ソード王国の中心として建てられている城の中でさらに中心として設置されている「王の間」――
そこで暴獣海賊団とソード王国の間に勃発されている戦争の勝敗を決定するといっても過言ではない戦いが始まろうとした――
「「…」」
暴獣海賊団船長スサノオ――
ソード王国国王ゾグラティス・ルシウス――
両陣営の大将同士であるこの2人が対峙しており、見つめ合っていた。
ただそれだけで――戦いはおろか、まだ動きさえもみせてはいなかった……もっとも場は異様な威圧感に広げられているが。
そんな中でオレ達はしばらく互いに相手の動きに注目しながら構え続けていた……やがて
「〝クロノスタシス・拘束〟」
先に動いたルシウスはオレの周囲を球体状の光が包み込み、その〝時〟を止めようとした。だが
「――オォ!!!」
〝時〟を止められた筈のオレは覇王色の覇気を放った事で〝時〟の檻を打ち破れた。
力業で〝時〟の檻を打ち破れてきたオレにルシウスは感嘆したのか目を細める。
「ほぅ……なかなかの〝覇気〟じゃないか……」
「まぁな――オレは〝悪魔の実〟の能力だけじゃなく、〝覇気〟をも鍛えているんでな!」
素直に感心の表情をみせているルシウスにオレはそう言ってやった。
――覇気だけが全てを凌駕する。
親父がオレ達に修行を付けてやる最中でそう教えていた。
――〝悪魔の実〟の能力を持たないのにも関わらずに〝覇気〟のみで頂点に立てた者を知っている親父だからこその言葉だった。
真面目に聞き受けたオレもその言葉を見倣って、実の能力だけに頼り切らず覇気も重要視して鍛えるのを心掛けている。
その甲斐もあって、今も〝時〟を自在に操るというデタラメな能力にも対応できている。
「(確かに親父の言う通りだ……!)」
「(覇気が全て――〝時〟さえも凌駕するなんてな……!)」
自身の覇気が〝時〟の檻を打ち破れたという事態にオレもニャリとせずにはいられず、親父に感謝の意を覚えた。
そんなオレにルシウスは不敵な笑みを浮かべながら目を細める。
「……覇王色の覇気の持ち主――それも私の〝時〟の力を破れる程の練度……」
「――君の器はそれ程のようだ」
自身の能力を対応されている筈のルシウスは悔しがらずにオレを素直に高く評価する。そして言葉をも足してくる。
「だがね――」
そう前置きするルシウスから――突如強き〝圧〟が放たれた。
「!」
「この私もまた――覇王色の覇気を扱えるのだよ……!」
その強き〝圧〟――「覇王色」の練度に目を見開くオレにルシウスはそう得意気にしてきた。
「……なるほどなぁ、この練度――自分を〝世界の救世主〟として「世界支配」を考える程に自信を持つ訳だ」
ルシウスの覇王色の覇気の練度に対してオレの方からもそう評価する。だが――
「――だからって、ハイそうですかにはいかせねぇんだよなぁ!!」
オレからも「覇王色」を放ち――2人の「覇王色」が激突した。それは黒い雷のようなものが出る程で「王の間」を圧倒していた。
「「…」」
獰猛な笑みを浮かべるオレと不敵な笑みを浮かべるルシウスが見つめ合い――互いに駆け合った。
「〝クロノスタシス・加速〟」
ルシウスは自身のスピードを爆発的に上昇させながらオレにパンチ、キックの見事な連続的攻撃を叩きつけようとした。
「オォォ!!」
その攻撃にオレは「神武」で振り回す事で対応してやった。
「フッ――フッ――」
「ハァ――!」
ルシウスのパンチ、キックをオレは「神武」で防ぎ、こっちからルシウスを金棒で叩き付ける、大剣で斬り上げようとしてもギリギリでかわされ、または腕で防がされた。
そのように互角に戦っている中でオレはルシウスの強さに感嘆を感じていた。
「(なかなかの格闘センスだ……軍事国家の王として君臨するだけはあるな)」
「(しかも……オレの「神武」を受けられる程に練度が高い〝覇気〟を持っているな)」
ルシウスとやり合っている事でオレは彼の戦闘能力、〝覇気〟の練度の高さを分析していた。
「(……その上に〝時〟の力を持つ始末だ――さっき〝時〟の檻を打ち破れたが、だからってそれで対応する訳ではねぇだろうし)」
そう考えたオレはルシウスの〝時〟の力に対しての警戒を決めた途端に彼はまさに〝時〟による新たな技を放とうとした。
「〝クロノスタシス・奪取〟」
ルシウスは右の手のひらの上に球体状の光を浮かばせ――オレに当てようとした。
「……!!」
その光にイヤなものを感じたオレは受けるべきではねぇと判断し、かわしてみた。
「――まだまだだよ」
オレが光をかわしたのに眉をひそめたルシウスは微笑みを浮かべながらも左の手のひらにも光を浮かばせ放とうとした。
「オォ!?」
その光をもかわしたオレをそのまま逃さないようにルシウスは両手を連続的で放ち続けた。
「チッ!」
オレからも攻撃しようと「神武」を振るおうとするもまだ余裕がある足で防がれた。
ルシウスは光を浮かばせる両手をオレに向かって当てようと攻撃し、その一方でオレの攻撃を足で防がれていて余裕があれば腕で防がれた事もあった。
その格闘センスにやはり舌を巻いたオレは一旦後ろに下がった。
すぐ追いかけようとするルシウスを前にオレは彼の足元の床に「神武」を叩きつけ、そこから振り上げてやった。
「オラァ!!」
「おっと」
その振り上げから散らばられた衝撃にルシウスも一旦後ろに下がった。
そうして事態は一旦少し落ち着く事になった。
「……少しはやるね」
「……その――」
微笑みを消さずにオレの体さばきを褒め立てたルシウスにオレは口を開く。
「その光は何だ?――イヤなものを感じたが」
直感が働いたものの、その性質が分からなくて疑問符が尽きないオレが投げかけてみた問いかけにルシウスは微笑み――答えをみせる事にした。
「……みせてあげよう」
そう言ったルシウスは戦いの余波でできた岩盤に光を放った。
その岩盤は光に当たられた瞬間――なんと、粉々になり果てた――そう、塵と化されたのだ。
「!」
「驚いたのかい?――この光はね――〝時〟を奪うのだよ……」
――〝時〟を奪う事とは――「未来を奪う」ともいえる。
――例えば、人間相手に30年分の〝時〟を奪った時、対象となった人間は30年分老いる事になってしまうのだ。
全ての〝時〟を奪えば、その時点で余命はなくなり――絶命するのだ。
この技によるダメージは「傷病」ではなく「老化」である為に癒える事はなく、それ故に一つ一つの攻撃が必殺の一撃となっているのだ。
「……なるほどな」
その恐ろしさを理解したオレはこっちの対応方法に頭を回らせ始める。
「……君はどう行くのを考えるようだが――こっちも出方を変えるよ」
そう宣したルシウスは右の手のひらをオレに向ける。
「〝クロノスタシス・冥光〟」
「!」
その手のひらからレーザーが放たれてきた。だが、その光にも何かを感じ取れたオレは素早くかわせた。
そのレーザーはそのまま通り――オレの後ろの壁に穴を開けた。
「…」
それを目にしたオレはルシウスに視線を向け――言う。
「――それも〝時〟を奪うんだな」
「その通り」
オレの指摘にルシウスも肯定する。
――ルシウスの放ったレーザー――〝冥光〟は貫通効果がある上に〝奪取〟のように〝時〟を奪う特性を持っている。
先程の〝奪取〟より困難度が上がったのにオレは眉をひそめてしまう。そんなオレにルシウスは微笑みながら――
「さて、これならば――果たして避けられるのかな?」
そう口にするルシウスは両手をオレに向ける。
「!」
「〝クロノスタシス・冥光〟」
目を見開くオレにルシウスは構わずに〝冥光〟を放ち続けていった。
「チィィィ!」
その攻撃にオレもさすがに避けざるを得なかった。
襲いかかり続けてくる〝冥光〟にオレは身体を動かして避け続けた。
「…素晴らしい体さばきだね。君は避けるのが下手だと思っていたよ」
「……あ〜、そりゃオレでも痛ぇ攻撃があってな、それを避けた経験もあるからな」
かわし続けられているオレの体さばきに意外そうなルシウスからの言葉にオレはそう返した。
――そう、修行で親父とキングさんから受けた攻撃はそりゃ痛かった。
――痛ぇから、避ける術をも身に着けてきた。
その言葉に納得するかのように頷くルシウスは攻撃を変える事にした。
「――これはどうかな?」
「!」
ルシウスの放ったレーザーが軌道を変える――まるでムチのように振るわれていた。
「お!?オォ!?」
そんな不規則的なレーザーに肝を抜かれたオレもなんとか避け続けていた。その様子はまるで踊っているようで、人目から見れば滑稽かもしれなかった。
「ほらほら、危ないよ〜?」
「面倒だなぁ!!」
得意気なルシウスにオレも舌打ちした。
――だが、オレはただ避け続ける訳ではない。厄介な〝奪取〟、〝冥光〟に対しての対応方法をもう考えてある。
「(だが、それには――ここぞというところを待ちなければならねぇ……)」
そう考えたオレはかわし続きながら時機をうかがっていた。
「そこ!」
そんなオレにルシウスはレーザーを放つ。もはや追い詰められていると思われたオレだが――
「!!(ここだ!!)」
まさにその瞬間に時機を見つけたオレは「神武」の金棒を振るおうとした。
「オラァ!!」
レーザー――〝冥光〟を「神武」でそのままルシウスに向けて打ち返してやった。
「!!」
まさか〝冥光〟を打ち返された上に自身に向けてくるという事態にルシウスも目を見開いた。
つい動揺したルシウスも素早く〝冥光〟をかわせる。
「〝雷光八卦〟!!!」
「!!」
そんなルシウスにできてしまった隙を見逃さなかったオレは続けて斬撃を食らわそうとした。
場に大きな音が響かれた。
「…」
「神武」の大剣を振り下ろしたオレは視線を横に向ける。そこには――
「…」
ルシウスが立っていた。
――〝雷光八卦〟をルシウスは〝加速〟でなんとかかわせたのだ。
といえ、少し余裕をなくしているように見受けられているルシウスはオレに声を掛ける。
「……まさか、打ち返してくるとはね」
「まぁな」
――オレは〝時〟の力に対応する為に〝覇気〟の練度を高め続けてきた。そして大分高められた〝覇気〟を「神武」の金棒に纏わせ――
――せっかくだから〝冥光〟をそのままルシウスに打ち返すのも考え付いていた。
「どうだ?少しは思い知ったか?」
少なくともルシウスが動揺していたという事実に内心ガッツとしたオレに彼は眉をひそめるものの、すぐ微笑みを浮かべてみる。
「確かに――君はなかなかだね……!」
「――だがね……君達の敗北は避けられないよ」
「……?」
ルシウスが迷いなくそう断言した。
その言葉、自信満々な態度にオレも引っかかった。
「……随分な自信だな?――そんな未来でも見えてんのか?」
「そうだよ」
「!」
オレがそう言い捨てた言葉をなんとルシウスは肯定してきた。
「私はね……未来が見えるのだよ」
――見聞色の覇気は相手の覇気(気配・感情等)の動きを読み取る事によって、様々な情報を探知する事ができるが……
――超高度に極めていくと感情と気配の動きから未来予知(未来視)が可能になる事もある。
……といっても――人による差もあるが……長くてもぜいぜい数分先までが限界だろう。
……だが――〝トキトキの実〟の能力者になったルシウスは自身の周囲の〝時〟を加速させる事でさらに先の未来――1日後までも感知し先読みする事ができるようになったのだ。
しかも――1つだけではなく、いくつもの枝分かれした未来を全て予知で見る事ができるともいう。
練度が極めて高い見聞色の覇気と〝時〟の加速を合わせたからこその術だ。
それこそが――
「〝クロノスタシス・先見〟」
ルシウスの〝先見〟の効能にオレが険しい表情を浮かべるのに対して彼は微笑みながら口を開く。
「この術で見てきたよ……今から1日後までの間をね――」
「そこには――」
そこまで言うルシウスの微笑みが不気味な笑みへ化していく。
「――受けた被害が少なくはないものの、我がソード王国の勝利――そして……」
「君達の無残な敗北しかなかったよ」
「…」
ルシウスからもたらされたその予言にオレは反応をみせない。
「……少しは絶望したかな?」
口を閉じるオレにルシウスは今度はそう言ってみた。そんな彼にオレは指摘する事にした。
「〝先見〟とやらは――万能とは思えねぇな」
「……ほぅ?――なぜそう思うのかい?」
「お前の反応からそう思っただけだ」
「!」
オレの答えにルシウスは目を見開く――その反応にオレはさっきの動揺に続いて彼の〝素〟が現れてきたような気がした。
「……そりゃ、そうだろう?――オレとお前が初めて会った時は心から驚いているように見えたぞ」
「…」
「それに……オレとの戦いを予知で見てきたには――驚きをみせている上に動きが悪い気がするぜ?」
「…」
「――その事から〝先見〟とはアテになれねぇな……!」
「…」
「所詮、未来を知るとは――ただ可能性を知るだけに過ぎねぇだしな」
そう指摘するオレの言葉にルシウスは何も言い返せずにいる――ように見受けられていた。
「…(確かに――〝先見〟は……万能ではないかもしれない)」
ルシウスはそう考えていた。何せ――
「(彼の練度が高い〝覇気〟の成せる技か――彼あたりの未来には……ノイズが走っていて全く見えにくい……!)」
――ルシウスの見てきた未来の中での〝スサノオ〟の姿が――ノイズが走っているように安定していなかった。
これはルシウスが今まで発動してきた〝先見〟でもみられなかったパターンだ。
それに加えて、彼以外に関しても見てきた未来の中にはない動きと出来事も出てきている。
故に――〝スサノオ〟にルシウスが警戒を覚えるのも道理であろう――敗北の可能性をもたらす存在に不安を微かながらも覚えるのも。
――だが、ルシウスはそれでも不敵な笑みを消さずに浮かべ続ける。
「…(いざとなれば――あの〝技〟もあるからね)」
――その〝技〟の存在にルシウスは笑みを浮かべる。
それは〝奪取〟、〝冥光〟とはまた違う一撃必殺の技である。
その〝技〟は〝スサノオ〟もさすがに避けられないだろう。
……だが、〝スサノオ〟は強敵だ。ルシウスにとっても今の時点での人生初の「最強」だろう。
そのような者には全力を出さない訳にはいかない――ましてや「世界の救済」を邪魔される可能性が高いのであっては。
「……やはり全力を出すべきだね……!」
そう判断したルシウスはマントを投げ捨て――戦闘形態を高めるようにする。
「――さて始めよう……!」
そう呟いたルシウスは構え――「覇王色」を放つ。
「……上っ等!」
そんな彼にオレも「神武」を構え――「覇王色」を放った。
オレ達の「覇王色」が激突して「王の間」を震わせる――
――スサノオとルシウス。
――この2人の戦いは更なる激しさを迎える事になる。