ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第44話〝冷雪に立ち向かう華と蜘蛛〟

 無限城の如何なる箇所でそれぞれ戦いが始まろうとするところに――

 ここには異様な空気が流れていた。

 

「やぁやぁ、初めまして。オレの名前はドーマ」

 

「いい夜だねぇ」

 

「「…」」

 

 屈託なく笑い、穏やかに優しく喋るドーマに小紫――私とマリアは嫌悪感を浮かべていた。

 

「よろしくね!」

 

「……こんにちは――そして」

 

 能天気にも微笑み続けているドーマに一応挨拶する私は一瞬で――ドーマの目前でもう身を屈めていた。

 

「!」

 

「――さようならぁ!!」

 

 目を見開くドーマに向かって私は居合で斬ろうとした。

 ――不快だが、ドーマは確かな実力を持っているのに気付いた私は全力を込める〝一撃必殺〟でケリをつけようとした。

 そんな思いを抱えている私はドーマを斬り捨てようと刀を放つが――

 

「……!!」

 

「いや〜ビックリしたね」

 

 私の居合斬りをドーマは鋭い対の扇でしっかり止めていた。

 私の全力を止めたドーマの調子が軽いであるという事実に私は歯を食いしばってしまう。

 そこに

 

「小紫!!」

 

 マリアが助力してきた。

 しかも彼女の姿は――異常だった。

 何せ、彼女の下半身がクモそのものになっていたから。

 

 

――ブラックマリアは〝クモクモの実〟を食った動物系能力者である。

 

――しかも、ただの〝クモクモの実〟ではない。モデルは古代種なのだ。〝ロサミガレ・グラウボゲリィ〟というらしい。

 

 とにかくマリアがドーマに糸を放つ。

 

「〝マリアネット〟!!!」

 

 マリアの糸がドーマの身体を覆い拘束する。

 

「今よ!」

 

「えぇ!」

 

 マリアの合図に頷く小紫は刀を大きく振り上げ――

 

「させないよ?」

 

 微笑むドーマの身体を覆った糸が突如剥がされ、バラされた。

 彼の扇での高速連撃により剥がされたのだ。

 

「残念「まだぁ!!」だね?」

 

 微笑むドーマに私が刀を勢いよく振り下ろした――その刀には火を纏いながら……

 

「〝焔霊〟!!!」

 

 その刀が浮かばれた糸にかかった途端に爆発が起こった。

 ――実はマリアの糸には粘着性だけではなく、可燃性も備えている。

 それを知っている私は火の剣で糸に火をつけ、爆発を起こしたのだ。

 なお、私が火の剣――狐火流の剣をなぜ扱えているかというと……

 私は明日郎さんから教えて頂き、何より彼の動作を観察してきた事でマスターできたからだ。

 そうして爆発が起き、場に煙が包まれた。それを眺めるマリアの元に私が移った。

 

「小紫」

 

「えぇ――」

 

 ちょうどドーマがいた辺りから視線をまだ逸らしていないマリアに頷いた私もまた視線を逸らしていない。そして

 

「「!!」」

 

「ビックリしたぁ〜!」

 

 煙が突如晴れされて、ドーマが無事な姿を現していた。

 黒コゲさえもしていないその姿に私達は目をひそめてしまう。

 

「――なぜ……ハッ!?」

 

 思わず疑問をこぼした私が何かに勘付いた。そして、同じく気付いたらしいマリアが口を開く。

 

「――空気が微かだけど…冷たい……これは?」

 

「あぁ!」

 

 マリアのその言葉を拾ったドーマが大げさに手を叩いた。

 

「実はオレは――〝ユキユキの実〟を食った雪人間さ!」

 

 

ドーマ――

 

彼は〝ユキユキの実〟を食った「雪人間」である。

それ故に爆発に対して彼は雪と冷気を放った事で相殺させてきたのだ。

 

 彼が能力者、しかも自然系である事実に私達も歯を食いしばってしまう。

 そんな私達にドーマは能天気に喋る。

 

「それじゃ、ビックリさせてくれた礼に――オレからもビックリさせてあげよう!」

 

「〝蓮葉雪〟」

 

 ドーマが扇を振るうと――蓮の花のような雪像が発生してきた。

 

「「!!」」

 

 その像がかかってくる前に私達は飛び上がる。

 

「――雪じゃ、炎には勝てまい!!」

 

 そう私は火の剣を振りながら踊る。

 

「おぉ!?」

 

 私の火を纏う踊りに能天気に目を見開くドーマに向かって私は今度こそ斬り捨てようとする。今度は火の剣で。

 

「〝散り蓮華〟」

 

 私の刀がかかろうとする瞬間、ドーマが扇を振るうと共に細かな蓮華の花弁状の雪を発生させてきた。

 その冷気に私の刀を覆っている火も相殺されてしまった。

 

「チィィ!!」

 

「小紫ぃ!!」

 

 なんとか踏ん張ろうとする私だが、〝散り蓮華〟が私の身体にかかった事で凍られそうな私をマリアが糸で掴み、自身の元に寄せていた。

 

「うぅ……ごめん」

 

「いいって!それより――」

 

 少しよろめいた私とマリアが再び視線を向けようとする――

 そんな私達の間にドーマが突如姿を現した。

 

「「!!」」

 

「やぁ!」

 

 驚愕する私達に晴れやかに笑ったドーマは〝散り蓮華〟を放ちながら踊る。

 

「「――!!」」

 

 それを受けた私達は身体を刻まれながら吹っ飛ばされた。

 

「〝蔓蓮華〟」

 

 そこを蓮を模した雪の蔓を四方八方から伸ばし、私達を絡めとり拘束する。

 

「――やぁやぁ!すごかったね!君達は!」

 

「「ぐぐ…」」

 

 ドーマは能天気に私達を褒め称えるも、私達はそれに耳を傾げずに拘束からなんとか脱出しようともがいていた。

 

「――えらい!!頑張ったね!」

 

「「……!」」

 

 だがドーマの続いての言葉に私達も固めた。

 

「オレは感動したよ!!こんな弱い女の子がここまでやれるなんて!」

 

「「…」」

 

「――実はね。皆を幸せにして上げるのがオレの努めなんだ」

 

「「…」」

 

「だから――君達はオレが「うるさい」たす……ん?」

 

 饒舌になっているドーマの喋りを私が遮る。つい凝視してくるドーマに私達も睨みつける。

 

「正気とは思えない。お前、頭大丈夫?本当に吐き気がする」

 

「え――っ。ひどいなぁ……オレは本当に皆の事を……」

 

 マリアの心からの軽蔑に困ったような反応を見せているドーマが口にする言葉に私も怒鳴りつけた。

 

「――お前はもう口を閉じろ!!」

 

 その途端に――私の握っている刀が突如爆発した。

 

「!」

 

 その爆発で焦げているものの〝蔓蓮華〟から自由になった私は先程とは激しく燃えている火の剣を振ろうとする。

 

「〝焔霊〟!!!」

 

 その炎はドーマが素早く放った〝散り蓮華〟と半分以上に相殺されたものの、完全に消えない。

 その炎がそのままドーマに襲いかかった。

 

「(よし――「熱いね〜」!!)」

 

 それを確認できた私だが、いつの間にか近付かされたドーマの扇により身体をさらに刻まれた。

 

「く……」

 

 片膝をついた私に近付くドーマ。その姿は焦げているところがみられたものの余裕だった。

 

「――もしかして怒っているかい?」

 

「…」

 

 煽ってくるかのようにそう言うドーマに私は思案に耽る。

 

「(……腹立つけど、コイツは強い。私では勝てないでしょう……)」

 

「(……〝私〟では)」

 

 ある手を考えている私に声を掛けるドーマ。

 

「ねぇ?」

 

「(……やるしかない!)」

 

 そう判断した私は――ドーマに駆け込む。

 

「〝焔霊〟!!!」

 

「……しつこいね」

 

 懲りない私の攻撃にドーマも呆れながら攻め返す――が。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

 私は怯まずに火の剣を振り回していた。その剣にドーマも目を見開き、対応に集中せざるを得なくなった。

 

「んん?……何か動きがさっきとは違うね?」

 

 今の私の体さばきにドーマも目をひそめてしまう。

 ドーマのその直感は別に間違いではない。

 今の私の体さばきは――別人のものだから……

 ――実は私は観察してきた猛者の動作を模写できるのだ。

 そして私は今――明日郎さんの動作をしている。

 

「はぁぁぁぁ!!オラァァァァ!!」

 

 明日郎さんの動作を模写している私はドーマに食らいつき――接戦になる。

 そして――ついにドーマの頬に深い傷を負わせた。

 

「!」

 

「――よし!!」

 

 目を見開くドーマに私もガッツした。

 

「……なかなかやるね!」

 

「でも……その戦い方にはな〜んか無理があるような?」

 

「…」

 

 ドーマのその指摘に私は――唇を噛みしめてしまう。

 実は――確かに私は猛者の動きを模写できるはできるが……所詮コピーに過ぎない。本物にはすごく及ばない。

 ましてやまだ幼い私の身体能力じゃ完璧に模写できていない。

 ――それだけではない。

 

「……!!」

 

 私の身体に違和感を感じた。

 ――実はそれこそが猛者の動きに私の身体が追い付けない反動なのだ。

 今はまだ違和感程度だが、いずれ痛みが走るようになるだろう。

 だから、負担をできるだけ軽減しようと鍛え抜いて、強い身体を作り出そうとしたが……やはり、まだ幼い為に未熟な身体のままだ。

 少しよろめいた私にドーマが近付く。

 

「まぁ!君は本当によく頑張った!」

 

「だから――君に姫の笑顔を拝ませてあげよう!」

 

「〝寒烈の白姫〟」

 

 ドーマが雪の巫女の上体像を2体作成する。そして、その像から広範囲を凍結させる吐息を発する。

 その息が私にかかろうとするも

 

「〝焔霊〟!!!」

 

 私は火の剣を勢いよく振り回す事でその息を吹っ飛ばし、2体の像を斬り捨てた。

 

――反動がどうした!

 

――それさえも呑みながら斬り捨てよう!!

 

 反動の懸念を無視してまで身体能力と炎の勢いを強める私の睨みつけにドーマも心なしか真剣な表情になる。

 

「……それじゃ!そんな君に仏も来臨してくるよ!」

 

「〝霧氷・睡蓮菩薩〟」

 

 ドーマは巨大な雪の仏像を作り出してきた。

 大像にさえも怯まない私はまず、それに飛びかかり――仏像の額に火の剣を刺す。

 

「〝焔霊〟!!!」

 

「あはは。無駄だよ〜」

 

 ドーマのその言葉通り、私の火の剣は仏像の額には確かに微かしか届かなかった。

 ――だが、そこに私はもう一振りの刀を抜いた。

 ――そして、その刀に電流が凄まじく流れる。

 

「〝雷霊〟!!!」

 

 私は電流が流れている刀を仏像の額を刺してなお、まだ燃え続けている刀に斬りかかった。

 

「〝火雷神〟!!!」

 

 ――電流を吸収した炎の勢いは凄まじくなった。

 それこそ像にビビを入れられた程だ。

 

「はっ!!」

 

 私は仏像の額を蹴り――床に足が付いた途端に仏像が崩壊した。

 

「……アハハ!!すごぉい!!」

 

「まさか――君が」

 

「火だけではなく、電流をも扱えるなんてね!!」

 

 そうドーマの目には――もう既に手に握っている火の剣とは違う――電流が流されているもう一振りの刀を握っている私の姿が写されていた。

 

 ――実は明日郎の火の剣と接戦しているシシリアンの「エレクトロ」にも私は注目していた。

 狐火流のようにそれを扱える可能性があるのではないかと考えた私はゼポさんからの「エレクトロ」についての説明に耳を傾げ、シシリアン達の動作を観察し、狐火流を参考にしながら何度も試み続け――ついに「エレクトロ」をもマスターできたのだ!

 さらに火の剣に「エレクトロ」を流すと――凄まじい炎と化すのも試みていた。

 

「……オレの自慢の技なんだけどね〜」

 

 崩壊した仏像の欠片を見ているドーマはガッカリしているようにみられ――しかし、すぐ晴れやかに笑う。

 

「まぁ、ならもう一度「〝マリア地雷〟!!!」つく――!」

 

 突如ドーマの周囲に糸で丸められた球が大量に放出される。

 ――実は〝蔓蓮華〟からなんとか脱出できたマリアはドーマが私に集中する間に糸で丸められた球を多く作り出してきたのだ。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

 そしてマリアはできた糸の球を放ち続けている。

 自身の周囲に糸の球を放たれるドーマは思案に耽る。

 

「(……この糸でできている球、それがこの量――なると)」

 

 自身の置かれた状況からマリアの意図を察したドーマは

 

「〝大吹雪〟」

 

 場に大吹雪を吹かせていく。

 

「!!(――私達がやろうとする事を勘付いた!?――だが)」

 

「小紫!」

 

 マリアの声に頷いた小紫は――大きく振り上げている二振りに火と「エレクトロ」をそれぞれ纏わせ――ドーマに駆け込む。

 その最中、私は――思い出す。観察してきた猛者の中でも猛者であるあの人の剣を――

 

「〝雷光八卦〟!!!」

 

 ――スサノオの〝雷光八卦〟をできるだけ模写する私の振り下ろした剣が吹雪を斬り――ドーマの構えた扇をも斬り――しまいには彼の身体を斬った!

 

「うお!?」

 

 目を大きく見開くドーマをよそに火と「エレクトロ」が糸の球にも飛びかかるのを確認できた私は素早く撤退する。

 そして――火と「エレクトロ」が飛びかかられた大量の糸の球が一層に大爆発を引き起こした。

 

「……いてっ…動けないや」

 

 それを眺めながら、そう呟いた私はただ立っているままだが――実は。

 猛者の動作――何よりスサノオまでも模写してきた反動で私の身体――もちろん、両腕にも痛みが走り――そして麻痺した。一時的だが。

 

「……マリアは?」

 

「……はぁぁ〜」

 

 緊張が解けたのか、身体の力が抜けたマリアは床に座っていた。

 ふと私に顔を向けたマリアは勝ち誇った顔をみせる。私もそういう笑みを浮かべた。

 

「……ん?」

 

 ふと私は前方向に顔を向けると――

 

「バ、バカな……!!」

 

 私は目を大きく見開いてしまう。

 私の目前には――ドーマが立っていた。その姿は深い傷を負わされながら黒コゲしていた。

 

「……やるねぇ!!君達!!」

 

「おかげでオレもやられかけたよ!!」

 

「でも――あと一歩足りなかったみたいだ!!」

 

 痛々しい目に合わされたにも関わらず、相変わらず晴れやかに笑っているドーマに私もさすがに恐怖感を感じた。

 

「小紫!!」

 

 マリアが私を助けようと駆けてくれているが……間に合わないだろう。

 私はよろけながらも思案に耽る。

 刀を握る肝心の両腕が麻痺している以上、ドーマへの攻撃手段を持っていない。

 これではコイツにやられる!

 自身の無力さに歯を食いしばる私だが――

 

「……!!」

 

 ――いや!ある!腕が動けなくても奴に攻撃を加えられる部位がある!

 それに気付いた私はドーマが口を開くのを目にする。

 

「――素晴らしいよ!素晴らしい!君達は!オレも感動できたよ!」

 

「……ウソつかなくていいよ?」

 

「!」

 

 ドーマの喋り――放たれる言葉には私もイラつきすぎて、かえって笑いがこみ上げてきた。

 

「お前は何も感じない――感じられないんでしょ?」

 

「そんな奴に気に入られるなんて――虫酸が走る」

 

 私は心に浮かんできてしまう言葉を口にした。

 その言葉にドーマは相変わらずヘラヘラする――かと思ってたら

 

「……君みたいな意地の悪い子初めてだよ。何でそんな酷いこと言うのかな?」

 

 彼は――おそらく、本当の表情――無表情になっていた。

 しかし、そんなドーマの様子に動揺――隙を感じられた私は攻撃を加えようとした。

 腕に代わる攻撃を加えられる部位――それは……

 

 

 

 

 

「……がぱぁ」

 

 ドーマが驚愕に目を大きく見開く。

 何せ――

 

 

 

 

 

 ドーマの喉を私に噛まれていたのだから……

 

 それは――「口」だ!!!

 

 すなわち、口で致命的になる部位――喉に噛みつくのを思い付いた私はそれを何の葛藤もなく実行したのだ。

 

「ぎぎぃ……ぎっ!!」

 

 私の噛みついたものをドーマの喉から無理矢理剥がした。

 そこから大出血してきた。

 

「……ば、ば、ば…」

 

 吐血もしたドーマは私を凝視ながら――驚愕するものの……おそらく笑顔を浮かべ――倒れ込んだ。

 それっきり――立ち上がる事はなかった。

 

――今度こそドーマはくたばったようだ。

 

「……ぺっ」

 

 それを見届けた私は噛みついたものを吐いた。

 そしてマリアは私に近付いてきた――震えながら。

 

「……やったのね…!小紫…!」

 

「……えぇ……恐ろしくないの?私が?」

 

 マリアの震えに私はつい笑いながら言ってみるも

 

「何言ってんのよ――むしろ感動しているの」

 

「あなたの強さに!」

 

 マリアは頬を赤くしながら、そう言い放った。

 ――それは恐怖ではなく、歓喜にだった。

 

「……ふふっ」

 

 マリアの言葉に目を大きく見開いた私もつい吹き出す。

 そして私達は穏やかに笑い合った。

 

 

――修羅道を歩んでいる少女はここに1つ、また強くなった……

 

 

『暴獣海賊団 小紫&ブラックマリア

  VS

 ムザン海賊団 ドーマ』

 

『無限城

「ある廊下の戦い」』

 

『勝者 小紫&ブラックマリア』

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