「さて、周遊を始めるか」
「「「オォ〜」」」
宿泊施設で一夜をさっぱり過ごせてきたオレ達は〝エイレンホール〟での周遊を始めようとした。
「それじゃ!――4グループに分けるか!」
「「「お!」」」
オレのその言葉に皆も期待に胸を膨らませていた。今回は誰と組むのか――そう考えている様子にオレもニャリとする。
「おう!――んじゃ、発表するぞ!」
オレがそうして発表した。
そして、その発表に従ってそれぞれ結成された4グループは思い思いの場所に向かっていった。
●
〝エイレンホール〟のどこかの街路
「リュドドド!改めてよろしくな!お前ら!」
その街中を歩いているオレは後ろを歩いている仲間、部下達にそう宣っていた。
――暴獣海賊団から分かれた4グループの1つ、オレが率いるグループのメンバーは以下の通りだ。
――スサノオ
――ハッテン
――ページワン
――ゼノン
――ヤヒコ
――その他13名
――以上なのがスサノオグループのメンバーだ。
「……スサノオさん、スサノオさん」
「ん?」
小さくながらも声を掛けられたオレは声を掛けてきたページワンに視線を向ける。
「――ハッテンさんはとにかく、ゼノンとヤヒコをこのグループに組ませたのは……そういう事ですか?」
「ほぅ」
――どうやら、彼はこの組み合わせに何かを感じ取ったらしい。彼の直感に少し感心したオレは小声で説明しておく。
「――まぁな、お前が勘付いた通り。オレは万が一の時を考えて、このように組み合わせておいたからな」
そう言うオレの目にはある2人が映っていた。
「…」
その2人のうちの1人――相変わらず無表情なゼノンは冷静に街を見渡していた。
少なくとも暴れろうとする様子がみられないが……何を考えるのか読めにくいところなのが厄介だ。
「フッ…フッ……」
もう1人――ヤヒコは……パンチの素振りをしていた。
――彼によれば、暴獣海賊団での手合わせから自身の未熟さを実感できたので、能力を高めようと鍛錬をしているのだと。
――それは一見気持ちが良い青年に見えるが……
「――まぁ、少し心の準備ぐらいでもすべきかもな」
一応オレはそう言葉を加えておいた。その言葉を耳にしたページワンも頷く。そんな彼に近くで耳を傾げていたハッテンが声を掛けてくる。
「――まぁ、オレは非常事態時の連絡係も担当しているからな」
「それは分かってるよ」
「あ、そうなの」
ハッテンとページワンがそう軽く会話しているのをよそにオレの胸中には――
「(まぁ……それだけではないがな――)」
そう考えているオレは一瞬ヤヒコに視線を向けていた。
そんなオレの様子に気付いているのか気付いていないのかハッキリしていない態度のゼノンが口を開く。
「……それで――どこに行くんだ?」
「お!そうだな!」
ゼノンからの問いかけにオレも我に返るかのように笑みを浮かべ、皆と向き合う。
「――オレは行ってみたいところがあるんだ!」
「おぉ……それはどこなんです?」
その言葉に興味を持った皆を代表してハッテンがそう問いかけてみるのに対してオレはある方向を指差す。
それにつられて皆がその方向に視線を向けてみると――そこには堂々とそびえ立っている山の姿があった。
その山こそが――
「あそこは〝セレエクスオ〟といってな――」
「〝エレインホール〟の山々の中でも最も壮美な山で――火口があるんだ!」
「その〝セレエクスオ〟に登ってみようと思うが――どうかな!?」
オレからのその問いかけに皆は――
「――いいじゃないですか」
「見晴らしが良さそうだ」
「…」
「鍛えやすそうですね」
思い思いの言葉を口にしているが、別に異議はないようだ。
――そうしてスサノオグループは〝セレエクスオ〟に登ろうと向かっていった。
●
〝エイレンホール〟のどこかの街路
「さて!どこかに行ってみたい?」
そこにも1組のグループがいて、そのまとめ役らしき女性――ヤマトは明るくそう声を上げていた。
――そのグループ、ヤマトグループは和気藹々としていた――もっとも〝ほとんど〟だが……
――ある程度の判断能力を持つようになったヤマトが4グループのうちの1組を率いる事になっていたのだ。
そんなヤマトが率いるグループのメンバーは以下の通りだ。
――ヤマト
――小紫
――ブラックマリア
――ギルド・テゾーロ
――ギルド・ステラ
――ギルド・ノヴァ
――その他13名
――以上なのがヤマトグループのメンバーだ。
とにかく、ヤマトからの問いかけにテゾーロ達は口を開く。
「…ん〜――少なくともノヴァが疲れにくい場所がいいと私はそう思うわ」
「つかれにくいのがいい!」
「ハハッ――だが、確かになるべく泊まっている施設から遠くない場所がいいね」
「……そうだね、面倒事が起こりにくいのがいいかな」
「…」
「そっか!」
テゾーロ達からのそれぞれの意見にヤマトはうむうむと頷いた。
その様子は一旦和気藹々としているようにみられているが……
「…」
「……小紫」
さっきから何も喋らずに口を閉じ続けている、目元が見えにくい程に顔に影がかかっている小紫をマリアは心配そうに凝視していた。
――そして、その2人をさらに凝視している者が1人。
「……ん〜」
――ギルド・テゾーロがその2人を、特に――小紫を注意しながら凝視していた。
そして小紫の様子から今後の動きに関してテゾーロは考えを巡らせていた。
「(これは……骨が折れるかもね〜)」
「(――まぁ、私がこのグループにいるのは……小紫さんの様子見。いざとなれば――支援の為だし)」
「(……わざわざスサノオさんが依頼してきているんだ……ただ事ではないのは確かだろう)」
「(――もっとも、私も――ああいう状態の彼女をこのままにしておけたくはない)」
そう考えていたテゾーロは小紫の様子を注意しながら見守るようにしている。
なお、スサノオは自身を拒否している程に様子がおかしい小紫をコミュニケーション能力がめちゃ高いヤマトに任せてみようと判断したのだ。
さらに、スサノオもこれでもダメだった場合はやはり〝心の病〟専門の医者を――難しければ、そういう分野に詳しい者を探そうとも考えている。
――まぁ、そんな事情をあえて知らされていないヤマトはそれでも自身のグループから放たれている不穏さを感じ取っていた。
感じ取っているからこそ、グループのまとめ役として小紫達を盛り上げようとヤマトは考えていた。
「――うん!皆の意見は分かった!」
そんなヤマトはできるだけ明るい様子で口を開く。
「――でも、せっかく〝エレインホール〟に来たんだし――ここでもすごい場に行ってみようよ!」
「「「!」」」
ヤマトのそんな主張にテゾーロ達は目を見開く。
「……ヤマトさん、それはつまり――」
「うん!」
その意図を察したテゾーロからの確認にヤマトもそれはそりゃ気持ちいい笑みを浮かべる。
――彼女のその主張が意味するもの、それは――
「――〝オーシャンヴァリー〟に行ってみようよ!」
――そうしてヤマトグループは〝エイレンホール〟で新たに開設されている複合型リゾート施設〝オーシャンヴァリー〟に向かっていった……
●
〝エイレンホール〟のどこかの街路
その道を黙々と歩き進んでいる集団がいた。その静かさにはなぜか緊張感も出てきていた。
そういう静けさにとうとう耐えられなくなった1人が叫んだ。
「――何!?この空気!?」
「――なんか暗いハマハゲ!」
その叫びにつられて他からも叫びを上げた――タングドーサムとうるティに向かって先頭を歩いている男が厳しい声を掛ける。
「――声が大きいぞ。静かにしろ」
そう声を上げるのは――フドウだ。そう、そのグループはフドウグループであった。
なお、フドウが率いるグループのメンバーは以下の通りだ。
――フドウ
――キサメ
――明日郎
――うるティ
――タングドーサム
――その他13名
――以上なのがフドウグループのメンバーだ。
とにかく、フドウからの注意に対して2人は正反対の反応をみせた。
「――何だと!ナメんのかハマハゲ!」
「あ!すみません……こう静かだと気になってて」
「やかましいぞ!うるティ……まぁ、しょうがないか」
うるティはそう怒鳴りつけた一方でもう1人のタングは謝り、騒いだ理由をも口にする。その理由にフドウも頷く。
「……キサメはとにかく――明日郎、お前には珍しく静かだな」
「……あ〜」
そしてフドウからの言葉に明日郎も口を開く。
「悪ぃな……こういうメンバーだと――何を言っていいか分からなくてな……」
明日郎が口にした理由に反応したキサメは試しに彼に確認してみる。
「――おや?こういう組み合わせは初めてなんですか?だから、戸惑ってしまったと?」
「……まぁな」
その確認に明日郎も肯定した。
とにかく、さっきの静けさとは一変して騒ぐようになったグループにフドウは口を開く。
「今から〝ウォーターフライマイルストーン〟に向かう」
「「「!」」」
その言葉に騒いでいたキサメ達も静かになる――もちろん、目を見開きながら。
「……確かに複合施設でしたか」
「あぁ、そこでいいものを買おうと思ってな」
キサメからの確認に肯定したフドウはそこに向かってみると考える目的を口にする。
「――あ〜…確かにいい食材がありそうだな」
その目的に料理人気質な明日郎も乗り気になる。
「……アクセサリーに合ういい材料があるかなハマハゲ」
アクセ作りを趣味に持つうるティにはそれが気がかりだった。だが、それはすなわち行く気満々であった。
「……私は別に興味がありませんね……興味を惹かれるものが置いてあればいいんですが……」
今のところ欲しいものを思い浮かべないキサメがそう言うものの、別に異義ではないようだ。
「――いい植物、もしくは種があるのかな〜!」
最後にタングがそう言い締めた。
以上の反応からフドウグループは〝ウォーターフライマイルストーン〟に向かうのを決めていた。
「――キサメ」
「えぇ、分かっています」
そんな中で騒いでいるタングを凝視しているフドウからの声掛けにキサメもその意図を察し、頷く。
「抜かるなよ」
フドウからさらに言い足した忠告にキサメも笑みを浮かべる。
「もちろん」
――そうしてフドウグループは〝エイレンホール〟で最大の複合施設〝ウォーターフライマイルストーン〟に向かっていった……
●
〝エイレンホール〟のどこかの街路
ここでも暴獣海賊団から分かれたグループがいた――ジャックグループだ。
ジャックが率いるグループのメンバーは以下の通りだ。
――ジャック
――ハクジ
――シシリアン
――ペドロ
――ヴァニカ
――その他13名
――以上なのがジャックグループのメンバーだ。
そんな組み合わせだが、早速――騒ぎが起こっていた。
「――オレの毛に触るなぁぁぁ!!」
「しょうがないじゃ〜ん、戦いができないから暇だしぃ〜それに触り心地良さそうだしぃ〜」
そう怒鳴りつけていたシシリアンの毛をヴァニカは容赦なく触りまくっていた。
「アハ♡いいね〜これ!」
「やめんかぁぁぁぁぁ!」
本当に怖いもの知らずなヴァニカとそんな彼女に向かってやかましく怒鳴りつけているシシリアンの姿をジャックとハクジとペドロは凝視しながら呆れていた。
「……面倒くせぇ〜」
「……随分な者と組まされたものだ」
「……全くだな」
「……思ったが、お前らとは話が合いそうだな」
「……〝ギビマ〟では敵対しているのに不思議なもんだ」
「……全くだな」
騒いでいるシシリアンとヴァニカをよそにジャック達はそう会話していた。
――といえ、このままでい続ける訳にはいかない。そう考えたまとめ役を担当しているジャックはまず騒ぎを収める事にした。
「――やかましいぞ!テメェら!――あそこに行けねぇじゃねぇか……!」
「「「!」」」
ジャックのその言葉に皆が固まる。騒いでいたシシリアンとヴァニカも漏れなく冷静になり、ジャックに視線を向ける。
「――あそこ?それは何だ!?」
「わぉ〜…何か面白そうな匂いがするね〜」
いずれにせよ、ケンカを邪魔されたので気が高ぶっているシシリアンとヴァニカに身を乗り出されているジャックははっきりと言い放つ。
「――オレ達が今から向かう場にはお前らも興味を持つ筈だ」
「!?――何があるのか?」
「!?――へぇ〜…何かな、何かな〜?」
ジャックのそんな言葉にシシリアンとヴァニカが興味を引かれる。もちろん、ハクジとペドロも興味を持つ。
自身に向けた数々の視線にジャックは答えてやった。
「――〝カエルダック〟の停泊場に向かう」
「「「!」」」
その答えにハクジ達も目を見開く――そして納得した。
「……なるほどな」
「……確かにぃ〜興味があるな〜それは」
――実はハクジ達、4人とも〝カエルダック〟、そこでのイベントに興味を惹かれていたのだ。だからこそ、渡りに船だったのだ。
納得しているハクジ達にジャックも頷く。
「分かったか?――じゃあ、行くぞ」
――そうしてジャックグループは水陸両用小船〝カエルダック〟が配置されている場に向かっていった……