ソード王国研究施設
ソード王国の心臓部といっても過言ではないその施設の管理者にしてソード王国科学班班長をも務めているモリスが――海賊、テゾーロと小紫とブラックマリアによって撃破されていた。
そのまま研究施設は暴獣海賊団に占拠された――かと思ってたら
「「「!?」」」
「フフッ!」
小紫――私とテゾーロとマリアは資料等の探索を始めようとしていたところで目を見開く。
何せ、撃破されたと思われたモリスが再び立ち上がってきたからだ。
……そして、その姿は――
「!?――な、何だ、あれは!?」
「〝悪魔の実〟!?――それとも……」
「自分の身体を改造していた……?」
――異様で異質的な異形だった……
そのグロテスクさは今までの実験体とはさらに比になっていない程になっていた。
〝それ〟は一応生きているように見受けられているが……どうにもただの獣のものではないようだ。
そんな〝それ〟がモリス本人を覆っているというものだった。そんな姿から逆に人間らしき部品が見えるのは――モリスの顔だけだった。
そのようにおぞましい姿に如何なる仮説を思い思いに口にしてみた私達にモリスは禍々しくも得意気な笑みを浮かべながら口を開く――私達の仮説を否定し、疑問に答えようとして。
「いやいや……どの仮説も正解ではないね」
その答えに眉をひそめる私達にモリスは言葉を続けて説明しようとする。
「――私にはぜひ手に入れたい〝悪魔の実〟があってね……それを口にするまでは他の実をうかつに食う訳にはいかないんだ」
「かといって――このまま何かを身に付けない、戦う術を持たないでいるのもアレだと私は思ったね」
「だからこそ――こうしたまでだよ!」
そう得意気で饒舌になるモリスは腕を広げて胸を張る。
――〝オペオペの実〟以外の実を口にしないままで戦う術を得ようとしたモリスが行った事。
それは――
「〝悪魔の実〟の能力者を武器に作り変えてみたよ!」
「「「!!?」」」
モリスが堂々と言い放った内容に私達は絶句してしまう。
――モリスはもう既に力を身に宿っている者――実験体を武器に作り変えるというあまりにも常識外過ぎる試みを発想し、実行してきたのだ。
実験体――〝人造悪魔の実〟の能力者、獣の肉体の部分を移植された者、獣の肉体の部分を移植された〝悪魔の実〟の能力者……
そんな者達の中でもさらに力がある数人をモリスは武器――自身の身体に纏わせられる防具、〝鎧〟に改造してきたのだ。
これならば、〝悪魔の実〟を口にしないにも関わらずにその能力を使用できる上に1個限りではなくいくつもの能力を扱う事ができる。
「いや〜!我ながら申し分ない研究の成果だねぇ!」
実験体から作られた〝鎧〟の使い勝手の良さ、出来様に少し興奮しながらも自画自賛しているモリスに私達はもちろん――吐き気を感じていた。
「おぞましい」
私がハッキリとそう言い捨てて、テゾーロさんもマリアさんも共感した。そんな私達の態度をモリスは残念がる。
「やれやれ……やはり、多くの人々から理解してもらえないね〜」
「当然だろうが」
モリスのこぼした言葉にテゾーロさんはビシッとそう返してくれた。
「……まぁ、いいか。この素晴らしさを理解してくれた者がちゃんといるし……」
そう呟きながら気を取り直したモリスは私達に向かって構える。
「ここは実戦テストでも――しようか」
「「「!」」」
そんなモリスに私達も構える。
――実は私もテゾーロさんもマリアもモリスの〝鎧〟には嫌悪感を感じながらも、その厄介さに勘付いていた。故に警戒感を強めていた。
しばらく私達は睨みつけ合いながらも、さっさと動かず――事態の推移を見守っていた。
そんな中で最初に動いたのは――
「フフッ!」
――モリスだった。
「〝歪獣の咆哮〟」
モリスが私達に向けた手には――獣の口らしき部分が付けられていた。それから凄まじき風と衝撃波らしき塊が放たれてきた。
その〝歪獣の咆哮〟に対して私がすぐ一歩前に出て
「〝烈風〟!!!」
刀を勢いよく振るった。そして、そこから発生した強き風が〝歪獣の咆哮〟と激突し相殺させた。
その途端に今度はテゾーロさんが動く。
「〝黄金の業火〟!!!」
テゾーロさんがモリスに最大技を放とうとした。
彼はモリスが纏った〝鎧〟の秘めている能力が未知でありながらも感じられてくる脅威からケリをさっさとつけようと考えているのだ。
その〝黄金の業火〟をモリスは――なんと、避けずに直接受けた。
大きな音が響かれた。
そして場に煙が広がらされて私達の視界を覆った。故に私達は事態がどうなったのか分かりにくく、待ち構えていた。やがて煙が晴れてくると――
「フフッ!」
「何!?」
モリスは何の事はないように無事に立っているという事実に〝黄金の業火〟に自信を持っていたテゾーロさんも驚愕した。
しかも、よく見れば……
テゾーロさんの〝黄金の業火〟を直接受けていたモリスの両腕を纏っている〝鎧〟が黒コゲになりながら剥がれていた事で彼の素肌が露わになっていた。
「〝黄金の業火〟だったか?――大した技だったね……だが」
モリスが〝黄金の業火〟を素直に褒めているところに〝鎧〟が動かされ出した。そのまま露わになっている素肌を塞がらせていった。
「「「……!?」」」
テゾーロさん、そして私達はモリスの両腕の塞がられた箇所を凝視した。
「……再生能力を持っている上に異様わね」
「えぇ」
マリアのその呟きに私も同感した。
そうなのだ。再生能力を持っているのは別にいい。むしろ、気になるのは――再生速度だ。異様に速すぎる。
その異常的な速度を気にかけている私達にモリスは眉を上げる。
「ほぅ、君達は目が良いね――その疑問はもっともだ」
私達がその疑問を抱えているのにモリスはうんうんと頷く。そして説明する。
――モリスが纏っている〝鎧〟の再生能力が異様に高いのは当然である。なぜならば……
「寿命を全て引き出して、使わせてもらっているからね」
「「「!!?」」」
その説明に私達はまたしても絶句してしまう。
――モリスに〝鎧〟として作り変えられた者の寿命を全てエネルギーに変更させられているのだ。
人間の寿命を全て使用するだけはあって、能力が異様に高い。
……ただ、寿命を無理矢理全て使わされているんだ。当然、寿命を無理矢理全て引き出され終えてしまう者は――
「この〝鎧〟の寿命は残念ながら今日限りだよ」
「ゥ…ガ……ァ……」
「ガァァア〜〜」
「「「……!!」」」
モリスが何の事はないように言い放ったあんまりな事実、そして彼の〝鎧〟から微かに聞こえてきた苦痛な声に私達の胸内に熱きものが激しく湧き出てきた――そう、怒りだ。
「「「殺す」」」
もちろん私達は迷いなくモリスを容赦なく抹殺する事を決心した。その途端にモリスに向かって駆けていった。
「〝黄金連爆〟!!!」
まず、テゾーロさんは〝黄金爆〟を連続的で放ち続けていった。
「〝炎上マリアUFO〟!!!」
次にマリアは燃えている糸を纏いながら空中を回転していった。
「〝嵐炎〟!!!」
そして――私は「火」を激しく纏わせる刀と「風」を凄まじく纏わせる刀の二振りを振るっていた。
そして、凄まじき「風」を浴びた事でさらに激しく燃え盛っている「火」――「炎」がモリスに襲い掛かる。
私達からの攻撃に対してモリスも攻撃し返そうとした。
「ホワァァァ!!」
モリスの背中から生えている大翼が勢いよく振り続けられる。そこから発生された強き風により私達は少し押さえられ、勢いが弱まされてしまう。
「「「っつ!?」」」
「ハハ!!」
その風を直接身に受け、少し怯んだ私達にモリスは更なる攻撃を加えようとする。
テゾーロさんには身体から生えてきた大きなムチのようなもので叩きつけ、マリアには大翼で斬りかかり、私には角付きの盾のようなものを纏った拳で殴りつけていった。
「「「ぬぅ!!」」」
バカにできない威力を秘めている攻撃を受けた事で少し怯んだ私達は後ろに下がり――モリスを睨みつける。正確には彼の〝鎧〟の能力に注目していた。
「やはり――ただの獣ではないようだな!?」
「まぁ、そりゃね」
テゾーロさんからの指摘にモリスも肯定する。そして、やはり口にする。
「所詮偽物なんだが……〝恐竜〟の力を使っているからね」
――モリスは動物の力を秘める〝人造悪魔の実〟を作るだけに飽きずに――恐竜の力を秘める実をも作ろうとしていた。
……ただ、本物の恐竜の血を手にするのはさすがに困難であった。
一応恐竜の化石を手に入れ、それから血の代わりになるものを取れたは取れたが……やはり弱々しい。
それでやむを得ずに数々の動物の血を利用して血の代わりになるものを補正しておいた。
「――そして、この〝鎧〟に宿っている恐竜の力!それは……」
得意気に饒舌になるモリスによれば――
――プテラノドンの翼と口。
――トリケラトプスの角と襟飾り。
――ティラノサウルスの牙と尻尾。
それをモデルとして形作られた力が〝鎧〟には宿っていた。もどきといえ、〝恐竜〟の力はやはり尋常ではない。
〝鎧〟の効能を誇らしげにアピールしているモリスに向かってマリアは彼の話を無視してまで仕掛けていった。
「――偽物の〝古代種〟等!本物の〝古代種〟が叩き潰してあげるわ!!」
そう宣したマリアは多くの糸を放ちながら、その糸を次々と掴み続けて移動していく事でトリッキーな動きをみせていた。
「……!」
そのトリッキーな動きにモリスもさすがに笑みを消し、警戒をみせる。
だが、マリアはただトリッキーな動きでモリスの周囲を回りながらも攻撃を仕掛けてこなかった。それがかえって緊張感を与えていた。やがて
「〝マリア矢〟!!!」
マリアが全ての足を1つにまとめていったものをモリスに向けていった。その攻撃がタイミングを掴めずに戸惑われているモリスを上手く貫く――かと思われたら
「オォッ!!」
気付いていたらしいモリスが両手を強化させ――1つに纏められた全ての足を強く握った。その握力により〝マリア矢〟が止められてしまった。
「!!」
「フハハハ!!」
気付かれた上に自身の攻撃を止められたのに顔をしかめているマリアにモリスは高笑いした。
「さて!――偽物の牙を食らうといいよ!」
実はティラノサウルスの牙を形作っていた手でマリアの足先を強く握っていった。
「〜〜!」
その握力のあまりな強さにマリアも苦悶の表情を浮かざるを得なかった。その様にモリスも得意気になる。
「どうかな?偽物でもなかなかだろう!?」
「……えぇ、バカにできないわね……でも」
〝鎧〟の持つ恐竜もどきの能力をさすがに認めざるを得ないマリアもニャリとしていた。
「それだけよ」
「!」
その笑みに眉をひそめるモリスの後ろには――私が身をかがめていた。
「〝鎌鼬〟!!!」
居合斬りをするのに理想的な姿勢を構えていた私からの鋭い斬撃がモリスに襲いかかった。
「!!」
モリスも驚愕した。何せ――〝鎧〟に守られている筈の彼の身体には……
〝鎧〟が剥がれた上に微かだか、傷を負わされていたのだから……私の斬撃は〝鎧〟さえも斬って通せるのだ。
「くっ!」
自慢の〝鎧〟を剥がして身体に傷を負われたという事態に思わず固まったモリスがすぐ捕らえていたマリアを離し、私に襲いかかろうとするも
「この――私を忘れるな!!」
「!!」
そんなモリスに更なる攻撃が加えられようとしていた――テゾーロさんが腕を覆った黄金のドリルがモリスに放たれていった。
「〝黄金螺旋〟!!!」
そのドリルが〝鎧〟を少しずつ刻み続ける――分解していった。
「オォ!!」
〝鎧〟も負けじと再生能力を発揮して〝黄金螺旋〟に対応した。その甲斐もあってか、あと一歩でモリスの素肌に当たろうとするところでドリルが止まられてしまった。動かされている〝鎧〟がそれを無理矢理阻止できたのだ。
その事実にモリスがニヤリとするも
「……!いや、待て!」
「ご明察」
だが、何かに気付いたモリスに今度はテゾーロさんが笑みを浮かべる。
――そして止められた筈のドリルが光り――爆発された。
「オオォォォ!!?」
その爆発は〝鎧〟を吹っ飛ばし、モリスの身体にも届いた。それによる痛みにモリスはたまらずに悲鳴を上げた。
あまりな痛みにモリスもしばらく大げさな身振りをしていた。やがて、一応落ち着けたモリスはついに怒りをみせた。
「――君達ぃ!!」
だが、そんな彼を私達は気にせずに次に移していた。
「〝炎上マリア〟!!!」
彼を囲んでいた糸が燃え上がられれ、彼は大火に囲まれた。
自身を囲む大火、その熱にモリスが顔をしかめるも
「ナメるなぁ!!」
〝鎧〟から生えさせたプテラノドンの大翼とティラノサウルスの尻尾を自身を回転させながら勢いよく振り回らせる事で囲んだ大火を吹っ飛ばした。
「……!!」
少し気が休まったモリスはハッとする――彼に向かって私達はもう既に攻撃しようとしていたからだ。
「〝黄金螺旋〟!!!」
「〝マリア矢〟!!!」
「〝嵐炎〟!!!」
私達からの攻撃をモリスは避けられずにただ――身に受けた。
「オオォォォ!!」
私達からの大技にモリスは〝鎧〟の能力を全力で発揮して防いでみせていた。
しばらく張り合っていた私達だが、攻撃を止めてモリスから一旦下がった。
「ハァハァ……耐え抜いたぞ――……!!」
私達からの攻撃を耐え抜けたという事に安堵するかのように得意気な笑みを浮かべたモリスだが――その笑みが突如凍られた。
「……!!〝鎧〟が……!!」
――モリスを覆っていた〝鎧〟が溶けて床に力なく落ちていったからだ。
――私達の放った技に秘められた威力は尋常ではない。そんな攻撃を受け続けた〝鎧〟がついにエネルギーを全て使い果たしてしまったのだ。
まだ余裕があると思われた〝鎧〟が限界を迎えていたという事実に動揺したモリスを私達は容赦なく囲んだ。
「さて!――終わりだね」
「思い知らせてやる……!」
「私にただ斬り捨てられるといい」
やる気満々な私達に囲まれたモリスは歯を食いしばるも――すぐニャリとする。
「「「!!?」」」
その笑みに引っかかった私達が突如吹っ飛ばされた。
――私達の横から攻撃が放たれ、その攻撃を身に受けてしまった私達がただ床に叩き付けられた。
「一体、何が――……!!」
突如の事態に混乱している私達の前に現れた者達。
それは――新たなる実験体だった。それらを従えながら私達を見下ろすモリスは余裕ができ、笑みを浮かべていた。
「いや〜念の為に待機させておいて良かったよ……これで形勢逆転かな?」
「……!」
「くっ!」
得意気なモリスのその言葉に今度は私達は歯を食いしばる番になってしまった。
――慎重な面を持ち合わせているモリスはこういう状況に備えて実験体を待機させていたのだ。その実験体にモリスに意識を向けすぎた私達はまんまとやられたのだ。
自身の失態を悔しく思う私達だが、実験体からの攻撃を身に受けてしまった上に疲労がたたってしまっているらしく、私達の身体はもはやほとんど動けにくくなっていた。
そんな様をモリスは嘲笑する。
「フフ……終わりだよ」
――そのまま私達はモリスにやらるのか……?
――それは偶然か?それとも……因果なのか?
「……!!」
絶体絶命といえる状況に置かれていても何もできなく悔しがる私の目には――
――床に転がっている〝悪魔の実〟が映っていた。
その実に私は不思議な事に惹きつけられていた。
――修羅道を歩んでいる少女に〝運命〟が更なる選択肢を与えていた。
「……!!」
その実を私は――迷わずに掴み、口にした。