ギビマ――
そこは〝偉大なる航路〟後半の海〝新世界〟にある島々の1つだ。
その島は農業、林業、漁業等の様々な産業に励んでいて、その影響によって繁栄を誇っているのだ。
その産業の様々な分野の中でも特に道具等を作る鉱業、工業はすごく盛り上げられてて、その盛り上がり具合により現在の〝ギビマ〟を形作っている、誇っている特徴の1つにもなっているのだ。
そんな〝ギビマ〟の統治は創始者の一族、コンストラクション家の人間が代々務めている。
「――というわけだ」
「「「へぇ~」」」
「そうか!」
〝ギビマ〟に関してのフドウからの解説にオレ達は頷いた。
オレとフドウ、そして――暴獣海賊団は〝ギビマ〟に既に上陸してて、その街地に立っていた。
そこで上陸したはいいものの〝ギビマ〟に関してはさっぱりだったオレ達にその辺りの情報、知識を把握しているフドウが詳しく説明してくれたのだ。
「ここでは様々な産業をやっている上で鉱業と工業が盛り上がっているとは……なんかワノ国に通じるところがあるな」
街を見渡しながらワノ国の産業構造に通じているものを感じられていたオレは晴れやかに笑う。そんなオレだけに留まらずに暴獣海賊団の人間達は暴獣海賊団としての初めての上陸、そして〝ギビマ〟の様々な景色に気分が昂っている為に騒がしかった。
「さぁて!この〝ギビマ〟でどんな冒険するのかな!」
「ふふっ、全くヤマトは――……しかし…これは…」
「ここは――少し…少しだが、モコモ公国を思い出させてしまう――ウォオオオ!!」
「シシリアン!やかましい!――まぁ、そうだな……」
「ここのメシも美味そうだ!全て食べてマスターしてら!」
「ここのアクセサリーも見ようごーんす!ペーたん!ペーたん!」
「はいはい……分かってるってばよ…姉貴…」
「……一見では…ここの統治はしっかりしているようにみられるが…」
「えぇ――そうねぇ……」
「うむ!私の目から見ても――経済状態は悪くはないようだ!」
「ノヴァ!あなたの初めての記念の上陸ね!ここが――〝ギビマ〟よ〜!」
「ぎびま!ぎびま!」
暴獣海賊団の人間達の和気藹々な雰囲気につい頬を崩してしまうオレのそばでフドウがボソッと呟いてしまう。
「……しかし、海賊であるオレ達が人目を忍びながら街を歩くとはな……何か…ズッコケてしまうな……」
どことなく不満を感じさせるような響きがあるその呟きにオレは苦笑してしまう。
「――退屈な思いさせてしまって悪ぃな……だが、知ってんだろ?オレには略奪なんか、性に合わねぇんだからな……」
「それにあのままで堂々と上陸すると――騒がれて余計な混乱が生じてしまうぜ?――面倒くせぇ事もイヤだぜ?」
「……それは、まぁそりゃ……」
オレのその言葉にフドウは渋々ながら――しかし頷いてしまう。実際の話、フドウ本人も感覚的には略奪も面倒事も好まないのだ。
――オレ達、暴獣海賊団は確かに海賊だ。だからといって――世間のイメージ通りに略奪する、その類の悪行をしようとする訳ではねぇ。
まぁ……現在、〝大海賊時代〟とも呼ばれている世界情勢だ。
その名から分かるように海賊が略奪する、悪行を働く、暴れ回る件の数が多すぎる。
その一方で〝海賊王〟ゴールド・ロジャーと〝白ひげ〟と光月おでんのような悪行を働かずに冒険を楽しむ海賊が少ない――それどころ〝いない〟といってもいい有り様だ。
これでは〝海賊〟とは略奪するものである――と思われても仕方がねぇな。現に親父達もやっているし。
だが――オレ達にとって略奪とその類の悪行は性に合わねぇんだ。ただ冒険さえすればいいのだ――あと強ぇ奴と戦えば、それでいいのだ。
ちなみに――粗暴な人間が多く所属している百獣海賊団も略奪するはしているが……親父達が発展と交際にも重さを置くようになってから規模が小さくなってきたのだ。
――なお、暴獣海賊団が〝ギビマ〟に上陸する際では〝ギビマ〟の人々に気付かれないように慎重に上陸してきた。またカイリュー号は〝ギビマ〟の人々からも見えにくい岸に隠しておいた。もちろん見張り番として数人を残してきた。
そしてオレ達は人目を忍びながら〝ギビマ〟を見回ろうという手筈になっている――んだが……
「……っていうか、オレ達を見てきているんだが?」
そう呟くオレの目にはオレ達を凝視している〝ギビマ〟の人間数人が写されていた。
人目を忍びながら〝ギビマ〟を周る計画の筈が、注目を集めてしまった事により呆気なく瓦解してしまったという事にオレは落胆の表情を浮かべた。
そんなオレにジャックが言葉を投げかけた。
――その時の彼の顔にはなぜかニャニャしていた。
「当然ですよ。スサノオさん。ちょうど、あんたの隣にいかにも目立つ格好してる奴がいるじゃないですか」
ジャックのその言葉にオレは隣にいる人物――フドウに視線を向けた。
フドウの格好は黒ずくめで、しかも迫力がある――うん、確かに目立つな。
ジャックの言葉、そしてオレの視線にイラつきを覚えたフドウは反論してきた。
「ジャック、そういう貴様だって目立つ格好もしているではないか」
フドウのその反論にオレは今度はジャックに視線を向けてみた。
ジャックの格好も普通とはいえず、迫力もやはりある。
そしてジャックもフドウの言葉とオレの視線にイラつきを覚えた。
「――あぁん?やんのか?」
「あ?」
やはりいがみ合ってしまう2人。そんな彼らにオレはさっさと介入する事にした。
「コラ」
「「っ!……すみません」」
オレの静かで短い言葉に2人はしかし、いがみ合いを止めてくれた。彼らの様子に頷いたオレは暴獣海賊団を見渡してみた。
「……っていうか、よく考えればオレも――お前らも目立つ格好してるよな」
オレはそう指摘し、苦笑した。
オレのその指摘に暴獣海賊団は互いに確認し合い――「確かに」と苦笑した。
そうなのだ。オレ達は自身が派手好みであるだけはあって、最低限でも派手な格好をしているのだ。これでは人目を忍ぼうとしても無理なものは無理だ。
「――まぁ!オレ達はオレ達らしく堂々としようじゃねぇか!堂々と!」
「「「おう!」」」
オレの宣いに暴獣海賊団は共感の声を上げてくれた。
「……それにしても」
気を入れ直したオレは〝ギビマ〟の街を今度は目を細めながら見渡して――思い浮かんでいる疑問を口にした。
「なんか……ここの人間は暗そうだな……」
「――本当だね…」
「……誰かでも死んでんのか?」
オレの疑問を暴獣海賊団の面々も肯定し、首を傾げていた。しまいには――ジャックもはっきりと不謹慎だと見受けかねない発言をしてしまった。
ジャックのその言葉に〝ギビマ〟の人間達はオレ達を睨みつけてきてしまった。
「「「あ゛?」」」
その視線にフドウとジャックを筆頭に頭に血が登りやすい奴らが睨み返した。
比にもならない程に鋭い視線に睨んできた人間達も怯えて目を逸らした。
「コラ」
「っ!し、しかし!」
「…」
オレからの制止にフドウ達は一応睨むのを止めたが、不満気な態度をも隠さなかった。
「面倒事はなしだ」
「……分かりました」
「はい……」
オレからの注意にフドウ達は渋々ながら了解した。
「――奴らの雰囲気といい、ジャックの言葉に対しての反応といい……誰かが危篤な状態になっていて、それを心配している――大体そんなあたりだろう」
〝ギビマ〟の現状に関してオレはそう推測してみた。
仮にオレの推測通りだとしたら――〝ギビマ〟の街を歩いている、店を出す、買い物等もしている人々は最初こそオレ達、暴獣海賊団の人間達の騒がしさ、濃さに意中を突かれた様子もみられてはいたものの――今は暗そうに項垂れているのも無理はない。
一応、その暗い雰囲気を出さないように努力するはしているように見受けられているが……
逆に暗そうに項垂れていない人間は少数で、しかもその人々はオレ達と同じように事情を知らぬ――恐らく旅人か、その類だろうと見受けられた。
――実は現在、〝ギビマ〟の統治者にしてコンストラクション家の当主――カガヤは今病魔に冒されていて寝込んでいるのだ。その病み具合は命に関わっていて、何かが起こっても無理はない程だ。
〝ギビマ〟の住民は穏やかな人間が多いコンストラクション家でも名君と謳われているカガヤを慕っている為に彼が病魔に苦しめられている事実に心を痛めていた。もちろん、起こり得るであろう最悪の可能性を危惧しているのだ。
「……仮にそうだとして――どうしますか?」
「……あぁ、そうだな…オレ達には関係ねぇ話だ――オレ達はとりあえず、ここを見回ろうぜ」
そんな事情を知る由もないオレ達は無理に関わろうとしないと決めた。そのまはま〝ギビマ〟の雰囲気に引っかかるものの、とりあえず――堂々と足を進めていった――のだが。
「…!」
オレの後ろを歩いているハッテンは何かに気付き、ある方向に視線を向けた。
建物と建物の影に隠れてて薄暗い隙間に一瞬だが――怪しげな影が動いていたのをハッテンは見逃さなかった。
目にした影、そしてこの〝ギビマ〟に漂っている雰囲気……ただならぬ何かを感じ取れたハッテンは素早くオレに近寄り、小声で声掛けた。
「……スサノオさん」
「……おう」
ハッテンの態度と雰囲気から彼の考えを察したオレは彼の次に言うであろう言葉を予想づいた。
実は――ハッテンが目にした怪しげな影をオレも見逃さなかった。だからこそ――ハッテンからの申し込みはちょうど良いと思っていた。
「しばらく――離れても?」
「構わん。行け」
オレがそう許可を出した途端にハッテンが姿を煙のように消した。
それを見届けたオレ、そして同じく見届けたフドウとジャックはまだ騒いでいるヤマト達に聞こえないように小さな声での談論を開始した。
「……オレ達はこのままで進め続けるべきか?――それとも……数グループに分けて、それぞれ動くべきなのか?」
フドウからの問いかけにオレはしばらく思案に耽って――
「……後者だな」
「……何故?」
オレのその意見にフドウは目を細め、ジャックもその理由を問いかけてみた。
「あぁ…このままだと――何かが起こった時にひとまとめにされて動きを制限されてしまうだろう……それは面倒だ」
「だが、数グループに分けておけば――たとえ1グループに何かが起こっても他グループにも影響が及ばずに自由に動けられるだろうからだ」
「なるほど」
オレの説明に納得できたジャックをよそに今度はフドウが問いかけてきた。
「……だとしたら…グループの数、そして誰と誰を組ませ――そのグループを誰がまとめるべきなのか……だな」
「あぁ……それには考えがある…もちろん、お前らも容赦せずに言っていいぞ!」
「「えぇ」」
オレとフドウとジャックは起こり得るであろう非常事態に備えての手を討つ為の談論を続けていた……
●
ギビマ どこかの大屋敷
〝ギビマ〟の中心辺りに建てられている他の建物とは少し格が違うようにみられいている大屋敷。
そこは――コンストラクション家の人間が住み込み続けてきた大屋敷なのだ。
その内のある部屋で寝込んでいる男が1人。
彼の顔と胸部には焼けただれたような痕があり、両目は視力がないようにみられていた。
そのあまりな痛々しさを見ても分かるように彼が寝込み続けるのには頷けるであろう……
そう、彼こそが――今の〝ギビマ〟における渦中の人物――カガヤだ。
「……どうしましたか?あなた……」
そんな彼に声を掛けた女性が1人。
彼女の名はアマネ。カガヤの妻だ。
妻として彼を長らく介護してきたアマネはいつもとは違う彼の様子に気付き、声を掛けてみたのだ。
妻からの問いかけにカガヤは答える。
「……あぁ…いやね…」
「ただ……何かが…起ころうとする――そんな予感がするんだ」
そう呟くカガヤの顔には痛々しながら――しかし穏やかに微笑んでいた。
●
どこかの空間
そこは――様々で多彩な部屋の要素が物理の法則を無視したようなデタラメに継ぎ接ぎされたような奇怪な空間となっていた。
あまりにも不自然で――物々しい空間。
その空間内での一室に怪しげな黒い影がいた――それも2つ。
重々しくお辞儀をしているようにみえてしまう影が目前の、これはまた不遜そうに立っているように見えてしまう影に声を掛けた。
「どうしましたか?」
その問いかけに不遜そうに立っている影は何やら訝しげに言葉を放つ。
「……いや……そんな事より――どのくらい進んできたのだ?」
「ハッ!計画は順調に進んでいます……いよいよこの〝ギビマ〟はあなた様の手に……!」
お辞儀をしている影の無感情に、しかしどこか興奮したような響きがある言葉に不遜そうに立っている影もつい不気味な笑い声を出さずにはいられなくなった。
「そうか!そうかそうか……クク……そうだ……〝ギビマ〟を我が手に――我々、ムザン海賊団の支配下に置くのだ」
「――そして、〝ギビマ〟を作り変える事で……海賊の国として生まれ変わるのだ……!…ハハ…」
「ハーハッハッハッハッハ!!!」
不遜そうに立っている影がそう宣言し、笑い出し始める途端にその影の周囲に悍ましい音を出しながら数多くの黒い影が姿を現し――狂喜の声を上げた。
「「「オオオ〜〜〜ッ!!」」」
●
場面は暴獣海賊団のところに戻って――
「よし!お前ら!ちゃんと分かれたな!」
「「「はい!」」」
オレは分かれた3グループにそう確認し――応答の声がその場に響いた。
その声に頷くオレは続いて宣する。
「オレ達は――この〝ギビマ〟をそれぞれ観光するぞ!」
「――警戒を忘れるなよ、貴様ら」
「ここにはどうにもきな臭ぇからなぁ……!」
「「「オオ――ッ!!」」」
オレのその布告に暴獣海賊団は歓声を上げる。
――暴獣海賊団が初めて上陸した島、〝ギビマ〟には――陰から暗い悪意が蝕んでいた……
――何の因果か、その陰謀に暴獣海賊団も巻き込まれる事になる……