ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第66話〝バグ〟

 「王の間」に黒い稲妻が激しく発生されていた。

 

「「…」」

 

 ――スサノオとルシウス。この2人は互いの「覇王色」が激突しながらもまだ動かずに睨みつけ合っていた。

 そんなところにルシウスが動き出した。

 

「〝クロノスタシス・加速〟」

 

 自身のスピードを最大限に上昇させたルシウスはオレに連続的両パンチ・キックを放った。

 

「〝軍荼利龍盛軍〟!!!」

 

 それに対してオレは「神武」の金棒を振り回し、連続突きの如く乱打を繰り出す。

 互いの連撃が激突し――張り合っているところに

 

「……!」

 

 ルシウスはパンチ・キックに加えて〝奪取〟、〝冥光〟をも放ってきたのだ。

 

「フッ!フッ!」

 

「……!!」

 

 しかも、その技さえを囮として使われている動きもみられていた。

 そのトリッキーな攻撃、さらにタイミングも不規則的になってきている事でにオレも戸惑われ、つい攻撃の勢いを殺してしまう。

 

「――ぬぉぉ!!」

 

 オレは怯んでいるように感じられた自身を叱るように襲いかかってくる攻撃、技――〝冥光〟を避けながら「神武」を勢いよく振り下ろす――が、それは罠だった。

 

「オォォ!?」

 

 突如オレは大声を上げた――オレの鳩尾辺りに傷を負わされてしまったのだ。

 ――ルシウスの本命である〝奪取〟を身に受けてしまったのだ。さっきの〝冥光〟はオレを釣る囮だった。

 それにまんまとつられてしまったオレは攻撃を受け、痛みに少し俯いてしまった。

 なお、〝時〟を奪う〝奪取〟でも練度が高い〝覇気〟で身を守っているオレの身体に傷だけで済んだのだ――その傷は深くて痛んでいるが。

 

「フッ!」

 

 その隙を逃さないルシウスは更なる攻撃を加えようとし――

 

「――オラァ!!」

 

「!」

 

「〝軍荼利泌弘万〟!!!」

 

 オレは「神武」の大剣も使う事で斬撃を加えて強化した連撃がルシウスを襲いかかる。

 〝加速〟でスピードを上昇させているルシウスでも全てを避けきれずに傷を負わされるようになる。

 今まで傷を負わずにいた為に余裕があったルシウスも微笑みを消しているように見受けられた。

 

「――大丈夫かぁ!?傷ができているぞぉ!!」

 

「…」

 

 オレからの挑発に対してルシウスはしかし、微笑みを浮かべ直す。そして

 

「〝クロノスタシス・掌握〟」

 

「!」

 

 なんと、ルシウスの身体に付けられている傷が消えていく――その様子はまるで〝時〟が巻き戻っているようだった。

 

「……〝時〟を巻き戻し、傷を元に戻しているのか」

 

「……あぁ〜いや……」

 

 そう分析したオレにルシウスも思わず声を上げた。

 オレの仮説に異議があるからだ。

 

「厳密には少し違うが――まぁ、それはどうでもいいか」

 

 ルシウスはそこまで言うものの、面倒なのかそれっきりにした。

 

「――確かにどうでもいいな!」

 

 オレもそう言いながら「神武」を振り回す。

 

「傷を元に戻す前にお前をさっさと叩き潰せばいいだけだ!」

 

 オレはそう〝軍荼利泌弘万〟の勢いを激しくするも

 

「〝クロノスタシス・支配〟」

 

 ルシウスが更なる技を発動させた。

 ――それは相手の身体を球体状の光で包み込む事で支配権を奪う仕組みだ。

 

「――んオラァ!」

 

 だが、オレは力業で支配権を奪い返し「神武」の金棒をルシウスに叩き潰そうとした。

 ――だが、その瞬間に

 

「〝クロノスタシス・拘束〟」

 

 オレの周囲を球体状の光が包み込んだ。

 ――実は〝支配〟を打ち破られる事態も予想内であったルシウスは密かに準備をしていたのだ。

 彼はまず、攻撃を身に受けながらもオレの〝時〟を一時的でも止めておく。

 

「〝クロノスタシス・冥光〟」

 

 その次に後ろに吹っ飛ばされるも体勢を立て直したルシウスはその一時的時間を逃さず、素早くオレに〝冥光〟を放った。それも今までより大きな規模の。

 その〝冥光〟を避けようにも――オレは〝拘束〟で〝時〟を止められていて、その〝時〟の檻を打ち破って再び動き出すまでには時間が少しかかってしまう。

 これでは〝時〟の檻を打ち破るのに手間かかってしまうオレを〝冥光〟が貫くのだろう。

 

「!」

 

 このまま〝冥光〟がオレに迫っており、もはや万事休すか――そう思われたら

 

「――〜〜!!」

 

 その途端にオレの筋肉が青筋を立て脈動する。

 

「――オラァ!!」

 

 オレはまず、〝時〟の檻を打ち破り――まさに迫ってきている〝冥光〟から自身の身体を全力で無理矢理動かし――ギリギリでかわしてみせた。

 

「!!」

 

 まさに万事休すかと思わさせる状況をまたしても力業で打ち破れたオレにルシウスも驚愕を隠せなかった。そんなルシウスにできた隙を見逃すオレではなかった。

 

「――くらえ!!」

 

「!」

 

 今度は自身に迫ろうとするオレに我に返ったルシウスは自身の失態を悔やむ余裕もなくかわせようとするが。

 

「〝雷鳴八卦〟!!!」

 

 尋常ではないスピードを発揮したオレの金棒をただ受けてしまう。

 

「オォォォォ!!」

 

 勢いよく吹っ飛ばされたルシウスは壁に叩きつけられる。そのまま少しぐったりする。

 

「…」

 

 そんなルシウスにオレが近付いてみる。

 

「…」

 

「!」

 

 そんなオレに対してルシウスは何の事はないように立ち上がってくる――おそらく彼自身のプライドにかけて弱さを見せない為だろう。

 

「……あん?」

 

 そんな姿からオレはある事に気付く。

 

「ん……何かな?」

 

「……傷を消さないのか?」

 

「あぁ、そっちか」

 

 オレの様子に首を傾げるルシウスもその問いかけに納得し、答える。

 

「――君は強い。〝掌握〟を発動する余裕がないし、体力をもうこれ以上消費する訳にはいかないからね」

 

「……なるほどな」

 

 その答えにオレも納得し

 

「――つまり、これからは本格的になるって事でいいかぁ?」

 

「――そうなるかもね」

 

 闘志が高まってきたのを感じ獰猛な笑みを浮かべたオレにルシウスも負けじと笑みを浮かべる。なお、その胸中では

 

「(……もはや――あの〝技〟しかないようだね……!)」

 

 そう考えていた。

 だが、それを知る由もないオレとルシウスはしばらく睨み合い続けるが――

 

「!」

 

「…」

 

 ルシウスはオレに両手を掲げる。

 

「――また〝拘束〟か!?それはもう食らわんぞ!」

 

 だが、そんなの関係なしにオレは怯まずにルシウスに向かって駆けていった。もちろん〝拘束〟に警戒を忘れずにだ――だが

 

「〝クロノスタシス・追放〟!!!」

 

 ルシウスが仕掛けようとしたのは〝拘束〟ではなかった。

 ルシウスがそう叫んだ途端にオレの身体が光り輝き始めた。

 

「何だ!?――だが!!」

 

 オレは今までの対応方法――覇王色の覇気を放ち、ルシウスが放った何かの技を破ろうとするが――

 

「……!!?」

 

「無駄だよ!」

 

 オレにかかっている技が破られるどころか、輝きがさらに強まっていく。

 

「オレに何するつもりだ!?」

 

「なに――ただ、未来へ送ってあげようと思ってね!」

 

 身を置かれている状況を理解できないオレもたまらず投げかける疑問にルシウスはそう答えた。

 

 

〝クロノスタシス・追放〟――

 

その技はただ――物質だろうが、人間だろうが、対象とされるものを自身が定めた未来の時間に飛ばすだけの技だ。

しかし、定めた未来の時間へ送られる――すなわち、その時間までは世界のどこかにも存在していないといってもいい。

例えば、敵わない強敵を未来へ送る事で苦境を乗り越えられる事も可能な故に――まさに一撃必殺の技とみられても過言ではないだろう。

 

 その〝追放〟でルシウスはスサノオを100年後の未来へ飛ばすつもりだ。

 

「オォォォォ!!!!」

 

 自身にかかっている輝き、違和感が強まってきている事態にたまらず悲鳴を上げるオレにルシウスは油断を捨てないものの、勝ち誇ったかのように笑みを浮かべる。

 

「終わりだよ!!」

 

「オォォォォ!!!!」

 

 オレの身体の輝きが最高限に高まり、ついにオレが未来へ飛ばされようとし――

 

「――オォォォォ!!!!」

 

「!!?」

 

 その瞬間、ルシウスの顔が驚愕の表情と化した。

 ――未来に飛ばされようとする筈のオレから放たれている覇王色の覇気が突如さらに高まってきたからだ。

 その濃さはルシウスの〝覇気〟を圧倒する程へ化していった。

 

「これは……!!」

 

「オォォォォ!!!!」

 

 驚愕するルシウスをよそにオレは勢いよく身体、「神武」を振り回しているうちに――身体を覆っていた光が……ビシッと剥がれてきた。

 

「!!!?」

 

「オォ!?」

 

 驚愕、そして動揺したルシウスをよそにオレは混乱していながらも場に留まっていた。

 

 ――そう、スサノオは〝クロノスタシス・追放〟さえまでも打ち破ったのだ。

 

「まさか……!!!」

 

 まさか〝追放〟までも打ち破られたという事実にルシウスも動揺を隠せずに冷や汗をかいた。

 一方でオレも息を荒くしていた。

 

「ハァハァ……まさか、こういう技まであるとはな……めちゃめちゃ焦ったぞ……」

 

 そう言うオレの顔に冷や汗をかいた。

 〝追放〟に対してスサノオも当然ながら人生で最高に焦りまくっていた。

 

――オレを未来へ送る?

 

――親父、ヤマト。皆がおそらくいないだろう未来へ飛ばされる?

 

――そんなの冗談じゃねぇ!!!!

 

――未来でも過去でもない今を――

 

――皆と共に生きていくんだぁ!!!!

 

 親父、ヤマト。百獣海賊団と暴獣海賊団の皆を思い浮かんだオレは極限的に追い詰められている事で〝覇気〟がさらに爆発的に高まり――その勢いが〝追放〟を打ち破れたのだ。

 といえ、打ち破れずにあっけなく未来へ飛ばされるのを想像してしまったオレはブルッとした。

 

「……ルシウス」

 

「!!」

 

 少しよろめいたオレからの声掛けに警戒しているルシウスも警戒を強める。

 

「……ありがとな」

 

「!!!?」

 

 だが、意外な事にオレはルシウスに礼を言った。

 まさかの礼をいわれるという矛盾的な事態にルシウスも訳が分からずに混乱しているところにオレは言葉を続ける。

 

「おかげで――「敗北」ってやつを少し味わえたぜ」

 

 ――オレは「最強」を目指している。それは今でも変わらねぇ。

 ――だが、オレは勝ち続けてきた……それはすなわち、オレは挫折ってやつを知らずに生きてきたといえる。

 〝最強生物〟とも称されている親父もああみえて、過去に挫折ってやつを知った事もある――だからこその今の強さかもしれねぇ……

 その事実から察するようにこのオレでは果たして――「最強」になるのだろうか……?

 そう考えたオレはやがて〝挫折〟ってやつを味わいたいと考えるようになっていた。

 それを味わえば「最強」に近付ける――そう思ったからだ。

 そんなオレにさっきのような状況は真にちょうど良かった。

 今回はあまりにも〝敗北〟ってやつを実感した体験で身体――血――心臓も凍られた気分だ。今も心臓が強く打っている。

 ――だが、故にさらに強くなれた。

 

「だから、ありがとよ」

 

「……それはどういたまして――その礼として、ここから去ってくれるのかい?」

 

 その理由を聞き、納得できたルシウスは試しにそう言ってみるも

 

「いやぁ……これはこれ。それはそれだな」

 

 悪いが……戦いは戦い。余程の事情がねぇ限り、辞める訳にはいかねぇからな。

 

「そうかい――なら」

 

「――やるしかないねぇ……!」

 

 もはや追い詰められたといっていい状況に身を置かれた事で腹をくくったルシウスは今度ももう一度〝追放〟を発動させようとする。今度は――全力、全ての〝覇気〟を込めてだ。

 ――みたところ、スサノオもさっきの〝追放〟打ち破るのに〝覇気〟を多く使い切らさせられている。つまり、こここそがスサノオを倒す最大のチャンスだろう。

 ――といえ、〝追放〟を真正面から打ち破れた程に濃い「覇王色」を放ってきた男だ――おそらくチャンスは1回きりだろう……

 ――だからこそ、その1回に全てを込める!!!!

 

 そう決意したルシウスにオレは――

 

「オォォォォ!!!」

 

「!!!?」

 

 目を見開くルシウスの目前にオレは迫ってきた。

 そんなオレにルシウスはすぐ冷静さを取り戻し――技を発動する。

 

「〝クロノスタシス・追放〟!!!」

 

「〝雷電八卦〟!!!」

 

 オレは自身にかかろうとする〝追放〟の光を――ルシウスの身体ごと斬り捨てた。

 ――そこをさらに叩き潰した。

 

「……げぽっ」

 

 身体を斬り捨てられ、叩き潰されたルシウスはオレに視線を向け――

 

「……!」

 

 目をいっぱい見開き――床に倒れ込んだ。

 

「…」

 

 そんなルシウスを見下ろすオレに彼自身は苦し紛れに口を開く。

 

「……〝スサノオ〟。君の存在を見違えたのが私の最大の過ちのようだ」

 

「?」

 

「……未来を見てきたよ――それも1日後ではなく、遠く先のね……」

 

 どうやら〝雷電八卦〟を受けた後にオレを見た事でルシウスは無意識に〝先見〟を発動させたようだ。

 死に際で発動したのもあってか、本来なら1日が限度だった筈が――能力が高まり、それより先の未来までも見てきたらしい。

 オレに関して訪れるであろう如何なる未来を見てきたルシウスが断言する。

 

「……君は――世界に……〝運命〟に大きな影響を与える異物――〝バグ〟であるのは間違いないね……!」

 

「!」

 

「……だとすれば――」

 

「この……私は――世界の救世主としてではなく……君の糧として生まれた……訳だ――」

 

 自身を卑下するような言葉を口にしたルシウスは――驚いた事に笑みを浮かべた。

 それは怒り、屈辱感、無念等の負の感情も存在しなく、そして今までの不気味な笑みでもなかった。

 ――実に晴れやかな笑みだった。

 

「――不思議だ。普通なら悔しい気分になるのに――」

 

「……なぜか、晴れやかな気分になるんだ」

 

「…」

 

 晴れやかにそう言ってくるルシウスにオレは何も言えなかった。

 

「……君の行き先をこの目で直に見てみたかったが……まぁ、後の祭りだね……」

 

 しまいにはその事を心から残念がっているようにみられたルシウスはその言葉を最後に――息絶えた。

 ただの屍と化したルシウスに向かってオレは口を開く。

 

「……どう生きるかは自分で決めるってもんだぜ」

 

「……未来でどうであれ――ただ今を生き抜けてみるのみだ」

 

 オレのその言葉にルシウスの屍はしかし何も言わない。

 

 

『暴獣海賊団 スサノオ

  VS

 ソード王国 ゾグラティス・ルシウス』

 

『ソード王国城

「王の間の戦い」』

 

『勝者 スサノオ』

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