〝オーシャンヴァリー〟――
そこは〝エッジオブパシフィック〟によって新たに設立された〝エレインホール〟の統合型リゾート施設である。
その大規模、そして最近開設されたばかりのもあって、そこには多くの人が訪れていた。
もちろん、その中にはこの者達も紛れていた。
「……いや〜!多いね!」
〝オーシャンヴァリー〟を訪れている人々の多さにそう感嘆の声を上げたのが――ヤマトだ。
そう――彼女が率いるヤマトグループは〝オーシャンヴァリー〟を訪れていた。
輝かしい〝オーシャンヴァリー〟を訪れた興奮もあって感嘆の声を上げているヤマトに続いてテゾーロが口を開く。
「まぁ、ここが新たに設立された施設であるのはもちろんだが、ここには――ショッピングモール…ホテル…カジノ…劇場…色々なものが集まった複合的な施設ですからね。惹かれるのも仕方がないかと」
テゾーロは〝オーシャンヴァリー〟関連のガイドブックを読み上げていた。
「だからこそ、人だかりで入りにくい可能性を心配していたが……多いは多いが、こういう感じなら無問題でしょう……もちろん、注意が必要だが」
テゾーロからのその言葉に頷いたステラは小紫とマリアに視線を向ける。
「――あなた達も私達からはぐれないようにね!」
「分かっていますよ〜私達はもう子供じゃないんで」
「…」
ステラからの注意にマリアがそう頬を含まらせながらそう言い放った。一方で小紫は黙っているままだが……
そんな彼女に一瞬視線を向けたステラは顔を少し曇らせるもすぐ笑顔になり、マリアに言葉を返しておく。
「あら!ごめんなさいね!――あなた達の事をまだ子供扱いしちゃったのね!もう大きくなっているのに……」
「本当ですよ〜」
苦笑しながら無礼を詫びるステラにマリアは頬を膨らませていた――とにかく、一応そのように和気藹々としているヤマトグループだった。
その雰囲気に笑みを浮かべていたヤマトは口を開く。
「皆!もういいかい?」
「「「!」」」
その確認に少し目を見開いたテゾーロ達はすぐ頷く。それにつられて頷いたヤマトは〝オーシャンヴァリー〟の入口に身体を向ける。
「――入ってみよっか!」
「「「オォ〜」」」
足を進めていくヤマトからの指示に従ってヤマトグループも〝オーシャンヴァリー〟に入っていった。
●
――それからヤマトグループは入った〝オーシャンヴァリー〟中での如何なる施設を次々に訪れていき、それぞれ楽しんできた。
数種類の楽しみ方はもちろんだが、〝エレインホール〟独特の文化も感じられている事からもたされる新鮮さも重ねて、ますます楽しめるようになってきた。
「……いや〜!たっぷり楽しんできたね!――君達は?」
何やら買い物で得られた多くの物を抱えているヤマトが満足気に笑みを浮かべていた。
そしてテゾーロ達にそう尋ねてみた。その確認に反応が出された。
「――そうですな!楽しめられたのはそうですが……その仕組みに関して考えされるものもあるし!」
――どうやら〝オーシャンヴァリー〟でのそれぞれの利点と経済システム等に関しての新たな何かを知ったのか、テゾーロはその事を熱心にメモしていた。
「うん!たのしかった!」
「あらあら、ノヴァは……あなた達は?」
そして上機嫌的な反応をみせているノヴァに微笑んでいるステラは小紫とマリアにも視線を向けてみる。彼女達は――
「……ま、まぁ……そりゃ楽しめましたが……」
なぜか冷や汗をかきながら固い笑みを浮かべているマリアの目はしかし小紫を向けているままだった。一方で小紫は――
「……えぇ、十分に整えている施設なんだと思います」
今まで沈黙を守ってきた小紫の口がついに開かれた――が……その解答は別に他愛ない上についでとして浮かべていた笑みは……歪んでいた。それは恐ろしく――しかし、どこか危うさを感じさせていた。
そんな彼女にマリアとステラは一気に口を閉じ――元気一杯だったヤマトもそれを目にしてしまった事で固まり、冷や汗をかいた。
――実はヤマトもまた様子がおかしい小紫を気にかけていて、だからこそ〝オーシャンヴァリー〟に行く事で彼女を元気付けようとしてみていたが……
――そして、様子見していたテゾーロもその態度に眉をひそめていた。
「…(うむ、こういうのではダメか)」
――実はテゾーロは〝オーシャンヴァリー〟での如何なる仕組みを熱心に学びながらも小紫の様子を見ていて、余裕があれば誘導してきた。だが――
「(これでもダメだとしたら……スサノオさんと相談しなければならないな)」
そう考えを巡らせ、最後にまとめていたテゾーロ。
そういう事から少し不穏な雰囲気になってしまっているヤマトグループだが――
「……とにかく!〝オーシャンヴァリー〟はもう十分かい?――そうだとしたら、次に行ってみようと思うけどどうかな?」
その雰囲気を見かねたヤマトはそれを変えようと話題を切り替えしてみせる。
その提案にテゾーロ達もそれぞれ反応をみせる。
「……うむ――次はシンプルな所が良いでしょうね」
テゾーロは一旦そう口にしてみる。その妻子の方は
「……うと……うと……」
「……一度、カイリュー号に寄ってみては?」
疲れたのか少し眠そうにしているノヴァを見ているステラはその案を口にしてみる――一瞬、小紫に視線を向けながら……
「……そうね〜どこがいいのかしら……?」
「…」
再び沈黙してしまった小紫から目をそらさないマリアはそう言葉を濁らせておく。
とにかく、それぞれの意見を耳にしたヤマトが頷き、口を開く。
「――〝オーシャンヴァリー〟はもう十分って事なんだね!――なら次はどこにしようかな……?」
それからもヤマトグループは今後の予定に関して議論していた……その時だった。それが起こったのは
ドガァァァァァン!!!
「「「!!?」」」
ヤマトグループの近くの建物が突如――爆発された。
――そう、〝オーシャンヴァリー〟に爆発が起こっていたのだ。
●
時は遡って
〝ウォーターフライマイルストーン〟――
そこは〝エレインホール〟で唯一の複合施設である……
……もっとも、それよりさらに大規模である〝オーシャンヴァリー〟が新たに設立された為にもう唯一ではなくなったが……
とにかく、その施設が今まで〝エレインホール〟の経済・発展を支えてきた――といっても過言ではないかもしれない……これからそうはいかなくなるかもしれないが。
――まぁ、だからってそこを訪れる者が消え去っていく訳では無いが。
〝オーシャンヴァリー〟にはその利点が、〝ウォーターフライマイルストーン〟にはその利点が存在している。
その利点により、そこを訪れている者の数が少なくはなかった。
そんな者達の中に――彼らも紛れていた。
「……うむ、色々なものが置かれているな」
一応見えている〝ウォーターフライマイルストーン〟の中にそう声を上げたフドウが率いるフドウグループであった。
彼らはそこで暴獣海賊団の利になり得るものを買おうと訪れてきたのだ。
「――よっしゃぁ!ここでしか手に入れられねぇだろう食材を見つけなきゃな!」
「――私も新しいアクセサリーに合う材料を買ってみせるハマハゲ!」
「あ!――僕はもちろん――しょくぶ〜つ♪」
〝ウォーターフライマイルストーン〟に辿り着いた途端に明日郎とうるティとタングがそう騒いだ。
そんな3人にキサメが口を開く。
「――君達。騒ぐのは別に構わませんが……ぜいぜい、面倒事はできるだけよすように――」
「「「……おう!」」」
キサメがそう穏やかに、しかしどこか圧を放ちながら忠告を送っておいた。
その圧にビクッと反応してしまった3人もすぐそう応えた。その様子にキサメが頷く――もちろん、そばで見ていたフドウも頷き――
「――よし、お前ら。行くぞ」
フドウはそう言い〝ウォーターフライマイルストーン〟に向かって足を進めていく。
それにキサメ達も従って自身も進む。
●
「……うむ。十分買えたな」
フドウグループは〝ウォーターフライマイルストーン〟に入ってから分かれていってみた。
そのうちのフドウは買い物を順調に進めて、その結果に満足していた。
「(これならば、スサノオさん達も気に入る筈……ん?)何だ?」
そう考えながら歩くフドウはある店に人だかりができているのに気付いた。
「何事だ?」
気を引かれたフドウがその人だかりに近付いてみると――多くの人が注目しているその店の中には何やら兵士らしき者達が慌てだしく動いているのが確認できた。
兵士達が動いている、その慌てだしさにフドウが眉をひそめる。
「……おい、何があった?」
そしてフドウはその疑問を人だかりの中の者に投げかけてみた。
その問いかけにその者が親切にも答えた。
「――この店の人が殺されたんだとよ」
「殺人だと?」
その答えに目を微かに見開いたフドウがすぐ冷静になり、事態を把握しようとする。
「……どんな奴が殺されたんだ?犯人は?」
「あ〜……それは分からねぇが……多分、これで6人目かもしれねぇって話だってよ」
「何だと?」
その言葉にフドウがまた目を見開く。その様子にその者は丁寧に説明した。
――数日前から〝エレインホール〟の如何なる場所で計5人が次々に殺害される事件が起こった。
その5件の事件関連の情報は一般人には知らされないが……少なくとも、全ての事件には繋がりがあるらしいとだけは知らせていた。
〝エレインホール〟の兵士達だけではなく、警備業をも請け負っている〝エッジオブパシフィック〟も連続殺人事件の解決に動いているが……まだ犯人を見つけられていない。
そんな中で起こったこの事件。繋がりを疑っても無理ではないだろう。
「……そうか」
その説明から把握できた事態にフドウも眉をひそめる。そして思案に耽る。
「(――犯人は分からずか……そうなると、海賊のオレ達が疑われる事もあるかもしれんな)」
そう考えたフドウは警戒しておくのを決心する。
「(……まずはここから出るべきだな)」
そう判断したフドウは人だかりから離れながら電伝虫を手にする。
「……キサメ」
『どうしました?』
フドウはまずキサメに連絡する。
「非常事態だ。まずはここを出るぞ――タングを連れて行け」
フドウはキサメにそう指示した――実はキサメはタングを監視する役目を請け負っている。
故にまず2人を脱出させようとするが……
『……その事なんですが』
「!何があった?」
だが、その遠慮がちな声にフドウは目を鋭くする。そして――
『……タングと明日郎とうるティが揃ってあるショーに注目していますね』
「…」
なんと、入口あたりで分かれていった筈の3人がまとめられていた――
その事実にフドウは目を見開く。
●
明日郎とうるティとタングはは――あるショーを観ていた。
そのショーとは――
「…」
赤髪で茶色い目をした小柄な男が人形劇をみせていた。
その人形の精細さ、動きに明日郎達は感嘆の声を上げた。
「「「オォ〜〜」」」
「……フッ」
その反応に男が得意気にする。だが、そこに
「――こっちを見ろ!うん!」
「「「!?」」」
その声に視線が一気に向けてみると――長い金髪を括った男が鳥型の小さなロボットを抱えていた。
「――ショータイムだ!うん!」
その男がそう宣言しながらロボットを上空に飛ばす。
そのロボットがある程度飛び浮かぶと男が新たに宣言する。
「芸術は――爆発だ!!」
その途端にロボットが爆発された。
「「「オオッ!?」」」
突然の事に明日郎達が驚愕し、その反応に男も得意気にしていた。
「ハハハ!どうだ!これこそが芸術だ!」
高笑いした男にもう一人の男が声を掛けた。
「……おい、どういうつもりだ?デイダラ」
「!――別にただ……芸術を見せただけだ!サソリの旦那!」
「何だと?」
デイダラとサソリ――2人の男達は互いに相手に自身の信念を口にし合う。
「いいか!芸術とは――〝儚く散りゆく一瞬の美〟……だぁ!うん!」
そう主張したデイダラにサソリはため息をつく。
「くだらないな……芸術とは――〝長く後々まで残る永遠の美〟……だ。それこそが真理だ」
「んだとコラァ!うん!」
まさに正反対の芸術観を持つ2人のケンカを目にする3人はその意見に考えされてしまう。
「ん〜……芸術か……よく分からんなぁ〜」
「――っていうか!結局、自分の感覚じゃねぇかハマハゲ!」
「あ〜……芸術は人それぞれッスからね!」
そう議論を始めてしまった3人に声が掛けられた。
「「「!」」」
その声に3人が一気に視線を向けると――キサメとフドウが堂々と立っていた。
「……君達、議論は結構ですが――」
「状況が変わった……まず、ここをさっさと出――」
フドウがそう言いかける瞬間
ドガァァァァァン!!!
「「「!!?」」」
〝ウォーターフライマイルストーン〟の外で爆発が突然起こされた。