ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第37話〝ムザン〟

時は過ぎ――夜

 

コンストラクション邸

 

 そのうちのある部屋でカガヤがじっくり寝込んでいて、彼を妻アマネが看護している。

 そこに忍び込む影が1つ。

 

「……何とも醜悪な姿だな。コンストラクション・カガヤ」

 

「……初めましてだね……ムザン……」

 

 カガヤの前に姿を現したのがムザンだった。それに気付いたカガヤは穏やかに微笑んだ。

 

「……驚かないんだな」

 

 カガヤ、そしてアマネも驚愕をみせないのにムザンは眉をひそめる。

 

「――父から君の事を聞いたからね……警戒するようにも言われたし」

 

 その言葉にムザンも青筋を立てて、目を血走らせる。

 

「……そうか……あの男がぁ……」

 

「……そんなに憎いのかい?」

 

 視力を失っていてもムザンからの雰囲気を感じ取れて、彼が怒っているのを察したカガヤは穏やかに言う。

 

「君を追放した――兄……私の父の事が?」

 

「…」

 

 

――コンストラクション家には穏やかな人間が多い。

カガヤも――その父親もそうだ。

――だが、そんな一族にも異質な男が1人存在した。

その名は――コンストラクション・ムザン。カガヤの父親の弟にあたる。

彼は……どこまでも自分本位で傲岸不遜を地でいく男なのだ。

それ故に彼は面倒事を引き起こし続けてきた。

一応――弟だからこそ見捨てられなかったカガヤの父親もいつまでも省みない彼をとうとう追放したのだ。

……だが、ムザンの執念深さを知っているカガヤの父親はいずれ彼が復讐の為に帰還してくるであろうと予測し、息子に警告しておいたのだ。

だから――今の〝ギビマ〟に起こっている不穏な事態はムザンの仕業なのだとカガヤは見抜いた。

 

 

「……フン、だとしてもだ。今のお前じゃどうする事もできまい?」

 

 怒りを一旦抑えたムザンは無力なカガヤを嘲笑う。

 

「……やはり、私を蝕んでいる病魔は自然なものではなく――君の手によるものなんだね」

 

「……亡き兄の代わりとして息子である私に復讐するのはまぁ分かるとして――」

 

「ここまでやるのは――それだくではなく、この〝ギビマ〟を手にする為なんだね」

 

 意外に相変わらず微笑んでいるカガヤのその言葉にムザンは不敵な笑みを浮かべて肯定した。

 

「お前達への復讐はもちろんだが――この私が〝ギビマ〟を手にする!他でもならぬ私がだ!」

 

「そして――海賊の国として変えるのだ!」

 

 自身の野望がいよいよ達成されようとする事態を前にするムザンも興奮し、饒舌になる。

 

「……この〝ギビマ〟をそうそう――奪えるとでも……?」

 

「フン……お前が練った策略、何より――組織した精鋭部隊の事か?」

 

「確認してみたが……なかなかの強さだ」

 

「だが!我が計画には到底及ばないだろうよ!」

 

 何やら何かを確認しているカガヤの不敵な笑みにムザンはしかし勝ち誇ったかのような笑みを浮かべていた。

 

 〝ギビマ〟を奪い去り、支配下に置く為のムザンの計画。それは――

 

「冥土の土産だ!お前に我が計画を説明してやる!」

 

 気を良くしていたムザンは練ってきた計画を説明しようと口を開く――

 

 

まずは〝ギビマ〟の統治者カガヤに猛毒を盛り、その身体を少しずつ蝕んでおく。

カガヤの疾苦に人々が不安感を感じ始めるところに摂政ウズイ・ジョウゲンに関しての悪い噂を流しておく。

 

人々の疑心暗鬼がある程度に高まってくると雇ってきた海賊達を暴れ回らせ、そして彼らの嘘の証言によりジョウゲンへの疑念を決定的にさせる。

……まぁ、何かの手違いで暴獣海賊団とやらが拘束されたらしいが……それはいいだろう。

 

ジョウゲンへの疑念が深まった直後に後継ぎのキリヤを暗殺しておく。

 

その夜にカガヤの病死、そしてキリヤの暗殺を人々に知らせてやる事で暴動を招くのだ。

そこにジョウゲンと手を組んだ……とされているある敵国の侵略を開始させる。

カガヤの頼みの精鋭部隊もその対応に当たざるを得ないだろう。

 

〝ギビマ〟がある程度の被害を受けて、人々が疲労するところにムザン率いるムザン海賊団が登場する!

ムザン海賊団によりジョウゲンと敵国は討ち取られ、〝ギビマ〟は救われた――とみせられて、ムザンの支配下にまんまと置かれる事になる。

 

 

「――これこそが我が計画の……」

 

「全貌だ!!!」

 

 目を血走らせながら高笑いしているムザンにカガヤは微笑みをほとんど消した。そして長らく黙っていたアマネも口を開く。

 

「――夫はとにかく、全て聞いたこの私が口を閉じるとでも?」

 

 アマネのその言葉にムザンは吹き出し――嘲笑した。

 

「そちらこそ――私に殺されないとでも?」

 

 黙り込んでしまうアマネとカガヤにムザンは言葉を続ける。

 

「お前達の息子――キリヤは暗殺したと聞いている」

 

「ここでお前達はもちろん――四姉妹も送ってやる」

 

「仲良しごっこはあの世で続けるといい」

 

 言いたい放題のムザンに怒りを隠さないアマネは突如立ち上がる。

 

「――私がそうさせるとでも?」

 

「……あぁ、お前が死ぬタイミングは別に言っていなかったな」

 

 威勢を張るアマネに冷めた視線を向けるムザンは下衆な笑みを浮かべていた。

 

「お前が死ぬのはカガヤが死ぬ直前――……つまり」

 

「今だ!」

 

 そう言い放つムザンの手から細長く鋭い爪が伸びていた。そして、その手がアマネに振りかかろうとし――

 

「〝火幕〟!!!」

 

 突如カガヤとアマネの夫婦とムザンの間には火の壁が湧き出てきた。

 

「!?」

 

 振りかかった手を焼かれながら驚愕したムザンは後ろに下がる。

 

「これは……!?」

 

「そこまでだ」

 

 驚愕が冷めないムザンの前に火の壁を背にしているハッテンが姿を現した。

 

「〝火影のハッテン〟ここに見参」

 

 ハッテンはそう印を結びながら堂々と言い放った。

 

「お前は……一体何者なんだ!?」

 

 予想外の事態に動揺するムザンの問いかけにハッテンはため息を付く。

 

「……分かってはいたが、自分の計画に巻き込まれた上で口封じを命じた者達の事等、知らぬというわけ?」

 

「?――……暴獣海賊団か!?」

 

 ハッテンのその冷めた言葉に疑問符を浮かべたムザンだが、ハッと彼の身元に当たりをつけた。

 

「さよう」

 

 淡々と肯定したハッテンにイラつきを抑えられないムザンは怒鳴りつけた。

 

「何のつもりで邪魔したぁ!?」

 

「……それは我が主が答えるだろうよ」

 

「主?」

 

 ハッテンのその言葉にムザンは疑問符を再び浮かべた途端に2人の間辺りの床が突如打ち破られ、そこから何かが現れた。

 

「!?な、何だぁ!?」

 

「……この方こそが――」

 

 

――〝ギビマ〟を支配しようとする〝鬼〟の前に

 

 

「暴獣海賊団船長――〝暴獣のスサノオ〟だ」

 

 

――〝暴獣〟が降臨した。

 

          ●

 

 オレは今、動揺しているムザンを見下ろしていた。

 

「な、何だ!?お、お前はぁ!!」

 

「――さっき、ハッテンが説明した筈だが?」

 

 オレのその言葉にムザンは動揺を抑えて睨みつけてきた。

 

「――暴獣海賊団……の船長か」

 

「そうだ」

 

「――だとしたら……」

 

 その言葉を肯定したオレにムザンは言葉を再び投げかける。

 

「何のつもりで邪魔するのだ!?お前達は!?」

 

「……何言ってんだ?てめぇは?」

 

「何?」

 

 ムザンのあまりにもズレた言葉――認識にオレも呆れてしまった。

 

「……オレ達を拘束したのは――〝ギビマ〟の手落ちらしいからいいとして……」

 

「お前はオレ達を口封じしようとしやがったな?」

 

「しかも――雇った海賊団に〝暴獣海賊団〟の名を騙らせて暴れさせたそうだな?」

 

「もはや、言い逃れできねぇぞ?――オレ達に対しての宣戦と見なす。そんで……」

 

 オレの重々しい言葉にムザンは顔をしかめる。

 

「オレ達、暴獣海賊団は――受け立つ!!!」

 

 オレの宣言にムザンは内心頭を掻きむしってしまう。

 

「(なんでだ!!なんで――こういう面倒事になるんだ!!――計画をどう修正すれば……)」

 

 そう思案に耽っているムザンに長らく見守っていたカガヤが声を掛けた。

 

「君の計画だが――暴獣海賊団の方々の手助けにより、もう既に破綻している筈だよ」

 

「……………は?」

 

 カガヤのその言葉にムザンは目を大きく見開き、口も大きく開いた。

 

          ●

 

ギビマ 最大の広場

 

 そこに集まっている人々が注目している台にある2人が姿を現した。

 

「「「!!」」」

 

「キリヤ様だ!!」

 

「ジョウゲンまで――!?」

 

「あの2人がどうして揃って――!?」

 

 ザワついていた人々にキリヤは大声を出した。

 

「――皆さん!」

 

「今!ここ〝ギビマ〟に起こっている事態はジョウゲンさんの仕業だと考えられているようですが――」

 

「それは違います!」

 

「ムザン海賊団という不届き者達の仕業です!」

 

「ジョウゲンさんは無罪です!僕、そして父上が保証します!」

 

 キリヤが大声でそう証言し、その証言に人々はザワついた。

 

「ジョウゲン……様の仕業ではなかったのか」

 

「――ムザン海賊団がやったんだな!」

 

「なんて奴らだ!」

 

 そう騒いでいる人々を眺めるジョウゲンはため息をついてしまう。

 

「――情報に振り回されずに真実を見極めてほしいものだ」

 

 きつい言葉を口にするジョウゲンにキリヤは苦笑しながら言葉を掛ける。

 

「――でも、あなたの態度も拍車にかかってしまったのでは?」

 

「あなたにはあなたの考えがあるかもしれません。でも――いざという時は信頼し合えなければ、ただ好きにされてしまうだけだと僕は思います」

 

「これを機会に態度を改めるのはいかがですか?」

 

 キリヤのもっともな指摘、提案にジョウゲンも言葉を呑む。

 

「……そうだな――アイツ……」

 

 頷くジョウゲンは夜空を見上げながら、我が息子――派手でハイテンション――だがコミュニケーション力が高い男を思い浮かべる。

 

「テンゲン――我が息子を見習うか……」

 

          ●

 

「…は?」

 

 キリヤの暗殺とジョウゲンへの罪のなすりつけの失敗を知らされたムザンはポカーンとする。

 そんな彼にカガヤは容赦なく言葉を続ける。

 

「暴れ回る海賊達に関してだが――」

 

          ●

 

ギビマ 2番目に広い広場

 

 そこで縄にかけられていた海賊達が集まられていた。彼らを捕らえたのが――

 

「うぅ……何でお前らがオレ達を……」

 

「それは貴様らがオレ達、暴獣海賊団にケンカを売ったからだ」

 

「ナメられた落とし前は何としてでも――つけさせる!」

 

「まぁ、名を騙ると痛い目に合う事になる――いい勉強になったろ」

 

 フドウとジャックとヤマト率いる暴獣海賊団だ。

 彼らは〝暴獣海賊団〟の名を語りながら暴れ回っていた海賊達に落とし前をつけてもらったのだ。

 

          ●

 

「…は?」

 

 その事を知らされたムザンはやはりポカーンとする。

 そしてカガヤもやはり容赦なく言葉を続ける。

 

「精鋭部隊に対応させようとした敵国だが――」

 

          ●

 

ギビマ近海

 

 そこを敵国の艦隊が〝ギビマ〟に向かって進んでいたが……

 

「どうした?なぜ進めない!」

 

「はっ!か、舵をなぜか切れないんです!」

 

 いよいよ〝ギビマ〟が見えてきた艦隊が突如止まり、そこからなかなか進んでいない。これでは〝ギビマ〟に上陸して侵略できない。

 敵国の人々が慌てている中、それを嘲笑う者が1人。

 

「フフフ……」

 

 海中を泳いでいるキサメだった。

 魚人の彼は艦隊の下部を破壊してきたのだ。

 

「誰か知りませんが、まぁ一泡食わせたのでよしとしましょう」

 

 彼はムザンの野望に巻き込まれたのにイラッとした為にムザンの計画阻止に協力したのだ。

 ――まぁ、理由はそれだけではないらしいが……

 

          ●

 

「…は?」

 

 その事を知らされたムザンの顔は見事にアホ面になっていた。

 それを感じ取れたカガヤは微笑んだ。

 

「これで君の計画は破綻したね……心から感謝するよ。スサノオ殿」

 

 感謝の意を伝えてきたカガヤにオレは言葉を返す。

 

「いや、さっきも言ったが……オレ達は売られたケンカを買っただけだからな」

 

「……そうですね」

 

 オレの言葉にカガヤは微笑む。

 

          ●

 

時は遡って

 

 オレが幽閉されている檻にハッテンが忍び込んできたのだ。

 ハッテンから〝ギビマ〟の状況を把握したオレは彼にフドウとジャック達との合流、〝暴獣海賊団〟の名を騙る海賊達の制裁を指示した。

 ハッテン、そしてキサメの手引きでそれぞれ撤退できたフドウグループとジャックグループは合流できた。

 オレの指示に従った暴獣海賊団は〝暴獣海賊団〟の名を騙って暴れ回ってる海賊達を制裁してくれた。

 その一方でキリヤから情報を把握できた小紫は彼に暴獣海賊団なら解決できると申し込んだ。

 彼女からオレ達の強さを聞かれたキリヤは彼女が助けてくれたのもあって、一か八かで父親に暴獣海賊団の事を報告した。

 キリヤからの報告、そして暴獣海賊団が海賊達を制裁したという出来事を聞いたカガヤはオレと話す事を決めたのだ。

 

「電伝虫由来での会話を許してくれるかな」

 

『構わねぇよ。ハッテンからあんたの体調は聞いているからな』

 

 電伝虫由来の会話を良しとしたオレに感謝したカガヤは彼の意図を確かめてみる。

 

「あなた達はこれからどうするつもりですか?」

 

『あぁ……オレ達は』

 

『ムザンとやらを叩き潰す』

 

『まぁ――あんたらにとっては願ったりだろうな』

 

 オレのその言葉にカガヤは目を細める。

 

「……なぜです?なぜ〝ギビマ〟に利のある行為をしてくれるんですか?」

 

『おっと、誤解しないでくれ。ムザンの奴は海賊達にオレ達の名を騙らせて暴れさせたんだ。だから――落とし前をつけてもらうんだ……〝ギビマ〟の為じゃねぇ――オレ達自身の為だ……まぁ、オレ達の行為が結果的にあんたらの利になっているだけだ』

 

「……そうですか」

 

 オレの説明にカガヤは納得できた。

 

『ただな……オレを檻の中に入れたのはさすがにあんた達の手落ちだ。だから補償を求めてもらうがな』

 

 オレの少しした恨み言にカガヤも苦笑してしまう。

 

「もちろんだとも――あなたが話が分かる奴で良かった」

 

           ●

 

 その時を思い返していたカガヤは呆然していたムザンに言葉を掛ける。

 

「君は暴獣海賊団の事を運が悪いと考えているらしいけど――」

 

「運が悪かったのは君の方だったようだね」

 

「…」

 

 練ってきた計画が破綻したという現実にしばらく呆然したムザンだが――

 

「…」

 

 ムザンの顔が少しずつしかめ始める。

 

「…」

 

 ムザンの目が血走り、顔に青筋を立ててくる。

 

「…お〜の〜れぇぇぇぇぇえ!!!」

 

 ムザンの怒りが――大爆発した。

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