「おぉ〜……〝裁く〟ねぇ〜…襲撃者としてには随分な言い草だね〜」
「…」
異様な緊張感が漂っている広間でそんな声が響かれていた――声の主、ダンテが人を食った態度で言い放たれたその指摘にフドウは何の反応をみせずに――黙っているままだった。
何も言い返せない彼の態度に不敵な笑みを深くするダンテは饒舌になる。
「そもそもき「〝火龍〟!!!」――みぃ?」
だが、フドウは容赦なくダンテの喋りを遮ってまで〝火龍〟を再び放った。
喋りを遮られるばかりか攻撃されようとしているダンテも思わず固まり――ただ〝火龍〟を身に受けた。
「……うむ」
炎に包まれているダンテの状態を凝視してみたフドウは目を細める中
「――話を最後まで聞いてくれるのかなぁ!?」
喋りを遮られた事に対しての怒りをみせたダンテの身体は激しい感情につられて盛り上がってきていた。
だが、その様子と言葉を無視したフドウは素早くダンテに駆け寄り――
「〝炎皇〟!!!」
炎を纏わせた右拳でその身体を殴り付けた。
「おっ!?」
その〝炎皇〟を直で受けたダンテも目を見開くも
「フハハハ!!」
「!」
効かなかったのか高笑いしたダンテも右拳でフドウを殴り返した。その衝撃でフドウが後ろに飛び浮かばされるも
「フン……」
すぐ体勢を立て直しながら着地し――何の事はないように堂々と立つ。
「……さすが2つの〝悪魔の実〟の能力を宿るだけはあって――効能は高いな」
フドウは2つの〝悪魔の実〟の能力を宿るダンテの力について、そう評価した。
――実はフドウはその効能を試みる為に技を放ってみ、逆に攻撃を身に受けてみたのだ。
そんなフドウにダンテは笑みを浮かべる。
「フハハハ……君もなかなかじゃないか――しかし、まさか――」
ダンテはニャリと興奮が湧き出てくるのを抑えられなかった。
「――あのルナーリア族を生で拝めるとはね……!」
――さすが、古代巨人族を作り出したソード王国の幹部だけはあって、ダンテもルナーリア族関連の知識をも持っていた。
ルナーリア族を一目でも見たいと考えていたダンテだからこそ彼はフドウの存在に感動を覚えずにはいられなかった。
「……何としてでも、君の――ルナーリア族の力を手に入れてみせる……!」
「…」
ダンテの〝フドウ〟本人を見ずにただルナーリア族の力を貪欲すると受け取れる宣言にフドウは目を鋭くする――彼から怒気が漂ってきた。
「――不届き者が……」
「おや?――嫌われたかな」
その呟きを耳にしたダンテは肩をすくめる。
彼的にはできれば――フドウと親しくしたかったのだ。そうすれば、ルナーリア族の力をたやすく手に入れる事ができるのだからだ。
――だが、反抗的ならばやり方が限られる事になる。
「とりあえず――ここは戦闘不能にしよう」
「ほざけ」
判断をまとめたダンテがそう宣するのに対してフドウはそう返す。
「……君はさっき、この私の力――〝ニクニクの実〟と〝ウシウシの実〟を併せたものを思い知っただろう?」
「いくら、ルナーリア族の君でも――骨が折れるんじゃないかな?」
今際でも戦闘を避けようとしているのか、ダンテはそう忠告してきている。対するフドウは――
「……フン――確かに、その厄介さは身を持って理解してきた」
まず、その忠告の内容には肯定した。
フドウが肯定した事にもしやと期待に目を輝かせるダンテにフドウは言葉を続ける。
「だから――全力を出す……!」
そう宣したフドウの身体が変貌を遂げた。
その姿は――人の姿をしていながら〝ステゴサウルス〟の特徴を持っている――例えば背中に菱形の骨板が生えてきた事から――フドウは人獣型に変身したのだ。
「ほぅ……!」
変貌を遂げた上に更なる威圧感をみせているフドウの姿にダンテも感嘆の声を上げた。
「これは……油断しない方が良さそうだ……!」
そう判断したダンテは素早く――フドウの目前に移動した。
「〝大魔神の大拳〟!!!」
筋肉繊維と〝ケープクロスイギュウ〟の力を全発揮させたダンテはパンチを激烈な勢いで放った。
「フン!」
だが、フドウもただおとなしくする訳ではない。彼はまず背中の火を激しく燃え盛らせ――次に自身の身体を前方へ回転させる事でダンテのパンチに対応しようとした。
「〝不動輪宝〟!!!」
その攻撃がダンテのパンチと激突するも
「フハハハ!残念だが、私の拳は重いなのだよ!」
ダンテはそう確信した。
――フドウが放った〝不動輪宝〟は見たところ炎を纏いながらの回転攻撃はもちろんだが、背中の菱形の骨板が回転攻撃の攻撃力を上昇させているのだろう。
そういう攻撃ならば、確かに尋常な敵なら倒されるだろう――〝尋常な敵〟ならば。
〝ニクニクの実〟と〝ウシウシの実〟の両方を併せながら使用し発揮できるダンテならばそうはいかないだろう――筈だった。
嫌な音がした。
「――え?」
得意気にしていたダンテは呆気に取られた。
――ダンテの右拳がボロボロになりながら払いつけられたからだ。
「な、な――い、一体何が――」
その事態に混乱しているダンテをフドウは容赦なく攻撃を続ける。
ダンテのパンチを撃破した〝不動輪宝〟がそのまま終わらず、まるでUFOのように空中を自在に飛び移り――ダンテを襲いかかる。
「オォッ!?――グガァ!?――ゲポォ!?――ギャア!?」
〝不動輪宝〟がダンテの身体を刻みながら飛び去っていっても、次にも身体に飛ぶ。
そうした連撃にダンテは面白いようにただ受け続けるしかなかった。
「アァ!?――プポァ!?――ジガァ!?――イガァ!?」
さらにダンテの予想を越える程の〝不動輪宝〟の威力にダンテの堅い筈であった肉体がいいように火傷を負わされながら刻み続けられていった。
「〜〜!ナメるなぁぁぁ!!」
なんとか抵抗しようとダンテの身体から数々の触手が湧き出てフドウを抑えつける、叩き込もうとするも
「――!!?グガァァア!!?」
その触手さえも〝不動輪宝〟はものとせずにダンテの身体を焼きながら刻んでいく。
〝不動輪宝〟の凄まじさに〝ニクニクの実〟による再生能力と〝ウシウシの実〟による身体能力も意味を成さなかった。
そのあまりな痛みにダンテも悶えずにはいられないのだ。
やがて
「〝不動鉄槌〟!!!」
フドウのスパイクが付けられている尻尾がダンテを叩きつけた。
「グガァァァァ!!!」
その衝撃を打つ手もなく、ただ受けたダンテは勢いよく吹っ飛ばされ――壁に叩きつけられた。その際にダンテの姿は元に戻っていく。
颯爽と着地したフドウはそんな様を見つめる。
「……他愛ないな」
「ぐ……くそ……」
フドウの言葉にダンテは言葉を返せずに唸ってしまう。
「……何なんだ?さっきのは?」
だが、怒りと屈辱感より自身の予想を越える威力の由来の方が気になってしまうダンテはその疑問を口にする。
「…」
「……答えないか」
口を閉じるフドウにダンテは少しガッカリするところに彼は自身の背中をダンテに向けてみせる。そして
「…」
フドウの背中の菱形の骨板が――丸形ノコギリのように回転していた。
「……へっ!?――そういう事ができるんだっけ!!?」
その常識を疑う事態にダンテもツッコまざるを得なかった。
「と、とにかく――なるほどね〜そういう事か」
「あぁ」
なんとか気を取り直したダンテの言葉にフドウはそう返す。
――そうなのだ、〝不動輪宝〟は火を纏いながら自身を回転させるだけではなく――菱形の骨板の回転も加えていた。それでその威力は凄まじいといえよう。
その威力を秘めた〝不動輪宝〟が〝ニクニクの実〟と〝ウシウシの実〟の能力を併せて使用する事で尋常ではない程に硬いダンテの肉体をも打ち破れたのだ。
〝不動輪宝〟の威力にダンテも感嘆の声を上げざるを得なかった。
「……確かに凄まじいね……私の肉体がこうなっている時点ではね――」
「――だが!まだ終わりではない……!」
突如不敵で邪悪な笑みを浮かべたダンテは自身に力を入れて――立ち上がってきた。
「この私に限界はないのだよ……!」
まだ戦意が消えていないダンテは再び変貌を行おうとする。
「……それはどうかな」
その様子に怯まずにそう呟いたフドウが取り出してきたのは――縄だった。
――それもただの縄ではない。よく見れば……より合わせている五色の糸の片側に環、もう片側に独鈷杵の半形がついたものになっていた。
「〝不動束縛〟」
フドウはその縄をダンテに向かって投げ付けた。
その縄がダンテに見事巻き付け――縛り上げた。
「――フハハハ!!」
身体を縛り上げられたダンテはそれでも高笑いしていた。
「まさか、この私を縄ごときで縛り上げるとでも!?」
不敵な笑みを浮かべるダンテはその縄を破ろうと身体に力を入れ――
「無駄だ」
「……!?」
フドウがそう告げた通りにダンテが力をどれだけ込めていっても――その縄は打ち破られなかった。
それどころか――
「お、おぉ……私の身体が大きくなっているから……身体が……!!」
ダンテが能力で身体を盛り上がらせている為にかえって縄の縛りにより苦しめられていた。
「――い、いや!?この縄も絞り込んでいる!?」
目を見開いたダンテの指摘通りに縄が範囲を少しずつ縮小されている。その為にダンテは二重の意味で苦しめられてしまう。
目を見開きながら苦悶の表情を浮かべるダンテにフドウは口を開く。
「「羂索」――それが貴様を縛るものの名よ」
フドウはその名を告げる。そして説明する。
「羂索」――
それはダンテの状態から見ても分かるように――ただの縄ではない。
それもその筈。「羂索」を形作る材料の中にはフドウ自身の肉体の一部――髪毛をも使用されているのだ。
ルナーリア族の髪毛を使っているだけはあって、本来には程遠いだろうが――鋼鉄以上で〝海楼石〟に近しい硬さを発揮している。
ダンテが全力を出しても「羂索」を打ち破られないのも道理であろう。
――そして……
「――オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛!!?」
まるで限界を迎えたかのようにダンテは大きな悲鳴を上げてきた。しかも彼の身体の巻きつけられている箇所から煙が出てきた。
「こ、これは……!!」
「その通り――それには我が炎、熱も込められている」
フドウがそう告げた途端に「羂索」が赤く発光してきた。
本来のには及ばずともルナーリア族の炎と熱をもまた宿っているのだ。
絞り続けられる縛りにその凄まじき熱も加えられた事でダンテはあまりな痛みにより白目を剥いてしまう。
「オ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛――わ、私はぁ!!!」
だが、ダンテは負けじと変貌をしながら「羂索」を打ち破ろうとするも――
「無駄だ」
無常にもダンテの身体から嫌な音が出てしまう。
「が…は……」
白目を剥いたダンテの盛り上がってきた身体が元に戻っていく――ただ、火傷等の痛々しい姿にもなっていた。そんなダンテを縛り上げた「羂索」が自然に解かれて、そのままフドウの手に戻っていった。
「……真に他愛ないな」
ダンテの無残な姿にフドウがそう呟く。
――とにかく決着が付いた……かと思われたら
「オォォォォ!!!」
「!」
撃破されたと思われたダンテが再び動き出そうとしていた。ただ――
「オォ〜オォォ!」
「……半端だな」
ダンテは再び変貌しようとしているが……その身体はまず不自然さは相変わらずだが――どう見ても半端的だった。
まるでコントロール能力が失われ、暴走するかのようにダンテの姿はメチャクチャな状態をしていた。
そんなダンテにフドウは剣――「降魔」を向けた。
「裁きの時だ」
「ほざくなぁぁぁあ!!!」
そう宣言したフドウにプライドを刺激されたのかダンテは怒りを引き出しにし、統制できず暴走している自身の肉体を無理矢理動かしてフドウを叩き潰そうと駆けていった。
そんなダンテにフドウはただ――待ち構えていた。
「オォォォォ!!!」
その姿を目にしたダンテは好機を得たというように勢いよく、しかしメチャクチャな体さばきをしながらフドウを叩き潰そうとしていた――
――「羂索」からもたらされる痛み、〝悪魔の実〟の能力を半端的に発動させる事による暴走でダンテは冷静さを失っていたのだ。
そんなダンテにフドウは――哀れみはおろか、何もない無感情な視線を向けてきた。
――当然だ。あのような小物に如何なる感情を向ける価値さえもないのだから……
そんなフドウの考えを知る由もないダンテはついに彼に手をかけようとし――
「〝裁火一閃〟!!!」
フドウはすれ違いにダンテに激しく燃え上がっている「降魔」を勢いよく振り上げた――
しばらく固まった2人だが――
「――ア゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ア゛!!!!」
ダンテの身体の斬られた箇所から炎が湧き出て――
「ア゛」
それが合図になったのか、ダンテの肉体が――バラバラに散らばっていった。
――「羂索」に縛り上げられる状態で肉体を盛り上げらせている事で肉体機能を歪ませているところにフドウの〝裁火一閃〟を受けたのだ。
ダンテの肉体が限界を迎え、散らばらされたのだ。
「ば、バガな゛ぁ゛〜〜!」
数多く床に転ばれていったダンテの肉体の一部――頭そのもののダンテは身の置かれている状況――敗北を信じられずにいる。
「わ゛、私の悪意が……石頭に゛ぃ゛ぃ゛〜〜!」
そう言い残したダンテは――それっきり黙るようになった。
それをまるでゴミを見るかのように凝視するフドウの口が開く。
「……悪意だろうが――善意だろうが――」
「暴獣海賊団に仇なす者はこのオレが焼き尽くしてくれる……!」
フドウは高らかにそう宣言する――
『暴獣海賊団 フドウ
VS
ソード王国 ダンテ』
『ソード王国城
「ある広間の戦い」』
『勝者 フドウ』