ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第39話〝害獣を焼き尽くす火の剣〟

――ムザン海賊団はある悪魔の実の能力者によって作られた現実から離れている異空間を本拠地としている。

 

――その名は〝無限城〟。

 

――その異空間に暴獣海賊団が招かれたのだ。

 

――その異空間での如何なる箇所にもそれぞれ戦いが始まっている。

 

――そして、ここでも戦いが始まろうとしている……

 

 

「「…」」

 

 ある廊下には2人が対峙しているが……その間には緊張感が漂っていた。

 

「(……確か、ミンク族といえば)」

 

 カイガクの登場に目を見開いた明日郎もすぐ思案に耽った。

 目前のミンクに関しての考察に入ったのだ。

 

「(かつてスサノオさんと百獣海賊団がミンク族の国を襲撃して……)」

 

「(ミンク族を全員連行したよな?)」

 

「(反抗的なミンク族に対しての監視は軽くはねぇだろうし……)」

 

「(脱出者が出た等の異変はなかった筈……)」

 

 今時点のミンク族の状態を思い返している明日郎は今まさに目前に存在しているミンクを凝視する。

 

「(つまり……コイツは襲撃が起こった前にモコモ公国を出たのか……?)」

 

 攻撃はおろか刀をも構えずに思案に耽っている明日郎の様子に訝っているカイガクも見当が付いたのか納得するような表情を浮かべた。

 

「そうか、てめぇは……ミンク族――っていうか、モコモ公国があの百獣海賊団に襲撃された事……知っているんだな?」

 

「……まぁな」

 

 カイガクのその指摘に明日郎が素直に頷くとカイガクは鼻を鳴らしながら答えてやった。

 

「……オレがモコモ公国を出たのはまさに――その襲撃を受けた最中だったな」

 

「どう考えても敗北が目に見えているミンク族に付き合うつもりはねぇからな」

 

 その答えに明日郎も一応納得できた。

 

「(襲撃の真っ最中じゃあ……捕らえこぼしがあってもおかしくはねぇな……)」

 

「(……っていうか、コイツ。あの襲撃に参加した筈のスサノオさんには何の反応もみせていないな……?)」

 

「(……ってっていうか)」

 

「その言い草……ミンク族を見捨てて逃げた――訳か?」

 

 カイガクの答えの後半が気になった明日郎がついその言葉を言ってみずにはいられなかった。

 その言葉にカイガクは――下衆な笑みを浮かべていた。

 

「……そうさ!」

 

「オレはな……モコモ公国を――ミンク族を捨てただけなのさ!」

 

 カイガクが嘲笑いながらの言葉に明日郎は眉をひそめる。

 明日郎の表情に気付いたカイガクは言葉を続ける。

 

「――このオレはな!」

 

「強い!〝生まれながらの戦士の一族〟といわれるミンク族でもな!」

 

「――なのに!アイツらはオレを認めなかった!」

 

「オレを銃士隊と侠客団にも入れなかった!」

 

「しまいには――今のオレじゃシシリアンとかペドロとかいう奴らに劣るだろうとほざきやがった!!」

 

「ミンク族が滅ぼされた?――知った事じゃねぇよ!」

 

「だから?何だ?」

 

「悲しめ?怒れってか?」

 

「オレはオレを評価しない奴なんぞ相手にしない!」

 

「オレは常に!!どんな時も!!正しくオレを評価する者につく!!」

 

「オレを正しく評価し認める者は〝善〟!! 低く評価し認めない者が〝悪〟だ!!」

 

 興奮が少しずつ、しまいには高まったカイガクがそう演説する。

 それを明日郎は表情を変えずにただ、黙って聞いていた。

 

「……それはすなわち、ミンク族が〝悪〟で――てめぇが身を寄せているムザン海賊団が〝善〟――って訳か?」

 

「そうだ!!あの方は――ペスト様もちゃぁんと評価してくれているからな!」

 

 その言葉に明日郎も目をつむる。

 

「……まぁ、ワノ国を捨てたオレが言える筋合いはどこにもねぇし……」

 

 頭をかきむしる明日郎が静かにそう言い――

 

「それにてめぇの強さが果たして本物なのか――これから確かめればいいだけだ」

 

 そう引き締める明日郎はやっと刀を構えた。

 

「お!やっと、刀を構えたか!――そうでなければ面白くねぇ!!」

 

 それを見たカイガクも剣を構える。

 

 

――今、ここに暴獣海賊団の明日郎とムザン海賊団のカイガクの対決が正式に始まった。

 

 

「……はぁぁぁ!!」

 

 最初に動いたのは――明日郎だ。

 彼が刀を大きく振り上げながらカイガクに向かって駆けていく。

 カイガクの方は来るであろう攻撃を剣で受け切ろうと待ち構えるのに対して明日郎は振り下ろす――火を纏う刀を。

 

「〝焔霊〟!!!」

 

「!――へぇ!火の剣か!!」

 

 明日郎の振り下ろした火を纏う刀にカイガクも剣で受け切りながら感嘆の声を上げる。

 

「……オラオラオラァ!!」

 

 だがその声を気にしていないのか、反応をみせない明日郎は続いて火の剣を振り回し続ける。カイガクも剣を振り回す事で対応するが……

 

「チッ!――アチィなぁ!」

 

 攻めてくる剣を剣で受けきっても、火の凄まじい勢いがそのままカイガクに襲いかかってきた。

 その熱に顔をしかめるカイガクもニャリとする。

 

「てめぇが火の剣ならこっちは――」

 

 カイガクの剣には電流――「エレクトロ」を流してきた。

 

「!」

 

「〝稲魂〟!!!」

 

 目を見開く明日郎にカイガクは自身を中心として半円を描くように刃を振り続ける。

 

「〜〜オラァ!」

 

 カイガクからの「エレクトロ」を纏いながらの高速連撃を明日郎は火の剣でしばき続け、ある時点で強烈な一撃を加えながら後ろに下がった。

 だが、カイガクも彼を逃さずに追いかける。

 

「逃がさねぇぞ!――〝聚蚊成雷〟!!!」

 

 カイガクは明日郎の周囲を回転しながら波状攻撃を放ち、無数の斬撃を繰り出す。

 

「ぐぅ!…がっ!」

 

 明日郎は先程のように火の剣でしばき続けるも――無数の斬撃を全てしばける訳でもない上に「エレクトロ」も襲いかかってきている。

 しばけないいくらかの斬撃と「エレクトロ」が明日郎の身体を焼きながら刻み続ける。

 

「……〝紅蓮〟!!!」

 

 受け放題だった明日郎の握る刀が――突如爆発を起こした。

 

「あぁ!?」

 

 その予想を超えてきた攻撃にカイガクは火傷を負わされ、一旦離れた。

 

「今度はオレの番だ!――〝紅蓮〟!!!」

 

 離れたカイガクを追いかける明日郎は剣を振り下ろす。

 カイガクはそれを剣で受け切るも再び爆発を起こされ、更なるダメージを負った。

 

「まだまだぁ!――〝紅蓮〟「〝遠雷〟!!!」―!?」

 

 再び〝紅蓮〟を発動しようとする明日郎に向かってカイガクは離れた間合いから強烈な踏み込みで素早く標的に斬り込む。

 なお斬り込む瞬間にカイガクは「エレクトロ」をまるで爆発させるかのように流す事も成し遂げた。

 

「っつ!!」

 

 それにより明日郎は深い傷と火傷を負ってしまった。

 少しよろめいた明日郎の隙を逃さないカイガクは更なる技を放つ。

 

「〝電轟雷轟〟!!!」

 

 カイガクは多数の斬撃を広範囲に繰り出す。

 その斬撃を明日郎は火の剣でしばき続けるもやはり、身体にさらに新たな傷と火傷ができてしまう。

 

「……!!」

 

「おっと!」

 

 明日郎が再び〝紅蓮〟を放とうとするのに気付いたカイガクは素早く後ろに下がり――〝遠雷〟を放つ。

 

「〝遠雷〟!!!」

 

「ぐがぁあ!!」

 

 カイガクからの〝遠雷〟により明日郎は新たな深い傷と火傷を負った。

 よろめいた明日郎の姿を目にしたカイガクは勝負ありだと勝ち誇った。

 

「フン!オレの敵ではねぇな!」

 

「……なるほどな。確かに強いと豪語するだけはあるな」

 

 カイガクの強さを認めざるを得ない明日郎にカイガクは口を開く。

 

「――降参するがいい。今なら、あの方に部下とするように言ってやってもいい」

 

 カイガクからの勧誘に明日郎は――

 

「ハッ、それはねぇな」

 

 不敵な笑みを浮かべながら拒否した明日郎にカイガクは眉をひそめる。

 

「……フン、愚かな」

 

「何とでも言ってろ……だが、オレはあの人の部下を辞めるつもりは一欠片もねぇな……」

 

 そう言う明日郎は刀を握る右手で自然に振り上げた形に左手を添える。

 

「だが――そろそろ反撃しねぇとな……あの人の顔に泥を塗りかねぇからな……」

 

 そう呟く明日郎の身体から凄まじい気迫が湧き出てくる。

 

「……!」

 

 その気迫を感じたカイガクの頭で警鐘が響いた。その警鐘に従って――明日郎に止めを刺す事にした。

 

「――終わりだぁ!!」

 

 カイガクは「エレクトロ」を流す剣を大きく振り上げながら明日郎に駆けていく。

 そんな彼に明日郎は――まだ距離が離れているにも関わらずに火の剣を大きく振り下ろした!

 

「〝火焔鳥〟!!!」

 

 明日郎が大きく振り下ろした燃える剣から――大きな炎の斬撃が飛びかかった!

 

「な、何!?」

 

 その斬撃に驚愕したカイガクは素早く剣で受け切ろうとするも――今までより熱くて鋭い斬撃を受け切れずに身体で受けてしまった。

 

「うわぁぁぁあ!!」

 

 深い傷と火傷を負わされたカイガクは悲鳴を上げながら吹っ飛ばされてしまった。

 そんな様を見た明日郎は不敵な笑みを浮かべる。

 

「……ここで上手くいくのかよ」

 

 ――実は明日郎は今まで、一度も〝火焔鳥〟―火の斬撃を成功させていなかった。

 火を纏う刀をマスターできた明日郎はその剣から放たれるであろう火の斬撃を確かめたくなり、実行してみたのだ。

 しかし最初こそ燃えていた斬撃だが、やがて火が消えてただの斬撃に成り下がってしまった。

 どういう仕組みなのか不明だが、火の斬撃を飛ばすのは難しいらしい。

 だが、諦めきれない明日郎は何回も――何十回も刀を振り続けてきた。

 それでも成功できなかった。

 今ここで放とうとしたのは実は一か八かだったんだが……成功できたのだ。

 

 深い傷を抑えながら立ち上がり、呻いているカイガクに明日郎も機会として先程思い浮かんだある疑問を投げかけてみた。

 

「……なぁ」

 

「あぁ?」

 

 更なる攻撃をせずに口を開く明日郎にカイガクも訝る。

 

「てめぇ……スサノオさんの名――姿に覚えはねぇのか?」

 

「あぁ!?何だ?――オレがてめぇらの船長を知っているとでも!?」

 

「あぁ……っていうか、見た筈だろ。あの人を」

 

「あ?……どこでだ」

 

「モコモ公国でだ」

 

「何……?……!!」

 

 明日郎のその言葉に眉を上げたカイガクだが、その直後にその言葉の意味に気付いたのか顔を真っ青にさせる。

 

「……ま、まさか……」

 

 カイガクの動揺を目にする事で彼の胸中を察した明日郎はニャリとする。

 

「そのまさかだ」

 

「っつ!!」

 

 少なくはない冷や汗を流したカイガクは素早く場を離れていった。

 

「つ、伝えなければ!あの方に!」

 

「オレ達がケンカを売った暴獣海賊団の船長が――」

 

「あ、あの「四皇」〝百獣のカイドウ〟の息子だという事を!!」

 

「け、ケンカを売ってはならないという事を!!」

 

 焦りまくっているカイガクはムザンにその事実をなんとか伝えようと必死に駆け込む。だが

 

「こら」

 

 突如カイガクの目前に後ろから火が飛びかけて、そのまま廊下に炎の壁を作った。

 

「!!」

 

 その景色に目を見開くカイガクは素早く後ろを振り返り――顔をしかめてしまう。そこには炎を飛ばした張本人――明日郎が歩いてきた。

 

「てめぇ……オレを無視すんなよ」

 

「ぐぅぅ……」

 

「まず、オレを倒してから行けよ。バカが」

 

 明日郎のその言葉、態度に焦りが高まり、それによるイラつきを覚えてきたカイガクが怒鳴りつけた。

 

「いいだろう!まずは!てめぇを殺してやる!!」

 

 カイガクの構える剣には――それまでとは違う「エレクトロ」が流れていた。

 

「死ね!!〝熱界雷〟!!!」

 

 カイガクがそう言いながら明日郎に凄まじい「エレクトロ」を纏う剣を下から上に強烈に斬り上げた。

 その勢いにより明日郎も凄まじい勢いで天井に叩きつけられた。

 その激突で天井に煙がもうもうとしているのを見届けたカイガクはニャリとする。

 

「よし……急いで、あの方に――」

 

 そう呟いたカイガクの前に明日郎が出てきた。

 

「何!?」

 

 ――実はカイガクが〝熱界雷〟を放つ瞬間に明日郎はその強烈な振り上げに〝紅蓮〟を放ち返した事でダメージを大分下げられた。といえ、強烈な振り上げの勢いと凄まじい「エレクトロ」が止まらず、そのまま明日郎を襲いかかったが――

 

「あいにく――もっと痺れる「エレクトロ」を経験しているんだよ!こっちは!」

 

 そう言い放つ明日郎の頭には――ライオンのミンクの姿が浮かべていた。

 そして明日郎の刀に炎が湧き出る。

 

「〝焔霊〟!!!」

 

 ――明日郎が天井を跳ねった勢いも加わったその剣がカイガクを斬り捨てた。

 

「ぐがぁあ!!」

 

 それを身に受けたカイガクは深い火傷と傷を負わされながら――倒れ込んだ。

 そんなカイガクに明日郎は振り返りながら言い放つ。

 

「……ミンク族とかモコモ公国とかの事情等知らねぇが……」

 

「確かなのは……てめぇよりシシリアンの方が上だ」

 

 

『暴獣海賊団 明日郎

  VS

 ムザン海賊団 カイガク』

 

『無限城

「ある廊下の戦い」』

 

『勝者 明日郎』

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