ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第46話〝楽音を封じるライオン〟

暴獣海賊団VSムザン海賊団――

 

 2つの海賊団による戦いが勃発した事で無限城の如何なる箇所にそれぞれ起こっている戦い。

 その中でも重要――それこそ暴獣海賊団とムザン海賊団の戦いの鍵を握るといっても過言ではない戦いが2つ存在していた。

 その1つは言わずとも――スサノオとムザン、両陣営の大将同士の戦いである。

 ――もう1つは……

 

「オォォォォ!!」

 

 シシリアンが雄叫びを上げながらセイレーンに駆けていく。だが

 

「…」

 

 自身に立ち向かってくるシシリアンの姿にセイレーンは慌てる事もなく、ただ――ただコントラバスを引いていた。

 

「!」

 

 ハッとするシシリアンはある方向に視線を向け、苦々しい表情を浮かべた。

 そしてシシリアンは立ち向かう筈のセイレーンから離れていった。その途端に先程にシシリアンのいた所を大柱が降りた。

 そして、駆けているシシリアンを追うかのように大柱が次々と降り続けてきた。

 それをかわしながら、セイレーンから離れていったシシリアンは今、彼女から遠い距離に立たざるを得なかった。

 

「くぅ……おのれ」

 

 振り出しにされたといえる状況にいるシシリアンは悪態をつかずにはいられないのだ。

 

「そもそも――」

 

 そしてシシリアンはある疑問を抱えるようになる。

 

「アイツの能力は何なんだ!?」

 

 そう――セイレーンの能力の謎だ。

 

「悪魔の実の能力者であるのは間違いないが……」

 

 セイレーンの能力のデタラメさにシシリアンも唸ってしまう。

 

「…」

 

 自身の能力について考察しているシシリアンを凝視するセイレーンも考える。

 

「(――この力は何者であろうとも破られない……この〝クウクウの実〟の力は)」

 

 そう考えたセイレーンは不敵に笑う――

 

 

セイレーン――

 

彼女は〝クウクウの実〟を食った能力者なのだ。

その〝クウクウの実〟は超人系の悪魔の実の1つである。

その実を食った能力者はワープゲートを作る事で任意の場所の空間を繋げる事できる。

無論、相手の足元にワープゲートを作る事で任意の相手を自在に召喚したり、逆に目的地へと送り込む事もできる。

――そして極めれば、人が住められる異空間を生み出す事ができるのだ。

 

セイレーンはその力でムザン海賊団の本拠地「無限城」を作り出したのだ。

それ程に凄まじき力を持っているセイレーンはムザンにはもちろん気に入られていて、ムザン海賊団に重用されている。

そして「無限城」の創造者にして管理者である彼女は自在に壁と通路の配置等を操れる。

その動かされる壁が敵対者――すなわち、今のシシリアンを叩き潰そうとしている。

 

 セイレーンの能力の厄介さにシシリアンも舌を巻かざるを得ない。

 

「――だが、だからって撤退する訳がなかろう!!ただ――ただ突き進むのみ!!」

 

 そう雄叫びを上げているシシリアンはセイレーンへの攻略を再開する。

 襲いかかってくる大柱にシシリアンは怯まずにかわしながらセイレーンに向かって駆けていった。

 

 ――だが、数きれない大柱によりシシリアンは元いた所に戻されて、振り出しにされていった。

 

「なんのぉぉぉぉぉ!!」

 

 だが、諦めが悪いシシリアンは何度も何度もセイレーンに立ち向かい続けていった。そして振り出しにされていった……何度もの繰り返しだ。

 

「はぁはぁ……」

 

 何度もの繰り返しにさすがに息切れしていたシシリアンはある決意をする――

 

「……次だ。次にこそ――全てを賭ける」

 

 そう腹を括ったシシリアンは――雄叫びを上げた。

 

「ガアァァァァァァァ!!!」

 

 雄叫びを上げるシシリアンにセイレーンは――怒りをみせていた。

 

「……!!」

 

 ――実はセイレーンは自身がコントラバスをただ引いている時間を愛しているのだ。

 だからこそ、自身に立ち向かってくる事で静かにコントラバスを引いてもらえないシシリアンの事をハエの如き鬱陶しく感じ、イラついていた。

 そして、とうとうシシリアンの雄叫びがセイレーンの怒りの火に油を注いでいたのだ。

 怒りを爆発させたセイレーンの引いているコントラバスの楽音が激しくなってきていた。

 その激しさに伴い、シシリアンを叩き潰そうとする大柱の数が多くなり、激しく動かれるようになっていた。

 

「……!!これは!!」

 

 その激しさにシシリアンも冷や汗を流しながらかわし続ける。それでもセイレーンに立ち向かう。

 

「激しいが……いや!だからこそ!やはり今回でケリをつけるぅぅぅぅぅ!!」

 

 ますます腹を括ったシシリアンは今までより鋭い体さばきで大柱をかわし続けながら――少しずつセイレーンに近付いていった。

 

「……!!」

 

 今回はさすがに決定的に近付いてくるシシリアンにセイレーンも目を見開く。

 

「あと少し!」

 

 セイレーンとの距離が縮まっていくうちにシシリアンは剣に「エレクトロ」を流す。

 

「……!!」

 

 それを目にしたセイレーンは焦りからかコントラバスを激しく引く。

 

「少し――!!」

 

 あと一歩でセイレーンにシシリアンの剣が届こうとする瞬間に彼の足元から大柱が発生してきた。

 

「おぉ!!」

 

 その大柱に押されているシシリアンを更なる大柱が吹っ飛ばした。

 勢いよく吹っ飛ばされたシシリアンは床に叩きつけられた。

 

「く、クソ……ハッ!?」

 

 なんとか立ち上がったシシリアンだが、彼は今自身のいる所とセイレーンとの距離に呆気に取られた。

 彼は今――元いた所に戻っていた……すなわち振り出しにされたのだ。

 

「……!!」

 

「……フン」

 

 シシリアンの悔しげな様子にセイレーンも鼻を鳴らす。

 ――またしても攻略が失敗したという事実にシシリアンも頭に血が登り――

 突如白目になったシシリアンが雄叫びを上げた――彼は本能に支配されてしまったのだ。

 

「ガアァァァァァァァ!!!」

 

 雄叫びを再び上げているシシリアンにセイレーンも歯を食いしばる。

 

「(――また、うるさい叫びをしてくれて……さっさと叩き潰――!?)」

 

「ガアァァァァァァァ!!!」

 

 先程とは違うシシリアンの雄叫びにセイレーンは目を見開く。

 何せ――その雄叫びは劣るどころか――少しずつ大きくなってきているからだ。

 その雄叫びにセイレーンもたまらず耳を塞いでしまう――両手でだ。

 彼女の両手が自身の耳を塞いだ以上――コントラバスを引く事はできない――おそらく、彼女の能力が発動するには彼女がコントラバスを引く事が条件になるかもしれない。すなわち――今の彼女の状態では能力を発動できない上に無防備だ。

 本能に支配されている筈のシシリアンはそれに勘付いたのか、手に持つ剣を――セイレーンに向かって、勢いよく投げた。

 

「!!」

 

 雄叫びに意識が少し薄れてきているセイレーンだが、それでもシシリアンの投げた剣になんとか気付き、慌てながらかわそうと身体を横にそらした。

 シシリアンの剣は――セイレーンを貫く事はなく、彼女の後ろの壁にただ刺していた。

 

「……!!」

 

 剣をかわせた以上に自身の置かれている状況を自覚できたセイレーンは自身の耳がダメージを受けるのを覚悟し、耳を塞いでいた両手をコントラバスに伸ばす。

 

「ガアァァァァァァァ!!!」

 

「……はぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 雄叫びを上げながら駆けてくるシシリアンにセイレーンも負けずに雄叫びを上げながらコントラバスを激しく引いた。

 その途端に必然ながら――セイレーンの能力が発動された。

 

 その場に大きな音が響いた。

 その音の大きさはおそらく今までの中で最もだっただろう。

 

 ――それはそりゃ巨大な柱がシシリアンに降りてきたから。

 ……動かす柱が大きければ大きい程、セイレーンの体力が激しく奪われていくのだ。

 だが、シシリアンのしつこさに参っている上に彼の雄叫びが耳にダメージを与えている以上、さっさとケリをつけなければなかったのだ。

 

「はぁはぁ……」

 

 息切れしたセイレーンは雄叫びが消えたのに安堵するものの、油断を捨てずに今は煙で見えにくいシシリアンの姿を確認しようとする。

 やがて煙が晴れていると――シシリアンは……無残に叩き潰されていた。

 ハエの如き鬱陶しかったシシリアンがようやく消えた、その死の無残さにようやく満足できたセイレーンはコントラバスを引き続けるのに集中した。

 その部屋にはその楽音が流れていた――どこまでも――どこまでも……

 

 

 

 

 

 

「〝幻火〟」

 

 

 

 

 

「…」

 

 セイレーンの頭に置かれている手があった。

 ……ただ、彼女はそれを認識していないが。

 

「……どういうつもりだ?」

 

 それを見つめているのが――なんと叩き潰された筈のシシリアンだった。

 彼は不満気な表情を浮かべながらセイレーンの頭に置かれている手の主に文句を言う。

 その人物こそが――

 

「――ハッテン!!」

 

 ――ハッテンである。

 

 ――実は彼は「無限城」に連れて来られた時にそれが悪魔の実の力だと勘付いた。

 そして、暴獣海賊団が「無限城」に永遠に閉じ込められる危険性をも考えついたハッテンは張本人である能力者を探してきた。

 やがて、その能力者――セイレーンを見つけ出せたハッテンだが、彼女の能力により攻略が困難であるのにも勘付いてしまった。

 どうしようかと悩んだハッテンがふとシシリアンがセイレーンの元に辿り着いたのに気付き、彼がセイレーンに立ち向かうのをただ様子見していた。

 そんな最中、セイレーンにできた隙を見逃さなかったハッテンは彼女に幻術――〝幻火〟をかけた。

 まさに――ハッテンはシシリアンを利用した上に美味しいところを持っていったようだ。

 シシリアンがイラつくのも無理ではないだろう。

 

「――しょうがないだろう。あんたには仮にコイツを倒しても、オレ達――暴獣海賊団をここから解放できまい?」

 

「ぬぅ……」

 

 ハッテンからのその指摘に否定できないシシリアンも唸ってしまう。

 そうなのだ。仮にシシリアンがセイレーンを撃破したからといって、暴獣海賊団が「無限城」から解放される訳でもない。むしろ永遠に閉じ込められる可能性が高い。

 ――だが、この男……セイレーンに幻術をかけられたハッテンならば

 

「――お前なら……オレ達をここから解放できると?」

 

「あぁ」

 

 はっきりと応答したハッテンにシシリアンも苦虫を噛み潰したような顔になってしまう。

 

「――なら、さっさとやれ」

 

「おう」

 

 シシリアンのその言葉に頷いたハッテンは〝幻火〟で都合の良いものをみせられているセイレーンに念じておく。

 

「(オレ達、暴獣海賊団を――……いや)」

 

「(ここにいる者達を全員、人が全くいない地にここから解放しろ)」

 

 ハッテンがそう念じた命に従ったセイレーンはコントラバスを引く。

 

「「「!!」」」

 

 「無限城」にいる者達は突如荒地――それこそ人の気配さえも感じられない地に全員移されていった。

 

「……うん!上手くいったようだ!」

 

 その場をを見渡して――少なくとも暴獣海賊団が1人も残されずに全員「無限城」から解放されたのを確認できたハッテンはセイレーンを海楼石の鎖で拘束した。

 ハッテンのそんな動き様を目にしたシシリアンはやはり苦虫を噛み潰したような顔になる。

 

「……随分、動きが速い上に抜け目がないな」

 

「ふふっ……我は〝忍〟……抜け目がない上に結果を出すように動くのだ」

 

 印を結びながら胸を張るハッテンにシシリアンも言い捨てる。

 

「……それこそ、他の者の手柄さえも奪うと?……卑怯だな」

 

 不満気なシシリアンにハッテンはニャリとする。

 

「――それが〝忍〟だからね」

 

 

『暴獣海賊団 シシリアン(&ハッテン)

  VS

 ムザン海賊団 セイレーン』

 

『無限城

「セイレーンの部屋の戦い」』

 

『勝者 ハッテン(&シシリアン)』

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