ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第25話〝九蛇の三姉妹〟

 リュウグウ王国での歓迎会が終わり、いざ鬼ヶ島に帰ろうと船の準備をオレが監督しているとヤマトが駆け寄ってきた――3人の女達を連れて――

 

「お兄さん!紹介したい者がいるんだ!」

 

「……ボア・ハンコック……です」

 

「ボア・サンダーソニア……」

 

「ぼ、ボア・マリーゴールド……」

 

「三姉妹なんだって!!ハンコック姉が長女なんだと!!」

 

 ヤマトは彼女達が三姉妹で、その長女がハンコックだと説明してくれている。その説明に黒髪の美少女――ハンコックも頷いた。

 

「……そう、です」

 

「……?どうした?」

 

 何やら3人がオレを見て少し怖がっている。

 ――まぁ、単に奴隷から解放されたばかりだし単純に喜んではいられねぇだけかもしれぬが……

 3人の態度を疑問に思うオレにヤマトが声掛ける。

 

「実は……ハンコック姉達、女ヶ島出身なんだ」

 

「!」

 

 ヤマトのその言葉にオレは彼女達が何を怖がっているのか分かった気がした。

 おそらく彼女達は――

 口を閉じるオレにヤマトは続く。

 

「あそこは〝九蛇〟と呼ばれる女だらけで男がいない国なんだ。それでハンコック姉達は〝男〟を見た事がないんだって」

 

 それは知識として知っている。強敵になる可能性のある者の情報をできるだけ把握しなければならねぇからな……

 ヤマトは顔を暗くしながら説明を続けようとするのをオレは止めた。

 

「もういい、大体予想が付く」

 

「お兄さん……」

 

 硬い表情を浮かべるオレをヤマトは目に少し涙を溜めながら見上げる。

 そう――女だらけの島に生まれ育ったハンコック達は〝男〟を見た事がなかったんだろう。そんな彼女達が初めて〝男〟を見たのは人攫いに遭って奴隷にされた時だろう。初めて見た〝男〟は無数の恥辱を与えてきた恐怖の塊だっただろう……それだけで〝男〟を怖がるのには予想に難くねぇ……だが、だからこそ解せねぇ。

 

「ヤマト……三姉妹を〝男〟のオレに紹介するのはどういうつもりなんだ?」

 

「あ、それは……」

 

 オレがそう疑問を口にし、ヤマトが言葉を選びようとするとハンコックが喋り出す。

 

「私は……強くなりたい……!強くなれば……誰からも支配される事なんてない……強ささえあれば……あなた……そしてヤマトを見て、そう思って……」

 

「それで……どうしたら……そこまで強くなれるの……とヤマトに聞いたら……」

 

 ハンコックがそう――状況がそうなった原因を説明し、その説明にオレはヤマトがわざわざ三姉妹をオレの元に連れてきたのか理解した。ハンコックをよく見れば、彼女は少し怯えながらも何かを決心したような目でオレを見つめていた。

 ――中々良い目だ。さすが戦闘民族の人間だ……さて、どうしようか……

 そう考え込むオレにハンコックは頭を下げて頼み込む。

 

「強くなる方法を教えてほしい……!!わ、私にできる事なら何でもする……!!お、恩はもちろん必ず返す……!!だから……!!」

 

「…」

 

 頭を下げている彼女を見てオレは思案に耽る。

 ――恐怖の塊であろう〝男〟のオレに頭を下げてまで頼み込むか……これは……無視する訳にはいかねぇな。

 

「……あんたの頼みを聞けるは聞ける」

 

「!」

 

 オレがそう言うとハンコックは顔に僅かに明るい表情を浮かべるところにオレは素早く、ただしと付け加える。

 

「あんたはもちろん3人とも強くしてもいいが……ただで頼み事を聞く訳にはいかねぇし、無事に強くなれる保証はできねぇ――何より〝男〟に鍛えられる事もあり得るかもしれねぇ……それでもか?」

 

「っ……!!」

 

 オレの説明――特に〝男〟に鍛えられるかもしれないという部分にハンコックは顔をしかめ歯を食いしばる。

 

「……!」

 

 しばらく俯いたハンコックだが――頭を上げ

 

「……構わない……!!」

 

「「姉様……!!」」

 

 苦悶な表情を浮かべながらも同意を表示した彼女にオレも頷く。

 うむ……〝男〟に鍛えられる可能性があるのを受け入れてでも強くなる覚悟ありか……

 覚悟を決まった彼女――彼女達にオレは確認する。

 

「あんたら3人とも――百獣海賊団に入るか?」

 

「「「!!?」」」

 

「ひ、百獣海賊団に……!?」

 

「それは……」

 

 3人の反応を目にするオレは考察する。

 ――この反応から見ると……抵抗を見せるのは海賊になる事柄ではなく――おそらく……男所帯の中に入る事柄だな――〝男〟に鍛えられるのはギリギリ耐えられるとしても男所帯の中に居続けるのはさすがに無理……大体そんなあたりか。

 ――だとしたら……

 

「分かった。なら、これはどうだ?――1〜2年で強くなったら、島に帰す」

 

「そこであんたらが九蛇海賊団の船長になるんだ」

 

「そうなったら――百獣海賊団の傘下になってもらう」

 

「「「……!!」」」

 

「これならどうだ?男所帯の船に乗る必要もなく、男が1人もいない船の船長になれるんだ……まぁ、百獣海賊団の下に変わりはねぇかもしれねぇが……ウチは強ければ何でもいいから――親父だって強ければちょっと命令に従わない、ワガママいったぐらいで怒ったりはしねぇよ!」

 

「なるほど……!」

 

「……姉様」

 

 オレからの提案にサンダーソニアとマリーゴールドは一応の納得はし――姉の反応を見てみる。ハンコックはしばらく俯いていたが、やがて頭を上げたハンコックは以前とは違う凛々しい表情を浮かべていた。

 

「――提案に乗ろう……!!」

 

 

――こうして九蛇の三姉妹は百獣海賊団配下に加入した。

 

          ●

 

「――あんたら。少しいいか?」

 

「……?何です……?」

 

 話が終わり、この場から去ろうとする三姉妹をオレは待たせた。三姉妹に言っておきたい事があるからだ――

 

「あんたらは……あー……そういう経験があるし、〝男〟に心を許せなくて強くなろうとするのも分かる……だが」

 

「もう少し甘えてもいいんだ。オレはそれを恥と思わねぇしな、なぁにオレが他に知らしめないようにするぜ!そしてオレの陰にいる限り、必ず守ってみせる!!だからよぉ、安心して強くなれ!!」

 

 オレがそう断言すると三姉妹の表情が雷に落とされたようになっていた。

 

「…!」

 

「スサノオさん……!」

 

「あなたは……」

 

 何やら三姉妹が頬を赤くしていた。特にハンコックは顔を真っ赤にしていた。

 

「あぁ……」

 

 突然ハンコックがゆっくり倒れていく。

 

「「「!!?」」」

 

「「姉様!?」」

 

「ハンコック!?」

 

「ハンコック姉!?」

 

 オレ達が慌ててハンコックに駆け寄って彼女の状態を確認する。

 

「大丈夫か!?」

 

「だ、大丈夫です……」

 

 オレが確認するとハンコックがそう応え、起き上がろうとする。

 

「――大丈夫じゃねぇな!!顔が真っ赤だぞ!」

 

「ハンコック姉、風邪?」

 

「「姉様……!」」

 

 ハンコックの顔が真っ赤であるのにオレ達が心配するも――

 

「大丈夫ですよ」 

 

「「「!?」」」

 

 オレ達に近付く影がいた――百獣海賊団の妙齢の女船員だった。

 

「見たところ――知ってる病ですが、命に問題はありません」

 

「む!……そうなのか……?」

 

「「「大丈夫なの!?」」」

 

 オレ達がその女船員の言葉を疑うが――彼女が満面の笑みで言ってくる。

 

「えぇ、問題はありませんよ。だから若様達も戻っても大丈夫ですよ」

 

「しかし……」

 

「念の為に医務室に連れていきましょう」

 

 女船員のその言葉が決まり手になった。オレとヤマトは渋々頷いて

 

「それなら――行くか……」

 

「うん……」

 

 船の準備を監督しに戻っていく――そんなオレをハンコックは熱っぽく見つめる。

 

「間違いない……この子に起こったのは――」

 

「「姉様に何かが!?」」

 

 ハンコックを見て深刻そうに頷いた女船員にサンダーソニアとマリーゴールドが縋った。

 一体姉様の身に何かが――

 心配が尽きない妹達に女船員が口を開く――

 

「あなた達の姉の病は……〝恋煩い〟!!!東の海にはこんな話があるという……」

 

 そう呟く女船員はカッと目を見開いて叫ぶ。

 

「〝恋はいつでも!!ハリケーン〟!!!」

 

――どうやら百獣海賊団には思わぬ嵐が出てきたようだ……

 

          ●

 

「――これこそが百獣海賊団の本拠地――鬼ヶ島だ……!!」

 

「「「おぉ〜!!」」」

 

 ――オレ率いる百獣海賊団は元奴隷達を乗せながらワノ国に帰還していった。

 ワノ国に辿り着いた際に海賊団への入団はしないものの、百獣海賊団についていくのを選んだ元奴隷達はワノ国の各郷に分かれて送られていった。それぞれの地で生きてもらう事になる……

 続いてハンコック達三姉妹そして海賊団への入団希望の者達は今――オレ達と共に鬼ヶ島に降り立っていった。

 

「なんと……!」

 

「鬼ヶ島……その名通り、鬼の形している……!」

 

「なんか……九蛇の城より威力があるわね……」

 

 九蛇の皇帝の居城が構えてある女ヶ島の人間であるボア三姉妹も記憶の中の城より大きく豪華な鬼ヶ島につい感嘆の声を上げた。

 

「若様のお帰りだぁ〜〜!!」

 

「キング様〜〜!!」

 

 オレ達の到着に鬼ヶ島の見張り役を含む外面を行き来している船員達が歓声を上げた。

 

「おう!」

 

「フン……」

 

「「「ウオオオオオ!!!」」」

 

 オレ達もその歓声に対して応える。そうしている間に船は岸に到着し、そこからオレが降り、ヤマト達に続きハンコック達もついて行った。橋を超え、長い階段が見える――その前の広場に集団がいた。子供だらけ――暴獣海賊団だ。彼らがオレに駆け寄ってくる――

 

「スサノオさん!」

 

「お帰りなさい!」

 

「「スサノオさん!」」

 

「ヤマト君もフドウさんも!!」

 

 暴獣海賊団の子供達がオレとの再会を喜んでくれていた。もちろんヤマト達とのもだ。とにかく和気藹々としているオレ達を見てハンコック達は反応してしまう。

 

「――思ったけど、やはりスサノオさんは面倒見が良いのね」

 

「えぇ――だからこそあんなふうに子供達に懐かれているでしょうね」

 

 サンダーソニアとマリーゴールドは子供達の態度によりオレの面倒見の良さを改めて実感した。そしてハンコックは――

 

「子供達に優しいスサノオさんも愛しい……///」

 

 子供達に微笑んでいるオレを熱っぽく見つめていた――しばらくそういう光景を眺めていたが、オレ達をまるで外から見ているかのようなある少女を目にした途端に目を鋭くする。

 

「――そこの女子よ」

 

「!はい?」

 

 ハンコックがその少女に声掛ける。その声掛けに少女も振り返る。その少女は青緑色の髪の美少女――小紫だ。彼女は自身を鋭く見る美少女にビクッとするも――微笑んで

 

「何でしょうか?」

 

 小紫の問いかけが聞こえなかったのかハンコックがジロジロ彼女を見つめている。小紫はその無言の凝視に耐えられず――

 

「あ、あの……?」

 

「……そなたの名は?」

 

「え……?は、はい。小紫です」

 

 小紫が名乗ったのをハンコックは口にする。

 

「小紫――そなた」

 

「はい?」

 

「負けぬからな」

 

「はいぃぃ??」

 

 ハンコックが小紫にそうはっきり言いつけるとくるりと後ろを向いた。だが言われた内容を理解できない小紫は疑問符を浮かべて首を傾げる。

 

「姉様⁉何してるの!?」

 

「あのような子供にケンカを売るなんて……!」

 

 少女にケンカを売るような態度を取る姉に妹達は何を考えてるんだと言う。そんな妹達にハンコックは重々しく言う。

 

「仕方があるまい……あの女子を目にした途端に雷を落とされたようにビビッと来たのだ」

 

「「は、はぁ……?」」

 

 姉が訳の分からない事を言い出したのに呆気に取られる妹達をよそにハンコックはカッと目を見開く。

 

「わらわの女としての勘が囁いてくるのだ!!あの女子は――あの方との間に立ち塞がる最大の宿敵になるであろう――とな!!」

 

          ●

 

 暴獣海賊団とのちょっとした会談を終えたオレはハンコック達新入りを引き連れながら鬼ヶ島の中を紹介していった。やがて開けた広場のような場所に足を進めていった。

 

「――ここは基本親父が演説する時とか、宴会の時に人々が最も集まる場所だ」

 

「ほぅ〜」

 

 オレの説明に感心するハンコック達をよそにオレは見渡っていた。

 

「?……どうかしました?スサノオさん」

 

「ん、いや……あんたらを紹介するからここに来てくれと頼んだが――!」

 

「「「!!?」」」

 

 オレがそう言った途端に巨大な何かがオレ達の前に降りてきた。

 突然の事態に驚愕するハンコック達の前に現れたのが――

 

「おぉ――親父」

 

「おう!聖地襲撃、ご苦労だったな!拐われた者共はどうだ?」

 

「あぁ、救出できたぜ。奴隷にされたばかりだから、デカい傷を追わずに済んだぜ」

 

「そうか!」

 

「……あ、あの、スサノオさん……」

 

「ん、あぁ――こちらがオレの親父にして百獣海賊団総督――〝百獣のカイドウ〟だ」

 

 大海賊時代の頂点に立つ「四皇」の1人で〝最強生物〟と称される大海賊の姿――威圧感にハンコック達は顔を青ざめて固まった。

 ――無理もないのだ。海の皇帝であるカイドウの前に初めて立つ者は例え――屈強であろうとも心が折れてしまうのだ。

 

「んで……こいつらが?」

 

「あぁ、新入りだ」

 

「おぉ……」

 

 親父の目がハンコック達を捉え、それにハンコック達がビクッとするも――

 

「――よく来たな!!お前ら!!」

 

 親父がニカッと豪快な笑みを浮かべて、ハンコック達を歓迎した。その笑みにハンコック達の緊張感が解かれて安堵した。

 当然だが、カイドウの前に湧き出てきてしまう恐怖感が半端ないのだ。だからか、少なくとも自身達への敵意がないのはそりゃありがたいはありがたいが、恐怖を抱えた時と安堵する時のギャップには混乱してしまう。

 取り敢えず、混乱しているハンコック達に親父は続いて労った。

 

「お前らも大変だったな。「天竜人」共にいいようにやられて……まぁ、お前らが弱ぇせいでだが……」

 

「親父!そんな言い草はよせ!少なくともここで新入りに言う事じゃねぇ!」

 

 親父の労い、ただし後半の言葉にオレは異議した。そりゃ新入りへの言葉じゃねぇだろ。

 オレの異議に親父は眉を落とし

 

「あぁ……その、悪かったな。お前ら」

 

 親父の謝罪にハンコックは驚愕する。あれ程に恐怖を抱えた怪物が自身達に頭を下げたから――そしてスサノオへの尊敬が高まった。

 ハンコック達がオレを目を輝かせながら見つめるのをよそに親父が大声を出す。

 

「取り敢えず!新入りへの歓迎として宴をやるぞ!」

 

 親父のその宣言に周囲がワッと湧き出た。その様子にオレも苦笑する。

 

「リュドドド……お前らも宴を楽しめよ」

 

「はい!!あなたがそうおっしゃるなら///」

 

「「姉様……」」

 

 オレの言葉にハンコックが頬を赤くしながら答え、妹達が何かなんとも言えねぇ表情を浮かんでいた――

 

 

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