ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第58話〝悪意の信奉〟

「〝焔霊〟!!!」

 

「〝獅子の爪〟!!!」

 

 明日郎の火の剣とシシリアンの「エレクトロ」の剣がダンテに襲いかかろうとするも

 

「フハハハ!」

 

 対するダンテは怯むどころか、高笑いしながら右パンチを放ち返した――しかもただのパンチではない。

 

「「っつ!!」」

 

「〝マッスルインファイト〟!!!」

 

 明日郎とシシリアンが目を見開いた。何せ、ダンテの放ったパンチは――どうみても明らかに大きくなっていたからだ。

 その巨大化したパンチが明日郎とシシリアンの振り下ろした剣を受けてもなお、その勢いが弱る事はなかった。そのままパンチが受けた二本の剣を押し返しながら2人を殴りつけてきた。

 

「「ぬぅ!!」」

 

 そのパンチを直接受けた2人が壁にまで吹っ飛ばされ叩きつけられた。そのまま床に落ちるかと思ったら、なんとか体勢を立て直して着地した。

 そして2人は剣を構えながらダンテを警戒する。

 

「……なんと!傷が塞がれている……!」

 

「あぁ。しかも、よく見れば……筋肉…なのか?――それが動いているな」

 

 驚愕するシシリアンの言葉に頷いた明日郎が苦々しくも指摘する通り、ダンテの右手には2人の剣による切り傷と火傷が確かに付けられていたが、その傷が塞がられていった。

 その塞がり方は治癒能力によるとはみえなかった。何せ、右手の筋肉が動いていたから。筋肉が動かされる事で傷を塞がられていった。

 その様子が気味悪く感じられたのか顔をしかめる明日郎とシシリアンに傲岸不遜にしているダンテが誇らしげに口を開く。

 

「これこそが――私の能力なのだよ……!」

 

 

ダンテ――

 

彼は〝ニクニクの実〟を食った「筋肉人間」なのだ。

彼の肉体、筋肉繊維を自在に操り、自己再生機能の強化・巨大化や肉体強化はおろか、身体を如何なる形状にでも変化する事もできる。

 

 

「――だから、君達の攻撃が効かない……という訳なのだよ!」

 

 得意気なダンテからの説明に明日郎とシシリアンは――

 

「……フン!」

 

「それはどうかな?」

 

「おや?」

 

 驚く事にニャリとしていた。2人が笑みを浮かべているという事実、その笑みにダンテも意外そうに眉を上げる。

 そんな彼に2人は口を開く。

 

「筋肉を動かす事で傷を塞がらせる――なるほど、それは厄介だなぁ」

 

「――しかし!!さすがに痛みまで消化させる訳ではあるまい!!」

 

「――なら……てめぇには立てられねぇ程の痛みをくれてやればいいだけだ!!」

 

 そう言い放った明日郎とシシリアンがすぐダンテに向かって勢いよく駆けていく――彼らの手にしている剣にはそれぞれ激しく燃え上がっている、「エレクトロ」を激しく流されながら。

 

「……フハハハ!!」

 

 自身を恐れずに立ち向かってくる2人の姿にダンテも笑いを上げずにはいられなかった。

 

「素晴らしい!!――よろしい!!ならば――」

 

 そう言うダンテの身体が少しずつ大きくなりながら盛り上がってきていた。

 

「全力でやろうではないか!!」

 

 自身の筋肉繊維を可能な限りの全力で強化・巨大化させてきたダンテの姿は魔人の如く禍々しかった。

 だが、そんな禍々しさにも明日郎とシシリアンは怯まずに果敢に駆けていった。

 

「ハァ!!――〝デビルズマッスルインファイト〟!!!」

 

 その様子に微笑みを浮かべているダンテが両パンチを連続的で放ち続けていった。

 爆発的な強化・巨大化を遂げてきただけはあって、その勢いは凄まじかった。そんな攻撃からもたらされた風圧に明日郎もシシリアンも少し押されかかるも駆け込みを止めない。

 そしてシシリアンが一歩前に出る。

 

「〝獅子の猛威〟!!!」

 

 シシリアンが周囲にまでも広がっている程に凄まじい「エレクトロ」を流す剣を振り回す事でダンテの連続パンチに対応した。

 

「オォォ!!」

 

「フハハハ!!」

 

 シシリアンの〝獅子の猛威〟とダンテの連続的パンチが激しくも張り合っていた。そして

 

「んおらぁ!!」

 

「!!」

 

 ダンテの両腕をそれぞれシシリアンがさらに力を入れた剣が払いのけてやった。

 両腕を外側へ払いのけられたダンテは無防備になってしまう。そんな彼に今度は明日郎がシシリアンの後ろから姿を現す。

 

「〝焔霊〟!!!」

 

 明日郎が激しく燃え上がっている剣をダンテの胸を勢いよく刺した。

 

「オオォ!?」

 

 胸を火の剣で刺されたダメージにダンテもさすがに目を見開くも

 

「……ハハハ!!」

 

 汗を流しながら笑い声を上げていた。

 

「ハハハ!!熱くて痛い!!――しかし!!」

 

 ダンテの胸部の筋肉が動かされる事で傷を塞がり、まだ刺しているままの火の剣に対応している。

 

「ほらね!私には効かな「〝紅蓮〟!!!」――は?」

 

 突如ダンテの胸を刺している刀が爆発を起こした。

 

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!?」

 

 その爆発により胸を激しく損傷されたダンテがあまりの痛みにさすがにたまらずに悲鳴を上げた。

 

「シシリアン!」

 

「おぉ!」

 

 ダンテから素早く後ろに下がった明日郎の声にシシリアンもトドメばかりによろめているダンテに凄まじい「エレクトロ」を流している剣を振ろうとする。

 

「〜〜!やってくれたな!!君達ぃ!!」

 

 だが、胸の深い傷をなんとか塞がらせられたダンテが怒りのままに怒鳴りつけた途端に彼の身体が更なる変貌を起こした。

 

「「!?」」

 

「〝悪神の触手〟!!!」

 

 ダンテの身体の筋肉繊維が数本の触手を形作っていた。

 その触手が明日郎とシシリアンに襲い掛かる。

 

「チィィ!!――〝焔霊〟!!!」

 

「なんのぉ!!――〝獅子の猛威〟!!!」

 

 明日郎もシシリアンも負けじと剣を勢いよく振り回す。無論、炎と「エレクトロ」をも放ちながらだ。

 だが、その攻撃にダンテの触手は効かずに2人の剣、それを持つ手腕を捕らえ――身体を殴りつける。今までよりさらに再生力を上がらせた事で2人の攻撃をほとんどものとしないのだ。

 

「「あがぁ!?」」

 

 数本の触手に殴られた明日郎とシシリアンも苦悶の表情を浮かべる。だが、そんなの関係なしに触手が2人を殴り続ける。

 

「「ぐぁ!げぽぉ!」」

 

「フフ……」

 

 そんな様に胸がすっとしたダンテも満足気な笑みを浮かべた。やがて触手が2人を殴るのを止め、彼らの腕を上方に掲げらせる事で浮かばせながら拘束する。そんな2人にダンテが近付く。

 

「フハハハ……少しは思い知ったかな?君達?」

 

 2人の痛々しい様にイラつきを覚えていたダンテも気が晴れる事ができた。

 

「といえ……なかなかの強さだったね。君達は」

 

 ――ダンテはソード王国でも「漆黒の三極性」と謳われる程の実力者だ。

 そんな自身をそこまで苦戦させられていた明日郎とシシリアンの強さにダンテも感心せざるを得なかった。だからこそ

 

「どうだい?我がソード王国の兵士にならないかい?君達ならば――」

 

「高い地位に就くのも夢ではない」

 

 ダンテがそう言い出した――彼は明日郎とシシリアンを勧誘したのだ。

 

「「…」」

 

 ダメージに痛んでいる明日郎とシシリアンもダンテからの勧誘に険しい表情を浮かべて口を閉じてしまう。

 

「襲撃者だからって――悪い様はしないから安心したまえ」

 

 そんな2人の様子にも気にしないダンテは構わずに勧誘を続ける。

 

「……あんたは」

 

「ん?」

 

 そんな時に明日郎が口を開く。ダンテが耳を傾ける。

 

「あんたは――兵士としてソード王国に従っているらしいが……ここが世界を支配できるとして――何をしたいと考えている?」

 

「「…」」

 

 明日郎からのその問いかけにダンテも眉を上げる。彼の隣のシシリアンも気になるらしく耳を傾けている。

 

「……そうだね」

 

 ダンテもしばらく思案に耽り、そして

 

「……私はね」

 

「人間の本質――それこそが〝悪〟……であると思っているのだよ」

 

 口を開いたダンテのそんな主張に明日郎とシシリアンは眉をひそめる。だが、ダンテは気にせずに得意気に言葉を続ける。

 

「憤怒…憎悪…嫉妬…破壊衝動や復讐心」

 

「人間の持つ負の感情。それこそが〝悪意〟……人間しか持ち得ない至高の感情なのだ」

 

「私は――世界を〝悪意〟に溢れるものにしようと思っているんだ」

 

「どうかな?」

 

 自身の思想を誇らしげに説明するダンテが締めに感想を聞いてみる。

 その問いかけに明日郎とシシリアンは――

 

「……くだらん!!」

 

「…」

 

「人間の本質が〝悪〟!?〝悪意〟が至高!?世界を〝悪意〟に溢れるものにする!?」

 

「そんな考え等――」

 

「クソくらえぇぇぇぇぇ!!!」

 

「……それは残念」

 

 シシリアンの反応にダンテも自身の思想を理解してもらえないのを残念がる。

 

「まぁいい。なら「オレは」――ん?」

 

 気を取り直したダンテをよそに今度は黙っていた明日郎が口を開く。

 

「オレは……人間の本質が〝正義〟なのか、〝悪〟なのか――そんなのどうでもいい」

 

「……っていうか、〝正義〟とか〝悪〟とかなんてやつは――余裕がある奴が作った概念じゃねぇのか?」

 

 そう呟く明日郎の頭内には〝ワノ国〟でのかつての生活が思い浮かんだ。

 それは貧しくて、余裕がなかった。故に「明日」が見えにくかった程だ。

 そんな中で生きてきた自身をスサノオは拾い、それどころか「明日」が見えやすくしてくれた。

 だが、恩人であるスサノオは世間的には〝悪〟に分類されるといえるのだろう。

 その事から話を〝正義〟と〝悪〟に分ける、こだわるのは余裕がある奴だけではないか?むしろ、余裕がない奴にとってはどうでもいい話だ。

 そう考える明日郎には〝悪〟――〝悪意〟を信奉するダンテの事が気に食わなく感じてしまう。

 だからこそ、明日郎は言い放つ。

 

「訳分からんねぇ妄想にいつまでも浸っていろ――このクソヒゲ面が」

 

「…」

 

 そんな明日郎の態度に微笑みを浮かべているダンテはしかし、その額に青筋が立っていた。

 それを見逃さなかった明日郎は突如叫ぶ。

 

「――シシリアンゥ!!」

 

「――オォ!!」

 

 明日郎の叫びにシシリアンも動く。彼は「エレクトロ」を周囲にまでも激しく流した。

 

「ぬ!?」

 

 その凄まじさ、熱にダンテの再生力を強化させておいた触手も敵わずに捕らえている2人の腕を離してしまった。

 拘束から解放された明日郎とシシリアンは床に落ちた得物を拾い――構える。

 

「ぐ……だ、だが――君達の攻撃はこの私には効かない!」

 

 少し圧倒されてしまったダンテはそう威勢を張り、2人を叩き潰そうとする。

 そんなダンテに明日郎は更なる技を発動しようとしていた。

 それは自身の持つ技の中でも凄まじい火炎を放つ技であった。

 

「オラァ!!」

 

 明日郎は自身の身体を勢いよく回らせながら――刀を鞘口に当てて、こする。

 そうして明日郎の刀には――巨大な竜巻状の炎を纏わせる。

 

「!!?」

 

「〝火産霊神〟!!!」

 

 その凄まじき火炎に驚愕せざるを得なかったダンテに向かって明日郎が刀を勢いよく振り下ろした。

 襲い掛かる触手を〝火産霊神〟が灰燼に帰し、そのままダンテにも襲いかかった。

 

「――オォ!!!」

 

 触手を灰燼に帰された上に自身に近付いてくるダンテは慌てながら両腕を素早く可能な限りで巨大化させながら防衛の構えをとっていた。もっとも

 

「オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛!!!」

 

 巨大化させた両腕をそれでも〝火産霊神〟は他愛なく焼いていった。

 

「〜〜凄まじき炎だねぇ!!」

 

 〝火産霊神〟の凄まじき熱にダンテは冷や汗をかきながら――しかし笑みを浮かべた。

 

「しかし!耐え抜いたぞぉ!!」

 

 両腕に深すぎる火傷を負わされた影響で盛り上がっていた筋肉も盛り下がって元の姿に戻されたダンテはそれでも〝火産霊神〟に耐え抜いた。

 

「次は私の出番だ!」

 

 自身の身体をもう一度強化・巨大化させようとするダンテだが

 

「これで終わりじゃねぇぜ?」

 

「……は?」

 

 ニャリとする明日郎にダンテも呆気に取られた。

 

「オォ!!」

 

「!!」

 

 するとダンテの目前に突如シシリアンが現れた。凄まじき「エレクトロ」を流している剣を大きく振り上げながら。

 

「!!しまっ――」

 

「〝獅子の咆哮〟!!!」

 

 ダンテが明日郎に集中するあまりにシシリアンを忘れてしまった失態を痛感するも遅し。

 シシリアンがそんな剣をダンテに勢いよく振り下ろしてやった。

 

「オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛!!?」

 

 〝獅子の咆哮〟を直接受けたダンテが勢いよく吹っ飛ばされた。その勢いは凄まじく、壁に叩きつけられた途端に轟音と煙を出された。

 ダンテが叩きつけられた壁から煙が大きく広がられていく景色に明日郎とシシリアンは手応えを感じられたものの、油断を捨てずに警戒していた。

 

「……やったか?」

 

「さぁな。だが……」

 

「(……「漆黒の使徒」が言ったあの〝情報〟が本当ならば――)」

 

 捕らえてきた「漆黒の使徒」からもたらされたある情報を思い浮かべた明日郎は目つきを鋭くする。そして

 

「……フフフ!」

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