ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第29話〝九蛇と華〟

 鋼の音がする。

 

 ――私、小紫とマリアが手合わせをしていたのだ。

 私の手に持つ刀とマリアの手に持つ薙刀が激突して、それを受けて互いに後ろに飛び下がり、構えた。

 

「「…ふ」」

 

 互いに相手に微笑む私達に声を掛ける影がいた。

 

「小紫ちゃん!マリアちゃん!お茶ですよ!」

 

 ラミーちゃんが2杯のお茶が置かれている盆を両手に持ちながら私達に時間を告げてくれた。

 彼女のそばにいる者も声を上げた。

 

「時間だぜ!」

 

「ハハ……ベポは……」

 

「まぁまぁゼポさん」

 

 白熊のミンク族であるベポとその歳の離れた兄であるゼポだ。その2人はなぜかラミーちゃんと気が合って仲が良いのだ。それこそ――ラミーちゃんが彼らの身体を枕として寝込んでもらっている程だ。そしてラミーちゃんと私達も仲良くさせてもらっている。

 

「ありがとう。ラミーちゃん」

 

「えへへ……小紫ちゃんはすごいね!マリアちゃんも!」

 

「うふふ……まだまだだけどね」

 

 ――私とラミーちゃん、この2人には何の接点もないのにこうやって縁を作っている。なぜそうなっているかというと、ある人物の口添えで会わせてもらっているからだ。そしてある人物こそが――

 

「お!元気そうだね!」

 

「!ヤマト君……」

 

 ヤマト君が笑顔一杯で手を振りながら近付いてきた――うるティとページワンの姉弟を従えながら。

 

「ベポもゼポもいるざんす!」

 

「……ざんす?」

 

 うるティがベポとゼポの存在に気付くのをよそに姉の口調にページワンが首を傾げてしまう。

 

「「うわ!うるティ!?」」

 

「私にもこもこさせろざんす〜!」

 

「「に、逃げろ〜っ!!」」

 

 うるティの姿にベポとゼポが焦っているところに彼らの純毛が目当てなうるティが彼らに飛びかかった。ベポとゼポはうるティの強引さに振り回されていたので焦りながら逃げようとしていた。

 逃げているベポ達と追いかけるうるティ、そして姉を止めようとしているページワンの姿に私達はつい苦笑してしまう。

 しばらくして逃げるのを諦めて大人しくうるティに自身の純毛でもこもこさせているベポとゼポ。そんな彼らに謝り続けているページワン、苦笑しながら新たなお茶を用意してくれたラミーちゃん。

 そしてお茶を飲んでいる私とマリアにヤマト君が声を掛ける。

 

「今度は僕と戦おうよ!」

 

「――それはいいですね。ねぇ、マリア」

 

「小紫がいいのなら……」

 

 ヤマト君からそう申し込まれ、私はそれ受け入れる事にした。

 あのカイドウの「息子」にしてスサノオの「弟」……その力を体感するのも良いだろうと思うからだ。

 私達の返事に機嫌良く頷いたヤマト君は今度はラミーちゃん達に声を掛けて、そのまま会話を開始した。

 私はその会話を眺めながら思案に耽っていた。

 ――ヤマト君に別に他意はないのが分かるが……ヤマト君、ラミーちゃん、そして私。この3人って兄を身に持つ「妹」だよね……まぁヤマト君に限っては微妙に違うかもしれないが……まぁいい。

 そう考えた私は続いてヤマト君に視線を向ける。

 ――私がワノ国を滅ぼすと決意して以来、自身の価値観がすっかり変わったな……現にヤマト君に完全に嫌悪感を抱かなくなったからな……何せ「彼」…それに暴獣海賊団の皆もあのチンピラ共に比べてみればいい奴ばかりだ……まぁ、百獣海賊団への嫌悪感は相変わらずだが……別に困った事ではない。むしろ、この憎しみを捨てたくはない。

 思案に耽り続けている私は声を掛けられ、意識を皆に向けると皆が私を疑問気に見ていた。その視線に私は微笑み、会話を再開させた。それは楽しく明るかった。

 

 ――だが

 

「そなた達」

 

 突然声を掛けられ、私達がその方向に一気に視線を向ける。そこに立つのは――

 

 顔がやたらとでかく横に広い個性的な容姿をしている女性と小太り体系である女性。そして――非常に艶のある美しい黒髪の絶世の美女。

 

 ――ボア三姉妹だ。

 

          ●

 

時は少し遡る――

 

 どこかの道をボア三姉妹は適当に歩いていた。

 

「今の私達は十分な強さを身に着ける事ができたわね……」

 

「ここでの修行を終え、女ヶ島に帰る時が来ましたね……」

 

「…」

 

「女ヶ島への帰り道についてはカイドウさんがアテがあると言ったわね」

 

「えぇ……何でも女ヶ島出身の顔知りがいると……」

 

「…」

 

「……お姉様?」

 

 サンダーソニアとマリーゴールドが会話している内にずっと静かだったハンコックの身体が震えるようになった。やがて――

 

「……いやじゃ!!女ヶ島に帰りたくないのじゃ!!」

 

 ハンコックがなんか情けなさそうな表情を浮かべながら、そう言い放つ。

 

「ここに残って…残って暴獣海賊団に入るのじゃ!」

 

「「……はぁ〜」」

 

 姉の予想を裏切らない態度にサンダーソニア達はため息を付いてしまう。

 ハンコックはスサノオに恋患いしている――

 その事実は妹達にとっては仰天なのだが、確かにスサノオはいい男だ。現に男嫌いの自身達も彼を慕っている。その中での彼に恋患いしている姉の姿は乙女そのもので微笑ましくもある。ただ――ただ、それによってもたらされるワガママ、妄想癖には頭を痛めている。

 といえ女ヶ島帰還の日が近付いている以上、そのままにしておく訳にはいかない。

 

「――お姉様、一度決めた決まり事に背む訳にはいかないの」

 

「だ、だが!」

 

「――お姉様、そうやって喚き続けると――スサノオさんに嫌われるかもよ?(まぁ彼なら一考してくれるかもだけど……)」

 

「っつ!!……ぬぅぅぅ……!!」

 

 妹達の言葉、特に「スサノオに嫌われるかも」という言葉にハンコックは喚くのを止め――しかし唸ってしまう。

 

「……し、しかし、愛しきあの方のそばを離れるなんて……」

 

「「……はぁ~」」

 

 両拳を握りながら唸っている姉の姿に妹達はため息をついてしまう。ふと

 

「ん?……げっ」

 

「?どうかした……あ……」

 

 ふとある方向に視線を向けたサンダーソニアが顔をしかめ、そんな姉の姿に気付いたマリーゴールドも気付き冷や汗かいた。そんな妹達の姿に気付いたハンコックも彼女達の視線先を見てみると――

 

「!……小紫か」

 

 ある集まりがあって、その中の小紫の姿にハンコックは目を鋭くする。彼女にとって小紫はスサノオとの間に立ち塞がる宿敵だとみてて彼女を目の敵にしているのだ。

 姉と違って小紫に悪い感情を持たない妹達は焦って、姉の意識を小紫から逸らそうとしても――

 

「――あやつと手合わせを試みてもいいかもしれん」

 

「ちょっ!?小紫ちゃんに迷惑よ!」

 

「えぇ、たかが勘でケンカ腰じゃ見苦しいわよ!」

 

 妹達が全力で姉を宥めようとするも――

 

「調子に乗っておるあやつの性根を叩き直すチャンスじゃ!」

 

 暴走気味で小紫の元に駆け寄ってしまったハンコック。

 

「……ダメだこりゃ」

 

「うぅ……小紫ちゃん、ごめん〜〜」

 

「「はぁ~」」

 

 そんな姉の姿にがっくりする妹達をよそにハンコックは集まりに声を掛けていた。

 

          ●

 

「……ハンコック……さん」

 

 私は苦虫を噛み潰したような顔になってしまう。

 ハンコックについては何もしてこないようだったので、最初はほっといたが、ずっと自身を睨み付けている彼女にさすがの私も鬱陶しく感じるようになってきた。今はもう顔を見たくないなと思う程に嫌悪感を感じているのだ。

 そんな私にハンコックはどこか意地悪そうな笑顔で言い放つ。

 

「――そなたは最近訓練で目覚ましい成長をみせていると聞いているぞ?」

 

「……そういう評価みたいですが、私的にはまだまだですがね」

 

「どうだ?わらわと手合わせをしてみるか?」

 

 ハンコックの挑戦に私達は目を見開くも――

 ……コイツは腐っても九蛇の人間だ。そんな奴と手合わせするのも糧になるだろう……

 

「……分かりました。受け立ちましょう」

 

          ●

 

 四角型闘技場で私とハンコックが対峙していた。

 

「……お手合わせ願います」

 

 刀を手に持つ私は礼儀正しく頭を下げた。

 

「……フン」

 

 その礼を受けたハンコックはしかし、傲慢不遜に鼻を鳴らしていた。

 そんなハンコックを見た見物人達、特にマリアとラミーちゃんは怒った。

 

「何よ、アイツ!……美人だけど、嫌な奴ね!」

 

「うん!――むしろ小紫ちゃんとマリアちゃんの方が美人だよ!」

 

「……ウチの姉がすみません」

 

「不甲斐ない……」

 

 不機嫌なマリアとラミーちゃん達に頭を下げて謝罪するソニアとマリー。

 その彼女達の姿にマリアもラミーちゃんもさすがに同情の念を禁じ得なかった。

 

「……大変そうね、あなた達……」

 

「「そりゃね」」

 

 そんなマリア達をよそに手合わせが開始された。

 まずハンコックの方から仕掛けてきた。

 ハンコックが素早く私に駆け寄り――蹴った!

 

「!」

 

 私がその蹴りが目先に迫ってくるのに目を見開くも、それをギリギリかわす。

 

「!」

 

 ハンコックは自身の蹴りをかわされたのはもちろんだが、私のそれからの動作に目を細める。私は――舞踊していた。

 柔軟性、平衡性、瞬発力、リズム感等の運動能力を高めた私は舞踊での変則的な動きを戦闘スタイルに生かせたのだ。

 

「ー」

 

 私の動きに惑われているようにみられるハンコックに自身の右手に持つ刀が上方から振り下ろす。だが――

 

「は!」

 

 それより、それこそ先程の蹴りより早い蹴りが私の腹に決まった。

 

「!!」

 

 その一撃に目を見開く私が吹っ飛ばされ、壁に激突した。

 

「……フン、わらわの敵ではなかったな」

 

 それを見たハンコックがドヤ顔を披露するも――その笑みを消す。

 

「ぐぅ……」

 

 私が刀を支えにして立ち上がっているからだ。その姿にハンコックも微かに感嘆の声を上げた。

 

「ほぅ〜」

 

「……はぁぁぁ!!」

 

 私は負けじとハンコックに向かって駆け込んだ。

 

 ――九蛇の人間として幼い頃から修行を始めているハンコックと修行を始めてまだたった2年しか経っていない小紫ではどうしても差が出てしまう。

 故に挑み続けている小紫がハンコックに返り討ちにされ続けるのも道理であるかもしれない。

 

         ●

 

「ハァハァ……」

 

 ――ハンコックに攻撃を試みてもかわされ続けながら、彼女の蹴りを受け続けた私はギリギリ倒れかけていた。

 そんな私の姿をハンコックは嘲笑した。

 

「フッ……なんと無様な姿……見るに耐えられない姿よな〜」

 

 そのように私を軽蔑したハンコックは続いて恍惚な表情を浮かべた。

 

「やはりわらわこそがあの方の隣にふさわしい……」

 

 何かを思い描き、それに酔っているハンコックに私は静かに言う。

 

「……随分…勝ち誇っていますね…」

 

 私のその言葉を耳にし、しかし負け惜しみだと見なしたハンコックは傲慢不遜に言葉を放つ。

 

「フッ、随分情けない負け惜しみだ事」

 

「そなたが何を言いようが、わらわの勝利……強さは揺らがない。なぜなら――」

 

「そうよ、わらわが美しいから!!!」

 

 そう言い放つハンコックの姿は――

 

「何だ!?あのポーズは!?」

 

「見下しすぎて逆に見上げてる!!」

 

 観客席からのその言葉通り、ハンコックは私を見下しすぎて逆に見上げていた。

 その傲慢さを極めた姿に私もイラつきを覚え――

 

「それを言うのは私を倒してからにするんだな!!」

 

 私はそう言いながらハンコックに再び攻撃を仕掛けようと駆け込んだ。

 

「フン……物覚えの悪い事を……」

 

 そんな私の姿に鼻を鳴らしたハンコックも蹴りを叩き込もうとし――

 

「ハァ!!」

 

「!?」

 

 その蹴りを私はかわしきれた!

 私の先程までとは何か違う動きにハンコックも目を見開く。

 

「あ゛ぁあ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 

 ボゥ

 

「!!?」

 

 目を見開くハンコックの頬に微かだが――傷ができた。しばらく呆気に取られたハンコックだが――

 

「……おのれ」

 

 急激にハンコックの形相が鬼の如く恐ろしくなっていく。

 

「おのれおのれぇ!!!よくもわらわの美しき顔に傷を付けたな!!!」

 

 自身の自慢な顔に微かだが傷を付けられた事実に怒りを爆発させたハンコックの血走らせる目が小紫を凝視する。

 

「小娘ぇ!!!そなたを切りキザんで獣のエサにしてやる!!!」

 

 ハンコックの激しい怒りに周囲が慄く中、私は――笑っていた。

 

「フッ……笑止……!顔を少し傷付けられたぐらいであわあわするとは……見苦しい」

 

「……なんじゃとぉ〜」

 

 私の嘲笑うような言い草にハンコックは怒りをさらに燃やしていく。

 だが、私はその怒りに怯まずに言葉を続ける。

 

「今の私達は……海賊……戦士だ!」

 

「修羅道に身を置いているんだ……少しも傷が付かない道理なんでどこにもない……!」

 

「自慢の顔を傷付けられるのが怖いなら――さっさと海賊をやめて、そうだな……石像になるのはどうだ!?」

 

 私のその言葉にハンコックは歯を食いしばる――しかし、その目にはどこか納得の色がみられていた。

 実はハンコックは九蛇の戦士として、私の論に納得していたのだ。

 だが、私の言葉に納得している自身が心内に存在するのを認められないハンコックは――

 

「――なら!お前の美しき顔も傷付けられるがいい!!」

 

 そう怒鳴りつけたハンコックが蹴りが素早く私の顔に叩き込まれた。

 

「(やった――……!!?)」

 

 つい笑みを浮かべたハンコックだが、突如右足を掴まれた。それも強き力で。

 

「な――っ!」

 

「……むん!」

 

 驚愕するハンコックをよそに私が刀を振り上げる。その振り上げにハンコックが冷や汗ながら背を反らす事でかわし、足を掴む私の手を蹴った。だが――

 

「…!!」

 

「!なんと……!」

 

 手を蹴られてもハンコックの足を離さなかった。むしろ、ますます足を掴む力が強まってきた。

 

「(なら――!)こうするのじゃ!」

 

 ハンコックは私の手から足の方へ狙いを変え、蹴った。それを受けた私はさすがに体勢を崩しかけ、ハンコックの足を離してしまった。

 後ろに下がったハンコックは小紫の顔を凝視する。せっかく可愛らしい形相になっているのに自身の蹴りによって痛々しくなっている顔を……

 

「……フ、フン…せっかくの可愛らしき顔が形なしじゃな」

 

 ハンコックの言葉に小紫は驚く事に微笑んでいた。

 

「ふ…私の美貌等……使えるならば使ってやる……」

 

「けど……」

 

「強くなる、勝つ為に必要ならば……こんな美貌等……くれてやる!!!それぐらいの覚悟は持ち合わせている!!!」

 

 その続きを私は心内で呟く。

 この私がワノ国を滅ぼすのを決意した以上――

 

「お前ごときに遅れを取る訳にはいかんなぁ……!」

 

 そう言い放つ私が獰猛な笑みを浮かべ、〝圧〟――覇王色を放つ。

 

「……!!(こやつ!覇王色を!?……もしや、これこそがスサノオさんがこやつを気にかける理由か!?)」

 

 驚愕するハンコックに私は駆け込む。我に返ったハンコックは私の攻撃に対して自身からも蹴り返す。

 だが、ハンコックの蹴りを今度は私が半分ぐらいかわした!さらに私の斬撃がハンコックにギリギリ届きかけている始末だ。

 

「……!!(こやつ!気のせいかと思ったが、動きがさっきより良くなっている!)」

 

「(しかも……)」

 

「(こやつの攻撃が効率的になっている!これは一体……)」

 

 疑問を感じているハンコックだが、私の血走らせる目を見た途端にハッとする。

 

「(まさか……!?こやつ、わらわの動きを観察して……)」

 

「(いや、観察してもこういう鋭くなるなんて……こやつ)」

 

 目を見開くハンコックの隙を見逃さない私が素早く彼女の下方に駆け寄った。

 

「!」

 

 私が全力を込めた刀を振った!

 

 バチ

 

「!!?」

 

 ハンコックの肩が斬られた――それも微かとはいえない程に鋭くだ。

 

「……!!」

 

 目を見開くハンコックの顔に一滴の汗が流れる。だが、私が続いて連撃をくらわそうとするのに対して意識を引き締め直したハンコックが蹴ろうと――

 

「そこまで」

 

 その声と共に私とハンコックの間に炎が飛ばされた。その炎を前に私達は自身の攻撃を止めた。私達が素早く炎の飛んだ源に視線を移したら――キングが立っていた。

 

「――手合わせを邪魔して悪いが……三姉妹、カイドウさんから呼びだ。女ヶ島への帰り道について話がついたとだ」

 

 手合わせを邪魔された私達の責めるような視線にキングが手合わせを止めた理由を明かす。

 

「とにかくだ……行くぞ」

 

 キングの指示にボア三姉妹は大人しく彼についていった。

 その際に私とハンコックは互いに相手に目を合わせる。

 

「「…」」

 

 だが、私から視線を逸らしたハンコックは歩み続けた。

 私もその姿を凝視し続けた――

 

          ●

 

 キングにボア三姉妹がついていく中、サンダーソニアとマリーゴールドが小声で会話した。

 

「――どうしよう、お姉様がカイドウさんの前で行きたくないと言ったら……」

 

「――カイドウさんでもキレるわね……」

 

「何とかしなければ……」

 

「でもどうやって?」

 

 そう懸念していたサンダーソニアとマリーゴールドの会話が聞こえたのか

 

「――サンダーソニア、マリーゴールド」

 

「⁉は、はい」

 

 ハンコックの突然の声掛けに妹達も反応するも――

 

「女ヶ島に帰るぞ」

 

「「!?お、お姉様!?」」

 

 ハンコックの先程とは正反対の言葉に妹達も目を見開く。そんな妹達をよそにハンコックが続ける。

 

「女ヶ島に帰って――まず皇帝になるのじゃ」

 

「皇帝になって海の猛者共を相手取るのじゃ――いつまでここに引きこもる訳にはいかぬのじゃ」

 

「「お姉様……」」

 

 姉のその凛々しい言葉に妹達が感激しているのをよそにハンコックは思案に耽けていた。

 

「……小紫…か…」

 

 ハンコックはつい先程まで自身と戦った少女の事を思い浮かべ――目を鋭くする。

 ――ハンコックは気付いたのだ。小紫の潜在能力に。その力はおそらく――自身を越える程だろう。

 しかもそれだけではなく……彼女の戦士としての凄まじき精神力、覚悟にハンコックも感嘆し――敬意を感じた。

 ――認めようではないか。あぁそうだ、認めざるを得ない……小紫は小娘ではない……1人の戦士であると――

 

「――負ける訳にはいかぬ……!」

 

 そう結論に至ったハンコックは自意識を引き締める。

 ハンコックは小紫の事を本当の意味での自身の宿敵として見定めたのだ。

 

 

――修行を終えたボア三姉妹は故郷の女ヶ島に帰還していった。

――しばらくしてハンコックはアマゾン・リリーの皇帝に即位、並びに九蛇海賊団の船長の地位を継承し、たった一度の遠征で1億ベリーの懸賞金を掛けられる。

元々轟いていた九蛇の悪名と合わさり、即座に警戒した世界政府の要請を受けたハンコックは嫌々ながらもその立場を百獣海賊団の為に利用するという思惑もあって「王下七武海」に加盟した。

ハンコックは更なる強さを身に着けようと海の猛者を相手取り続けて、彼女の猛威が世界に知れ渡る事になる。

 

 

 

――そして

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