ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第35話〝前兆〟

「具合はどうだい?」

 

 小紫とブラックマリアが心身を休めている休憩室を訪れ、そこでの彼女達の様子を確認しようとした男が1人。

 その人が良さそうな男――兵隊リーダーはおそらく心が傷つけられているであろう彼女達に安心感を与えようと穏やかな微笑みを浮かべるように努めていた。

 

「えぇ――えぇ、ホッとしています――ありがとうございます……私達を助けて頂いて……」

 

「うん!……礼はいいよ――子供を守るのが我々、大人の義務なのだから」

 

 彼の微笑みにマリアは頭を下げて礼を言った。彼女からの礼に兵隊リーダーは頷くも、彼女の隣で布団を被りながら寝込んでいる小紫に視線を向ける。

 

「――彼女はどうかな?」

 

「えぇ――小紫はあなたに助けて頂いた事で安心できたのか、今はじっくり寝ています」

 

「そうかい」

 

 マリアからの小紫の様子についての説明を聞いた兵隊リーダーは心配事はないと判断し、彼女に言葉をかける。

 

「何かあったら何でも言いなさい……あの扉に立っているお兄さんに言うんだよ」

 

 入口近くに立っている兵士を指指す兵隊リーダーがそう言う。その言葉にマリアは頷く。

 

「分かりました……小紫が起きたら伝えておきます」

 

「うん……私は仕事があるから、もう行くよ――ではな」

 

 マリアの笑み、そして言葉に頷いた兵隊リーダーは自身の仕事に戻ろうと休憩室を出ていった。

 それを見届けたマリアはふと残った兵士と目が合って――微笑み合い、会釈を交わし合った。

 

「…」 

 

 マリアが小紫に視線を向ける。小紫は目覚める前兆さえも見せずに寝続けていた。

 

「…」

 

 その様子を見ているマリアは一瞬兵士に視線を向ける。兵士は相変わらずマリア達を見守っていた。

 

「…(…バレてはいないわね)」

 

 その様子からそう思ったマリアは人知れずにニャリとした。

 マリアが見守っている小紫だが、実は――

 

 

 

 丸めている布団にもう1枚の布団をかけているだけだった。

 

 ただ、ただ――それだけだが、兵士には小紫が寝込んでいるように見えさせているのだ。

 ――それはすなわち、休憩室には小紫がいないといえるのだ。では、彼女はどこにいるかというと――

 

「(気を付けながら……情報を手に入れてきてね――小紫)」

 

 

「(任せて、マリア)」

 

 小紫――私は休憩室を出てて、建物の中を忍んでいた。

 元々私達は〝ギビマ〟に起こっている事態を把握しようとするまではいい。

 だが、私達が2人揃って情報収集に努めようとすると――休憩室には誰もいない状態になってしまう。それを兵隊リーダー達に騒がされてしまうだろう。

 もう既に面倒な状況にもうこれ以上の面倒事はご勘弁だ。

 だから、ベッドには私が寝込んでいるように偽装しておき、その偽装を維持し続ける、または何かの異変が起こったらそれを知らせてもいいようにマリアを休憩室に残してきた。

 といえ、ああいう偽装じゃ――いつバレてしまうかもしれない。ならば、それより早くできるだけ多くの情報を集めなきゃ――

 

「……人目を忍びながら会話を聞くだけじゃ、情報が限られるかもしれない」

 

「なら――か弱い女子のフリをしながら人から聞いた方がいいだろうかもね」

 

「……話を聞いてみる相手を慎重に選ばなきゃね」

 

 そう考えまとめた私はさっそく多くの情報を持つ、それをすんなり話してくれるであろう人を探そうと廊下を静かに、だが駆け込んでいく――

 

          ●

ある店

 

「見事だな、これは……」

 

 そこでの壁に飾られてあるなかなか良い繊維で芸術的なデザインを描く事でできている織物を観賞していたフドウがそう呟いた。

 そして他にも飾られている織物を鑑賞しているフドウグループのメンバー達が感想を述べ合い、そして――

 

「この繊維が良い味を作っているのか」

 

「おぉ!――こういう繊維もいいが……こういう織り方がくせになるんだよな〜」

 

「……この織り方を教えてもらいたいが……部外者のオレ達にそう教えてもらえるのかね?」

 

「だよな〜…だとしても最低限のやり方を教えてもらうように交渉しよう」

 

 〝ギビマ〟の織物の織り方に関しての考察、それの教えを乞おうと相談していた。

 ――海賊を本業としている彼らだが、その一方で産業に関する職にも就くように心がけている。そうする事で〝ワノ国〟の発展に貢献するのだがら。

 その就いている職によって産業の深みを実感できた彼らは今見事な織物、その材料と織り方にも注目しているのだ。

 とにかくフドウグループは今、和気藹々としていた。

 だが、その中でそうじゃない者が数人。

 

「…」

 

 その1人であるヤマトは店の入口辺りで空を見上げながら思案に耽っていた。

 そんな「彼」に声を掛ける者がいた。

 

「……どうした?」

 

「!……ペドロ」

 

 ペドロが普段とは違うような「彼」の様子が気になって、声をかけてみたのだ。

 

「……僕を気にかけるんだ」

 

 ヤマトは自身を嫌っていると思っていたペドロが声をかけてくるのに少し驚き、滑稽感をも感じていた。

 

「……フン、仮にもオレを叩き潰した者が情けない様子を見せるのはご勘弁願いたいと思っているだけだ」

 

 ペドロが無愛想にそう言い放った。

 だが、言葉とは少し違うような彼の様子に気付いたヤマトは可笑しそうにする。

 

「……ただ、僕は――自分の有り様に関して悩んでいるだけさ」

 

「……お前の有り様?」

 

 ヤマトのその言葉にペドロは首を傾げる。ヤマトは微笑みを浮かべる。

 

「……まぁ、それは自分で答えを見つけるもんだし」

 

「……まぁ、その通りだがな」

 

 ヤマトがそう断言すると似たような悩みを抱えているペドロもその答えには共感する――してしまうのだ。

 それっきりで思案に再び耽ったヤマトを見つめたペドロはふとシシリアンに視線を向けてみた。

 

「ほぉぉ……これはまた見事だな」

 

 飾られているある織物を観賞しているシシリアンは感嘆の声を上げていた。

 さっきとは違って不機嫌さが感じられないその姿にペドロは呆れるも、つい羨望を覚えてしまった。

 

「(脳筋はいいよな……)」

 

「海賊だぁ!!」

 

「「「!!」」」

 

 突如響き渡されたその叫びにフドウ達は素早くその叫びの源に視線を向けた。

 そこには確かに海賊達が暴れ回っていた。その暴れぶりに人々が悲鳴を上げて、恐怖に慄いていた。

 そして暴れ回っている海賊達は人々の目にはなんかイラついているようにみえていた。

 

「――クソが!!ジョウゲンの野郎!!」

 

「〝ギビマ〟を支配する為にわざわざオレ達を雇ったのに、突然クビにしてやがって!!」

 

 海賊達のその叫びに人々はザワついた。

 

「――ジョウゲン様がアイツらを雇っただって?」

 

「――〝ギビマ〟を支配する為にって?」

 

「そんなバカな!」

 

「――でもカガヤ様は今病気だよね」

 

「――まさか、その病気って……?」

 

 人々の会話が少しずつ深刻になっていく。

 

 

ウズイ・ジョウゲン――

 

彼は〝ギビマ〟の摂政を務めている男だ。

彼はあまりにも冷ややかな男で、それは人付き合いが悪い程だ。

その一方で彼は真面目ではっきりしている上で、やるべきな事を必ずやり遂げてきた為にカガヤは彼に信頼を置いている。

だが、カガヤが病魔に冒されてから彼の動きには不穏なものを感じられると人々の間でささやかれ始めている。

 

 

 ジョウゲンの不穏な動き、そして今の海賊達の暴れぶりにより疑心暗鬼に陥りかける人々が深刻そうにザワついた。

 その景色に海賊達はニャリとする。

 

「――もうやってられねぇから……暴れ回ろうぜ!!」

 

「「「お「それは困るな」―がはぁ!?」」」

 

 船長らしき海賊のその雄叫びに海賊達が雄叫びを上げ用途する――だが、そこを突如吹っ飛ばされた――剣を振っているフドウによってだ。

 吹っ飛ばされた海賊達と突然の状況に一気に動きを止めた海賊達の前にフドウグループが姿を現した。

 

「何だ!てめぇらは!」

 

「あぁ?――貴様らに紹介する義務はないな」

 

「そうだぁぁぁ!!いいところを邪魔してくれやがって!!」

 

「そうだな――空気の読めぬ野蛮人共だな」

 

「理由は分からないけど――僕達のそばで暴れ回ろうとした君達の不運さ!」

 

 海賊達からの怒鳴りつけにも怯まないフドウ達がそれぞれ自身の意見を言う。

 

「あぁ!?なら――何でオレ達の邪魔をするんだぁ!?」

 

「観光の邪魔だからだ」

 

「「「は?」」」

 

 海賊達からの更なる怒鳴りつけに対してのフドウの即答にその場にいる人々が呆気に取られた。

 

「――ふ、ふざけんじゃねぇ!!そんなくだらねぇ理由でオレ達の邪魔をしやがったのか!!」

 

 ふと我に返り、怒りを見せた海賊達が再び怒鳴りつけるも

 

「貴様らの事情等、知った事か」

 

 フドウが見事に切り捨てた。

 彼の態度に海賊達はあまりの怒りで言葉を失ってしまう。

 そんな彼らにフドウは問いかけ返す。

 

「そういう貴様らは――どこの海賊団だ?」

 

 フドウからそう問いかけられた海賊達はニャリとする。

 

「――ギャハハハ!!オレ達か!聞いて覚えとけ!!」

 

「オレ達は――暴獣海賊団だぁ!!」

 

 海賊達はそう名乗りを上げた。その途端――

 

「「「…あ゛?」」」

 

 フドウとヤマト――暴獣海賊団の海賊達――しまいにはシシリアンとペドロまでもそれは――そりゃもう恐ろしげな形相を浮かべていた。

 

          ●

 

あるレストラン

 

「――お前は〝リュウグウ王国〟を出てて、何しているんだ?」

 

「あぁ、私か。私は――」

 

 そこでジャックとキサメは会話していた。

 

「私は気の向くままに旅するだけですよ……もう誰かの怒りとか、憎しみとか、傲慢さに振り回れるのは願い下げですから」

 

「……そうか」

 

 キサメのその答えに何か思う事があるのかジャックも重々しく頷いた。

 今度はキサメがジャックに問いかけ返す。

 

「そういうあなたは?」

 

 キサメからの問いかけにジャックは誇らしげに口を開く。

 

「――オレは今、あの人の懐刀として――やっている」

 

 ジャックの言葉にキサメは眉を上げる。

 

「――「あの人」とはもしや……人間なのですか?」

 

「あぁ」

 

 キサメのその問いかけに頷いたジャックは続きの言葉を言い放つ。

 

「しかも、ただの人間ではねぇ……あの人こそ――いずれ「最強」になる男だ!!」

 

 熱っぽく言い放つジャックを見つめるキサメは微笑む――ただ、どのような感情を秘められているのか、それを読みにくい程だ。

 やがてキサメが静かに言う。

 

「――つまり、人間に飼い込まれるのをよしとするのですか?」

 

「……フン」

 

 キサメの試みるような言葉にジャックは鼻を鳴らす。

 

「オレは――オレを見てくれているあの人の懐刀としてやっていくつもりだ」

 

 そう言い切るジャックに目を細めるキサメ。

 

「つまり――結局、あなたは人間の奴隷として生きていくつもりなんですね」

 

 キサメのそのからかいに対してジャックは――

 

「フッ……」

 

 怒るどころか――平気だった。

 そんな様子に驚愕するキサメにジャックは言い放つ。

 

「何とでもほざけ。それでもオレの意思は変わらねぇ」

 

 そう堂々とするジャックがふと呟く。

 

「だがな――」

 

「あの人をバカにするのは誰だろうが――」

 

「許さねぇ!!」

 

 ジャックがそうはっきりと言い放った。

 

「……ほぅ」

 

 ジャックの断言にしばらく思案に耽るキサメは突如立ち上がり――

 

「人間の奴隷に堕ちたにも関わらずに人間を慕う魚人の強さを知りたくなりました」

 

「なので――」

 

 そう言うキサメは手に持つ大剣をジャックに向ける。

 

「相手をお願いしても?」

 

 獰猛な笑みを浮かべるキサメからの挑戦をジャックは

 

「上等だ」

 

 受け立った。

 

「――待ちたまえ」

 

 だが、そこにジャックとキサメの会話を邪魔せずに聞き続けていたテゾーロは声を上げる。

 

「本気かね?戦うつもりだと――?」

 

「もちろんだ」

 

 その問いかけに対してのジャックの断言にテゾーロは眉を上げる。

 

「――スサノオさんに迷惑をかける事になってもかい?」

 

 テゾーロのその問いかけにジャックは一瞬固まるも――

 

「……だとしても、コイツを無視する訳にはいかねぇ……スサノオさんには土下座する」

 

「……本気なんだね」

 

 ジャックの本気を悟り、諦めたかのようなテゾーロの言葉に頷いたジャックはキサメと共にレストランを出ようとした。

 

「――私は戦闘の人々への影響を収めてくる」

 

「えぇ!」

 

 テゾーロは妻にそう言い、自身もジャック達についていこうとした。

 それを見たステラは素早く身周りの準備をし――そして

 

「ほら!あなた達も!」

 

「!?な、なんだ―?まだメシが……」

 

「ウメー……何ごんす!?」

 

 まだ食事を続けていた明日郎とうるティを無理矢理連れて行く!

 

 

「――では行きますか」

 

「来い」

 

 レストランの前でジャックとキサメは対峙していた。

 キサメは包帯に包まれている大剣を構える。

 ジャックは両肩から取り出したマンモスの牙のように非常に曲がりくねった専用の刀(ショーテル)を構える。

 

「――ハァァァ!!」

 

「――オラァア!!」

 

 ジャックとキサメは雄叫びを上げながら互いに相手に駆け寄った!

 

          ●

 

ある建物の廊下

 

 そこで2人の子供が対峙していた。

 

「――それであなたは……何者なの?」

 

 小紫――私は目前の男の子に問いかけていた。

 その問いかけに男の子は答えようと口を開く。

 

「……僕は――」

 

「僕はキリヤ……コンストラクション・キリヤと申します」

 

「この〝ギビマ〟の統治者コンストラクション・カガヤの息子にして――次期統治者でございます」

 

 

――〝ギビマ〟の運命は更なる激変を迎える事になる。

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