ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第40話〝悪毒を吹っ飛ばすジャガー〟

 無限城のある廊下でも激しい戦いが起こっていた。

 ――ペドロが両手で握る電流――「エレクトロ」を流している剣とポイズンが手に持つ二振りの鎌が激突し続けていた。

 

「フン!」

 

「へぇぇぇ……」

 

 ペドロが剣を振り下ろすのをポイズンは両鎌で受け切り、そのまま睨みつけ合いに落ち着いた。

 ペドロの強さにはポイズンもさすがに感嘆の声を上げた。

 

「なかなかやるじゃぁぁん……カイガクの奴より強いかもな〜」

 

「!カイガク……!?」

 

 ポイズンの口から言い放たれたその名にペドロは目を見開き、身体が固まってしまった。

 ペドロの晒し出してしまった隙を見逃さないポイズンは彼の剣を下方に下ろし、両鎌を振り下ろす。

 

「!!くっ!」

 

 我に返ったペドロは素早く剣で攻撃をなんとか受け切った。

 

「おぉ!?はやぇぇぇなぁ」

 

「…(…いかんいかん。しっかりしろ!――気にはなるが……集中しなければならない)」

 

 自身の不甲斐なさを自省したペドロは気を引き締める。

 ――戦いを前に気が抜けてはならないのは当然であるが……ペドロの場合はますます気を抜けないのだ。

 何せ彼の後ろには――

 

「ペドロさん……」

 

 戦う術を持っていない男の子――キリヤがいるのだから。

 キリヤは今はペドロの後ろ姿を真剣に凝視しながら、彼の足手まといにならないように陰にしっかり隠れていた。

 そんなキリヤを一瞬視線を向けたポイズンが呟く。

 

「……なんでぇ〜あの小僧まで来ているのかなぁ〜」

 

「……!!お前らがキリヤ殿を招いたんじゃないのか!?」

 

「……いんやぁ〜あの方は今〜てめぇら暴獣海賊団を潰すのが先だとぉ〜だからぁ〜カガヤ達はまだ後の筈だぁ〜」

 

 ポイズンのその言葉に訝ってしまうペドロにキリヤはその疑問に答える為に声を掛ける。

 

「ぼ、僕がここにいるのは――」

 

「僕自身がヘマをしたからです!」

 

「だから――あなたは僕を気にせずに戦ってください!」

 

 キリヤが必死にそう言い放つのに対してペドロは――やはり、ますます訝ってしまう。

 ――なぜ、キリヤが暴獣海賊団と共に無限城に飛ばされたというと……

 実は……

 

          ●

 

時は少し遡って

 

ギビマ 最大の広場

 

 そこで人々への演説を終え、台から降りたキリヤは近くに立っている暴獣海賊団の海賊に声を掛けた。

 

「すみませんが……スサノオさんから何か知らせはありますか?」

 

「!いえ、まだありませんっすね」

 

「そうですか……」

 

 事態、そして父の体調が気になっていた為に少し俯いているキリヤに海賊は目線を合わせるように腰を折って、優しく声を掛けた。

 

「大丈夫っすよ。うちの船長はそりゃ――そりゃ強いっす。だから、お父さんも大丈夫っす!」

 

「……そうですね」

 

「あと、海賊のオレに馴れ馴れしく話しかけない方がいいかもしれないっす……所詮海賊は海賊だから――」

 

「いえ!例え、海賊でも――無礼を働く訳にはいきません!」

 

 海賊からの助言にキリヤははっきりとそう言い放つ。

 何せ――暴獣海賊団は危機に陥っている〝ギビマ〟を救おうと手を貸してくれているのだから……

 そんな彼の態度に海賊は目を細める。

 

「……大した奴っすよ。あんたは」

 

「!……そうですかね?」

 

 キリヤと海賊は穏やかに微笑み合っていた。だが、そこに

 

「「「!?」」」

 

 海賊の足元には――ワープゲートが突如開かれた。

 

「!!――危ない!!」

 

 キリヤはワープゲートに落ちようとする海賊を助けようと思わずその手を掴んだ。

 そして――そのままキリヤも無限城に落ちてしまった。

 しかも、床がそれぞれ動かれる為にキリヤは話し合った海賊とははぐれてしまった。

 そんな危機に陥ったキリヤだが……不幸中の幸いかペドロと出会い、行動を共にした。

 

          ●

 

「……こちらから行くぞぉ〜」

 

 まだ訝っているペドロもポイズンの言葉に我に返り、一旦戦いに集中する事にした。

 ポイズンは――無規則的な動きをし始めた。しかも――ペドロの周りを周りながら。

 

「…」

 

 メチャクチャそうにみえるその動きにペドロは警戒する。

 

「…(…どこだ?どこから攻撃してくるんだ?)」

 

 その動きの不規則さから攻撃のタイミングを読み取れにくいのだ。やがて

 

「……!」

 

 ペドロは異変に目を見開く。

 彼の背中には――傷がもうできていた。

 その傷にペドロの気が向けている隙にポイズンの鎌が彼の肩を斬り下ろした。

 

「ぐぅ!?(いつの間に……!?)」

 

 もう既に傷を負っていたという事実とそこから考えられるポイズンの攻撃速度にペドロは冷や汗を流してしまう。

 ――だが、さすがに3度目は食らわない。

 

「!!(そこだ!)」

 

 すんでのところでポイズンの攻撃に気付けたペドロはそれを剣で受け切り――全力で「エレクトロ」を流した。

 

「おわぁぁぁぁぁあ!?」

 

「ウオォォォォォ!!」

 

 ポイズンも凄まじい「エレクトロ」にたまらず悲鳴を上げ――下がった。

 

「がぁ――がぁ――……いてぇなぁ!!………だがぁ」

 

「これでも〝生まれながらの戦士の一族〟の者だからな……ん?」

 

 ポイズンの悪態にペドロも少し笑みを浮かべるも――ポイズンは下衆な笑みを浮かべているのに気付き、訝る。そこに

 

「……!?」

 

「――〝死鎌〟」

 

 ペドロは傷を負った箇所に何ともいえないものを感じた。

 それによりペドロは少しよろめいた。その様にポイズンは笑みをますます深くする。

 最初は混乱したが、自身の身体に起こった異変とポイズンの笑みからペドロは見当を付いた。

 

「……毒か?」

 

「御名答ぅ〜」

 

 ペドロの推測にポイズンも獰猛な笑みを浮かべる。

 

「オレはな〜毒を作るスペシャリストなんだよぉ〜」

 

「オレが作り上げた毒をこの鎌に塗ってあるぅ〜」

 

「そしてぇ〜この鎌を2回も受けたてめぇはぁ〜毒に身体が蝕まれてぇ〜少しずつ…少しずつ…苦しめぇ〜しまいはぁ〜死ぬ」

 

「そ、そんな!」

 

 ポイズンのその説明に隠れているキリヤも思わず悲痛な声を出してしまう。

 その一方で毒を入れられてしまったペドロは――悲痛に暮れていなかった。そりゃ、険しい表情を浮かべているが……いずれ死ぬであろうという事実を気にしていないようにみられた。

 そんなペドロの様子にはポイズンも訝っていた。

 なぜペドロの態度がそういうふうになっているのかというと……

 

「(……まさか、あんな奴の薬に頼る時が来ようとは――)」

 

 ――実は〝あんな奴〟……クイーンは暴獣海賊団にワクチンを用意していたのだ。

 ウイルスのスペシャリストであるクイーンによって作り上げられただけはあって、そのワクチンはある程度の病、ウイルス、毒等にも効いているようにできている。

 ……まぁ、その効果は万能な訳でもないので過信しないように注意が必要である。

 といえ、この状況ではそのワクチンを使わざるを得ないだろう。

 ――だが、クイーンの事を嫌っていたペドロは彼の力に頼らざるを得ないというこの状況に屈辱感を感じているのだ。

 クイーンの下衆な笑顔をまんまと思い浮かべてしまったペドロは苦虫を噛み潰したような顔になる。

 そんなペドロをよそにキリヤは思案に耽っていた。

 

「毒……身体を蝕む……まさか!父上の病気は……!」

 

 ある可能性に思いを馳せたキリヤがポイズンを凝視する。

 キリヤのその反応にポイズンは下衆な顔を浮かべる。

 

「……ククッ、そうだよぉ〜カガヤの身体を蝕んでいるのはぁ〜」

 

「オレの作り上げた毒だぁ!!」

 

「!!!」

 

 ポイズンの大げさな告白にキリヤもペドロも目を見開く。

 その反応に気を良くしたポイズンは言葉を続ける。

 

「ハハハァ!!オレの毒に苦しめられる親父の様はいい様だろぉ?ムザン様の注文通りに作った最高傑作だからなぁ!!」

 

「……まぁ、進行速度が遅ぇのが実は〜気に入らねぇがなぁ〜」

 

「お前ぇ!!」

 

「落ち着かなされよ!キリヤ殿!」

 

 ポイズンのその告白に敬愛する父親を苦しめられているキリヤが怒る――が、ペドロが彼を落ち着かせようと声を掛けた。

 

「落ち着くのです……キリヤ殿」

 

「ペドロさん……でも」

 

 ポイズンを睨みつけるキリヤの目にはキラッと光るものがあった。

 そんな彼にペドロは声を掛け続ける。

 

「……あやつは治療薬を持っている筈だ」

 

「……え?」

 

 ペドロのその推測にキリヤは少し呆気に取られた。

 

「……オレはウイルスを作るある男を知っている」

 

「その男によれば、ウイルスを作る時は必ずワクチンと両方で作らなければならない――だと」

 

「何故なら、万が一――誤って起こってしまったウイルスによる非常事態に備える為だからだという……」

 

「ならば……そのルールに従えば――あやつも治療薬を持っている筈だ」

 

 ペドロのその説明にキリヤの目には希望が湧き出たかのように光が宿った。

 

「そうなんだ……!ならアイツからそれを!」

 

「えぇ」

 

 キリヤのその言葉にペドロも相槌を打つ。

 そんなペドロ達に不敵な笑みを浮かべるポイズンは――

 

「「!!」」

 

「まさか!それが……」

 

「あぁ、これこそがぁ……てめぇらが求める治療薬だぁ」

 

 なんと、ポイズンは治療薬を見せた。

 

「……丁寧に見せてくれるんだな……ないと言うのかと……」

 

「フン……ハンデだぁ〜ハンデだぁ」

 

 ペドロが訝しげにそう言うとポイズンはナメくさった態度でそう答えた。

 

「「…」」

 

 ペドロとキリヤも青筋を立ているのに満足したポイズンは治療薬をしまった。

 

「さぁてぇ〜……やるかぁ!」

 

 ポイズンは不規則的な動きを少ししながら――駆けてきた。その速さはバカにできない程だ。

 

「オレの速さを掴めねぇだろぉ!!鎌を2回も受けたしなぁ!!」

 

 ポイズンのその挑発にペドロはしかし反応を見せずに――素早く駆けていった。

 

「!!」

 

 ペドロの速さに少し目を見開くポイズンは彼の剣を受け切った。

 

「――ジャガーのミンクとして速さにもう遅れを取る訳にはいかぬ!!」

 

 そう雄叫びを上げたペドロは剣を振り回して、更なる連撃を食らわせた。

 その連撃にポイズンは鎌で受け切りながら、不規則的な動きで攻撃を試みようとするも――意外に半分ぐらい動けなかった。

 ――「エレクトロ」を放たれているからだ。

 

「クソったれぇぇぇ!!」

 

「…(…なんとか鎌をオレに当てようとしてきているな)」

 

 焦りからか、動きが単調になってきているポイズンにペドロは目を細める。

 

「……そこだぁ!!」

 

 狙い所を見つけたペドロはポイズンを斬り捨てようと剣を大きく振り下ろす――が。

 それをポイズンは背を大きく反らした事でかわした。

 

「何!?」

 

「残念ぅぅぅ!!〝死鎌〟!!!」

 

 目を見開くペドロにポイズンは鎌を振り下ろした。それをペドロが受ける――直前に腕で受け切った。

 

「ぐぅ!」

 

「無駄ぁ」

 

 痛みに顔をしかめるペドロをポイズンは嘲笑う。

 毒を塗ってある鎌を腕で受けた以上、毒がさらにペドロの身体を蝕んでいくだろう。

 そもそも――鎌をペドロに食らわす為にポイズンはわざと焦り、単調な動きをしていたのだ。その策にペドロがまんまとハメられ、鎌を食らった――かと思われたが。

 

「!?」

 

 ポイズンの腕をペドロの手が突如掴む。

 

「そうだろうと思ったぞ!」

 

「!!まさか――!?わざと――!?」

 

 ペドロのその言葉にポイズンは彼もわざと策にハメられたふりをしたのだと悟った。

 

「その――通りぃ!!」

 

 そう雄叫びを上げたペドロの大きく振った「エレクトロ」を纏う剣がポイズンを斬り捨てた。

 

「ぐがぁあ!!」

 

 その一撃を真正面から受けたポイズンの身体が吹っ飛ばされた。止めを刺す為にそれを追いかけるペドロだが――

 

「――うぅ!?」

 

 自身の身体を蝕む痛みにペドロはたまらず――倒れ込んだ。

 傷を抑えながらなんとか立ち上がったポイズンはそんなペドロの姿を目にし――つい笑みを浮かべた。

 

「……ハハハァ〜」

 

「ヒャハハハハハァ!!――やっぱ、結局オレの勝ちじゃん!!」

 

「お、おのれ……!」

 

 ポイズンは自身の勝利を確認し、高笑いした。

 その高笑いにペドロも悔しげに唸ってしまう。

 そんなペドロに向かってポイズンは足を運び――鎌を振り上げた。

 

「――まぁ、てめぇは強かったぁ……それは確かだぁ〜」

 

「ぐ、ぐぅ……」

 

「じゃあなぁ〜」

 

 倒れたままのペドロに止めを刺そうと鎌を振り下ろそうとしたポイズン――に飛びかかった影が1つ。

 

「な、何だぁ!?」

 

「させない!!」

 

 ――キリヤだ。

 彼は今まさに止めを刺されそうとするペドロを救おうとポイズンを身を張って止めたのだ。

 

「このぉ〜いい加減にしろ!!」

 

 そう怒鳴りつけたポイズンは自身の身体からキリヤを剥がし――彼を勢いよく投げかけた。

 

「うわぁぁあ!!」

 

 廊下に叩きつけられたキリヤはケガを負い、悲鳴を上げた。

 そんなキリヤにポイズンは鼻を鳴らす。

 

「……大人しくいれば、そんな様にならずにいるかもしれねぇなのによぉ〜」

 

「――構わないよ。目的は果たしたから……」

 

 痛々しい姿なのに、それでもキリヤはなぜか晴れやかな笑みを浮かべていた。

 その笑みにポイズンも訝る。

 

「あぁ?なんでぇ、その顔――……!!」

 

 訝るもハッとするポイズンが自身の身体を触ってみる。するとある筈のものがないのに気付いた。

 

「……まさかぁ!」

 

 ある可能性にポイズンは素早くキリヤに視線を向けると――

 やはりキリヤの手には治療薬があった。

 

「……てめぇ〜〜」

 

「……ははっ」

 

 まんまと一本取られた――それもガキ1人の手によってと屈辱感を感じたポイズンは青筋を立てて目を血走らせ――キリヤを殺そうとする……が。

 

「させぬ!!」

 

「!!」

 

 ポイズンの目前に倒れていた筈のペドロが立ち塞がってくる。

 

「バカなぁ!!てめぇの身体はもうぅ――!!」

 

 ペドロが立ち上がれたのに対してポイズンは驚愕するが……実はペドロはさっきクイーンのワクチンを服用した事で体調を回復させてきたのだ。

 とにかくポイズンの目前に現れたペドロはもう既に構え終えていた。そして

 

「〝電光石火〟!!!」

 

 一瞬で――ペドロは突進しながらポイズンを「エレクトロ」を纏う剣で斬り捨てていった。

 

「ぐがぁあ!!」

 

 そのダメージによりポイズンも倒れ込む。そして……起き上がる様子はなかった。

 

「……やりましたな。キリヤ殿」

 

「はい!――あなたも!」

 

 ポイズン撃破、そしてカガヤを救う目処がついた事実にペドロとキリヤは微笑み合う――

 

 

『暴獣海賊団 ペドロ

  &

〝ギビマ〟次期統治者 キリヤ

  VS

 ムザン海賊団 ポイズン』

 

『無限城

「ある廊下の戦い」』

 

『勝者 ペドロ&キリヤ』

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