ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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闇相対編
第68話〝裏での蠢動〟


〝聖地〟マリージョア――

 

 その中心であるパンゲア城の中の一室に5人のある老爺達――「五老星」が座していて、いつものように議論を行っている……が、その空気は深刻な空気だった。

 どうにもイラついているように見受けている彼らはテーブルに置かれている手配書を凝視していた。

 その手配書に載せられている顔とは――

 

『〝暴獣のスサノオ〟

 懸賞金7億5500万ベリー』

 

「――またコイツか!!」

 

「あぁ……しかも、あの〝ソード王国〟を落としたとは――」

 

 「五老星」は〝暴獣のスサノオ〟と率いる海賊団の活躍に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。

 

「……あの〝ソード王国〟を落とされたのが痛いな……!」

 

「あぁ……あそこの〝悪魔の実〟関連の研究には目が光るものがある。その効果はそれこそ「パンクハザード」にも負けない――むしろ勝っているかもしれん」

 

「だからこそ――「世界支配」を密かに企んでいても見逃してきたというのに……」

 

 「五老星」にとっては〝ソード王国〟の〝悪魔の実〟関連の研究には利用価値が大いにあった。

 それ故に――実は「世界支配」が露見されているにも関わらずに〝ソード王国〟を見逃してきていたのだ。

 それを落とされたという事実に「五老星」はその下手人である〝暴獣のスサノオ〟にイラつきを感じられずにはいられなかった。

 ――とはいえ、いつまでも惜しがらずにはいられない。

 

「……あの〝カイドウ〟を相手にしたくはないから、今までお茶を濁し続けてきたが……」

 

「――ここまで来ると……さすがにもうこれ以上、指をくわえて見る訳にはいかぬ……!」

 

「その通り――そろそろ〝暴獣のスサノオ〟と奴が率いる〝暴獣海賊団〟に手を打つべきだ……!」

 

 その意見に対する異議が出てこない時点で「五老星」の総意はまとめられた。

 

「――〝CP9〟を動そう……!」

 

「あぁ……ちょうど――〝あ奴〟がいる」

 

「――〝あ奴〟を呼べ……!」

 

 

――〝暴獣のスサノオ〟をとうとう無視できなくなっていた「世界政府」は〝暴獣海賊団〟に対して動き出そうとする……

 

          ●

 

どこかの島

 

 その島に寄った暴獣海賊団はそこで――宴をしていた。

 

「リュドドドド!楽しんでいるかぁ!お前らぁ!」

 

「「「オォ!!」」」

 

 オレからの声に皆も楽しげに応えてくれた。その声、態度にオレも満足気に頷く。

 

「おぉう!いい声だなぁ!――ここでゆっくりしろよ!リュドドドド!」

 

 オレからの言葉に皆は従って宴を楽しんでいった。

 そんな和気藹々としている中で――ヤマトはある人物に声を掛けていた。

 

「――どうだい?ゼノン!」

 

「…」

 

 無表情なゼノンはその声に何の反応も見せない。だが、その様子に慣れたのかヤマトは気にせずにその隣に腰を掛ける。

 

「……面白い?」

 

「…」

 

 ゼノンは今――読書していた。

 ――彼はアレンの死以来、全てをソード王国に捧げるのを決心し、その通りにし続けてきた。

 その為に趣味を特に何も持ち合わせていない彼は暴獣海賊団に無理矢理入れられて以来、ヤマトから趣味を持つべきだと勧められ続けていた。

 ……しつこい勧誘に負けたくはないが――といえ、ソード王国から追放されたといってもいい状況に置かれているゼノンは確かに何もしないのはアレだと考えるようになってきた。

 そんな彼はとりあえず、まずは自身の知識を積み重ねてみようと読書をする事にした。さすがカイリュー号の中に配置されている図書室に置いている数々の本の内容はなかなかだった。

 

「……まぁ、暇潰しになれたがな」

 

「おぉ!――まぁ!読書も趣味になれるし!」

 

 やっと答えられた事に喜びを感じたヤマトにゼノンはジロリと視線を向ける。その鋭い視線にヤマトも気付く。

 

「?どうしたの?」

 

「……随分と余裕だな」

 

「!」

 

 といえ、能天気にしているヤマトの様子にどこか呆れているところを持つゼノンは重々しく口を開く。

 

「……このままで終わるオレじゃない」

 

 そこまで言い付けるゼノンはヤマトを睨みつける。

 

「……オレは――更なる力を身に付けて――」

 

「今度こそお前らを潰す」

 

「――アハハ!そうか!」

 

 暴獣海賊団への逆心とも受け取れるゼノンの宣言にヤマトはしかし晴れやかに笑った。

 そして、凛々しい笑みになり

 

「――いつまでも受け立つよ!」

 

 そう言いきったヤマトは立ち上がる。

 

「じゃあね!」

 

「…」

 

 手を振りながら歩いていくヤマトをしばらく凝視していたゼノンは目下の本に視線を戻す。

 ――なお、その口角が微かだが――上がっていた……

 

          ●

 

「ヤマトちゃん♪うるティちゃん♪」

 

「あ!ヴァニカ!」

 

「あぁ!?何の用ハマハゲ!!」

 

 あれから宴の中を歩き進んでいたヤマトはうるティと会い、話に花が咲いているところに突如ヴァニカが声を掛けてきた。

 狂気ながらも活発さを持っている彼女とヤマトはある程度意気投合できたらしく、彼女の登場をヤマトは寛容に受け入れた。

 一方でヴァニカをなかなか受け入れていないらしいうるティは彼女に向かって啖呵を切っていた。

 だが、ヴァニカはうるティの態度を気にしていなかった。むしろ、それどころか

 

「ハマハゲ!?」

 

 うるティの語尾に目を見開くヴァニカはすぐ頬を膨らませ

 

「――私は見ての通り、艶のある黒髪をしているよ!ハゲじゃないもん!」

 

「あぁ!?何を言ってんだハマハゲ!!」

 

「はぁ!?」

 

 その文句の意味をうるティは理解できず、そう怒鳴り返した。

 そんな返しにヴァニカも怒りを超えて疑問符が頭内を占めてしまう。

 訝しげにするヴァニカに見かねたヤマトは耳打ちしておく。

 

「……あのね、ハマハゲとは――……」

 

「……プハハハハ!!そういう意味!?」

 

 ヤマトによりハマハゲの意味を知ったヴァニカは滑稽さに吹き出した。

 

「――何でハマハゲなの!?」

 

「あぁ!?やんのかハマハゲ!!」

 

「お♪やる!?」

 

 一触即発になっているうるティとヴァニカの間にヤマトは介入する。

 

「こら!戦いは別にいいけど――タイミングを選んでよ!今は宴だよ!」

 

「っつ、ヤマト……分かったハマハゲよ」

 

「えぇ〜…ま、仕方がないか……」

 

 ヤマトの制止に2人は渋々ながら従った。我が高い2人もヤマトの言葉を聞かない訳にはいかないのだ。

 といえ、せっかくのやる気を消化しきれない。そんな2人の様子にヤマトも気が咎めたのか、代案を出してきた。

 

「――代わりに何かをやろうよ!ジャンケンとか!」

 

「「ジャンケン!?」」

 

 その提案にうるティもヴァニカも揃って呆気に取られた。

 

「アハハ……子供臭いかもしれないけど――やっていないからこそ、逆にいいんじゃない?」

 

「何ならジャンケンでなくてもいいよ!――もちろん戦い以外で!」

 

 その様子を理解できるヤマトは苦笑しながら意見を言ってみた。

 その意見にうるティもヴァニカも一応納得してみせる。

 

「ん〜…確かにそれもアリかも……やろっか!」

 

「あぁ!?――負けないハマハゲ!」

 

「あ!僕も入らせて!」

 

 うるティとヴァニカはすぐ向かい合い、とりあえずジャンケンで決着を付けようとした。その勝負にヤマトもせっかくだからと参加しようとする。

 ――何だかんだでヴァニカはゼノンより暴獣海賊団に馴染んでいるようだ。

 

          ●

 

「リュドドド……何だかんだで仲良くして何よりだ――なぁ?ラウフェイ、メニヤ」

 

「あ゛ぁ゛……ま゛ざが、あ゛の゛ヴァニカ様が……」

 

「……でも゛、楽じぞゔだ」

 

「リュドドド!そうか!」

 

 宴での皆の楽しげな様子を満足気に眺めているオレは後ろにくつろげている巨大な2人――ラウフェイとメニヤと会話していた。

 

「――悪ぃな、仲間にすぐ会わせてやれなくてな」

 

「い゛い゛え゛、楽じみ゛が増え゛る゛がら゛の゛で」

 

「……「ナンバーズ」がぁ……楽じみ゛だ」

 

「そうかそうか!」

 

 ラウフェイとメニヤが楽しげにしているのにオレも笑みを浮かべた。

 ――2人を同じ古代巨人族の「ナンバーズ」と顔を合わせたいのは山々だが……オレ達が鬼ヶ島に帰るのはまだ先だから、難しいのだ。

 それでも「巨神兵」の立場から自由の身になれた2人はそれを謳歌している。

 とにかく、ラウフェイとメニヤと楽しげに会話しているオレに近付いてくる影が1つ。

 それに気付いたオレはさっきの様子から一変させ、真剣な表情を浮かべる。そして近付いてきた影――マリアに問いかけてみる。

 

「……どうだった?」

 

「……駄目ですね。私とさえも話してくれません」

 

「……そうか」

 

 暗い表情を浮かべているマリアの答えにオレも唸ってしまう。

 

「……スサノオさん?」

 

 自身に不安そうに見上げるマリアにオレは口を開こうとし――

 

 大きな音が響かれた。

 

「「「!?」」」

 

 場にいるオレ達は1人残らず目を見開き、素早く状況を把握しようとすると――

 

「!――大砲か!」

 

 そう、島には大砲を撃たれていたのだ。

 そして、その大砲は――

 

「ウハハハ!この島はレイン海賊団が頂いたぁ!」

 

「へへへ……慄けぇ!泣き叫べぇ!」

 

「「「ギャハハハ!」」」

 

 レイン海賊団が島を襲撃してきた。彼らはその島を支配下にしようとしているのだ。

 ……だが、彼らはまだ知らない。

 

「「「…」」」

 

 宴を邪魔された暴獣海賊団の目がレイン海賊団を凝視している事を――

 

          ●

 

「……面倒をかけさせやがって」

 

「……だな」

 

 少しイラつきをみせているオレにフドウ達も共感した。そんなオレ達の足元には――

 

「あ、あが……」

 

「お、おぉ〜」

 

 レイン海賊団の死屍累々が広がっていた。

 ――当然だが、オレ達――暴獣海賊団に敵わないレイン海賊団はいいようにやられててゴミクズのように放置されていた。

 

「……面倒だが、掃除して宴を再開させよう」

 

「おぉ「あ、あの!」――……ん?」

 

 オレが苦々しくながらそう指示し、フドウが応えようと声を上げているところに突如声を掛けられた。

 その声にオレが視線を向けてみると――そこには2人の男が立っていた。彼らは真剣な目でオレ達を凝視してきた。

 

「……お前達は?」

 

 オレがそう問いかけるのに対して彼らも答える。

 

「――オレはヤヒコです!」

 

 そうツンツンの黒髪に碧眼が特徴な男が自己紹介する。

 

「――僕はタングドーサムだよ!タングと呼んで!」

 

 続いて緑の髪と黄色い眼と白肌が特徴な男も自己紹介してくる。

 

「オレ達は――」

 

「僕達は――」

 

「――あんた達の戦いを見てたんだけど……」

 

「めちゃめちゃ強いっすね!」

 

「あんた達の強さにオレ達は憧れた!」

 

「そうそう!憧れちゃったんだ!」

 

「「だから――」」

 

「「オレ/僕達を入れて下さい!」」

 

 最初は大人しそうだったが、説明しているうちに少しずつ興奮気味になっていって、最後は頭を下げてまで嘆願してきた2人にオレは目を見開くもすぐ思案に耽る。

 

「……オレはお前達を詳しく知らねぇんだ。だから、受け入れる訳には――」

 

「!そ、そんなぁ〜!」

 

「――なんとかお願いします!何でも働いてみせます!」

 

 やがてオレがそう言っておくと2人は大げさにうろたえ、オレに縋り付こうとする勢いで嘆願してきた。

 その勢いにオレもつい足を下がらせていた。そして逆にフドウが前に出てくる。

 

「――少しは落ち着け!貴様ら!スサノオさんを手こずらせんじゃねぇ!」

 

「「すみません!!」」

 

 フドウの一喝に2人も素早く下がり、身を引き締める。

 

「――しかし、なんとかオレ達をあんた達に入れてほしいのは確かです」

 

「――僕達も弱くはないっす、あんたらをガッカリさせないッス!」

 

 しかし、未だに下がらずに言い張っている2人にフドウは目を細め、オレに視線を向ける。

 

「……こう言ってくるが、どうする?」

 

 フドウからの問いかけにオレは瞼を閉じて思案に耽る。

 そんなオレに2人は息を呑みながら待つ。やがて

 

「……お前達とは初めて会ったから、まだ知らねぇ」

 

「「……!」」

 

 口を開けたオレからの言葉に2人が顔をしかめるも

 

「だから、今は試用期間を設ける」

 

「その試用中でのお前達の活動から正式に入れるかどうか決める――これでいいか?」

 

 オレがそう宣言すると2人の顔が晴れやかになる。しかし、すぐ身を引き締める。

 

「「了解!」」

 

「期待に応えてみせます!」

 

「僕も!」

 

 熱心にそう言い張っている2人にオレは苦笑し、そしてフドウに口を開く。

 

「フドウ、取り敢えず2人を見てやってくれ」

 

「承知した」

 

 オレの指示に頷いたフドウは2人に視線を向ける。

 

「ついて来い」

 

「「了解!」」

 

 足を進めるフドウに2人はついて行った。

 

「…」

 

 去っていく2人をいつまでも凝視し続けるオレに今度はハッテンが近付く。

 

「……スサノオさん?」

 

「ん?」

 

 ハッテンから重々しく声を掛けられたオレは視線を向ける。視線を向けられたハッテンは言葉を続ける――自身が感じた疑問がそうなのか確かめる為に。

 

「――あの2人にはやはり何かがあるんですか?どうも見つめている様子が……兄上も」

 

「お〜…気付いたか。さすがフドウの弟だな……そうなんだ」

 

 ハッテンの疑問に晴れやかな笑みを浮かべたオレは瞬間的に目を鋭くする。

 

「……勘だ」

 

「……勘ですか」

 

 オレから放たれたその言葉にハッテンは何の反応も見せずに復唱した。

 

「あぁ……所詮、勘は勘だが――」

 

 そう前置きしておくオレは重々しくながら口を開く。

 

「――何かあるかもな、あの2人は……」

 

「……では監視すべきだと?」

 

 その意見に目を鋭くするハッテンがそう問いかける。その問いかけにオレは否定せずに指示を出す。

 

「あぁ……キサメにも――あとフドウには隙があれば言ってくれ」

 

「承知しました」

 

 指示を聞き終えたハッテンは恭しく頭を下げる。その様子に頷いたオレはフーッと吹き出す。

 

「……しかし、ヤヒコとタングドーサム――だったか?……あの2人といい……」

 

「……〝アイツ〟といい――気を引き締める必要がありそうだ」

 

 ヤヒコとタングドーサム――そして〝彼女〟を思い返したオレは気を引き締めるのを決意する……

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