ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第47話〝悪鬼を滅す竜〟

暴獣海賊団船長スサノオ――

 

ムザン海賊団船長ムザン――

 

 両陣営の大将同士であるこの2人の戦いの行方が2つの海賊団による戦争の勝敗を決定するといっても過言ではなかった。

 ――それ故か、2人の間にはあまりに異様な緊張感が走っていた。それこそ激しい戦いが始まろうと思わせている程だ。

 

「オラオラオラァ!!」

 

 ムザンが伸ばしている鋭く細長い爪をオレに向かって勢いよく振り回してきた。

 

「…」

 

 それに対してオレは「神武」で防ぎ続けていた。そして、少し力を込めた「神武」でムザンの両腕をそれぞれ払ったところに彼の腹に左拳を放った。

 

「ごぽぁ!?」

 

 拳を身に受けたムザンが吹っ飛ばされ――しかし、なんとか踏ん張り、床に足を付ける。

 少しよろめきながら姿勢を整え直したムザンにオレは静かに言ってみる。

 

「……この程度か?」

 

 オレからの煽りとも受け取れる問いかけに短気なムザンもブチキレた。

 

「チィィィ……調子に乗りおってぇ〜〜」

 

 目を血走らせ青筋を立てているムザンだが、突如獰猛な笑みを浮かべてきた。

 

「――いいだろう!みせてやろう!!」

 

 高揚しているムザンが両腕を上げながら宣した途端に彼の身体が盛り上がってきた。身体が大きくなっていくと共にその姿も異形に変貌していった。

 まず、一度として日の光を浴びた事がないような白い肌の色が赤黒くなっていく――そう、まるで血のように。

 次に整っている顔が禍々しく恐ろしい形相と化し、こめかみ辺りからそれぞれ力強さを感じさせる角が生えてきた。

 変身し終えたムザンの姿は――〝鬼〟そのものであった。

 

 

コンストラクション・ムザン――

 

彼は〝ヒトヒトの実〟モデル〝鬼〟を食った「鬼人間」である。

彼は「鬼」に変身できるのだ。

そのスペックに関しては少なくとも身体能力が強化しているのは確かである。

 

 

 その姿に恥じない邪悪でおぞましい雰囲気を漂わせているムザンは得意気になっていた――そう、ドヤ顔だ。

 

「フハハハハ……どうだ!――さぁ、この私に頭を垂れて蹲え!!平伏せよ!!」

 

 「鬼」に変身できた事で調子に乗っているのか、好き勝手に言い放っているムザンのくだらないしゃべりを無視しているオレもその姿にはさすがについ苦笑してしまった。

 

「……「鬼」ねぇ〜」

 

 その「鬼」の能力、姿にオレも反応せざるを得ないのだが――なぜかというと……

 

「(漂ってくる雰囲気……オーラなのか?…は別だとして……あの姿と比べてみると……オレ達のはまだ人寄りだな……)」

 

 実は――親父―〝百獣のカイドウ〟はその特徴的な姿により人々から「鬼」だとみられていた事もなくはなかったからだ。

 無論、息子として彼の特徴も受け継いでいるこのオレも「鬼」だとみられる事もあった。しまいには――特徴をほとんど受け継いでいない筈のヤマトも〝鬼姫〟と呼ばれる程だ。

 

「(……暴獣海賊団として初めて上陸した島でよりにもよって――「鬼」と戦うとはなぁ〜)」

 

 こういう状況に少し因果って奴を感じずにはいられないオレはしばらく感傷に浸るも

 

「――まぁ……さっさと叩き潰して、よりにもよってこのオレの前で「鬼」として姿をみせるという行為がどれだけおこがましいか――思い知らさせてくれる」

 

 すぐ気を取り直したオレが不敵にそう言い放ったのが癪に障ったのか、ムザンが無数の青筋を立てて

 

「ほざけぇぇぇぇぇえ!!」

 

 オレに向かって凄まじい勢いで乱打を放ってきた。だが、オレも負けじと「神武」を振り回す事で返す。

 しばらくムザンの乱打とオレの「神武」での振り回しで張り合い――直後に互いに離れた。

 

「チッ!私の動きにも追いつけるとはな!」

 

 自身の攻撃がオレには届いていないにも関わらずに得意気になっている――ドヤ顔をみせているムザンにオレもさすがに少し呆れてしまった。

 

「……気付かねぇのか?」

 

「何?」

 

 オレのその言葉にムザンも困惑をみせた。ただ、このオレの呆れている態度を自身を見下ろしているのだと見なしたらしく、イラついていた。

 

「何が――……!?」

 

 それでも問いかけてみるムザンだが、ハッとする。素早く自身の両手を凝視してみるとそれには――手が腫れている上に数ヶ所の切り傷を負わされていた。

 

「こ、これは……!」

 

「このオレがただ攻撃をかわす訳がなかろう?」

 

 オレが呆れているのにますますイラついたムザンだが、すぐニャリとする。

 

「――なら!これでどうだぁ!」

 

 ムザンは自身の両手に力を入れ――

 

「……!」

 

 オレも目を見開いてしまう。

 何せ、ムザンの両手に負わされた切り傷が塞がい、腫れも収まってきたからだ。

 それは回復力が上がったからか?――否。そうではない。それは――

 

「筋肉を無理矢理動かしたのか」

 

「その通り!」

 

 その可能性に至ったオレの指摘にムザンも肯定する。

 ムザンは自身の筋肉を無理矢理動かして両手を元の状態に戻していただけだ。

 ――ただ、そんなやり方では「治った」とはいえない。傷とダメージを後回しにしただけだろう。そして

 

「お前のような奴に度胸があるとはな。すごく痛むだろうに……」

 

「そりゃ痛いわ!!」

 

「…」

 

 ムザンが素直にそう口にしているのにオレも思わず口を閉じた。

 

「行くぞぉぉぉぉぉお!!」

 

 だが、オレの反応に気付いていないらしいムザンが攻撃を再開しようとし、オレも気を取り直し構える。

 それからオレとムザンはしばらく接戦していた。

 

「はぁはぁ……」

 

「…」

 

 少し息切れしているムザンをオレは冷静に凝視する。

 

「……なかなかやるではないかぁ〜」

 

「…」

 

 このオレを素直に称賛するムザンだが、オレの方は――物足りなさを感じていた。

 ――そりゃ、ムザンは意外に実力者だ。

 〝新世界〟の海賊だけはあって、なかなかの強さを持っている。それにまだ何かを隠しているようだ。

 ――だが、それだけだ。

 ムザンからは信念さえも感じられない上に性格がクソな故か、戦闘が好きなオレも気分が高ぶれないでいた。

 そんなオレの意図に気付けないムザンは高揚しながら言い放とうとする。

 

「だが!それもこ――……!」

 

「「!!」」

 

 「無限城」での床に立っている筈のオレとムザンは突如――荒地に立たれていた。

 

――実はちょうど、ハッテンの暗躍によりムザン海賊団の本拠地「無限城」から〝ギビマ〟の人の気配さえもない荒地に敵味方関係なく全員移されたのだ。

 

「ここは……?」

 

 だが、その事を知らない為にこの事態に疑問符を浮かべているオレをよそにムザンは動揺していた。

 

「何してる!?セイレーン!?」

 

 この事態にセイレーンの異変を勘付いたムザンは詳細までは勘付けない故に動揺とイラつきを隠せずにいた。

 さらに――

 

「……!!私の部下達が……やられているだと……!?」

 

 自身の部下達――兵達も幹部も倒れていたのに気付いたムザンは衝撃を受けた。自身が信頼を置いているあのペストまでも倒れたのが余計に。

 ――そして、そういう状況が意味するもの――すなわち、まだ残されているがムザンただ1人だけである時点でムザン海賊団の敗北はもはや、ほぼ確定的であるといえた。

 

「…」

 

 それを理解してしまったムザンは頭を下げ、震える。

 そんなムザン、そしてオレを目にした暴獣海賊団の海賊達はオレに助力しようとした。

 

「よし!スサノオさんを助けるんだ!」

 

「「「オオ―「待て!」――ッ!?」」」

 

「コイツはオレがやる!」

 

「だから、待て!」

 

 このオレからのその指示に皆も一応理解し、待機してくれた。そこに

 

「……ふ…ふふ……」

 

 身体の震えが強まってきたムザンが頭を上げ、両腕を上げながら高笑いした。

 

「フハハハハハ!!」

 

 その様はまるで現実を受け入れられずに発狂したようにみられるが……

 やがて高笑いが収まったムザンは静かに――口にし始める。

 

「……いいだろう――みせてやろう」

 

「光栄に思うがいい!」

 

「この姿をみせるのはお前らが初めてだ!!」

 

 そう宣したムザンは――自身の身体に力を入れる。

 

「オオォォォォォ!!」

 

 そう張り切るムザンの身体が今度は縮まり――元のような細身になっていった。

 ……なったはなったんだが……その姿もやはり異常だった。

 身体の大半が大量の口がついた赤黒いものに覆われた異形の姿へと変貌を遂げたムザンは邪悪な笑みを浮かべた。

 

「クク……お前らに勝機はもうないと思え!!」

 

「……力を全て圧縮しているのか」

 

 だが、ムザンの言葉をやはり無視したオレは彼の状態に関しての考察に入る。

 そんなオレをムザンは待たずに容赦なく攻撃してくる。

 

「考える余裕はあるのか!?――〝菅〟!!!」

 

 ムザンは両腕を変化させた肉塊の如き極太の二本の90cm〜約10mの〝管〟と背中から伸びる先端に骨の様な刃の着いた血管状の細い九本の4mの〝管〟をオレに向かって振るう。

 

「〝軍荼利龍盛軍〟!!!」

 

 対するオレも「神武」の金棒による連続突きの如き乱打で打ち返した。

 しばらくムザンの〝菅〟とオレの〝軍荼利龍盛軍〟による接戦が続けられる。

 狡猾なムザンの見えない方向からの攻撃等の搦め手にもオレには対応されているのにムザンもイラついた。

 

「…(チッ!――なら!)」

 

「……!!」

 

 オレは自身達の周囲の空間に異変が行じるのを感じた。それは

 

「風?」

 

 オレのその呟きにムザンは不敵な笑みを浮かべる。

 

「フフ……気付いたか?」

 

 ムザンが打った次の手――全身に生じた口による吸息により、強烈な吸い込みを伴う風の渦を生じさせた。それこそが――

 

「〝風渦〟」

 

「ぬぅ!」

 

 〝風渦〟に巻き込まれたオレは少し苦悶――らしき表情をみせた。

 

「フハハハ!私に立ち向かう愚かしさを思い知るがいい!!」

 

 その様子に勝利を確認し、高笑いしたムザンをよそにオレは

 

「なら!――こうするまで!!」

 

 自身の身体を凄まじい勢いで振り回らせる。それによって発生させた暴風が〝風渦〟と激突し、両方ともかき消されていった。

 

「はぁぁぁぁ!!?」

 

 〝風渦〟を力業で破ったオレのデタラメさにムザンも目を丸くしてしまう。

 

「な、なら!これはどうだ!!」

 

 ムザンの全身の口から吸息した後、その息を高圧で吐き出してオレに向かって攻撃する。

 

「〝鬼嘆息〟!!!」

 

「〝雷鳴八卦〟!!!」

 

 放たれた〝鬼嘆息〟をオレはムザンに向かって打ち返してやった。

 

「へ?――おぼぁぁぁぁぁ!!」

 

 目を丸くするムザンが〝鬼嘆息〟を身に受けた事で情けない叫びをこぼしながら、無様に吹っ飛ばされた。

 

「お――の――れぇ〜〜!!!」

 

 なんとか姿勢を整え直したムザンの身体を斜めに横断する形の巨大な口を開かれる。

 

「〝鬼哭啾啾〟!!!」

 

 その口から稲妻のような衝撃波を放つ。

 その〝鬼哭啾啾〟に対してオレは――「神武」を構えていた。

 オレはまず、「神武」の大剣で〝鬼哭啾啾〟を真っ二つに斬り捨てる。

 しかし、真っ二つにされた事で弱まったといえ、勢いがまだ続いている〝鬼哭啾啾〟をオレは今度は「神武」の金棒で叩き潰した。

 

「〝雷電八卦〟!!!」

 

 オレの〝雷電八卦〟により〝鬼哭啾啾〟がかき消された事実にムザンも呆気に取られた。

 

「……何だよ……」

 

 固まったムザンから声がこぼされる。やがて

 

「何なんだよぉぉぉぉぉお!!!お前はぁぁぁぁぁあ!!!」

 

 最強の状態に変貌を遂げたムザンの力さえも通用しないオレのデタラメさにムザンも叫ばずにはいられないのだ。

 そんなふうに発狂しているムザンにオレは口を開ける。

 

「――〝鬼〟とは色んな事ができるのか!」

 

 ムザンがみせた数々の技にオレも「鬼」の多彩な性質に驚愕せざるを得なかった。

 世界に伝わられる――ワノ国に伝わられている「鬼」とは違うから……

 そう言い放つオレの調子のあんまりな軽さにムザンも白目になってしまった。

 

「ががががが………」

 

「……さて」

 

「!!」

 

 オレのその呟きに呆然としていたムザンもビクッとする。

 

「……次は何をみせるんだ?」

 

「…」

 

 オレからの少し期待を込められている問いかけにムザンも冷や汗を流してしまう。

 

「……もうないなら――」

 

「さっさと叩き潰すしかねぇな」

 

「…」

 

 オレからの宣いにムザンも顔を真っ青にする。

 だが、それを気にしないオレが「神武」の金棒でムザンを叩き潰そうとするところに

 

「ムザン様!!」

 

 場に声が響いた――

 そこには――なんと、ハッテンの〝幻火〟にかかっている筈のセイレーンがまだ拘束されている姿でムザンの元に向かっていた。

 彼女は一応実力者なのだが、それでもハッテンの〝幻火〟を破るにはまだ足りない程だ。

 だが、オレとムザンの戦いの衝撃を受けた事により〝幻火〟に綻びが出てしまったのだ。

 そこにつけ込んだセイレーンが〝幻火〟から脱出できたのだ。

 ただ、脱出できたまではいいが、まだ海楼石の鎖で拘束されたままだ。

 それでもムザンの力になろうと彼の元に駆け込んでいった。

 その姿にオレは一瞬視線を向けるもムザンに気を戻し、攻撃を放とうとする。

 そんなオレの目前に何かが飛ばされていた――

 

 ――セイレーンだ。

 

 自身の目前に飛ばされたセイレーンの姿にオレはつい、手を止めた。そして

 

「「!!?」」

 

 突如セイレーンの腹を破った細鋭いものがオレの胸を貫かそうとしていた。

 

 ――鋼の音がした。

 

「…」

 

 オレの胸には――細鋭いものにより傷を負わされる――事はなかった。

 

「…」

 

 そして、オレは細鋭いものの根本を見てみると……

 ムザンが〝菅〟でセイレーンの腹を破り、オレを貫かそうとしたのだ。

 ――彼は部下の彼女を〝菅〟で掴み、オレの目前に放り出した――囮として使い捨てたのだ。

 

「チィィィィ!」

 

 奇襲の失敗に舌打ちしたムザンはセイレーンをよそに放り捨てた。

 

「……む、ムザン様……?」

 

 そうこぼしたセイレーンは――それっきり、息絶えた。

 

「……フン……重要な能力だったから、重用してやったのに……とんだ役立たずではないか」

 

 セイレーンの死体にそう言い捨てるムザンだが、彼は気付いていなかった。

 

 自身が――竜の逆鱗に触れてしまったという事実に……

 

「おい」

 

「何だ!?――は?」

 

 掛けられる声にイラついたムザンがその方向に振り返る――途端にアホ丸出しな面を晒した。

 何せ――ムザンの目前には竜が堂々と立っていたから。

 呆気に取られたムザンに竜――オレは静かに―重々しく口にする。

 

「……おこがましさを極めているだけに飽きずに――仲間にそんな扱いをするとは……」

 

「万死に値する」

 

 オレがそう宣言する瞬間にムザンが素早くオレの目前から逃げていった。

 

「(逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ!!)」

 

「(消される消される消される消される消される消される!!)」

 

 オレの姿、怒りに悟った自身の死の運命から逃れようとムザンは全力でもがく。だが

 

「〝竜巻〟!!!」

 

 オレは翼を振るう事で――竜巻を発生させていた。

 その竜巻がムザンを容赦なく呑み――彼を激しく振り回しながら空へ飛ばしていく。

 

「うぎゃあああああ!!」

 

 激しく振り回されているムザンは情けない叫びをこぼしながら苦しまれていた。

 

「ああ――……あれ?」

 

 叫んでいたムザンは我に返った。彼は今、竜巻を抜いて空へ浮かばれていた。

 

「何なんだ!!――っ!!」

 

 混乱しているムザンだが、何かを感じ取り視線を向けると――

 

 オレの口が赤く光っていた。

 

「!!!」

 

 ムザンも目を大きく見開き、冷や汗を流す。そして――なんとか逃れようとバタバタしていた。その様は本当に無様だった。

 

「〝熱息〟!!!」

 

「来るな来るな来るな来るな来るな来るな」

 

「来るなぁぁぁぁぁあ!!!」

 

 無様に情けなくそう叫んだムザンが〝熱息〟に呑まれ――消滅した。完全に。

 

「……汚え花火にさえ、なる価値はねぇな」

 

 その景色に竜の姿から人型に戻っていったオレはそう言い捨てた。

 

「…」

 

 そして、場を見渡してみると――この場に立っているのは暴獣海賊団の者達だけだ。

 ムザン海賊団の海賊達は倒され、地に横になっていた。

 それを確認できたオレは皆に向かって宣言した。

 

「――お前らぁ!!」

 

「この戦争!!」

 

「オレ達の勝利だぁ!!!」

 

「「「オォォォォ〜!!」」」

 

 オレの勝利宣言に皆も勝鬨を上げた。

 

 

『暴獣海賊団 スサノオ

  VS

 ムザン海賊団 ムザン』

 

『無限城

「ペストの部屋の戦い」

  ↓

 ギビマ

「荒地の戦い」』

 

『勝者 スサノオ』

 

 

――〝ギビマ〟で勃発された暴獣海賊団とムザン海賊団の戦争は暴獣海賊団の勝利で幕を下げた……

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