〝セレエクスオ〟――
それは〝エレインホール〟にそびえ立っている数々の山の中でも最も壮美な山である。
その山は〝エレインホール〟によれば、他の山々より威風さが湧き出ている為に島の名所の1つとして知らされているようだ。
そういう山だけはあって、そこにも登りやすい道――登山コースが配置されていた。そのコースを少なくはない人々が利用して〝セレエクスオ〟の登山を楽しんでいる。
そのスタート地点――登山口にはもちろん登山家が集まっていた。そんな中にある集団も参加していた――
「リュドドド!――人が集まっているな!」
登山口に入っていく登山家達を眺めているオレがそう感嘆の声を上げた。
そんなオレ、そしてスサノオグループの者達は登山口に立っていた――もちろん、オレ達も〝セレエクスオ〟に登っていく為だ。
「ん〜……この山の頂にオレが立つ……か……ふふっ」
――ハッテンは〝セレエクスオ〟の山頂に立つ自身の姿を思い描いてみていた。そして――密かに笑ってもいた。
「この山を登る……ちょうど良い鍛錬になりそうだなぁ」
――ヤヒコはそう呟きながら準備体操していた。自身の能力を高めるのに熱心的な彼は登山の利点を分析しようとしてもいた。
「登山……魚釣りとは違う旨味がありそうだな」
――ページワンは魚釣りを趣味にしているからこそか、登山に新鮮さを感じててソワソワしていた――そして気付く。
「……っておい!――ゼノンの奴がもう行っている!?」
「…」
ページワンがそう声を上げた通り、ゼノンがオレ達を放置して登山をもう既に開始していた。
騒いでいるページワン達を気にしないゼノンが小さく呟いた。
「……別に――早かれ遅かれだろ?」
――ゼノンによれば……どうせ、〝セレエクスオ〟への登山はもう総意となってるんだろう?
――ならば、もはや早かれ遅かれになるんだ。
それに……今でこそ暴獣海賊団に所属しているが、実は自身の意思で入った訳でもない――すなわち、スサノオ達に心遣う筋は別に持ち合わせていない。
――まぁ、登山がどのようなものなのかを早く味わってみたくなったのもあるが……
そう考えていたゼノンがさっさと足を早めていった。そんな彼にオレは
「早いな!――オレも負けられんぞぉ!」
「あ!スサノオさん!?」
負けじとゼノンを追い自身も登山を開始した。呆気に取られたハッテン達も我に返り、すぐ置き去りにされないように続いていった。
――こうしてスサノオグループは〝セレエクスオ〟への登山を今ここに開始した……
●
「オオッ!これはすごいな!」
登山口からしばらく歩き進んでいたオレ達の中からページワンがそう感嘆の声を上げた。
そんな彼の視線先には――滝が激しく流れていた。その激しさ、威圧感にページワンはもちろんオレ達も感嘆した。
「……この滝に名はあるのだろうか?」
「ん!……〝バックビュー〟だとよ」
ふとオレがそう疑問を口にするとハッテンがすぐそう答えてくれた。彼は情報を集める術に長けているのだ。
とにかく、そう軽い会話をしているオレ達をよそにページワンが言葉を続ける。
「へぇ〜…ここには滝だけじゃなく植物公園もあるんだな」
その言葉通り、滝――〝バックビュー〟をおそらく観覧できやすいであろう場所には植物公園が建てられていた。
その植物公園を凝視していて、そして〝バックビュー〟にも視線を向けたハッテンが呟いた。
「……滝の近くに植物公園……心憎い演出をしてくれるなぁ」
「あぁ!――随分な眺めになれるだろうよ!」
その呟きにオレも共感している中でページワンは気付く。
「……ってまたかよ!ゼノン!」
その叫び通りにゼノンはやはりオレ達を無視して植物公園に足をさっさと進めていった。その我を通す様子はむしろ晴れ晴れしかった。
「――リュドドド!面白れぇ!ゼノンは!」
「ちょっ!?スサノオさぁん!?いいんですか!?アイツに好き勝手にさせて!」
我が高いゼノンの態度につい吹き出してしまったオレの姿にページワンは混乱してしまう。
――ああいう奴には怒りをみせずに、また叱りつけないのか?
そう考えているページワンを見かねたハッテンは苦笑しながら助け船を出す事にした。
「ハハ……ほら、ウチだって――何なら、百獣海賊団でもあのように我が高い者が多くいるんだろ?――今更じゃね?」
「……それもそうか」
ハッテンからのその言葉にページワンも思わずつい納得してしまった。彼にとっても他人事ではなかったから……何せ――彼の姉もそうなのだから……
遠い目をしている2人にオレは苦笑しながらも口を開く。
「リュドドド……まぁ、オレ達も入ってみるぞ」
そう言ったオレは植物公園に向かっていく。その姿にハッテン達もそれもそうかと考え直し、続いていった。
そうしてオレ達は植物公園での観覧、〝バックビュー〟の観覧も楽しめられた。
何なら、植物公園に植え付けられている数々の花々とその後ろに滝が激しく流れる景色はなかなか新鮮さもあった。
そのような景色に戦いが好きな程に血の気が多いオレ達も心が穏やかになっていった。
「……タングが気に入るだろうな、ここは」
植物公園を観覧し回ってきたヤヒコはなんか植物に対しての愛が深い相棒の事を思い浮かべながらそう呟いた。
「――ここの仕組み……ワノ国にも使えるな」
同じく植物公園、そして〝バックビュー〟をも観覧し回ってきたオレは小さくそう呟いた。
――絶景が多いワノ国ならこういう、またこれ以上のを作れるだろうな……
●
「「ヤッホォォォォォオ!!!」」
オレとページワンがそう大声を上げた。
――オレ達、スサノオグループは見事に〝セレエクスオ〟の山頂に登りきれたのだ。
故にオレもページワンも達成感に声を上げずにはいられなかったのだ。
一方で声を上げないで冷静になっているようにみられるハッテン達もまた内心では達成感に溢れていた。
現にハッテンも感動を口にしていた。
「……いい見晴らしだな」
ハッテンのその言葉通り、〝セレエクスオ〟の山頂から眺められるものは真に絶景だった。
〝エレインホール〟の山々と街が小さく見えていて、その上に海面も見えている。
その海面は太陽光を受けて光り輝いていて美しさを引き立てていた。
その絶景にオレ達も感動してしばらく固まっていた。
「――さて、次は火口も覗いてみるか!」
やがてオレがそう言うとハッテン達も従って火口に近付いていった。
――〝セレエクスオ〟の山頂にぽっかりと空いている断岸絶壁の火口をオレ達は覗いてみた。
そこには――赤々しいマグマが深部で重々しい音を出しながら流れ回っていた。
「おう、熱そうだな〜まぁ、キングさんとフドウとハッテンの炎には負けるかもしれねぇがな」
そのマグマを目にしたオレがそう言い、その上でキングさん達ルナーリア族の炎を褒め立てる。
マグマを眺めているうちに突如自身の種族に関して褒め立てられたハッテンもビックリした。だが、すぐ苦笑を浮かべた。
「……ハハ、それは光栄な事――ですかね?」
苦笑しているハッテンをよそに今度はヤヒコが口を開く。
「……しかし、ここには――樹木が生えているな……!池まで……」
その指摘通り、火口近くには――樹木と池が生い茂っている。
「……少なくとも、火口には植物が生えられないかと思ったが」
その樹木と池を目にしたページワンも軽く驚き、意外そうに言い放った。
――彼のイメージでは火山、特に火口辺りには植物が生えられない上で岩盤だらけの殺風景になっていた。
だからこそ〝セレエクスオ〟の火口近くには樹木と池が存在しているという事実にページワンは意外だった。
今も驚き続けているページワンにヤヒコが口を開く。その疑問に答える為に。
「……タングのように詳しい訳でもないけど……あらゆる環境下でも生えられる植物も存在しているらしいよ」
「へぇ〜」
「……ふ~ん、〝あらゆる環境下でも生えられる〟……ね〜」
ヤヒコからのそんな説明に納得できたページワンのそばで耳を傾げていたハッテンも何かを感じ取れたのか意味深な笑みを浮かべていた。
そんな彼の様子を知る由もないヤヒコはふと何かを思い付き――そしてオレにそれを恐る恐る言ってみた。
「……あの〜」
「ん?」
「……スサノオさんはマグマに浸っても――平気でしょうか……?」
「「「!?」」」
ヤヒコからのそんな問いかけにハッテン達もオレに一気に視線を向けてみた。
――彼らも気になってしまうのだ。
――普通ならあり得ないが……傷を負わさせれない無敵の肉体を持つあの〝百獣のカイドウ〟の息子であるこのオレならば――もしかしたら……もしかするかも?
そういう好奇心を込めているハッテン達からの視線に対してオレは――
「リュドドド……オレはん〜……難しいかな?」
「「「ですよね〜」」」
オレが苦笑しながら言い放ったその解答にハッテン達もつい――安堵していた。
――彼らにとっても、もしもマグマでも効かなかったら――一体どんな目で見ればいいのか分からなくなってしまうからだ。
だからこそ安堵しているハッテン達にオレは言葉を続ける。
「――まぁ!親父はマグマでも浸れるかもな!」
「「「……!!?」」」
――過去に親父が油風呂に浸かっていたのを思い出したオレがその可能性を口にするとハッテン達が目を大きく見開いた。
「――まぁ、観覧はここまでにして……メシでも食うか!」
だが、オレはその様子を気にせずに話題を変えていった。すなわち、食事しようと火口から離れていった。
――なお、ハッテン達は……冷や汗をかきながら――なんともいえない表情を浮かべながら立っていた……
●
「……だからぁ!早いんだよぉ!ゼノンぅ!」
「…」
ページワンがたまらずそうツッコんだ通り、ゼノンはオレ達を放置して食事をもう既に開始していた。
「ぜ、ゼノンさん……」
「……ナメているのかなぁ〜」
ゼノンのあまりにも我を貫いている姿勢にヤヒコが冷や汗をかき、少々寛容的なハッテンもさすがにイラつき始めていた。だが、その上に――
「リュドドド!生意気な野郎だなぁ!」
オレはゼノンの態度に怒りをみせるどころか、高笑いしていた。
高笑いしているオレにハッテン達が驚愕する中、ゼノンが長らく閉じてきた口をついに開く。
「……確かに――このオレは敗者だ。だから従ってやるが……」
「だからって――完全に従う訳でもない……それを胸に刻み込むんだな」
「「「!」」」
そう逆心とも受け取れる発言を迷いなく言い放つゼノンはオレ達の反応を見ずに食事に戻った。
その態度にハッテン達が顔をしかめている中、このオレは笑みを浮かべ続けていた。
「リュドドド!ムカつく野郎だ!――ま!だからこそ面白ぇがな!」
「…」
相変わらず怒りをみせずに笑い付けるオレの態度にゼノンはしかし反応をみせない――ただ、その眉がビクッとしていたが……
それには気付かないオレは呆気に取られているハッテン達に声を掛ける。
「――さぁ!オレ達も食事にしよう!」
――そうしてオレ達は〝セレエクスオ〟の山頂で食事しようとしていた。
「……しかし!こういう場での食事も悪くないな〜」
「おう!――船上で海を眺めながらの食事とはまた違う意味での颯爽さを感じられるな」
「ハハ、そうだね〜(……むしろ、昔の〝オレ達〟の食事はこういう感じかもな……)」
皆がそれぞれ思いを口にしている中でオレは少し思案に耽っていた。
「…(この〝セレエクスオ〟登山は良い刺激だったよなぁ〜)」
「(やはり――後でヤマトに〝セレエクスオ〟登山を勧めておこう――そうすれば、小紫だって……)」
「スサノオさん?」
――〝セレエクスオ〟登山での刺激、そして案じている小紫の事に関して思案に耽っているオレだが、声を掛けられる事で我に返った。
そして見渡してみると皆はもう食事の準備を完了していて、あとはオレからの乾杯のご発声を待つだけだった。
そんな皆に少し驚いたオレはすぐ笑みを浮かべ――乾杯のご発声を口にしようとした。
「――乾杯するか!」
「「「オォ〜!」」」
その挨拶につられていざ、オレ達が食事を開始しようとし――
ドガァァァァァン!!!
「「「!!?」」」
突如大きな音が響かれた。
その大音に驚愕し固まったオレ達だが、素早く冷静になり状況を把握しようと動き出す。そして
「「「……!!」」」
オレ達がその音の源であろう方向に視線を向けてみるとそこには――
「やはり――爆発か!」
「あぁ……現場はあそこか」
〝セレエクスオ〟下の街中のある施設から煙が立っていた……
――〝エレインホール〟に起ころうとしている激動に暴獣海賊団もまた巻き込まれようとしている……