ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第57話〝紅い狂喜〟

 ソード王国の中心として、禍々しくながらも――確かに荘厳に建てられている城。

 その城は「世界支配」という野望に燃えているソード王国にふさわしい外見をしていた。

 その荘厳にして禍々しさはそれを目にした敵対者の戦意さえを奪われてしまうだろう……仮に攻めにやってきても、そう安々と破られはしないであろうという程の堅固さを誇っている――そう思わせられていた。

 だが、その城に襲来者――海賊が突如攻めてきた。

 城に滞在している兵士達も滞在場所――すなわち城を守るという役目を果たさんと海賊に対して立ち向かっていった。

 そんな彼らの様子には普段ならばみせていた横柄さも存在せず――それどころか、必死そうにも見受けられていた。

 ――無理もない。ソード王国の中心だといっても過言ではない城が襲撃を受けているという余程の非常事態が今まさに起こっているのだから……

 ――だが、ソード王国の者達の中にはそんな非常事態が起こっているのにも関わらずに――それどころか、なぜか笑みを浮かべている……その状況を心から楽しんでいる者が、それも数人も存在していた。

 その中での1人こそが――

 

「アハハ!カモ〜〜ン♪」

 

「ほざけナリ!」

 

 晴れやかに笑っていながら待ち構えているヴァニカに向かってうるティがイラつきのままに立ち向かっていった。そしてヴァニカに近付いた途端にジャンプした。

 

「お」

 

「くらえナリ!」

 

 そう叫んだうるティは自身の背を反らした――自身が得意している技への準備に入ったのだ。

 彼女は頭突きを得意にしているのだ。その威力は人の頭蓋骨にヒビを入れるか入れないか――といわれる程だ。

 とにかく、うるティは得意の頭突きでヴァニカの頭を叩き割ろうとしていた――が。

 

「あは♪」

 

 自身に対しての攻撃が迫ろうとするのにヴァニカは慌てずに平然としていて――笑みを浮かべていた。そしてうるティに向かって手を掲げる。

 

「〝ウル頭「〝紅い噴水〟!!!」!?」

 

 自身の背を勢いよく丸める事で頭を突こうとするうるティにヴァニカの手から赤い水が激しい勢いで放たれていった。

 それを直で受けたうるティは打つ手もなくその勢いにより壁にまでもただ叩きつけられた。

 

「がぁ!!」

 

 その衝撃に苦悶の表情を浮かべたうるティがそのまま床に落ちたも素早く立ち上がってくる……ただ、少しよろめいているが。

 

「なんのぉ!!――しょっぺぇな!!この〝血〟は!!」

 

 自身の身体にかかっていて、しまいには口中にまでも少し入ったらしい赤い水――〝血〟にうるティは顔をしかめてしまう。

 そんな彼女にヴァニカは高笑いする。

 

「――キレイでしょぉ!?私の紅い、紅ぁい――〝血〟はぁ!!」

 

 

ヴァニカ――

彼女は〝チチチチの実〟を食った「血液人間」なのだ。

彼女の身体から血液が生成されるのだ。

彼女はその血液を操り、武器としている。

その応用方法は例えば、超高圧の血液を噴射させて対象物を破壊するぐらいだ。

 

 自身の能力、〝血〟が誇らしいのか高笑いしているヴァニカは今度はうるティを煽ってみる。

 

「次はどう来る〜?それともぉ〜」

 

「終わり〜?」

 

 そう笑みを浮かべるヴァニカ。その笑みはうるティに対する嘲笑だとみられても無理はなかった。

 

「――ナメるなナリィ!!」

 

 その笑みにますますイラつき、そう雄叫びを上げるうるティの身体が変わっていく。

 ――彼女は自身の〝悪魔の実〟の能力を発動した――パキケファロサウルスに変身したのだ。

 その姿にヴァニカも肝を抜かれ――しかし、無邪気に興奮した。

 

「わぁ!――君も能力者なんだ!それも――「動物系」〝古代種〟なんだね!」

 

 そして今までの興奮的な姿から想像できない程に理性的に思案に耽る。

 

「――この場合は……〝回収〟かなぁ〜?……でも、殺さずに部下にしたいしぃ〜」

 

 しばらく険しい表情を浮かべているヴァニカだが、なかなか決論を出せずにいるのに困り果てて、しまいには頭を勢いよくかき出す。

 

「ん〜!悩むなぁ〜!」

 

「何を固まってやがるナリ!」

 

 そんなヴァニカの意図等を知る由もない……まぁ、知ろうとは思うつもりがないうるティは彼女に向かって駆けていった。

 ――何を考えているのか分からないが……わざわざ晒してくれている隙を見逃す訳にはないナリ!

 そう考えたうるティは自身の頭をヴァニカに合わせて向けながら駆ける。だが。

 

「――とりあえず!ここはぁ!――拘束すっか!」

 

 結局決論を出せなかった故にとりあえず悩みを一旦保留したらしいヴァニカは両腕を広げて、そこからうるティに向かって多量の血が放たれてきた。

 

「おとなしく捕まえてね♪」

 

「断るナリ!」

 

 それはそりゃ気持ちいい笑みを浮かべたうるティのその言葉にそう返したうるティは自身の動きに手を加える事にした。

 

「!」

 

「〝ウル頭銃群〟!!!」

 

 うるティが放った連続的頭突きに襲いかかる多量の血が驚異的な勢いで吹っ飛ばされていった。

 

「!!」

 

 その事態につい目を見開くヴァニカの目前にうるティが近付いてきた。

 

「くらえナリ!」

 

「……あは!」

 

 トドメばかりに攻撃を食らわそうとするうるティにヴァニカも笑みを浮かべた――歓喜ながらも狂気的な笑みを。

 

「〝ウル頭銃〟!!!」

 

 うるティの頭部がヴァニカを粉砕しようと勢いよく突き出され――

 

 鋼の音がした。

 

「!?」

 

「――〝紅いケダモノの手〟」

 

 ヴァニカを突き出す筈のうるティの頭部は――赤い怪物の手にもみえる手で止められていた。

 ――ヴァニカは自身の両腕に血で怪物の手を形作っていた。その手がうるティの頭突きを止めたのだ。

 そして、頭突きを直接止めた手とはもう片方の手が大きく振り上げられていた――その爪先は鋭く尖っていた。

 

「!!」

 

「あっは♪」

 

 それに勘付いたうるティが素早く後ろに下がろうとするものの、ヴァニカの勢いよく振り下ろされた手の爪が彼女の身体を切り刻んだ。

 

「ぐぅ!!」

 

「あっは♪――いいね!君は!」

 

 切り刻まれた傷により痛むうるティに大分高まってきている興奮を抑えられなくなったヴァニカは宣する。

 

「こうなったら!――イクね?イッちゃうねぇ!?今の私の全力で♡」

 

「!!――上等ナリ――」

 

 ヴァニカからの挑戦にうるティも負けじと威勢を張ろうとするも

 

「そこまでです」

 

「「!!」」

 

 突如うるティの前に影が現れていた。その人物こそが――

 

「!」

 

「あぁ!?何のつもりだナリ!――キサメ!!」

 

 ――うるティと共にヴァニカのいる広間に入ったにも関わらず、さっきから積極的に動かずにうるティとヴァニカの戦いをただ凝視していたキサメだった。

 そんな彼が今ついに動き出そうとしていた。

 自身の威勢を突如止められたうるティからの文句にキサメは口を開く。

 

「――十分だからです」

 

「何?」

 

 その言葉の意味を理解できず、眉をひそめたうるティにキサメは言葉を続ける。

 

「君は十分戦ったでしょう?だから、次からは私の出番です」

 

 そう宣したキサメにうるティは納得せずに噛みついていた。

 

「あぁ!?ふざ「私達の任務は何です?」け――何?」

 

 だが、うるティからの噛みつきを気にしないキサメは喋り続ける。

 

「我々は――ソード王国を叩き潰しに来たんです」

 

「その為には――我々が担当する任務を遂げなければならない」

 

「すなわち――ソード王国の幹部陣の1人であるヴァニカを撃破する必要がある」

 

「だが、君のそんな様子では難しいだろう」

 

「ならば――私の出番です」

 

 キサメからのもっともな説明につい口を閉じたうるティは唸ってしまう。

 そんな様子にキサメもそれにと言葉を続ける。

 

「一応、君にはここだけ好き勝手させてきたんだ。これぐらいはいいでしょう?」

 

「ぐぅ……」

 

 ――今までキサメはうるティと共にヴァニカと戦わずに観戦していたのは……彼女の意思を尊重したからだ。

 人の言葉を素直に聞かない程に無茶苦茶なうるティにキサメはそれならば、いっそ彼女に好き勝手にさせてやろうと判断したのだ。

 そんなキサメにうるティはますます口を閉じてしまう。

 

「それに……」

 

 キサメはそんな彼女からヴァニカに視線を向ける。

 

「この私では――彼女の能力とは相性が良いですからねぇ」

 

 そう口にするキサメの顔には――今までの紳士的な言い草に似合わない程に獰猛な笑みを浮かべていた。

 その笑みにうるティも最終的に納得したのか

 

「――お前よォ!! 負けたらシバキ殺すぞ!キサメ!」

 

「心配無用……ですよ」

 

 うるティからの激励――といえるのだろうか……とにかくそんな言葉にキサメは笑みを消さないまま、そう返す。

 

「私は――強いんで」

 

「――あは♪」

 

 キサメがハッキリとそう言い放ったその言葉に事態を様子見していたヴァニカも笑みをこぼす。

 

「強いんだ!――それは期待できるかなぁ?」

 

「あなたのお眼鏡に適えると思いますよ」

 

 ヴァニカからのその言葉にキサメがそう返した途端にヴァニカが動く。

 

「じゃあ!これからやってみょっか!」

 

「〝紅い噴水〟!!!」

 

 ヴァニカの掲げた両腕から多量の血が激しい勢いで放たれてきた。

 それにキサメは自身の得物「鮫肌」を手にしながら構える。

 

「……フン!」

 

 迫ってきた血の激流をキサメは――なんと、「鮫肌」ともう片方の手でさばき出し――

 

「〝槍波〟!!!」

 

 自身の手と「鮫肌」で編み出した巨大な血の塊をそのままヴァニカに放ち返した。

 

「!?おわっ!!」

 

 まさかの自ら放った血の激流が自身に返ってきたという事態にヴァニカもさすがに慌てて、更なる血を放った。

 だが、その血よりキサメの〝槍波〟の勢いの方が勝っている為にヴァニカからの血の激流を打ち破りヴァニカを貫いた。

 

「がはぁ!!」

 

 吹っ飛ばされ――床に叩きつけられたヴァニカに対してキサメは追撃をしようと駆けていくが……

 

「……最っっっ高!!♡」

 

 それは――そりゃ、すごく楽しげに叫んだヴァニカの身体から今までとは比になれない程の多量の血が湧き出てきた。

 

「!!」

 

「〝紅い海〟!!!」

 

 ヴァニカの逃げ道さえも作らせない程の血の波がキサメを襲いかかる。そして――血の波の中にキサメの姿が太刀打ちできずにただ飲まれていった。

 そして――広間を〝紅い海〟が支配していた。

 

「アハハ!!――……あれ?」

 

 そんな様を目にしたヴァニカは高笑いする――が、異変に気付く。

 

「――私は魚人なのですよ?」

 

 なんと、〝紅い海〟の中へ飲まれていった筈のキサメが何の事はなく、その中――激しい血の流れを上手く泳いでいた。

 ――無理もない。イタチザメの魚人である彼ならば、血の海だろうが――泳ぎ遂げられるだろう。

 

「――これはどうでしょうか?」

 

 〝紅い海〟の中に浮かんでいるキサメは血を掴み――擬似的な海流を引き起こした。

 

「〝海流〟!!!」

 

 その海流がヴァニカを飲んでいく。

 

「おぉ!?――おぉ!?」

 

 激しい勢いの海流にヴァニカも苦悶の表情を浮かべるが――

 

「なんのぉ!!」

 

 負けじとヴァニカの血で怪物の手を形作った両腕を勢いよく振り回す事で海流を打ち破る。しかし――

 

「!!」

 

 ヴァニカは目を大きく見開く。

 もう目前には――キサメが迫っていたからだ。

 

「〝鮫刻衝〟!!!」

 

 キサメの勢いよく振り下ろされた「鮫肌」がヴァニカの身体を切り刻みながら吹っ飛ばしていった。

 勢いよく吹っ飛ばされたヴァニカが壁に激しく叩きつけられた。

 

「あが……」

 

 そのままヴァニカは床に落ちていった。

 

「…」

 

 今のヴァニカの状態に関係しているのか、広間を支配していた〝紅い海〟が減り消えていく中、泳ぎ――それから自身の足で駆けるようになったキサメは素早く倒れ込んだヴァニカの喉に「鮫肌」を掲げる。

 そんなキサメの元にうるティも駆けてくる。

 

「――どうなったナリ!?」

 

「それはこれから確かめる……どうですか?」

 

 キサメからのその問いかけにヴァニカは――

 

「〜〜〜イっっ……ちゃったぁぁぁ」

 

 一見瀕死の状態であるにも関わらず――恍惚な表情を浮かべていた。

 

「――元気そうだなナリ!!おい!!」

 

「おやおや……」

 

 そんな状態のヴァニカの姿にキサメとうるティも呆れてしまった中でも彼女は言葉を続ける。

 

「君達との戦いをもっと続けたい!――なんだけど……身体がもう動かないや」

 

 キサメとうるティとの戦闘をもっと続けたかった為に自身の身体が動けないのを心から残念がっているヴァニカの姿にキサメとうるティは一応ながらの任務成功を悟った。

 

「……とりあえずやったナリ?」

 

「そのようですね」

 

 2人は顔を合わせて、そう会話していた。

 

 

『暴獣海賊団 キサメ&うるティ

  VS

 ソード王国 ヴァニカ』

 

『ソード王国城

「ある広間の戦い」』

 

『勝者 キサメ&うるティ』

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