ムザン海賊団の本拠地――無限城にはもちろん、所属している海賊達の部屋がそれぞれ存在している。
そのうちのある一部屋にも戦いが始まろうとしていた。
「「…」」
その部屋の主であるズィーとテゾーロが対峙しているが、戦いをまだ始まらずに睨みつけ合っていた。
彼らは互いに相手の様子見をしながら自身の移すべき行動を考え抜いていた。
テゾーロはズィーの後ろのプールに一瞬視線を向けて、目を鋭くする。
――悪魔の実は食うと能力を得られるが、同時に海に嫌われる呪いを受けてしまうのだ。
――それは実を食った者が水が溜まっている場所にいるとたちまち全身の力が抜けて能力が使えなくなり、体が沈んでしまう程だ。
――テゾーロに宿っている〝ゴルゴルの実〟の能力も例外ではない。
――テゾーロに触れられた黄金が海水に触れると制御力を失い、金塊が黒ずみ瓦解するのだ。
そういうデメリットを抱えているからこそ、テゾーロはプールに警戒しざるを得ないのだ。
「(……できれば、あのプールが海水ではない事を期待したいが……まぁ難しいかもしれんな)」
そう思案に耽るテゾーロは後ろの妻子とページワンに気を向ける。
ステラとページワンはテゾーロを真剣に凝視し、しかし不安感も少し感じられていた。だからこそ祈っているのも感じられた。
「(……ステラ達に黄金の壁を作りたいのは山々だが……あのプールの水がかかる可能性もある。そうすると私の能力の弱点がバレかねないから、作れないな……)」
「(なら……)」
プールが海水の塊である可能性、目前の魚人がプールの水を使う可能性、そして自身の能力との相性に関しての考察に入っていたテゾーロはある結論に至る。
「(一撃必殺で決まるしかないな!!)」
そう結論を出したテゾーロは素早くズィーに向かって駆け込む――その際に右腕に黄金を覆わせながら。
「ヒョッ!?」
目前にまで迫ってくるテゾーロに驚愕するズィーをよそに彼は黄金を纏った右拳を横から放とうとする。
「〝黄金爆〟!!!」
「ヒョッ!!」
テゾーロの右拳をギリギリのところでズィーは腰を折る事でかわした。
だが、それも読んだのか別に驚いていないテゾーロは黄金を纏った左拳をズィーに振り下ろそうとした。
「〝黄金ば「〝千本針 魚殺〟!!!」く!?」
テゾーロを見上げたズィーの口から大量の針を仮面を破ってまで発射させた。
突如で予想外の攻撃にテゾーロは素早く左腕を盾にするしかなった。
「ヒョッヒョッ!」
「待て――!?」
素早く離れていったズィーをテゾーロは追いかけようとするが、身体が少しよろめてしまった。
――実はズィーが放った針は無数の麻痺毒が含まれている毒針なのだ。
その針を数本も肌で受けてしまったテゾーロの身体が少し麻痺してしまった。ただ、受けた針の数が数本しかなかった為に効果はほとんどないのだ。
……といえテゾーロからまんまと離れたズィーはプールに入ってしまった。
「くぅ!(しまった!!)」
その事にテゾーロが顔をしかめてしまうところにプールから大水が湧き出てきた。
「〝水獄鉢〟!!!」
「く!〝黄金爆〟!!!」
球体状の水の塊を作り、その中にテゾーロを閉じ込めようと襲いかかってくる大水にテゾーロは苦し紛れながら両拳を放った。
その両拳を覆った黄金が発光し爆発を起こす。その爆発が大水を半分ぐらい吹き飛ばしたものの、半分ぐらいの水がテゾーロの身体にかかってしまった。
「……!クソ!!」
水をかけられたテゾーロは自身、そして黄金に起こった異変に悪態をついてしまう。
両腕を覆った黄金が黒ずみ――瓦解してしまったからだ。
「ヒョッヒョッ……そう、ここは海水のプールでございます〜」
「く……」
プールから上半身が上がったズィーからのその言葉に可能性が当たって、苦虫を噛み潰したような顔になるテゾーロ。
「ヒョッヒョッ……悪魔の実の能力者は海に嫌われているとの事ですが……そんな様では致命のようですな〜」
「…」
ズィーのからの挑発にテゾーロはしかし否定はできなかった。
「――その無様なお姿に派手な死を与えましょう」
「〝一万滑空粘魚〟!!!」
プールからサンマを形作る水の塊を一万本もテゾーロに放った。
そんな攻撃にテゾーロも万事休すか――と思われたら
「な、なんとぉ!!」
テゾーロが見事な体さばきでかわした。
「こう見えて、私はエンターテイナーなのだよ!」
テゾーロが堂々とそう言い放つ。
実はエンターテイナーには身体能力を求められているのだ。従って、一流エンターテイナーである彼の身体能力は高いといえよう。
「ぐぐ……なら!」
「〝蛸地獄〟!!!」
今度はプールから巨大なタコの足を形作る水の塊が湧き出てきた。
「!それは……少しマズイかなぁ」
それを目にしたテゾーロは冷や汗を流し――それでもその一撃をギリギリでかわした。
「はぁ〜……!!」
思わず安堵してしまったテゾーロを2本目の〝蛸地獄〟が襲いかかった。
今度は直接受けたテゾーロが吹っ飛ばされて壁を破られた。
「ヒョッヒョッ……おや?あの部屋は……ヒョッヒョッ……」
その様に笑みを浮かべたズィーだが、テゾーロの吹っ飛ばされた先に気付き、笑みを深くしながらプールから上がる。そのまま、その部屋に向かう。
「ぐ、ぐ……」
吹っ飛ばされたテゾーロがなんとか立ち上がった。
「痛いな……何だ?ここは……」
テゾーロは今立っている部屋を見渡す。
そこで――その部屋にあるものを目にした――目にしてしまった。
その途端にテゾーロは嘔吐してしまった。
「あなた!?」
「テゾーロさん!?」
テゾーロのただならぬ様子に心配していたステラもページワンもたまらず、駆けろうとする。
「――待て!来るな!」
「「!?」」
「来るんじゃない……そして、ノヴァに見せてはいけない」
テゾーロからの制止、そして重々しい言葉にステラ達は息を飲み――大人しくする事にした。
「……何なんだ。これは……」
テゾーロがそう言い捨てるとズィーが誇らしげに言い放つ。
「ヒョッヒョッ――これこそが私の「芸術作品」でございます!!」
「……「芸術作品」…だと……?」
ズィーのその言葉にテゾーロも反応する。
「えぇ――えぇ!どうですか!?私の作品は!」
「……ふざけるな……」
誇らしげにそう言い放つズィーにテゾーロは低い声でそう口にする。やがて
「ふざけるな!!あんなものが「芸術作品」だと!?あんな――おぞましいものが!!」
テゾーロは怒りを爆発させた。
無理もない。テゾーロが目にしてしまったズィーが言う「芸術作品」とは――
――おぞましく飾り立てられた人間の死体だったのだから……
「……なぜ、あんなものを……死体を弄ぶようなマネを」
唸っているテゾーロからのその問いかけにズィーは
「下らない生命を高尚な作品にしてやったまでだ」
ズィーのそれはそりゃ見事に悪気のない言葉にテゾーロもブチキレた。
「いい加減にしろよ、クソ野郎が」
テゾーロが鬼の形相でズィーを睨みつける。
「てめぇのような奴が芸術家を名乗るな……本物の芸術家には失礼だ」
テゾーロの言い捨てた言葉にズィーもイラつき始めた。
「審美眼のない猿めが……」
「…」
テゾーロは海水をかけられていない黄金を両腕に覆わせる。
「おんや?懲りないですね〜また返り討ちにし……」
そう喋っているズィーの声を無視したテゾーロがズィーに向かって駆け込む。
「全く――む「〝黄金爆〟!!!」だ!?」
テゾーロの拳がズィーに近付く瞬間にその黄金は発光し、爆発を起こす――が、その爆発は先程とは比にならない程に凄まじかった。
今度は直接受けたズィーが勢いよく吹っ飛ばされた。
「げぽぉ!?」
「……私の黄金に海水がかかるのならば――それさえも蒸発させればいいだけだ……!」
そう言い放つテゾーロはなんとか立ち上がったズィーに言葉を続ける。
「予定変更だ……てめぇには黄金の像にする価値はねぇ……!」
「焼き魚が似合いだ……!」
「……んだとぉごらぁ!!」
テゾーロのその宣言に怒りをみせたズィーは素早くプールに入り――
「てめぇこそ、私の「芸術作品」にする価値にねぇ!!」
「〝水獄鉢〟!!!」
ズィーが放った大水がテゾーロに襲い掛かるも
「〝黄金連爆〟!!!」
テゾーロが連続でパンチを繰り出し続ける――連続で〝黄金爆〟を放ち続けた。
その勢い、そして凄まじい熱が水を吹き飛ばした。
「な、何ですとぉぉぉぉ!?――ハッ!?」
しかもテゾーロが勢いを止めず、むしろ続けながらプールに向かってきた。
「え゛……いや…プールだよね?……まさかよね?」
そんなテゾーロに顔を凍らせたズィーだが、その予感は当たった。
テゾーロがプールに飛びかかった。
「えぇ!?」
テゾーロのとった行為にズィーも心から驚愕した。
普通に考えて、プールの海水がテゾーロを能力ごと無効化する筈――なのだが。
「オラオラオラァ!!」
テゾーロの〝黄金連爆〟が海水が彼にかかる前に吹っ飛ばした!しかもそのうちの半分ぐらいは蒸発させながら。
「え゛ぇ゛!?」
「オラオラオラァ!!」
まさかすぎる事態に目を大きく見開き、口を大きく開けたズィーをテゾーロは容赦なく殴り続けた。
「げぽぉがはぁうがぁ!!」
「オラオラオラァ!!」
テゾーロの〝黄金連爆〟にズィーは打つ手もなくただ受け続けた。
テゾーロの〝黄金連爆〟により熱も高まってきた。
「……!!(熱い!これ以上はマズイ!)」
テゾーロは自身にも及んでいるダメージに顔をしかめてしまう。
――実は弱点の海水さえを吹き飛ばし、蒸発させるには凄まじい熱が必要になる――ただし、その熱は強烈すぎてテゾーロ自身さえも焼いてしまうのだ。
テゾーロもそれを覚悟した上で熱を上昇させてきたが、さすがに自身に及んているダメージがそろそろしゃれにならなくなってきたのだ。
それに気付いたテゾーロは素早くプールから離れた。
そして彼は両腕を覆った黄金を解いてみたら――両腕には火傷を負わされていた。
「……奴は?」
自身の両腕を凝視するテゾーロはズィーに視線を向けてみたら、彼はプールから上がろうとしていた。
残念ながら撃破できていなかったようだが……それでも重いダメージを負ったズィーは瀕死だった。
「……無様だな。芸術家さんよ」
「ぐ、ぐ……お、おのれぇ〜」
そんなズィーに目を細めるテゾーロは近付く。
「これで終わりだ」
テゾーロは止めを刺そうとズィーに拳を構えるが――
「……そうはいかないぃぃ!!」
瀕死の状態であるにも関わらず、ズィーは素早く動き出した。
「ヒョッヒョッ!」
「!!ステラ!ノヴァ!ページワン!」
ズィーはステラ達に向かって駆け込んだ。
ズィーの行為にテゾーロも焦ってしまう。
「ヒョッヒョッ!お前を人質に「はぁ!!」げぼぁ!?」
ステラ達を人質にしようとするズィーの顔をステラのキックが叩き込んだ。
「がは……な、な……」
「――あいにくだったわね!私も海賊の妻なのよ!」
「――私をナメんじゃないわよ……!」
「あい!あい!」
堂々とそう宣したステラはズィーの顔に再びキックを食らわしてやった。
「げぽぉ!?」
ステラからの見事なキックを受けた事で吹っ飛ばされたズィーを捕らえる影が1つ。
「!ページワンか!」
それは脊椎から伸びる扇状の突起物が特徴な恐竜――スピノサウルスに変身したページワンだった。
ある程度成長したページワンは姉と共に悪魔の実を食い、恐竜の力を手にしたのだ。
といえ、まだ小さいページワンが変身しただけはあって、まだ大型ではなかった。だが……
「いでぇ!」
ズィーの腹辺りを噛むページワンの顎力はそれなりにあるのだ。
「オレも暴獣海賊団の海賊だからな!」
「それに……釣り師としてお前をさばけてやら!」
そう言い放つページワンのズィーを噛む顎に力をさらに入れる。
「いででで!」
悲鳴を上げてしまうズィーをよそにページワンは自身の身体を回らせる。
「おぉぉ〜」
勢いよく回っているページワンは――噛んでいるズィーを床に勢いよく叩きかけた。
「げぽぉ!!」
ズィーは床に叩きかけられた反動で空中に吹っ飛ばされた。
――そして、それを待ち構えた者が1人。
「……はぁぁ〜」
テゾーロだ。
彼の構えている右拳には黄金が覆っている上に発光していた。
「!!ま、待て……「〝黄金の業火〟!!!」」
その景色を目にしたズィーが何かを言いかけるも――テゾーロが右拳を放った。
「げぽぱぁぁぁぁぁあ!!」
それを受けたズィーは勢いよく吹っ飛ばされた。その勢いはそりゃすごくて――壁を破られた。
やがて床に叩きつけられたズィーの身体は……黒コゲだった。
「……やったのね!あなた!」
「おう!――君達もやるじゃないか!」
勝利を確認できたステラ達がテゾーロに近寄る。テゾーロも彼女達を褒め称える。
「特に!君のキックは素晴らしかったよ!惚れ惚れしたものだ!」
「あなたこそ!すごく熱かったわよ!」
「…ステラ……」
「…あなた……」
「……お熱い事で」
熱っぽく見つめ合うテゾーロとステラに何ともいえない表情を浮かべたページワンをよそにノヴァは声を放つ。まるで締めくくるかのように。
「あい!」
『暴獣海賊団 テゾーロ&ステラ(&ノヴァ)&ページワン
VS
ムザン海賊団 ズィー』
『無限城
「ズィーの部屋の戦い」』
『勝者 テゾーロ&ステラ(&ノヴァ)&ページワン』