ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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☆更なる変革を迎えようとする「ワノ国」だが…


第27話〝ワノ国の闇〟

 「百獣海賊団」と黒炭オロチに支配される「ワノ国」。

 その国には多くの村が存在するが、その中の一つの村にその子はいた。

 

「……」

 

 その子――小紫は団子を食べていた。彼女は和菓子屋に寄って、そこで憩っていたのだ。

 小紫は団子を食べながら思案していた。一体彼女が何を考えているのかというと……ある男の事を思案していたのだ。

 その男とは――

 

「……スサノオ」

 

 ――スサノオ。

 

 ――私の全てを破壊した怪物〝百獣のカイドウ〟の息子。

 

 そんな男だからこそ、私は彼の事を恐ろしく憎らしく思う筈なのに……

 

「……」

 

 あの男の言動を思い返した私は顔を歪める。

 彼は横暴どころか、懐が深くて苦しんでいる者に手を差し伸べる。実際、苦境に陥った「フレバンス王国」の者達と〝聖地〟の奴隷達を彼は進んで救助した。

 そんな姿勢を私は苦々しく思っていた。

 

 ――ならば、なぜ……なぜ私から全てを奪ったんだ!!

 

 そう、「光月家」を滅ぼしておきながら――善行に励むスサノオに私は憎悪の念を抱かずにはいられなかった。

 ……ただ、その時の私は気付かなかった。彼に対する自分の感情が憎悪だけではない事に……

 とにかく、スサノオの事で苦悩する私はふと先程行った鍛錬を思い返した。

 

 

 硬い音が響く。

 

 ――私の手に持つ竹刀、そしてスサノオの手に持つ竹刀がぶつかり合っていた。

 私達は剣の手合わせをしていたのだ。

 

「はァ!はァ!」

 

 私は汗をかきながら竹刀を立て続けに勢いよく振るうのをスサノオが余裕で受け切る。

 そんな彼の姿勢から自身の渾身の攻撃が通じない事を認識した私は攻め口を変える事にした。

 

「ハァッ!!」

 

 私は左から竹刀を勢いよく振ってみせた――が、それをも受け切られてしまった。

 

「ハァッ!!」

 

「!ほぅ……」

 

 だが、攻撃の手を緩めない私は素早く身体を左に回して今度は右から竹刀を振る。

 それもまた受け切られると素早く体を引き体勢を立て直し、そして上方から竹刀を振り下ろす。それでも受け切られてしまう。

 すると次は身体を右に回しながら跳躍し、左から竹刀を振る――結局受け切られたが。

 全力を込めた攻撃を全て受け切られてしまった私は力を使い果たしたのもあってへたり込む。そんな私にスサノオが近付いて、そして問いをを投げかける。

 

「さっきの動き、もしや舞踊を参考にしたのか?」

 

 その問いかけに私は率直に答える。

 

「……はい。舞踊を参考にすれば変則的な攻撃ができるのではと考えたので」

 

「……舞踊に関してオレはさっぱりだが、懐が甘ェんじゃねェのかと思うぜ」

 

 その答えを受けてスサノオはさっきの私の動きに対してそう指摘する。その内容に私は俯く――が

 

「だが、舞踊を参考にしての動きとはな。なかなかやるじゃねェか!!」

 

「!そ、そうですか……//」

 

 続いて賞賛をも送られた。その思わぬ賞賛に私もつい頬を赤らめた。そんな私にスサノオはニヤリとする。

 

「それなら、うちにも芸者がいるんだ。そいつらにお前に舞踊を教えるように頼んでみるか」

 

 突然彼がそう言い出す。そのまさかの力添えに私も動揺せずにはいられなかった。

 

「え、スサノオさんがわざわざそんな事をしなくても……」

 

「気にすんな!お前の舞踊を見てみたいのもあるしな!」

 

 だが、スサノオは平然とそう言い満面の笑みを浮かべる。その笑みに私は息を呑む――

 

 

「……素敵な笑顔だったな」

 

 スサノオの満面の笑みを思い出した私はそう呟く。その途端に自分の言葉に衝撃を受ける。

 

「な、何言ってるの!?私!?仇の子を素敵だなんて……!!」

 

 言ってはならぬ言葉を口にしてしまった自身に愕然とする私は首を激しく振る。

 

「しっかりして!!私は武士の娘!!惑わされぬ!!」

 

 両親の仇の子に惑わされる事なんてあってはならぬ!!それじゃ父上と母上達に顔向けできない!!

 そう考えた私はキリッとし気を引き締めてみせる。そこでふとする。

 

「……そういえば?スサノオさんと手合わせをする時になぜかハンコックさんが睨んできていたな……何か癪に障らせたのかな?」

 

 スサノオとの手合わせの際にハンコックさんが私を睨んできたのを思い出した。

 彼女が私の事を憎らしく思っているのを理解できたが、なぜそうなるのか心当たりがまるでないのだ。だからこそ困惑する。

 

「気になるけど……何もしてこないなら、ほっとこうかな?」

 

「……すごく気になる独り言わね」

 

「!おハネ。おカタちゃんも……」

 

 思案する私にある姉妹が声をかけてきた。その姉妹は和菓子屋の看板娘達だ。

 活発そうな黒髪の少女、姉の方はおハネでおとなしそうな灰髪の少女、妹の方はおカタという。姉妹とは私が初めて和菓子屋に寄った時に出会った。

 姉妹は最初こそ「百獣海賊団」の関係者である私を警戒したが、しばらく関わるうちにこの私が海賊達とは完全に同じではないという事を理解してくれて打ち解けられた。

 私の方もそんな姉妹の態度に甘えて胸中を吐露できた。そのような背景もあって私達は親友なのだ。

 とにかく、おハネが朗らかな笑みを浮かべる。

 

「あなたは考え込むと独り言をこぼすのね!」

 

 おハネが私に向けてそうからかい、それに続いておカタちゃんも声をかけてくる。

 

「何を考えていたの……?」

 

「え、え!?わ、私は……」

 

 その問いかけを受けて私は慌てる。まさかカイドウの息子の事を考えてたなんて口が裂けても言えないし。

 言葉に詰まる私に姉妹も訝しげにする。それで私は慌てながらも口を開いてみせた。

 

「私が考えていたのは――外の世界の事なの!」

 

「!外……?」

 

 私が口にした予想外の答えに姉妹が呆気に取られる。するとおカタちゃんがあっと声を上げた。

 

「そういえば、最近「百獣海賊団」が外からたくさんの人を連れてきたらしいんだけど……それと関係あるの?」

 

「……ええ」

 

 おカタちゃんのその指摘を私は肯定し、そして顔を曇らせる。外の世界は私の想像を絶していた――悪い意味で。

 

「外の世界はここのように酷くはないのかな、と思ってたんだけど……」

 

「ある地では毒になるのを知らされずに地層を掘らせられ、その影響が顕著に現れた途端に見捨てられて口封じされてしまったとか……」

 

「ある地では横暴で残酷なのに神だと尊われる者達によって人々が苦しめられるのにそれが許されるとか……」

 

「下手すれば、ここよりさらに地獄だという地もあるという……」

 

「こんな世界に救いはあるのかなと考えずにはいられなくて……」

 

 目にした世界の無情さに悩まされる私からその事を聞かれたおハネとおカタちゃんはその予想を超えた内容に絶句する。

 

「――あの光月おでんが外への開国を考えてオロチと「百獣海賊団」がそれを阻止しようとしていたから、外の世界はここよりマシかもと思ったけど……」

 

「そんなにひどいんだ……」

 

 姉妹が辛うじてのかすれ声でそう言う。その内容からまるで父おでんが愚かだと言われたような気がした私は俯く。

 だが、そこで突然おハネが仁王立ちする。その表情は凛としていた。

 

「――だとしても!!こんな世界でも胸を張って生きるの!!私達は!!」

 

「……うん!!」

 

「……!!」

 

 おハネが勝気な笑みを浮かべながらそう宣言する。それにおカタちゃんも微笑みを浮かべてしっかり頷く。そんな姉妹の姿勢に目を見開く私におハネが顔を向ける。

 

「いつまで悩んでも仕方ない!!なら、自分を貫いて生きるしかないんだ!!そう、あのおでんのように!!」

 

「!!」

 

 おハネが熱くそう言い張る。その内容に私はますます目を大きく見開く。

 ……今までは光月おでんといえばバカ殿だとか陰口を言われてきた。なのに、今のおハネの態度を見れば彼女がおでんの事を好意的に見ているのが分かる。私にはそれが何よりも嬉しくて――

 

「……うん!!」

 

 私も満面の笑みを浮かべて頷いた。すると――

 

「ふふっ、その笑顔も素敵だわ……小紫ちゃん♪おハネちゃんとおカタちゃんも♪」

 

「!……マリア!」

 

 突然声をかけられた。

 声をかけてきた者の正体を察した私は顔を輝かせる。何せその者もまた親友なのだから。それは――

 

「はぁい、私よ♪」

 

 三味線を背負い、頭部に角が生える金髪の美少女だった。

 彼女は小紫と同じ「暴獣海賊団」の一員で名はブラックマリアという。

 彼女は小紫が加入した直後に「暴獣海賊団」に入ってきた。ワノ国出身であるにも関わらずに百獣海賊団配下に入ったという彼女に小紫は最初こそ良い感情を抱かなかったものの、三味線という同じ趣味を持って気さくな性格だったために彼女とも打ち解けられた。

 両親達の仇である憎き「百獣海賊団」の下にいる私の心を癒やしてくれた者でもある。

 

「おハネちゃんもおカタちゃんも元気そうね♪」

 

 ブラックマリアがそう微笑みながら私の隣に座る。そんな彼女におカタちゃんも微笑む。

 

「ええ、元気ですよ。注文は?やっぱり団子?」

 

「そうね……ええ、団子でお願いね」

 

 マリアの注文を承ったおカタちゃんが店内に入っていく。そしてマリアが私に声をかける。

 

「小紫ちゃん。私はね――あなたは自分を貫いていればいいと考えているわ。だってその方が美しいと思うわ」

 

「マリア……」

 

 その意見に軽く呆然とする私におハネも声をかけてくる。

 

「そうだね〜見たところ小紫の容貌が私達より良さそうだし!その顔を歪めてはダメよ!!」

 

 おハネが私の美貌を率直に褒めてくれた。それに私も羞恥を覚えて顔を真っ赤にする。

 

「あ!顔が赤くなった!!可愛いんだから!!」

 

「うふふっ、その顔も素敵……♪」

 

 そんな私を見たマリアとおハネがワイワイと騒ぎ出した。そこにおカタちゃんが団子を持ちながら戻ってきた。

 

「お待たせいたしました――どうしたの?」

 

「あ!おカタ!実はね――」

 

「わーわー!!」

 

 そうして私達は楽しくおしゃべりした。しばらくそうするうちに空が赤くなった。

 

「あら、帰る時間だわ」

 

「そうね。おハネ、おカタちゃん。私達帰るね」

 

「そう、いつでもいらっしゃってね!」

 

 時間になった私とマリアは「暴獣海賊団」の本拠地「鬼ヶ島」に戻ろうと和菓子屋から去った。私が振り返ってみると姉妹が笑顔一杯で手を振っていて、私達もそれに応えて手を振った――

 それは黒炭オロチと「百獣海賊団」によって荒れていく「ワノ国」にも確かにある平和な日常だった……

 

 

次の日――

 

「今日は時間がすごく空いたわね……」

 

「そうね」

 

 私もマリアもいつものように「暴獣海賊団」の仕事と強化計画を行った。だが、それは順調に進みいつものより早く完了した。それ故に手が空いたのだ。それで私は――

 

「おハネとおカタちゃんに会いに行こう!!」

 

「だよね。行こっか♪」

 

 私がそう言い張るとマリアも賛同してくれた。それで私達が和菓子屋に向かった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何よ……これ……」

 

「……」

 

 その光景を目にした私とマリアは絶句した。何せ――

 

「おら!!壊せェ!!」

 

「潰せ!!こんなの!!」

 

 数人のチンピラ侍が和菓子屋を荒らしていたからだ。

 そんな事態に言葉を失った私だが、その目にあるものが映った途端に顔が青ざめた。それは――

 

「おハネ!!おカタちゃん!!」

 

 おハネとおカタちゃんが傷だらけの姿で倒れていたのだ。その姿に背筋を凍らせた私は慌てて2人に駆け寄り、その状態を確認しようとするが……

 

「……」

 

「ひッ……!!お、おカタちゃん……!!」

 

 おカタちゃんは苦悶の表情で空を見上げたまま――固まっていた……そう、死んでいた。

 あまりに突然の親友の死に私は涙を流した。

 

「な、何で……どうして……」

 

「うゥ……」

 

「!?おハネ!?」

 

 茫然自失となった私の耳にその消え入るような声が辛うじて入ってきた。

 ――おハネの方はまだ生きていた。ただ、もはや虫の息だ。そんな彼女の元に私は駆け寄った。

 

「おハネ!!何かがあったの!?どうしてこんな……!!」

 

 私はおハネの身を案じながらその疑問を口にする。するとまるでそれに答えるかのようにチンピラ侍達が叫び騒ぐ。

 

「あの憎きオロチに媚びる害虫の店は潰せェ!!」

 

「害虫は死すべし!!」

 

「!!?」

 

 その盛り上がりはもちろんだがその内容に私は唖然とする。そんな私に向けておハネは息も絶え絶えながら語り出す。

 

「わ、私達は…オロチに媚を売っていた商人の…娘…だったんだ……商売に失敗して…都落ちされたけどね……あいつらは…オロチに媚を売る商人は…「ワノ国」の…害虫なんだって……おとっさんはもう既に…亡くなっているのに……害虫の子は害虫なんだって……私達はただ…和菓子を作って売っているだけなのに……」

 

「……!!」

 

 なぜ姉妹がこんな目に遭ったのか、その理由を知った私はあまりの悍ましさに吐き気がした。

 

「く、くそ……」

 

「!!おハネ!!もう静かにして!!死んでしまうよ!!」

 

 そしておハネが続いて何かを言おうとするが、その様子からこれ以上は危険だと私が引き止める。だが、それに構わずにおハネが辛うじて口にする――最後の想いを……

 

「わ、わたしは…ただ…生きたかった…だけなのに……」

 

「おハネ!!」

 

「くや……しぃ……いぃ……なぁ…………」

 

 その言葉を最後におハネは――何も言わなくなった。

 

「――おハネ……?」

 

「……」

 

 そんな彼女に私が声をかけても返事が返ってくるどころか反応さえも来なかった――おハネは……死んでしまった。

 

「……」

 

 呆然と私が彼女を見続ける。だが、それでも状況は変わらない。チンピラ侍達の暴動が収まらず、ついに和菓子屋が崩れ落ちた。その様をチンピラ侍達が嘲笑い、村の人々もそれを見て見ぬふりする……

 

「……」

 

 その事態を私は虚ろな目で眺める。そんな私の隣でマリアは身を震わせて拳を血がにじむ程に握りしめていた――激しく怒っていた。

 

「――私の時と同じだ……ただ角が生えただけの私を人々は〝鬼子〟と虐めやがった……!それだけでなく私を産んだお母様をも……一体私達が――おハネちゃんとおカタちゃんが何をやったというの……!!」

 

「……!!」

 

 マリアの思わぬ過去に私は再び絶句する。その瞬間にある事を思い出す。

 それはある日の事だった。「暴獣海賊団」の子供達がカイドウ率いる「百獣海賊団」が光月おでんを討ち取った事を賞賛するのに対してスサノオは苦笑しながら、しかしどこか苦しげな表情をみせた。

 そして、そんな彼がこぼした――

 

『光月おでんは「ワノ国」そのものに殺されてしまったんだ』

 

 当時の私を含む「暴獣海賊団」はその言葉の意味が分からず、首を傾げた。だが、今なら分かる。分かってしまった。

 聞けば河松もイヌアラシもネコマムシもその外見な故に「ワノ国」の人々に殺されかけてたという。しまいにはあの黒炭オロチも幼い頃に人々から迫害を受けていたという……

 

『バカ殿は本当に疫病神だったな』

 

『あいつがくたばって良かったよ』

 

 そして「ワノ国」を救おうとした筈のおでん達を容赦なく罵倒し嘲笑する民の姿をも思い出した。

 ……確かに父、光月おでんはカイドウと黒炭オロチに直で殺されてしまったんだろう。

 だが、しかしだ。その根源こそが他でもならぬ「ワノ国」そのものにあるとしたら……?

 おそらく「ワノ国」の多くの負の面が絡まり、それが黒炭オロチを生み出し――彼がカイドウを呼び寄せ……そしておでんを死に追いやった。

 そこまで考えた私はその瞬間に理解した。そう……理解してしまったのだ。

 

 ――あァ……そうか……

 

 ――父上を殺し、私達家族をメチャクチャにしたのは……

 

 ――マリアを苦しめ、おハネとおカタちゃんを殺したのは……

 

 ――黒炭オロチでもなく……カイドウでもなく……

 

 ――この「ワノ国」だったんだ……

 

 その考えに至った私の中に湧き上がった――激しき怒りが。

 

 ――なら……

 

 ――私がこの手で……

 

 ――こんな国を滅ぼしてやる!!!

 

 強くそう決意した私から凄まじき〝圧〟が放たれた――無意識だが〝覇王色の覇気〟を発したのだ。

 

「!?小紫ちゃん!?」

 

 その〝覇王色〟に驚愕しながらもなんとか耐え切ったマリアに向けて私はそれを口にする。

 

「こいつら……殺すよ」

 

 その言葉にマリアは目を見開き固まった――が、すぐ妖しく微笑む。

 

「ふふっ……はい♪」

 

 

 

 和菓子屋が完全に崩れ落ちたのを受けてチンピラ侍達は笑い転げた。

 

「ははッ!!ざまあみろ!!」

 

「害虫のくせに侍の国を堂々と歩むからだ!!」

 

「はー良い気味だな」

 

「ですね!横さん!」

 

「ははッ、必ずあの憎きオロチの首を取ってー…」

 

 チンピラ侍達のリーダー格の横が笑みを浮かべながらそう言いかけ、そしてその顔が突然首から離れ落ちた。

 

「「「……は?」」」

 

 その出来事にチンピラ侍達が呆気に取られるのに構わずにその首から血が激しく噴き出し、身体が力なく倒れた。そして

 

「!!?てめェ……!!?」

 

 突然の事で混乱するチンピラ侍達の前に立つ血に濡れた刀を手に持つ私の姿があった。

 

「その刀……てめェが横さんをやったのか!?」

 

 その刀、そして私の返り血を浴びた姿を目にした事で横の首を斬ったのが目前の女子だと理解したチンピラ侍達は刀を抜きながら怒鳴りつける。

 

「よくも横さんを殺したな!!」

 

「てめェ……覚悟は良いんだろうな?」

 

 刀を構えるチンピラ侍達の怒号、殺気を受けても私は能面の如き無表情を変えない。チンピラ侍達からどれだけ怒鳴りつけられるだろうが殺気を放たれるだろうが、無言のままだ。

 

「おい!!何とか言え!!」

 

 そのナメくさったような姿勢にある侍がそう怒鳴りつけた直後に私がようやく口を開く。

 

「……お前達のような奴らと話す口を私は持たない」

 

 冷たくそう言い捨てる私から〝覇王色〟が発する。その圧を身に受けたチンピラ侍達はその凄まじきにより背筋が凍りついた。固まった彼らに向けて私は素早く駆け寄る。

 

「……」

 

 私は刀を下方から勢いよく振り上げ、あるチンピラ侍の顔を斬り捨てた。

 

「……」

 

 私は下方から刀を振り上げた勢いをそのまま利用して右隣のチンピラ侍を左上方から刀を振り下ろし、斬り捨てた。

 

「……」

 

 地に着地した私は体勢を立て直し、さらに右隣のチンピラ侍の首喉を刀で鋭く突いた。

 私によって命を消された3人のチンピラ侍が力なく倒れた途端に残りのチンピラ侍達はようやく我に返った。

 

「「「う、うぉおおおお!!」」」

 

 そのうちの3人のチンピラ侍が恐怖に駆られながら私に刀を振り下ろすものの――

 

「……」

 

 私の左から猛烈な勢いで振る刀が3本の刀ごと3人の首を斬り捨てた。

 

「……」

 

――血を浴びながら刀を振り回る少女の動きぶりはまるで死の舞踊であった

 

 自身が斬り捨てた6人のチンピラ侍の死体を冷たい目で見下ろす私が残りの5人のチンピラ侍に視線を移す。

 目前に繰り広げられた惨劇に恐れ入ったチンピラ侍達は私に見られた事で腰が抜け、何としてでも逃げようとする。

 するとどこから伸びた糸が5人の周りに纏わりついて彼らを拘束する。彼らがハッと空を見上げるとそこにはブラックマリアが両手に薙刀を構えながら飛んでいた。

 

「ふふっ♪」

 

 妖しく笑ったマリアが力いっぱいで薙刀を振り、チンピラ侍達の首を斬り捨てた。

 

「……」

 

 残りのチンピラ侍達も片付けられたのを見届けた私は手に持つ刀に視線を移す。その刀は黒く染められていた。これこそが――

 

「完全な〝武装色〟……か……」

 

 実は私は一応〝武装色の覇気〟を使えるは使えているが……まだ戦う覚悟を決まってはいない故か刀の元の硬さを少し強化しかできず、しかも数秒しか持たなかった――そう、不安定だった。

 なのに、今は安定している。聞けば〝覇気〟とは〝意思の力〟という。おそらくチンピラ侍どもを殺すという強い意志が〝武装色の覇気〟を安定させ、刃をさらに鋭くしたんだろう。

 それが私にとってはおハネとおカタちゃんが力を貸してくれたような気がして仕方がなかった。

 

「……おハネ、おカタちゃん……私はやるよ」

 

 そう……父上、母上、おハネ、おカタちゃんを死に追いやった「ワノ国」をこの手で滅ぼしてみせる。

 静かにその決意をさらに固くする私にマリアが声をかける。

 

「小紫ちゃん……」

 

 寄り添ってくれるマリアに私は振り返り、そして微笑みを浮かべる。

 

「私――初めて人を殺したけど……」

 

「……」

 

「……虫けらを踏んだ気分だったわ……」

 

「……そうね、私もだわ」

 

 私がそう言うとマリアも共感を示してくれた。

 ……こういう歪んでいる感覚にさえも同感してくれる親友の存在はありがたいわね……

 マリアに心から感謝を覚えた私は自らの決意を彼女に明かす。

 

「私ね……決めたの」

 

「……」

 

「この私が――「百獣海賊団」を呑み込み、黒炭オロチを殺し……「ワノ国」を滅ぼしてやるの!!!」

 

「!!!」

 

 獰猛な笑みを浮かべる私がごまかさずにそう宣言する。その宣言、そして笑みにマリアも息を呑む。そんな彼女に向けて私は静かに口を開く。

 

「あなたは……どうするの?」

 

「……私は何があっても――あなたについていくよ。だって……親友ですもの」

 

 そんな問いかけにマリアはフッと微笑み、そう答える。その答え、そして微笑みに私も微笑み返す。まるで安堵するかのように。

 そして私達はおハネとおカタちゃん、崩れ落ちた和菓子屋から目をそらさず見つめる。

 

「――必ず……必ず「ワノ国」の闇をこの手で断ち斬る……!!!」

 

「ええ」

 

――修羅道を歩む少女の心に「ワノ国」の闇が魔を一滴落とした




☆小紫、更なる修羅の道へー
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