ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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漆黒王国編
第51話〝モンプル〟


 〝エレジア〟を出港した暴獣海賊団はそれからも如何なる島々に上陸し、そこで冒険してきた。

 そうし続けてしばらく、約半年。

 暴獣海賊団は今――

 

「「「ヒャッホ――!!」」」

 

 プールに飛び込み、身体を浸からせていた。

 

「あ〜……生き返るわ〜……このプールは〜」

 

「海じゃねぇが、ここもいいね!」

 

「ハハハ!!このアトラクションはすげぇ!!――もう一度行かなきゃ!!」

 

 ある者はプールに浸かる事での開放感を楽しんでいて、ある者はプール専用のアトラクションを楽しんでいた。

 その事からプールを経験してきた暴獣海賊団が使っているプールは普通――常識中ではないのが分かるだろう。

 ――聞けば、ウォータースライダー等のアトラクションが用意されているのはもちろんだが、その機能もまた常識のとは格が違うそうだ。

 例えば、ウォータースライダーでは常識に従って、ある程度の距離を設定されているところをあえて倍しちゃった事で使用する際の味わう気分を倍以上にできるのだ。

 そもそも――そこは何を血迷ったのかプールのアトラクションの更なる進化を求めていて、常識を破る程に発展してきたのだ。

 だが、だからこそ――新鮮な爽快感・開放感を味わえられる、それこそ「水の楽園」と謳われた国!

 それが――〝モンプル〟である。

 その〝モンプル〟で暴獣海賊団――オレ達はバカンスを過ごしていたのだ。

 

「……楽しそうだな。お前ら」

 

「す、スサノオさん……」

 

「…」

 

 ――なお、このオレは……座りながらプールに足を浸らせるだけに留まっていた。

 そんなオレの後ろにフドウとジャックが警護として立ち並んでいた。

 ジャックはプールに入れられないオレに気を遣っていて、フドウも何も言わないが……少し険しい表情を浮かべていた。

 ――しょうがないだろう。このオレを含む〝悪魔の実〟の能力者は海水じゃなくても「水が溜まっている場所」には弱いのだから……

 それはそういう場所に入るだけでたちまち全身の力が抜けて能力が使えなくなり、身体が沈んでしまうからだ。

 一応、体の一部が浸かる程度なら影響がない為にオレは足を浸らせる事でプールを楽しんでいた。

 

「お兄さん!フドウもジャックも!」

 

 そんなオレ達に近付いてくる影が1つ――ヤマトだ。

 

「おぉ……うるティ達とはどうだったんだ?」

 

 オレがヤマトの後ろに視線を向けてみると――うるティとページワンがボールの投げ合いをしていた。なおうるティが何か燃えていて、その勢いにページワンが押されていた。

 

「あはは……とりあえず、僕のチームが勝ったんだ。だからうるティは悔しくて、次は勝つように猛訓練しているんだ」

 

 その様子に関してヤマトは苦笑しながら、そう説明した。

 ――実はヤマトのチームとうるティのチームがバレーボールの試合をやっていたのだ。

 そんで……結果はヤマトのチームの勝利だった。敗北してしまったうるティは勝利を目指して猛訓練しているのだ。

 

「そうかそうか!」

 

 オレはヤマト達がいずれにせよ、楽しんでいるのに笑みを浮かべる。

 ふとオレはヤマトの姿を凝視してみる。

 彼女は華々しい成長をしていた。彼女が性別を「男」だと偽るのを止めたのが拍車にかかったからかもしれない。

 そして、うるティとページワンのようにオレが最初に出会った頃は幼かった者達を見渡してみた。

 

「しかし……お前らも大きくなってきたな……」

 

「特に――アイツ……」

 

 オレが特に凝視しているのは――まだ年若いが、子供と大人の中間でありながらもなかなかの美貌を持っている青緑色の髪の少女の姿だった。

 

 ――小紫だ。

 

 オレが出会った頃の幼く弱かった少女もまた成長していた。まだ大人に至らずとも、それは見る者が息を飲む程に美しく成長していた。

 彼女はその美貌により、男女関係なく多くの目を釘付けにしていた。そういう視線がオレにはなぜか――気に食わなかった。

 

「……だが、いつもならああいう視線が気にならない筈なのに、今はこうまで気になっているのはなぜなんだ?」

 

「!!――それはお兄さんがね――小紫を見るのはオレだけでいいと思っているからだよ!」

 

「……そうなのか?」

 

 自身の感情に疑問符を浮かべるオレに目をキラリとしたヤマトがそう口にしてきた。その内容にオレも理解できずに首を傾げた。

 そんなオレにヤマトが鼻息を荒くしながら問いかける。

 

「お兄さんの目から見ても小紫はどう!?」

 

「……うむ、小紫は美しくなったな……そう――華のように」

 

「おぉ!」

 

 オレが小紫をそう褒め称えるとヤマトが目を輝かせてきた。

 

「だから――彼女には戦いができるのだろうか?あの美貌に戦う気をなくす敵もいるかもしれねぇし……」

 

「だぁぁぁ!!」

 

 だが、オレのズレた言い草にヤマトがズッコケた。そして、素早く頭を上げたヤマトが確かめた。

 

「そ、それだけ!?」

 

「?他にあんのか?」

 

 その答えにヤマトがなぜか不満気な様子をみせていた。

 

「……もぉ!!」

 

「!?ヤマト?」

 

 オレがヤマトのその様子に疑問符を浮かべてしまう。

 

「……さすがのスサノオさんもそういう分野では鋭くねぇのか」

 

 オレの新たな面を見た気がしたジャックをよそにフドウの方はオレの様子を凝視しながら思案に耽る。

 

「(……いや、あれはやはり…「鈍感」……でもないようだ……)」

 

 なかなかの分析力を持つ上でスサノオを長らく見てきたフドウだからこそ――「それ」には気付けていた。

 しかし、フドウは「それ」をオレに教える事は愚か――口にせずに事態を見守ると決心する。

 

          ●

 

 浸ってきたプールから上がってきた小紫――私はマリアからタオルを受け取った。

 

「はい、タオルよ」

 

「えぇ……悪いわね。あなたはプールに入れないのに」

 

「あはは!そんなつまらない事はよせなのよ!」

 

 私達は穏やかに会話している中、私はふと周囲の様子に気付く。

 

「しかし、なんか……この私に注目しているわね」

 

「それは小紫の美しさが皆を魅せられているのよ」

 

 キッパリとそう口にするマリアに私は少し眉をひそめる。

 

「……あなたも美人と思うけど?」

 

「そりゃ私は美人だろうよ……でも、あなたの美しさには負けるわ」

 

 そう誇らしげに言うマリアに私も呆れ混じりにため息をつく。

 

「……しかし、少し鬱陶しいわね」

 

「そうねぇ……」

 

 多くの視線に私は眉をひそめ、マリアも同感した。

 

「……スサノオさんも見ているけど、そっちはどう?」

 

 突如イタズラを企むような笑みを浮かべるマリアの言葉に私も一瞬スサノオに視線を向けてみた。確かに彼は私を凝視していた。

 ――スサノオが自身を見ている状況に私は不思議な事に負の感情を抱えずに、むしろ誇らしげな気分になっていた。

 それどころか、スサノオのたくましく筋骨隆々な姿に私の胸内に何かが湧き出てきた。

 

「……別に……ただ、何でかしら……悪い気がしないわね……」

 

「……へぇ……」

 

 頬を少し赤くする私の様子にマリアは目を細め妖しい笑みを浮かべていた……

 

 とにかく、思いがそれぞれどうであれ暴獣海賊団は〝モンプル〟でのバカンス――プールを楽しんでいた。

 ――だが、そこに

 

「「「!?」」」

 

 突如大きな音が響かれた。

 

「……何事だ?」

 

「見てくる」

 

 素早く立ち上がりながら状況を把握しようとするオレにそう言ったフドウは自身の翼を振るわせ――空へ飛ぶ。そして

 

「――敵襲だな。艦隊が攻めてきている……どこかの国のだろうな」

 

 見てきた事で事態をほぼ把握したフドウからの説明に眉をひそめるオレは口を開く。

 

「……どこかの国だ?」

 

 オレが口にした疑問に答えるかのように他の所から大声でそう叫ばれた。

 

「――ソード王国だぁ!!」

 

「ソード王国が攻めてきたぞぉ!!」

 

 その内容に人々が騒がしくなった。

 

「ソード王国!?」

 

「あのソード王国だって?」

 

 〝モンプル〟を攻め込んできたのがあのソード王国である事実に人々は狼狽えていた。

 何せ、そこは――悪名高い危険な国であるから……

 

 

ソード王国――

 

そこは〝偉大なる航路〟後半の海〝新世界〟にある国の事を指す。

世界政府加盟国である上に世界会議参加権利を持っている――なのだが……薄暗い噂が絶えない上に他国に侵略を仕掛け続け、領土拡大を企んでいる軍事国家である。

〝ワノ国〟程ではないが、内情が知らされていない謎多き国家としても知らされている。

 

 そのソード王国が〝モンプル〟を侵略しようと攻め込んできたのだ。

 情けと容赦を知らない国によってもたられるであろう惨禍に人々が恐怖するのも無理ではないだろう。

 

 

――だが〝モンプル〟にいる人々、そしてソード王国も知らなかった……

 

 

――ソード王国が侵略を仕掛けている〝モンプル〟には――〝竜〟と彼が率いる獣の群れが滞在している事を……

 

 

「騒がしいな」

 

「そりゃ、攻撃を受けているからな……」

 

「……だが、だからといって――オレ達が大人しくする訳がねぇ……だろ?」

 

「そりゃそうだろ……だが、船長の考えを聞いてみねぇとな」

 

「……スサノオさん?」

 

 人々が避難している中、暴獣海賊団の海賊達は――逃げず、むしろ胸内に戦意を燃やしていた。

 だが、一応船長の意向を聞かなければならない――

 そう皆がこのオレに視線を向けながら放たれるであろう言葉を待っていた。

 そんな皆に向かってオレは口にし始める。

 

「……ソード王国とか、知らんが――」

 

「どういうつもりなんだろうが――オレ達のバカンスを邪魔しやがったんだ……」

 

「――ならよ!!オレ達に吹っ飛ばされても文句は言えねぇよなぁ!?」

 

 オレがそう演説しているうちに皆も好戦的な笑みを浮かべ、気合いを入れる。

 

「――お前ら!!ソード王国を叩き潰すぞ!!」

 

 オレがそう宣し、それに皆も応え雄叫びを上げた。

 

「「「オオ〜ッ!!」」」

 

          ●

 

「「「うわぁぁぁ!!」」」

 

 〝モンプル〟の民達、旅人達も逃げ惑っている中、彼らに攻撃を加えようとしていた者達がいた。

 ――ソード王国の兵達だ。

 

「ギャハハハ!!」

 

「オラオラ!!」

 

「あららら〜逃げ惑って、かわいそうに……ハハハ!!」

 

 逃げ惑う人々を兵達は下衆な顔を浮かべながら弄ぶかのように攻撃していた。

 彼らは――侵略を楽しんでいたのだ。人が恐怖、苦痛、絶望――負の感情が込められる表情を浮かべるのを見て楽しむのだ。

 悪名高い国の兵だけはあって、戦士である筈の兵達は――ゲスだった。

 横暴を極めていた彼らは誰にも止められずに暴れ回り、人々が苦しめられた。

 

 

――だが、彼らは侵略を楽しむツケはすぐ払われ、結果論としても人々が救われた。

 

 

「逃げろ逃げ――おわぁ!?」

 

「泣き叫――ぐがぁ!?」

 

「「「!?」」」

 

 暴れ回っていた兵達が突如吹っ飛ばされた。

 その様に攻められかけた人々、そして吹っ飛ばされなかった兵達も目を見開く。

 

「何だ!?」

 

 突然の事態に動揺した兵達にそれは姿を現す。

 

「……何だぁ!!テメェらは!?」

 

「〝モンプル〟の兵達……でもないようだが!?」

 

 そう狼狽えている兵達に向かって言い放たれる。

 

「オレ達は暴獣海賊団!!」

 

「バカンスを邪魔しやがったテメェらを叩き潰しに来た!!」

 

 そう宣したオレ達に兵達は動揺を収め、代わりに怒りをみせる。

 

「……あぁ!?バカンスぅ!?」

 

「ふざけんな!!たかがバカンスでオレ達を叩き潰すのかよ!!」

 

 たかがバカンスで自身達に手を出そうとする事実に腹立った兵達はオレ達にも攻撃を加えようとする。

 

「怯むなぁ!!お前達!!」

 

「そうだ!!オレ達は栄えあるソード王国の兵士だぞ!!」

 

「そうだ――それにオレ達は「漆黒の使徒」だぞ!!誰だろうが敵じゃねぇ!!」

 

 そう雄叫びを上げた兵達――「漆黒の使徒」が攻撃を開始した。

 

 ――そうだ。誰だろうが、オレ達に叶わう訳が……!

 

「〝焔霊〟!!!」

 

「〝獅子の爪〟!!!」

 

「〝激疾走〟!!!」

 

「〝ワン肘銃〟!!!」

 

 暴獣海賊団からの先陣を務めた明日郎、シシリアン、ペドロ、ページワンがそれぞれ技を放ち、兵達を叩き潰した。

 

「「「ええ〜〜っ!?」」」

 

 「漆黒の使徒」が太刀打ちできずにあっけなく倒されたという事実に心から驚愕した兵達に残りの海賊達も攻め込んでいった。

 

 

――それは暴獣海賊団とソード王国による戦争の前哨戦の開戦であった。

 

 

「つ、強すぎる……」

 

「「「ウオォォ〜〜ッ!!」」」

 

 ソード王国の兵達が死屍累々になっていて、その上に立っている暴獣海賊団は勝どきを上げていた。

 

 

――まるで勝負にならず、暴獣海賊団の勝利に終わっていた……

 

          ●

 

ソード王国

 

「何?〝モンプル〟侵攻軍との連絡が絶たれただと?」

 

「はっ……まさかとは思いますが……」

 

 灯りが少なく暗い部屋で身分が高いだとみられる男にその報告がもたされた。

 その報告にしばらく思案に耽る男が口を開く。

 

「……一応、確認を送れ」

 

「まぁ、〝モンプル〟に対しては基準より少しだが弱い軍団を送ったしな……」

 

「はっ」

 

 その下された命にお辞儀した者はそれを果たそうと去っていく。

 

「……まぁ、何だろうが――我がソード王国の進行が止まる事はない」

 

 微かな懸念を感じた男も不敵な笑みを浮かべる。

 

「全ては我々の上だ」

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