してオレに頷くと一本道へ駆け寄る。オレもフレバンスを見つめる。滅んでいくフレバンス王国を――
――こうしてフレバンス王国は滅亡した……ただし――その国民の一部、約千人をある海賊団が連れていった……
●
「スサノオ、〝珀鉛病〟の治療策を見つけるのにはなかなか骨が折れるぜ……」
「……そうか」
あるテントの下でクイーンさんの真剣な言葉にオレもため息をついてしまう。オレとクイーンさんは兎丼にいる――約千人のフレバンス国民と共に……全員ではないが、約千人も助けただけでも充分だが――まだその人々の身体を〝珀鉛病〟が蝕んでいる以上、命の問題はまだ解決していない。
オレがテントを出るとそこには――救命キャンプ場だった。フレバンス国民の治療を受ける場所として、また泊まる場所として機能している。そこにいる民は生まれ育った故郷が滅んでしまった、親しい者を失ったという事実から落ち込んでいるのもあるが、国ごと滅ぼされかけていたところを救われ、また周辺諸国から〝ホワイトモンスター〟として迫害を受けてきたにも関わらず人間として扱ってくれて、しかも治療を受けさせてくれるのもあって涙を流していた。その涙を見て、オレは眉をひそめる。そんなオレにクイーンさんが声掛ける。
「ムハハ……人助けするなんて、スサノオも甘ぇな」
「……世界政府への嫌がらせになるからな」
「……そういう事にしてやる」
オレがきっぱりとそう言うとクイーンさんがニャリとする。クイーンさんの笑みにムッとするオレは今後の予定を問いかける。
「それで、これからどうする?治療から手を引くのか?」
「あぁ!?手を引く訳がねぇ!!」
「オレ様は!天才科学者!!〝珀鉛病〟ごとき、治してやるよ……!」
クイーンさんの性格をある程度把握するオレはそう言うだけで地雷を踏まれたかのようにクイーンさんは怒ってきた。そして科学者の誇りに懸けて〝珀鉛病〟治療を宣言する。
自身が人々を発症させて苦しむのを楽しむクイーンさんがわざわざ面倒事を自らやるなんて……
クイーンさんのその宣言にオレは驚愕してしまう。しかし続きの言葉に納得した。
「それに変態の野郎に能無しだとバカにされちまうからな……!」
「……リュドドド」
犬猿の仲であるキングさんにバカにされるのを想像して燃え上がってしまうクイーンさんにオレは苦笑してしまうもその姿に頼もしさを感じた。
しばらくクイーンは科学者の誇りに懸けて〝珀鉛病〟の治療策を探り続けた……幾らもの試みと失敗を繰り返して――
●
そして数日後――
「……一か八か……」
そう呟くクイーンさんは手に持つ試験管に入られている液体を見つめる。その姿に唾を飲むオレは問いかける。
「……それで上手くいくのか?」
「……オレの計算が正しければな」
クイーンさんはそう呟く。そして解説した。
クイーンの開発している人間に病を発症させる〝疫災弾〟の中には身体の細胞に影響を与えて変えていくのも存在している。そういうものを開発している時点で重金属中毒を発症させるものを作る等、クイーンの手にかかればお手の物。そこで発想を逆転させてみた。
実際に開発するつもりはなものの、わざわざ人間に〝珀鉛病〟を発症させる〝疫災弾〟の設計図を考えてみて、そこからさらに〝珀鉛病〟の身体への影響を綺麗さっぱり解消させる抗体薬の設定図を考えて実際に開発したのだ。
とはいえ100年という歴史を持つ〝珀鉛病〟の前に立ち塞がられるのか――
「――だが!!オレ様を信じろ!!オレ様の天才的な才能をな!!」
「そう言われなくても信じているぜ、あんたの才能をな」
「ムハハ!言うじゃねぇか!じゃあ、行くか!!」
そう言うクイーンさんはオレを従えて、フレバンス国民の治療の新たな試みを行いに向かう――
●
救命キャンプ場に歓声が響き渡っていた。
フレバンス国民が盛り上がっているのだ。ただそれだけなのだが、よく見れば彼らの身体には白い痣が見当たらなかった。
そうクイーンの開発した抗体薬が効いたのだ。百獣海賊団の救助を受けてフレバンス国民が理不尽な死の運命に勝ったのだ。その事実にフレバンス国民が喜ばない訳がない。その中には涙を流す者もいた。
「エキサ〜〜〜イト!!」
「QUEEN!!」
「QUEEN!!」
「ムハハハ!!そうそう!お前らを救ったオレ様を崇めよ!!このQUEEN様をな〜〜〜!!」
クイーンさんは自身を崇めて大盛り上がりの周囲を見渡して満足そうにする。そして歌い踊り始める。それを受けて周囲の大盛り上がりがさらに盛り上がっていく。
『〝FUNK〟!!』
歌い踊っているクイーンさんを見てオレは苦笑してしまう。
クイーンさんの〝疫災弾〟については悪趣味だと考えていたが、まさかそれが救命に役立つとはビックリだぜ……だが〝珀鉛病〟を退治できたなんて、やはりクイーンさんは天才だぜ。
そう思案に耽ったオレはふとフレバンス国民を見てみると何やら子供達と盛り上がっているヤマトを見つけて声掛ける。
「ヤマト!」
「お兄さん!あぁ、こちらは僕のお兄さん、スサノオだよ!」
「「「スサノオさん!!」」」
ヤマトの紹介で子供達が目をキラキラしながらオレを見つめる。
「聞きました!オレ達を救ってくれた竜があなただと!」
「ありがとうございます!私達を助けてくれて!」
「スサノオさん、カッコいい!」
子供達がオレの周囲を囲んで崇めてくれた。そういう子供達に苦笑するオレだが、ふと少し暗い顔をしている女子に気付いた。その女子に声を掛ける。
「君は……?大丈夫なのか……?」
「え!?い、いえ大丈夫です……」
「…?」
オレの問いかけに大丈夫だと答えるもますます暗い顔をしてしまう女子。疑問を感じるオレに盛り上がるのを止めた子供達が遠慮がちに言ってしまう。
「あの……あの子はトラファルガー・ラミといって……」
「元気がないのはお父ちゃんとお母ちゃん……お兄ちゃんとここで会えなかったからなんです……」
「それで……そうなのかなと思ってて……」
子供達の説明につい黙り込んでしまうオレにヤマトが小声で声掛けてくる。
「ん?」
「お兄さん……実はあの子を保護したのが僕なんだ……あの子の家、病院なんだ……病院に人がまだいるかもと思って行ってみたら……人がたくさん死んでたんだ……ダメかなと思ったら、大きな家具から気配を感じて、開けてみたらあの子がいたんだ……一緒に逃げようと言ってもお兄さんが来るまで逃げないと言って……でもちょうど気絶したから連れて逃げられたんだ……でもお兄さんと会えないのは僕のせいなのかな……」
自身のせいかもしれないとしょんぼりしているヤマトの頭をオレは撫でて慰める。
「そんな事はねぇ、むしろお前はよくやったよ」
「でも……」
「誰かのせいというなら――それは王族と世界政府のせいだ。お前が気にする事はねぇ」
「お兄さん……」
つい涙を流しかけるヤマトに微笑むオレは続いてラミを撫でて慰める。
「ラミー、いつでも落ち込んでも構わねぇが……そうだとフレバンスを滅ぼした奴らの思う壺だ。お父さんとお母さんとお兄さんを想いながら前を向け。それがお兄さん達をホッとさせられるとオレは思うぜ」
「え、あ……は、はい!」
オレからそう言われて、ラミはつい涙を流して――それでも頷く。オレはそんなラミーを見て、そして周りのフレバンス国民を見渡す。理不尽な運命に勝ったのを喜んでいる人々を見て決意したオレはフレバンス国民が注目しているところ――クイーンさんの元に向かう。
親父と相談して決めた事をフレバンス国民に報せなければならねぇからな……
『〝FUNK〟!!』
「あ〜、クイーンさん。すまんが、終わらせてくれ」
「ん?おいおい、いいところを邪魔するなよ〜」
「悪ぃな、だが親父と決めたフレバンス国民の処遇を報告しなければならねぇんだ」
「……それはそうか……OK」
オレの言葉に頷いたクイーンさんは手に持つ電伝虫を渡してくれた。そしてオレはクイーンさんのショーが突然終わってざわついたフレバンス国民に言い広める。
『フレバンスの民よ。オレは百獣海賊団総督〝百獣のカイドウ〟の息子スサノオだ』
『この場を借りてお前らに報せなければならねぇ事がある――お前らの今後の事だ』
オレの言葉を聞いて唾を飲むフレバンス国民。無理もない、フレバンスから避難して〝珀鉛病〟を治したのは良いが、今後は特に何も決まっていないのだ。
『オレ達、百獣海賊団の管理しているここワノ国に住んで、それで働いてもらう――あぁ、理不尽な扱いはしねぇから心配すんな』
『むしろ――今後からは百獣海賊団がお前らを守ってやるから安心して住め!!』
オレがそう言い終えると一時静寂に包まれる――しかし、ワッと歓声が響き渡る。オレと百獣海賊団を崇め奉る声も出てきた。
「スサノオ!スサノオ!」
「百獣海賊団!百獣海賊団!」
「シスター!スサノオさん達、すごいよね!」
「うん!カッコいい!」
子供達も百獣海賊団の事を褒めたてる。シスターも子供達に向けて微笑む。
「ねっ、信じていれば必ず救いの手は差し伸べられます」
――フレバンス王国は滅亡して、国民が全員殺された筈――だったが、その一部は百獣海賊団の手によって救助されてワノ国で住む事になった。
●
〝聖地〟マリージョア――
そこは世界政府における首都に等しい地点。
その中心としてパンゲア城と呼ばれる巨大な城が建てられており、その中の一室に5人のある老爺達が座していて、深刻な空気が漂っていた。
「――フレバンス王国の件に関しては思わぬ結末を迎えるとは……」
「あぁ……まさか、あの百獣海賊団が人助けするとは……」
「これでフレバンスの民約千人が百獣海賊団の下に置かれた……」
「厄介だな……〝珀鉛病〟の真実を世界に発信する危険性があるから口封じしたいが……」
「あのカイドウ率いる百獣海賊団の擁護下に置かれた以上、下手に手出せなくなった……」
「カイドウめ……何のつもりなのか分からんが……〝珀鉛病〟の真実の生き証人がよりにもよって危険な海賊団に身を寄せるとは……」
「――スサノオの件もある。これでますます百獣海賊団から目を離せなくなったな……」
――こうして5人が怪しく会談していた……