ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第55話〝実験体〟

「ハァァァ!!」

 

 テゾーロさんはモリスに向かって先に打って出ようとした。

 血気盛んな者が多い暴獣海賊団の中でも思慮深い者であるテゾーロさんにしては少々性急すぎるとも思われる攻撃――なんだが……実はそれには彼のある意図が秘められていた。

 

「(仮にもソード王国の重鎮の1人が――この重要な施設にただ丸腰で来るとは思えない――)」

 

「(だからこそ、ここは先手を打つ!!)」

 

 そう判断したテゾーロさんがモリスを黄金を纏う拳で叩き潰そうとするが……攻撃されかけている筈の彼はなんと慌てずに平然としていた。

 

「私との戦いを所望しているところ、悪いんだが――」

 

 自身に迫ろうとするテゾーロさんの姿にモリスはただ――指でパチンと鳴らす。

 

「「「!!」」」

 

 あと一歩でモリスを叩けたところだったテゾーロさんは何かに気付き、突如攻撃を止めながら後ろに下がっていった。

 その途端にモリスの前には何かが降り立ってきた。それに私達は目を見開く。

 

「!……人……なのか?」

 

「……〝悪魔の実〟の能力者?」

 

「……いえ、違うようです――〝ミンク族〟でもないようですが……」

 

 それは4人の――獣人……らしき者達だった。

 ――タカ、ライオン、クワガタムシ、サイ……それぞれの生き物が人の形をとっている――ように見受けられた。

 その姿は一見〝悪魔の実〟の能力者、そして〝ミンク族〟としてもみられるようだが――どうにも違う。

 それどころか、人の手で作られているように見受けられていた。その証拠として、彼らの身体には――手術跡のようなものも存在していた。

 その姿の異質さに眉をひそめる私達にモリスが誇らしげに口を開く。

 

「あぁ、紹介しよう……これこそが私の作品――の一部なのだよ」

 

「……作品?」

 

 その言葉に目を鋭くする私達にモリスは一応興味を持ってくれたんだと気を良くし、饒舌になっていく。

 

「私はね――もしも……もしも人が〝悪魔の実〟を食わずに獣の力を得られるだとしたら……?」

 

「そう考えた私は研究に研究を重ねてみたよ」

 

「その一応でだが……結果が――これなのだよ……!」

 

 そう言い放つモリスが4人の獣人を紹介した。

 

「ギャギャ」

 

「ガルル」

 

「キュッキュッ」

 

「シュニーン」

 

「こうなった過程は省略させてもらうが……人に獣の血とか、肉体のを移植してみた事で見ての通り、できあがりさ!」

 

「「「…」」」

 

 獣人達――実験体達、そして自身の研究に関して饒舌になっているモリスの姿に私達は嫌悪感を感じていた。

 

「……全く、科学者って奴はそういうもんかね」

 

 テゾーロさんがそう呟いたのを聞き逃さなかったモリスは気を悪くせずに言葉を続ける。

 

「科学者って奴は探究心を満たす為に何でもせずにはいられない生き物なんだよ」

 

 そう言いきるモリスが浮かべていたのはそれは気持ちいい笑顔だった。

 その笑顔、言葉に何も言えなくなった私達の様子にもやはり気にしないモリスは手を叩く。

 

「さて、世話話はここまでにして――」

 

 モリスは実験体達に指示を出す。

 

「実験開始だよ」

 

 モリスがそう宣言した途端に実験体達が私達に向かって襲いかかった。

 

「!く……」

 

 そのうちの2人、タカとライオンの実験体達がテゾーロさんに襲いかかり、彼も黄金を纏った両腕で攻撃を防ぐ。そして

 

「……!小紫さん!ブラックマリアさん!」

 

 残りの2人もそれぞれ私とマリアに襲いかかろうとする。

 クワガタムシの実験体に対してはマリアが、サイの実験体に対しては私が打ち立てようとする。

 

「……!黄金を纏うパンチでも効かないのか!」

 

「硬い……!」

 

「私の剣が通らない……」

 

 実験体達の意外の強さに苦戦を強いられてしまう私達の姿にモリスも満足気にする。

 

「うんうん、悪くはないね〜」

 

 自身の実験体達の出来様に満足しているモリスも突如顔をしかめてしまう。

 

「――だが!足りない!足りないんだよ!」

 

「もっと……もっと!改造すべき余地がまだまだある筈!!」

 

「なのに……今の私の腕ではその余地さえまでにも手を回せない――限界がある!!」

 

 自身の探究心を完全に満たせられない無力さに唇を噛んでいるまでに悔しがるモリスは突如笑みを浮かべる。

 

「だからこそ――何としてでも〝オペオペの実〟を手に入れてみせる!!」

 

 モリスはある〝悪魔の実〟――〝オペオペの実〟を渇望していた。

 

 

〝オペオペの実〟――

 

超人系の〝悪魔の実〟の1つで食べると「改造自在人間」となる。

その能力は展開する球/ドーム状のエリア内は自由に操作する事が可能で移動、切断、接合、電撃等一般的に外科手術で必要なあらゆる行為を自在にできるようになる。

この能力による移動や切断や接合は通常の外科手術とは異なり、瞬間的に入れ替えたり、違う生物同士で身体をくっつけたり、逆にバラバラにした状態でも生かしたりも出来る超常的な改造能力である。

これにより人間の人格を入れ替えることすら可能。

 

――なお、〝オペオペの実〟はある事さえも可能な為に〝究極の悪魔の実〟としての呼び名が高い。

 

 あまりにも改造にあつらえ向きな能力を宿っているその実をモリスが渇望しても無理ではないだろう。

 

「だからこそ――あらゆる実が届いてきても、私は口にしななかった……!」

 

 故に彼は〝オペオペの実〟以外の実を決して口にはしない。それ程にその実を待ち望んでいるのだ……

 ――だが、彼は知らない。渇望している〝オペオペの実〟はもう既にある少年に食わせられていたという事を……

 

 そんなモリスにさえも視線を向けない程に私達は実験体達に苦戦を強いられているも

 

「――ナメないで!!」

 

 そう言い放ったマリアは下半身をロサミガレ・グラウボゲリィに変身させ

 

「〝マリアネット〟!!!」

 

 マリアから放たれた糸が実験体の身体を拘束するも――

 

「キュッキュッ!」

 

 それは一時的で実験体は糸を破り剥がしてきた。だが、それはマリアにとっても予想内。

 実験体に向かってマリアは足を全て伸ばしながら自身の身体を回転させて――空中を飛んでいった。

 

「〝マリアUFO〟!!!」

 

 マリアの8本全ての足が丸ノコのように実験体の身体を刻み込む。

 

「ギギュゥゥゥ!?」

 

 身体を刻み込まれた実験体は苦しみ始めた。

 ――クモに変身しているだけはあって、マリアの足先には猛毒が塗られているのだ。それが実験体へのダメージを悪化させているのだ。

 

「ギギギュ!」

 

 それでもなんとか立ち向かおうとする実験体にマリアは冷静に薙刀を振った。その薙刀から何かが飛んでいた――それは小型爆弾だった。

 

「〝炎上マリア〟」

 

 その小型爆弾がまだ糸が貼られている箇所が存在している実験体に当たった瞬間に爆発が起こった。

 

「ギ…ギュ……!」

 

 その爆発により新たに火傷を負わされた実験体は力なく倒れた。そんな様にマリアは妖艶に笑う。

 

「――私をナメんじゃないわよ?」

 

          ●

 

 実験体からの攻撃に私は踊るような体さばきで動きながら刀で防ぎ続けてきた。

 

「……フン!」

 

 私は後ろに下がり――居合斬りの構えをとっていた。

 

「シュニーン」

 

 サイの角を突きながら駆けてくる実験体に対して私はしかし目をつむる。そして思い浮かぶ。

 

――刃こぼれは剣士の恥

 

 あんな〝ワノ国〟でも確かに存在していた本物の〝侍〟として知らされている亡き霜月牛マル様からのスサノオへのご教示は私にも伝われていた。

 そのご教示には私もハッとさせられていたものだ。

 そういう心構えをかける事で強靱な精神力を形作り――それが凄まじい力を生み出せるではないか……私はそう思ったものだ。

 ……それに覇気とは――「意思の力」。

 

「(……ああいう堅きものを刃こぼれを犯さずに斬り捨てるには――強い覇気……すなわち意思が必要)」

 

 そう考えた私はふとまだ試行中で実戦には出していない技の事をも思い浮かんだ。

 

「(……今ここで出すか)」

 

 そう決意した私は刀を握る手に全力――全ての意思そのものを込めていく。

 立ち向かってくる実験体に向かって私の目がゆっくり開かれていく。

 

「(――斬る)」

 

 その目は鋭くて――冷たかった。

 まさに、ついに近付いてきて、攻撃を加えようとする実験体に私の刀が勢いよく放たれた。

 

「〝鎌鼬〟!!!」

 

 その一閃から――烈風が吹いていた。

 

「シュ?」

 

 何かが起こったのかを理解していない実験体が首を傾げた途端にその身体が真っ二つにされていた。

 

「シ……ュ……?」

 

 自身に起こった事態をまだ認知していない実験体はそのまま――それっきり動かなかった。

 その様を見届けた私は自身の刀を確認してみた。

 

「――よし、刃こぼれはない」

 

 一欠片さえもこぼしていない、見事に真っ黒な刀に私は満足した。

 

「それに……「火」、「雷」に続いて――「風」をもマスターできた」

 

 そして、狐火流による火の剣と「エレクトロ」に続き――「風」をもマスターできたのを確認できた私はますますの満足に笑みを浮かべる。

 

          ●

 

「ギャギャ!」

 

「ガァァァ!」

 

 2体の実験体からの猛攻に打つ手もなく、ただやられている――ようにみられるテゾーロさんだが……実は彼はある事を狙っていた。

 

「!!(ここだ!!)」

 

 さっきからテゾーロさんが探していた2体ともそろって撃破し得るのに向いているであろう立所を見つけられた彼は素早くそこに移動しながら――拳を構えていた。

 その思惑に気付かない実験体達にテゾーロさんは全力を込めた拳を勢いよく放った。

 

「〝黄金爆〟!!!」

 

 その拳、凄まじい熱は実験体、その後ろの実験体をも吹っ飛ばしていった。

 

「「ゲポァ!?」」

 

 その〝黄金爆〟を直で受けた2体の実験体は地に叩きつけられ、そのまま動かなくなった。

 その様に一瞬視線を向けるも、ゆっくり背を向けるテゾーロさんは重々しく――呟く。

 

「……どれだけ強くても――」

 

「「考える」能力がないんじゃね……」

 

          ●

 

「……なかなかやるね〜!」

 

 自身の作り出した実験体達が撃破されたのにも関わらず、動揺さえもしないモリスはそれどころか感心していた。

 

「それじゃ!こっちはどうかな?」

 

 そう言葉を続けるモリスが指を鳴らす途端に新たに3体の実験体が現れた。ただ、その姿は――

 

「これらはね――オリジナル〝悪魔の実〟と〝人造悪魔の実〟の能力者にさらに獣の力を入れてみた者達だよ」

 

 なんと、オリジナル〝悪魔の実〟と〝人造悪魔の実〟のいずれにせよ、もう既に獣の力を得ている者達に更なる獣の力を移植するというものだった。

 またしても、常識外な試みをモリスはやり遂げていたのだ。

 そして、この場に姿を現したのはコンドルの能力者にチーターの力を移植された個体、カマキリの能力者にゴリラの力を移植された個体、バッタの能力者に象の力を移植された個体の3体であった。

 さすがにその姿の異様さは先程の実験体とは比にならない程に不自然さを極まっていた。

 

「さぁ!今度はこれらと戦ってみたまえ!」

 

 モリスがそう宣言した途端に3体の実験体がそれぞれ私達に襲いかかろうとする。

 ……だが――

 

「〝火風〟!!!」

 

 モリスに怒りを激しく燃やしている私のさらに鋭くなった刀が「火」と「風」を纏う事で生み出された激しい炎の斬撃が――カマキリとゴリラの個体を一刀両断した。

 

「〝炎上マリアUFO〟!!!」

 

 燃えている糸を纏いながら空中を回転しているマリアの足先が――バッタと象の個体を真っ二つにした。

 

「〝黄金の業火〟!!!」

 

 構えていたテゾーロさんの勢いよく放った拳とその凄まじき熱が――コンドルとチーターの個体を吹っ飛ばした。

 

「え?」

 

 しかも、それだけに留まらず――吹っ飛ばされたコンドルとチーターの個体の身体がモリスをも巻き込んで――壁にまで叩きつけられた。

 

「がは……」

 

 その衝撃で意識を失ったらしいモリスは実験体と共にそのまま――倒れ込んだ。

 

「……やったな」

 

 モリスの思わぬ形での撃破を確認した私達は息を吹き返した。

 

「……随分と――気に食わなかった奴でしたね」

 

「全くね」

 

「――どこかの自称芸術家といい……こういう奴はいるんだな」

 

 モリスのやり遂げてきた行為、それを実行する精神に苦虫を噛み潰したような顔になる私達だが。

 

「――しかし!吹っ飛ばしてやったし!スッキリしただろう!」

 

「うん」

 

「えぇ!」

 

 自身達をすごくイラつかせていたモリスを吹っ飛ばしてやった事で私達は気を良くし――余裕ができた事で任務を思い出した。

 

「――おっと!我々には仕事があったんだ!」

 

「「……あ、そういえば」」

 

「――さっさと仕事に戻ろう!」

 

「「えぇ」」

 

 そう私達は和気藹々と担当する任務――まずは資料等の探索を始めようとする――が。

 

ピクリ――

 

 倒れ込んでいた筈のモリスの指が微かに動いた――

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