ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第63話〝強さ〟

 その広場に緊張感が漂っていた。

 

「…」

 

 その緊張感が発生している原因を占めている人物――ゼノンは……イラついていた。なぜイラついているかというと――

 

「……!」

 

 ゼノンは目前に堂々と立っている者――ヤマトを睨みつけていた。

 彼女はゼノンがペドロとページワンを殺そうとしているところを救助してきたのだ。

 ゼノンによれば敵を始末できかけていたところを邪魔された上に新たな敵が姿を現してきたのだ。イラだちを覚えてしまうのも無理ではないだろう。故に――

 

「……ソード王国の敵は――」

 

「消えろ」

 

 ゼノンはそう言い捨てながら〝無間捻骨〟を発動する――ドリルのように回転する無数の骨がヤマト、その後ろに横だっているペドロとページワンを襲いかかろうとする。

 

「〝狼盛軍〟!!!」

 

 それに対してヤマトは金棒を振り回し、連続突きの如く乱打を繰り出し返した。

 その乱打には威力を秘めている上に覇気を込められているだけはあって、〝無間捻骨〟に破られずに張り合えていた。

 

「……!……」

 

 〝無間捻骨〟が張り合わされているのに目を見開いたゼノンはすぐ気を取り直し、更なる骨を新たに生成し――放つ。

 

「!――はぁぁぁ!!」

 

 襲いかかってくる骨の数が増え、困難度が上がったのに気付いたヤマトはしかし怯まずに〝狼盛軍〟を放ち続けた。

 だが、骨の数が増えてきた影響もあって少しずつ押さえられ始めていた。

 

「――オラァ!!」

 

 それにも勘付いたヤマトは素早く腰を屈め――下方から金棒を勢いよく振り上げた事で無数の骨を払い付けてやった。

 

「!!」

 

 〝無間捻骨〟を力業で一時的だろうが――止められたのに少し動揺したゼノンの姿を見逃さなかったヤマトは更なる技を放った。

 

「〝鳴鏑〟!!!」

 

 ヤマトは衝撃波を打ち放つ――いわば「飛ぶ打撃」がゼノンを突っ込んだ。

 

「……!」

 

 その強烈な衝撃にゼノンも一歩下がらざるを得なかった。だが、まだ攻撃は続いている。

 

「……!!」

 

 ゼノンの目前には――ヤマトが迫ってきていた。

 

「〝雷鳴八卦〟!!!」

 

 ヤマトの勢いよく振るわれた金棒を身に受けたゼノンは勢いよく吹っ飛ばされ、壁にまで叩きつけられた。

 

「……!!」

 

 その衝動は強烈でゼノンの身体を覆っている骨にビビを入れられて、一部が破損されていた。

 その事実に目を見開くゼノンにヤマトは得意気な笑みをみせていた。

 

「どんなもんだい!!」

 

「!!」

 

 ヤマトの笑みを目にしたゼノンは目を見開く――

 その笑みに彼の中に堅く封印された記憶が蘇る――

 

 

――ゼノン

 

彼は最初から才能に恵まれた訳でも冷酷非情で残忍だった訳ではなかった。

むしろ、実力でいえば弱く、性格もどちらかといえばおとなしい――そんな男の子だった。

 

そんな中で出会ったのは――「アレン」と言う少年であった。

 

アレンは正義感と情に篤い少年であり、ソード王国の極寒で閉鎖的で侵略を繰り返す状況を憂い、将来はソード王国の先頭に立って国を変えてみせるという確固たる目標と信念を持った人物であった。

 

そんな彼に触発されてゼノンも瞬間的に感化されたのか、自身も同じ目標を持つようになった。

それからは互いに切磋琢磨に実力を磨き合いながら成長していき、アレンと共にソード王国の軍隊に入軍を果たし、ゼノン自身も上司から太鼓判を押される程の実力者にまでなった。

互いに任務に勤しむ中、とある襲撃者の出現によってその場所へアレンと共に赴いた。

だが、その襲撃者は強かった。アレンとゼノンが所属したチームを全滅に追い込まれた程だ。

ゼノンは自身の全力を込めて放った技ならば倒せる可能性はあるものの、当てる隙がない状況である事から使えないでいる中、アレンは諦めずに襲撃者へと立ち向かう姿を見て止めるように呼び掛けるも突っ込んでいく。

その状況を見てゼノンは死ぬ確立が高いと察するが、同時にアレン諸共攻撃すれば襲撃者を倒せるとも踏んでいた。

一時は躊躇うゼノンだが――自身達が襲撃者を葬らなければ、生き残っているメンバーは全滅し国や街に甚大な被害が出る事を感じ、本能的にアレンを巻き込んで襲撃者へと技を放ち、結果襲撃者を倒すもアレンはその命を落とす結果となった。

いくら国や人々を守る為とはいえ、アレンを自ら殺めてしまった自責の念に苦しむ事となってしまうと同時にゼノンはある答えに辿り着く事になってしまう――

 

――力がなければ……

 

――想いも執念も無意味だ。

 

――弱い者は切り捨てるべきだ。

 

――圧倒的な力こそが絶対。

 

そうゼノンは弱肉強食や実力主義な思想を確固たるものとしていった。

そうしてゼノンは残忍で冷酷な氷の戦士と化していった――

 

 

「……!!」

 

 ゼノンはハッとした。

 ――どうやら、彼はヤマトの笑みからアレンの面影を感じ、それにつられて封印した過去をつい思い出し浸ってしまったようだ。

 ――それはすなわち、弱さが自身の深いところでまだ存在していると考えたゼノンは歯を食いしばる。

 

「…」

 

 ゼノンは立ち上がってくるが――まだ頭を下に下げているままだ……いずれにせよ、目前の戦いから意識をそらしてしまった自身をゼノンは恥じているだろう……だが

 

――潰したい……

 

 ゼノンの胸中には黒く――凶暴な衝動が湧き出てきた。

 その衝動が湧き出るのにつられて頭を上げたゼノンの目は――血走らせていた。

 

――オマエを

 

――潰したい!!!!

 

 そう思わずにはいられなかったゼノンは湧き出てくる黒くて凶暴な衝動に従い――ヤマトを全力で潰すのを決心した。

 その途端に場の空気が重くなってしまう。

 

「……!!」

 

 その空気を感じたヤマトは警戒感を強めながらゼノンを凝視すると――彼の姿は変貌を遂げていた。

 その姿は先程の骨を鎧のように纏った単なるものとは違い――まるで、中身の骨が外へ表面してきているかのような禍々しいものだった。

 その表面化は一見尋常ではなかった。

 それはただ身体から骨が飛び出しているだけではない。背中から飛び出している骨は巨大だった。連携状の骨が尻尾のように生えてきているのもあった。

 故に――身体のほとんどを骨そのものが占めている魔人といっても過言ではないだろう……

 

「〝狂骨魔人〟」

 

 その姿に場は圧倒されていた。だが、ゼノンは時間さえを与えずに無数の骨を勢いよく放った。

 

「〝無間骨牙〟」

 

「〝狼盛軍〟!!!」

 

 ヤマトも負けじと〝狼盛軍〟を放つが――

 

「……!!」

 

 ――ゼノンが先程放った槍のような骨とは違い、今放ってきた骨は連携状になっていた。故に――振るわれた金棒に骨が巻き付けられていた。それだけに留まらず金棒を握っている手、身体にまでも巻き付けられた。

 身体を巻き付けられた事でヤマトは動きを制限されてしまったところを新たな骨が容赦なく襲いかかろうとする。

 

「!!――オォォォォ!!」

 

 それを目に映されたヤマトはなんとか逃れる為に自身の身体に力を入れる。

 

 ――だが、無常にも血が出てしまう……

 

「!」

 

 骨を放っていたゼノンも意外そうに目を見開く。

 ――ゼノンの放った無数の骨のうちの2本がヤマトの身体――左肩と右の鳩尾を貫いたのだ。

 だが、その事さえもゼノンには意外だった。なぜならば――もっと多くの骨が彼女を貫いた筈だったからだ。

 ――実はゼノンはヤマトの剛力を見違えていたのだ。彼女は自身の剛力にものをいわせて、ほとんど身体に巻き付けられた骨から逃れられたのだ。もっとも完全に逃れずに骨に貫かれてしまったが。

 

「ぐぅ!!」

 

 あまりな痛みにより苦悶の表情を浮かべてしまうヤマトに少しスカッとしたゼノンは追い打ちをかける事にした。

 

「消えろ」

 

 冷たくそう呟いたゼノンからの無数の骨がヤマトを襲いかかる。

 

 大きな音が響かれた。

 

「…」

 

 無数の骨が向かった先から煙が発生している中でゼノンは違和感を感じた。

 

「…(手応えを感じられない?)」

 

 自身の骨がヤマトを貫いた触感が全く感じられないのにゼノンが眉をひそめた中――突如強き〝圧〟が湧き出てきた。

 

「!!?(「覇王色」!!?)」

 

 その強き〝圧〟――覇王色の覇気が放たれてきたのにゼノンは驚愕しながら構えた。

 やがて――覇王色の覇気の主が姿を現してくる。

 

「――なかなかやるね!!」

 

「…」

 

 覇王色の覇気を放っていたヤマトは晴れやかにそう言い放ち、その態度にゼノンも眉をひそめた。

 とにかく姿を現してきたヤマトの姿は――変貌していた。

 ――全身が白い毛に包まれていて、足と顔の骨格が狼らしいのに変化していて、指先から鋭い爪が、口元に鋭い牙が生えてきた――

 それは神秘的な狼人間の姿になっていた――彼女は人獣型に変身したのだ。

 変身した事で身体能力を強化し、無数の骨から素早く逃れてきたのだ。

 ヤマトのその姿、ただの狼ではないらしい上に彼女が覇王色の覇気を覚醒しているという事実にゼノンは目を細める。

 

「――どうやら、ただの狼ではないようだな……その上に「覇王色」を持っているとはな……」

 

「あぁ!――僕が口にした〝悪魔の実〟は特別だと聞いているから間違いではないね!」

 

「――この僕は「覇王色」を覚醒できる程の器なのかどうか分からないけど……」

 

 素直に説明しているヤマトに少し毒気を抜かれたゼノンは気を取り直して言葉を続ける。

 

「……「覇王色」は「武装色」と「見聞色」と違って、そうそう覚醒しにくい――ソード王国でも覚醒しているのはあの方だけだ」

 

「そんな「覇王色」を放てるお前は少なくとも――ただ者ではないだろう」

 

 〝あの方〟――ルシウスを思い返していたゼノンは同じ「覇王色」の主であるヤマトに対しての警戒感を強める。そんな態度にヤマトは苦笑する。

 

「……光栄――というべきかな?」

 

「さぁな……だが」

 

 その言葉にそっけなく返すゼノンは新たに骨を生成する。

 

「それでも――オレが勝つ!!!!」

 

 そう宣言したゼノンは駆ける。

 

「!?」

 

「〝堕骨獄〟!!!」

 

 ヤマトが驚愕するのをよそに激烈な勢いで駆けるゼノンが骨を放った。

 素早く激烈な勢いで放たれた骨がヤマトの身体を貫く――かと思ったら

 

「〝神速〟!!!」

 

 ただで転ばぬヤマトは凄まじい速度で右左に移動し続ける上にトリッキーな体さばきをみせた事で襲いかかってくる無数の骨からかわし続けた。

 

「何?」

 

「オォ!!」

 

 自身の攻撃を凄まじい速度でかわされたのに驚愕したゼノンに向かってヤマトは速度を変えずに駆けていった。

 

「!チッ……」

 

 自身に迫ろうとするヤマトにゼノンは新たに放った無数の骨で盾を形作るも――

 

「〝白蛇駆〟!!!」

 

 ヤマトの勢いよく振るわれた金棒がその骨で形作った盾ごとゼノンを吹っ飛ばした。

 

「!!」

 

 その威力、そして自身が吹っ飛ばされたという事実にゼノンは目を見開く。そして、胸内に怒りが湧き出てくるのを感じたゼノンは歯を食いしばりながら体勢を立て直す。そして

 

「〝無間巨牙〟!!!」

 

 ゼノンの身体から飛び出している巨大な骨が伸び――ドリルのように回転させながらヤマトに向かっていった。

 その巨大な骨を凝視したヤマトは口をいっぱい開け

 

「〝無侍氷牙〟!!!」

 

 氷のブレスを放った。

 そのブレスにより巨大な骨が凍られ、その隙にヤマトがゼノンに向かって駆けていくも

 

「無駄だ!!」

 

 巨大な骨が氷を打ち破り、ヤマトに向かおうとする。

 

「分かってるよ!!」

 

 だが、それは予想内であるヤマトは慌てずに金棒を回転させて冷気を纏わせ――勢いよく振り上げる。

 

「〝氷諸斬り〟!!!」

 

 襲いかかってくる巨大な骨を激しく破損させながら払い付け――その勢いのままにゼノンにも殴り付けた。

 

「うぅ!?」

 

 直で殴り付けられたゼノンはその強烈な威力により身体の骨を破損されながら吹っ飛ばされた。

 そのまま床に叩きつけられたゼノンは胸中に怒りがさらに湧き出てくるのを感じていた。

 当然だ。〝あの時〟から誰にも負けずに強くなってみせると誓ってきたにも関わらず――自身の今晒している無様さに怒りと吐き気を感じられずにはいられないのだ。

 

「…」

 

 だからこその気力により立ち上がってきたゼノンから放たれる気迫にヤマトも構える。

 そんな彼女にゼノンは重々しく口を開く。

 

「――次で最後だ」

 

 そう宣言したゼノンの身体からさらに生成された無数の骨、巨大な骨が全て上方に伸ばし――1つに纏められていく。

 その宣言、気迫にヤマトも真剣な表情を浮かべながら金棒を構える。

 

「――迎え撃つ!!」

 

 ヤマトもそう返し――2人の間には異様な緊張感が漂っていく。

 当然だ。次こそ決着が着くのだから――

 

「…(オレが――)」

 

「…(僕が――)」

 

「「(勝つ!!!!)」」

 

 奇しくも2人とも同じ思いを抱えた途端にまずゼノンが動き出した。

 ――無数の骨から纏められて形作った一本の骨が激烈な勢いで回転させながらヤマトに向かって放たれていった。

 

「〝骨閻裁〟!!!」

 

 対するヤマトは自身の身体を勢いよく振り回せながら――回転させていて冷気を纏わせた金棒を強烈な勢いで振り上げていった。

 

「〝氷諸斬り〟!!!」

 

 鋼の音がする――

 

 2人の技が激突し――張り合っているのだ。

 

「……!(オレは負ける訳には――)」

 

 アレンを思い浮かべたゼノンの〝骨閻裁〟は勢いを強めていった。その勢いにヤマトが押さえられかけるも

 

「――オラァ!!」

 

「!!」

 

 ヤマトから「覇王色」が放たれ――勢いがさらに強まってきた。やがて

 

 鋼の音がする。

 

 ――ゼノンが放った〝骨閻裁〟が崩壊され、その上に表面してきた骨も激しく破損されながら――彼自身も吹っ飛ばされた。

 

「……!」

 

 そしてゼノンが床に倒れたのを見届けたヤマトの身体からその途端に血が噴き出てきた。

 

「……随分――硬かったなぁ〜!」

 

 ヤマトもゼノンの技には舌を巻いた――確かに打ち破れたものの――その強さ、硬さには参ったものだ。

 といえ、なんとか打ち破れたのに胸をなでおろしたヤマトに掛けられる声が。

 

「……お前は――」

 

「!」

 

 倒れていたゼノンがヤマトに声を掛けていた――彼にはヤマトに聞いてみたい事があるのだ。

 

「――なぜ強いんだ……?」

 

「……分からないや……ただ――」

 

 その問いかけに目を見開き、そして少し悩んだヤマトは意を決した表情で言い放つ。

 

「――途中なんだ……誓いの……!」

 

「……そうか」

 

 その答えにゼノンは何を思ったのか――

 彼はそう言い残し――静かになった。そんな彼をヤマトはただ見つめる――

 

 

『暴獣海賊団 ヤマト

  VS

 ソード王国 ゼノン』

 

『ソード王国城

「ある広間の戦い」』

 

『勝者 ヤマト』

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