ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第67話〝激変〟

「いいぞ!このままやれ!!」

 

「やれやれ――!!」

 

「クソッ!!海賊のくせに!!」

 

「マズイな、このままでは負けるぞ!!」

 

 城の前での暴獣海賊団とソード王国の戦いはいよいよ佳境に入ろうとしていた。

 その情勢とは――暴獣海賊団の方がソード王国を圧倒しているという状況であった。そのまま「漆黒の使徒」が全滅されるのか――そう思ってたら

 

「「「……!!?」」」

 

 突如それは起こった。

 大きな音と共に地が揺られているところに戦っていた人々も固まった。

 また大音が響かれて、その源らしい城に人々が一気に視線を向けてみると――

 

「「「!!?」」」

 

「し、城が……」

 

「動いている!?」

 

 城がまるで命を持っているかのように動き出していた。しかも――城の所々から触手が湧き出てきた。それは黒くてまるで生きているかのようだった。

 

「キモっ!!」

 

「な、何なんだ!!」

 

 そんな城の異常な変貌に人々も敵味方関係なく動揺を隠せなかった。

 ……実は――ソード王国の中心として建てられている城には移動要塞として使用する為に研究から得られた〝悪魔の実〟由来のエネルギーを宿らせておいたのだ――ただし、まだ未完成である。

 未完成な故に暴走の危険性を持っている城を制御するのに一役買っていたのが――ルシウス・ゾグラティスであった。彼の強大な力により城は暴走せずに大人しくしていた。

 だが、彼は――死んだ。もちろんその死を合図にソード王国の城に眠っていた意思が目覚めてきたのだ。

 暴走した城が城下の人々を叩き潰そうとする。無論、暴獣海賊団なのか「漆黒の使徒」なのか関係なくだ。

 

「「「うわぁぁぁ!!!」」」

 

「ヤベェぞ!」

 

「逃げろ!」

 

 城からの鉄槌に人々が逃げ惑っていた。

 

「!ヤベェ!!」

 

 ある海賊達を巨石が襲いかかろうとし――

 

「〝裁火一閃〟!!!」

 

「〝雷鳴八卦〟!!!」

 

 粉砕された。

 ――ヤマトとフドウによって。

 

「!!――ヤマトさん!フドウさん!」

 

「大丈夫!?皆!」

 

「お前達は避けるんだ」

 

「「「はい!!」」」

 

 そんな少しした会話を終えたヤマトとフドウは城を相手に立ち向かっていった。

 そして彼らだけではない。

 

「〝地裁〟!!!」

 

「〝滅式〟!!!」

 

 ジャック、ハクジ。城内で戦ってきた海賊達も城の外に出て城に立ち向かう。

 ――もちろん、この人達もだ。

 

「――随分な大事ね」

 

「疲れているのに……」

 

 小紫――私とマリアも城の外に出てきていた。

 

「「……!」」

 

 そんな私達にも城の鉄槌が容赦なく襲いかかってくる。

 

「……!」

 

「マリアは待ってて!」

 

 構え出すマリアを待機させる私は迫ってくる巨石に対して駆け寄っていく――無論斬るつもりだ。

 鉄さえ斬るようになってきた私でもあまりにも巨大な岩石を斬るのは至難の技である……筈だが。

 

「(……私は――)」

 

 迫ってくる巨石に私は駆けながら思案に耽る――

 

「(――強くなる為に修行を続けてきた)」

 

 そう――強くなる為に女の子が受けるにはあまりにも過酷な修行を私は逃げずに受け続けてきた。

 過酷な修行を思い出してきた私はカッと目を見開き――巨石に向かって勢いよくジャンプした!

 

「(あの修行の結果を試みる機会だ!)」

 

 そうして約4年。続けてきた鍛錬の結果が今ここで――ついに花咲く。

 

「〝天地決別〟!!!」

 

 私はさっきから力――〝覇気〟を全て込め続けてきた刀を勢いよく抜き放った。

 その放たれた刀が巨石を――両断していった!

 しかも、その斬撃は消えずにそのまま城にも伝わっていく。

 半分ぐらい損傷された城から大きな音が出てきた――まるで悲鳴を上げるかのように。

 

「――小紫!すごい!!」

 

 そんな城の様から着地した私にマリアがそう感嘆の声を上げたが。

 

「――いいえ、まだよ!」

 

 だが、私がそう注意した。

 その注意通りに城は弱っているもののまだ動いていた。そして、今までよりさらに激しく人々を叩き潰そうとし――

 

「〝熱息〟!!!」

 

 突如大きな火炎が城を粉砕した。

 

「「「!!!」」」

 

 その事態に人々が目を大きく見開く。そして上空に視線を一気に向ける。

 そこには――〝竜〟が飛び浮かんでいた。

 粉砕された城がようやく動きを止めたのを確認した〝竜〟は大声を上げた。

 

「無事か!!お前ら!!」

 

「「「オォ!!」」」

 

「無事です!!」

 

「さすがスサノオさんだ!!」

 

 〝竜〟――スサノオからの呼びかけに海賊達が歓声を上げた。

 そんな様子を目にした私もつい微笑んだ。

 

「……すごい。スサノオさんは」

 

 続いて視線を向けてみたスサノオさんの姿に私は見惚れていた。

 

「(……そういえば――暴獣海賊団だけだったな……私の姿勢を否定せずにいてくれたのは……)」

 

 私はふと――そんな事を考え始めた。

 ……狂死郎――傳ジロー、そしてシャンクス。彼らが私の姿勢、覚悟を否定している。そんな中で否定していなかった暴獣海賊団の心地良さを自覚できた。

 

「(……何や言って楽しいよなぁ)」

 

 私がそう考えて苦笑していて、しかし微笑んだ――その瞬間だった。

 

――浅ましい。

 

「!?」

 

 突如響かれた声に私は目を見開く。そんな私に容赦なく響かれる。

 

――お前は復讐を誓っておきながら――

 

――海賊共に尻尾を振るのか?

 

「誰!?」

 

 私が周囲を見渡してもそれらしき姿は見当たらず、ただ声が響かれているだけだった。

 混乱する私に声が容赦なく響く。

 

――父、母を殺されておきながら、よりにもよってその元凶に身を寄せて媚びを売っている……

 

――まさに、風上に置けない小物よ……!

 

「出てこ――……!」

 

 いくら見渡してもそれらしき姿が見えにくいのにイラつきを覚えていた私の前に〝それ〟が姿を現した。

 

「あ、あぁ……!」

 

 〝それ〟に私は言葉をなくす。

 〝それ〟は――全てを失ったあの日の幼い私の姿だった。

 〝私〟が私を睨みつける。

 

――光月日和……小紫。

 

――お前はあまりにも浅ましい人間よ!

 

――生きる価値がない!

 

「黙れぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

 

 

「うわっ!?どうしたの!?小紫!?」

 

「!!?」

 

 その声に私はハッとする。

 そして勢いよく周囲を見渡してみると――

 そこはさっきと同じ場だった。

 

「小紫?」

 

 混乱している私をマリアが心配そうに見ていた。

 

「……私は?」

 

 少し冷静になったものの、混乱している私にマリアは説明してくれた。

 

「えぇ――あなたが突然膝をついて――意識を失ったらしいわ」

 

「私がしばらく様子を見ているとあなたが突然叫んだのよ」

 

「……そう」

 

 その説明に混乱を収めた私は声を出すものの、その音色は暗かった。

 

「小紫?何があったの?」

 

「……大丈夫よ。心配してくれてありがとね」

 

 心配してくれているマリアに私はそう言っておく。

 いかにも危うしい様子の私からそう言われても納得できないマリアはそれでも――これ以上何も言えなかった。

 そんなマリアに背を向ける私は〝私〟からの声に関して考えてしまう。

 

「……私は」

 

          ●

 

 オレに城が粉砕されたのを見てしまった「漆黒の使徒」はその事態に非常に恐れ入った。

 

「う、うわぁぁぁ!!」

 

「に、逃げろぉ!!」

 

「あ!おい!待て!」

 

「逃げんなぁ!コラァ!」

 

 今起こっていた出来事からルシウスの死、ソード王国の敗北を悟った「漆黒の使徒」が逃げようと慌てだしくなった。それを海賊達が追いかけようとするが。

 

「ぶぼぉ!?」

 

「がぁ!?」

 

 だが、逃げようとした「漆黒の使徒」が突如吹っ飛ばされた。

 その事態に海賊達も残りの「漆黒の使徒」も呆気に取られたところにそれは現れた。

 

「――逃さないぞ!!お前達!!」

 

「終わりだぁ!お前達ぃ!」

 

 突如現れた新たな勢力にその身元を知っているらしい「漆黒の使徒」が顔をしかめていた。

 

「れ、〝レジスタンス〟か!!」

 

「「「〝レジスタンス〟?」」」

 

 

〝レジスタンス〟――

 

それはソード王国の圧政に反抗的な人々で結成されている組織である。

彼らは自由と平和を掴み取ろうとソード王国と戦い続けてきたが……その強大な力に劣勢を強いられていた。

そこに起こった暴獣海賊団の襲撃が事態を一変させた。それを好機だとみなした彼らは動く事にしていたのだ。

 

「やっつけろぉ!!」

 

「「「オォ〜〜ッ!!」」」

 

「「「う、うわぁぁぁ!!」」」

 

 気力旺盛な〝レジスタンス〟により負担している上に敗北のショックを受けたばかりな「漆黒の使徒」はあっけなく全滅される事になる。

 そして

 

「海賊はどうします!?」

 

「知れた事!倒すんだよ!」

 

「おぉん!?やんのか!」

 

「上等だ!」

 

 〝レジスタンス〟は続いて暴獣海賊団を倒そうとする。

 海賊である為に敵だと殺気出す〝レジスタンス〟に海賊達も構えるが――

 

「待って!」

 

「「「!?」」」

 

 その声に場にいる人々が動きを止める。

 そこに声の主が姿を現してくる。それこそが――

 

「シエルさん!」

 

 〝レジスタンス〟のリーダー、グリンべリオール・シエルである。

 リーダーを務めるだけはあって凛々しい彼女は――

 

「あなた方の船長はいらっしゃいますか?交渉したいんですが?」

 

「シエルさん!?」

 

 シエルの宣いに〝レジスタンス〟が驚愕し、声を上げるが

 

「海賊だろうが――疲労している者を攻撃する訳にはいきません」

 

「ですが「それに……」―!?」

 

「まだ何かを隠しているようですし」

 

 そうシエルは警戒感をみせていた。

 ――彼女は勘付いたのだ。暴獣海賊団の強さに。もしかしたら〝レジスタンス〟でも敵わない程かもしれない。

 ――だからこそ、彼女は今の状況から交渉に移行しようとする。

 

「だ、だが「ここにいるぞ!」なぁ―…!?」

 

「「「!!」」」

 

 その声に人々が上空を見上げると――〝竜〟が飛び浮かんでいた。

 その威容に〝レジスタンス〟が慄いている中、オレは口を開く。

 

「安心しろ、オレ達はソード王国――あ〜…ルシウス・ゾグラティス率いる勢力と戦いたいだけで、その他の勢力に手を出さねぇよ」

 

「まぁ……降りかかる火の粉は払うがな」

 

 オレの宣言、加えて足しておいた脅しに〝レジスタンス〟は安堵、恐怖の合わせられる複雑な感情を抱えていた。

 そんな中でシエルは相変わらず凛としていた。

 

「――我々もあなた達が手を出さない限り、動きません」

 

「……じゃあ、問題はねぇな」

 

「えぇ、そのようですね」

 

 彼女の強気な態度を気に入ったオレはニャリとしながら言い、シエルも頷いた。

 

「交渉しよう」

 

「えぇ」

 

「だが、その前に――」

 

 オレは皆を見渡して――雄叫びを上げる。

 

「お前らぁ!!この戦争!!オレ達の勝利だぁ!!!」

 

「「「オォォォォ〜!!」」」

 

 

――こうして暴獣海賊団とソード王国の戦争は暴獣海賊団の勝利で幕を下げた……

 

          ●

 

それから数日後。

 

 ソード王国は暴獣海賊団により国王ゾグラティス・ルシウスと幹部陣が撃破され、空位になっているところを〝レジスタンス〟が務める事になった。

 そのリーダー、グリンべリオール・シエルを王とする新生ソード王国が再誕したのだ。

 シエルとオレの会談により、新生ソード王国は百獣海賊団のナワバリと化した。

 暴獣海賊団もソード王国との戦争を起こした理由である目当てのものは戦争の余波で半分程度しか手に入れられなかった。まぁ、手に入れられないよりマシだ。

 シエルとの会談、新生ソード王国の周遊をもしてきた暴獣海賊団は新たな冒険を求めて新生ソード王国を去っていった。

 無事に新たな航進をしている暴獣海賊団だが――

 

「――で、なぜこの2人がいるナリ!?」

 

 うるティがそう叫びながら指を向ける先には――

 

「…」

 

「アハハ♪」

 

 なんとソード王国の幹部であったゼノンとヴァニカが何の事はなく立っていた。

 この2人がカイリュー号に乗っていた。なぜ、乗っていたというと――

 

「……オレはヤマトに連れられただけだ」

 

「私はね〜楽しそうだから、ここに入るよ♪」

 

 そう苦々しい表情を浮かべているゼノンは実はヤマトに無理矢理連れ出されていた。

 一方でヴァニカは――キサメとうるティとの戦いを大分楽しめられた彼女は暴獣海賊団に入れば、血の滾る戦いができる筈だと思い、オレ達についていってきたのだ。

 

 つい戦ってきたばかりの敵が仲間になるというのは――

 

「……まぁ、ウチは既にハクジを仲間にしているし――その上に」

 

 苦笑しているオレが視線を向けるとそこには――カイリュー号の後ろを進む船が1隻。

 その船こそが――

 

「オ゛ォ゛……ごれ゛が――海が」

 

「オ゛ォ゛〜…」

 

 ラウフェイとメニヤの乗用として改造を加えたソード王国の船であった。

 最初から仲間にしようと考えていた彼らももちろん連れ出してきたのだ。

 ――ただ、彼らの身体が大きすぎてカイリュー号には乗せられなかった。故にもう1隻の船を要したのだ。

 ――とにかく、初めて見たらしい海に無邪気にはしゃいでいるラウフェイとメニヤを目にした者達は頷く。

 そもそも――敵だろうが、強ければ過去を水に流して受け入れる。それが百獣海賊団のやり方である。

 その系譜である暴獣海賊団も2人を受け入れない筋がどこにあるのであろう?

 

「……しかし、どういうつもりでゼノンを連れ出したんだ?」

 

 といえ、やはり気になるオレはゼノンを連れ出したヤマトに問いかけてみる。

 

「……気に食わないんだ」

 

「?」

 

 問いかけられたヤマトからのその言葉にオレ、そしてゼノンが首を傾げる中、ヤマトが叫んだ。

 

「このゼノンは!――まるで――心が空っぽな人形のようで気に食わない!!」

 

「だから――僕がお前を熱く――そう!まるで心を持つようにしてやる!」

 

『ゼノン!』

 

「!!!」

 

 ヤマトの激烈な勢いでのそんな宣言にゼノンは目を大きく見開く。

 その姿からやはりアレンを思い出してきたからだ。

 

「ゼノンは僕が責任持って見るよ!」

 

 ヤマトがそう主張するのに続いてゼノンも口を開く。

 

「……まぁ、敗者のオレが言える事は何もないからな……」

 

「私を仲間に入れてよ〜敵を殺してあげるから〜」

 

 ゼノンがどのような判断だろうが受け入れる構えを取っていた……なお、ヴァニカのアピールも加えられていた。

 ヤマトの主張とゼノンの態度、おまけにヴァニカのアピールしに苦笑したオレはしかし晴れやかに笑った。

 

「――あぁ、お前達の入団を認めよう」

 

「ただし!入った以上、ここのルールを守ってもらうぞ!特にヴァニカ!」

 

 オレの宣言、忠告にゼノンとヴァニカも頷いた。

 

「……まぁ、いいだろう」

 

「OK♪」

 

 

――こうしてソード王国の〝ゼノン〟と〝ヴァニカ〟は暴獣海賊団に加入した。

 

――国に勝利した暴獣海賊団は晴れやかに冒険を続けた。

 

――ただ

 

 

「…」

 

 楽しげに騒いでいるオレ達を暗い目で見つめている影――小紫がいた……

 

 

――何らかの火種も付いてきながら……

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