ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第73話〝ヨガ〟

 ――〝エレインホール〟には〝セレエクスオ〟…〝ウォーターフライマイルストーン〟…最近では〝オーシャンヴァリー〟…等、如何なる名所が存在している。

 それぞれが持つ特性により〝エレインホール〟を訪れる者がそこを観光し楽しめられているという。

 そんな中でも観光地として少々独特的な場所が存在していた。それこそが――

 

「もうすぐ〝カエルダック〟が出港しますよ〜!」

 

 ――水陸両用小船〝カエルダック〟が寄せている停泊所である。

 その小船は――どこから見ても緑色いカエルを形作られていた。そのコミカルさは目にした人々がホッコリさせられている程だ。

 ――だが、そのコミカルさに騙されるなかれ。

 ――〝カエルダック〟はただの小船ではない。それは湖はもちろん海にまでも航進できるのだ。

 ――そして……「水陸両用小船」の名通り、〝カエルダック〟はその船底についているキャタピラで地上を移動をする事もまた可能なのだ。しかも――

 

「〝カエルダック〟の船上でのヨガ活動、潜水活動も行われています〜!」

 

 その宣伝通り、〝カエルダック〟での航行はただ航路を進むだけではない。船上でのヨガ活動、潜水活動も行われる事で航行をますます楽しむようになれているのだ。

 なお、たまに船上での特別イベント活動が行われる事もあるらしい……

 さらに、〝カエルダック〟が通る航路の底には色鮮やかな藻も生えているので潜水活動を楽しむ事もできる。

 そのように――ある意味で新鮮な通航をやってくれている〝カエルダック〟に乗ろうと停泊所を人々が訪れてきた。

 その中に――彼らも紛れていた。

 

「――アハハハ!本当にカエルだ!」

 

「ぬぅ……なぜにカエルなんだ?」

 

 〝カエルダック〟の外身にまずヴァニカが吹き笑い、次にシシリアンも頭に疑問符を浮かばせてしまう。

 その疑問符に対して声が出されてくる。

 

「……カエルは水陸両用生物――だからこそではないか?」

 

「!あ〜……なるほどな」

 

 ペドロが口にしたその意見にハクジも相槌を打った。そして、彼らの後ろには――ジャックが堂々と立っていた。

 ――そう、ジャックグループもまた〝カエルダック〟に乗ってみようとしていた。

 

「…」

 

「……?どうした、ジャック?」

 

 さっきから沈黙を守っているジャックに気付いたハクジが問いかけてみた。

 声を掛けられたジャックは口を開く。

 

「……いやな……実は――カイリュー号にも地上移動用の仕組みが付いてあるが……まぁ、使う機会がまだないが」

 

 どうやら、〝カエルダック〟の仕組みに思うところがあったらしいジャックから説明したその事にハクジ、ヴァニカは目を見開く。一方でペドロとシシリアンの方は軽くハッとしていた。

 

「……あ〜そういえば、そうだったな……」

 

「……今まで使う機会が全くないから、すっかり忘れてたな」

 

「「!?」」

 

 シシリアンもペドロもその事を肯定したのにハクジもヴァニカもますます驚愕した。

 

「――それ!後で見せてもらえるかなぁ!?」

 

 ヴァニカは驚きながらも興奮していて、ジャックに迫ってきた。彼女的にはイカしているカイリュー号が地上を移動する姿を拝みたいのだ。

 その要求にジャックは冷静に言い放つ。

 

「いや、それはスサノオさんが決める事だ。だから勝手に動かす訳にはいかねぇ」

 

「……そうかぁ〜」

 

 そのハッキリとした否定にヴァニカも項垂れながら下がった。その姿にジャックは

 

「……まぁ――分からねぇ訳でもねぇがな」

 

 ボソッとそう呟いた直後に

 

「――ムダ話はもういいか?……さっさと乗るぞ」

 

 そう話題を切り替え〝カエルダック〟に向かって足を進めていくジャックに突然の事で一瞬固まったハクジ達もすぐ我に返り、彼に続いていった。

 

          ●

 

 それからジャックグループが無事に乗り込んだ〝カエルダック〟は通航を問題なく開始した。

 そこからの〝カエルダック〟の通航は穏やかに進められていった。なお、その船上では――

 

「ぬぉぉ……!」

 

「んん〜…!」

 

 シシリアンとペドロが苦しそうに身体を構えていた――ヨガをしているのだ。ただ、2人は柔軟性に長けていないらしくヨガをするのに苦労していた。そんな2人に声が掛けられた。

 

「――固いね〜それでも〝生まれながらの戦士の一族〟〜?」

 

「……まぁ、できなくても――別に強さに変わりはないだろう」

 

 ――ヴァニカとハクジもヨガをしていたが……その様子は余裕で見事なポーズをみせていた。

 そんな2人にシシリアンは苦々しく恨み言を言い捨てる。

 

「……何で、貴様らはできているんだ……?」

 

「え〜……私が美女だからかな?」

 

「……オレは鍛え抜いてきたからな……無論、柔軟性についてもだ」

 

 その恨み言に対してはヴァニカがそうからかい、逆にハクジは真面目にそう返していた。

 

「……おのれぇ〜」

 

「……さすがにこれはバカにできんな」

 

 その解答にシシリアンは歯を食いしばる一方でペドロは自身の未熟さに逆に考えされていた。

 

「……っていうか、なぜジャックはやらないのだ?」

 

 そして、シシリアンはヨガ活動に参加せずに座りながら自身達を見ているジャックにその疑問を投げかける。

 その疑問には同感なのか他の3人もジャックに視線を一気に向ける。

 その視線に片眉を上げたジャックは面倒くさそうに理由を口にした。

 

「……お前ら、このオレの体格でヨガができてんのか?」

 

「「「…」」」

 

 ――ジャックは筋骨隆々な体格をしている。そんな肉体じゃ、確かにヨガをやるのには難しいだろう。

 その解答、そしてジャックの姿を凝視したハクジ達は黙って目をそらした。その反応にジャックがため息をついた途端に突如笑い声が響かれた。

 

「――ゲハハハァ!!」

 

「「「!」」」

 

 その笑い声にジャック達が視線を一気に向けるとそこには――同じようにヨガをしている男がいた。

 ――それは銀髪をオールバックにしており、眼色が紫がかったピンクになっている男だった。

 その男がジャック達に向かってなんかドヤ顔をみせていた。

 

「ゲハハハ!!――ざまぁねぇな!!」

 

「!!何だと!?」

 

「……貴様は?」

 

 突如嘲笑してくる男にシシリアンは怒りをみせ、逆にペドロは冷静に問いかける――胸中に怒りが湧き出てきながら。

 そんな2人に男はニャリとしながら――しかし素直に自己紹介した。

 

「――このオレ様はなぁ!――ルークだ!」

 

「このオレ様はなぁ……まぁ〝超人〟――といっていいだろうな!」

 

 そう言い放つルークにシシリアンとペドロはもちろん、ヴァニカとハクジ、しまいにはジャックも眉をひそめる。

 そんな態度にルークは怯まずに――

 

「そんなに睨みつけてもムダぁ!見ろよ!」

 

 そうドヤ顔をみせたルークは今のポーズから更なるポーズに切り替えた。それは柔軟性をもっと要するであろうポーズになっていた。

 そのポーズの複雑さに息を飲んでしまうジャック達にルークはますますドヤ顔をみせていた。

 

「ゲハハハ!!どうだ!?これこそ――〝超人〟の御技よ!!」

 

 そんなルークにシシリアンとペドロが歯を食いしばってしまう。だが、そこに――

 

「見て見て〜」

 

「「「!」」」

 

 響かれたその軽い調子的な声に今度はルークのも含む視線が一気に向けると――

 

「「「!!」」」

 

「アハ♪」

 

 活発そうな笑みを浮かべるヴァニカがそれはまた難しいポーズをとっていた。そのポーズにルークは衝撃を受けた。

 

「な、何だとぉ!?」

 

「アハハ♪どう!?」

 

 ルークの反応にしてやったりと考えたヴァニカ。だが

 

「ぐぐぐ……なら、これはどうだ!!」

 

「オオッ!?」

 

 悔しがっているルークも負けじとこれはまた困難なポーズをみせていた。そのポーズにヴァニカが圧倒されるものの

 

「む〜……なら!これは!?」

 

「チィィィ!なら――……」

 

「なんのぉ〜――……」

 

 ――そうして、ヴァニカとルークによるヨガ対決がなぜか始まった……

 

「「「オオ〜ッ」」」

 

 その2人がみせるヨガポーズに他の所でヨガをしていた人々も感嘆の声を上げながら注目していた。もちろん、シシリアンとペドロとハクジもその対決を凝視していた。

 

「……何やってんだ?アイツら?」

 

 だが、ジャックは――そのヨガ対決には無関心で、だからこそ熱狂しているヴァニカ達に対して呆れていた。

 

「……全く、まとめ役も大変だな」

 

「全くだな」

 

「!」

 

 ため息をつきながらそう呟いたジャックに共感の声が掛けられた。その声に視線を向けると――そこには頭巾とマスクとサングラスで顔を隠しているといういかにも怪しげな大男が堂々と座っていた。

 

「……お前は?」

 

「あぁ……オレはビショップだ――あのバカの世話係……といったところか」

 

 未だヨガ対決に熱狂しているルークを指差しながらそう言い捨てるビショップは顔を隠している為にその感情が分かりにくくなっているが……どこか苦労しているのを感じ取れていた。

 

「……まぁ、それも――人を従える者の宿命ってやつだろうな」

 

「……そうかもな」

 

 ジャックとビショップはそう言葉を交わしていた――ただ、それだけだが……この2人の間には軽いだが、絆ができてしまったようだ……羨ましくない意味で。

 

「……で、アンタは何をしているんだ?……怪しい格好しているぞ?」

 

 それもあってか、警戒感を少し収めたジャックはその疑問を投げかけた。

 ――そうなのだ。ビショップの怪しげな格好にジャックもツッコまざるを得なかった。

 その問いかけ、ツッコミにビショップも頷いて

 

「……オレの仕事の影響でこの格好をしているまでだ」

 

「……その仕事とは?」

 

 その怪しげな格好とは意外に素直に答えたビショップにジャックは問いかけを続ける。

 その問いかけにビショップはやはり答える。

 

「……オレは金融業をやっている」

 

「……金融業?その格好で?」

 

 その答えにジャックも肝を抜かれた。ふと――ギルド・テゾーロの事を頭に思い浮かばせていた。

 だが、ビショップはその反応に構わずに言葉を続ける。

 

「……オレは重要な取引を担当しているんだ。だからこそ狙われやすいんだ」

 

「……そうか」

 

 どうやらビショップの抱えている事情にジャックはもうこれ以上何も言わない事にした。

 そして互いに黙った2人だが――

 

「……これも何かの縁だ……金に関して何かがあれば、聞いてくれ。オレがアドバイスでも送ろう」

 

 突然そう言い寄ってくるビショップにジャックは眉をひそめる。

 

「……好意はありがたくもらうがな――あいにく、ウチにも金に詳しい奴もいるんでな」

 

「――そうなのか……そういえば、アンタは一体?」

 

「…」

 

 その解答でますます気になってしまったのか、注目してきているビショップにジャックは面倒さを感じた。やがて口を開こうとし――

 

 大きな音が響かれた。

 

「「「!?」」」

 

 その音に場にいる人々――ジャック達はもちろん、ヨガ対決をしていたヴァニカ達も気付き、その源らしき方向に視線を向けてみると――

 

「ギャハハハ!――オラオラ!ファイアー海賊団の通りだぜ!フォォォ!!」

 

「「「フォォォ!!」」」

 

 ――海賊団が襲いかかってきていた。

 その突然の襲撃に〝カエルダック〟に乗っている人々が怯えているのに対してファイアー海賊団がドヤ顔をみせていた。

 ――だが、彼らは知らなかった。その小舟には猛獣が留まっているのを……

 

「ギャハハハ――さぁ、お――げぽぉ!?」

 

「ぐがぁ!?」

 

「ぎゃお!?」

 

 〝カエルダック〟の乗っている人々に対して威張っているファイアー海賊団の海賊達が突如吹っ飛ばされた。

 

「「「!?」」」

 

 その事態に人々が呆気に取られた中でファイアー海賊団の前にある者達が立っていた。その者達とはもちろん――

 

「アハ♪――身体を動かすのを手伝ってくれるよね♪」

 

「――何がファイアー海賊団だ。そんなもの――燃やしてくれるわぁぁぁ!」

 

「……覚悟はいいよな?貴様ら」

 

「ふぅ~……よりにもよってここを狙うとはな……」

 

 そう――ヴァニカとシシリアンとハクジとペドロが率いるジャックグループが堂々と立っていた。その姿にファイアー海賊団の海賊達は――

 

「「「……へ?」」」

 

          ●

 

「ん〜……少しは暴れたかな?」

 

「フン!ファイアー海賊団の名にしてはしょぼいだな!」

 

「笑止……だな」

 

「……運が悪いな、お前ら?」

 

 そう堂々としているジャックグループの足元には――ファイアー海賊団の死屍累々が広がられていた。

 

「あ…が……」

 

 その死屍累々にペドロは気にせずに3人に声を掛ける。

 

「――さて…済んだから、さっさと――……!」

 

 そこまで言いかけたペドロは気付く。そして3人も気付く。

 ――〝カエルダック〟とファイアー海賊団の帆船の前に新たに何かが来るという事に。

 その正体を見極めようと視線が一気に向けるとそこには――

 

「「「!?」」」

 

「――蛇!?」

 

「蛇が船を引いている……!」

 

 そう――巨大な蛇に引かれている船が姿を現した。

 

「……誰じゃ?一体」

 

「「「!?」」」

 

 その船を人々が凝視しているところにその凛々しい声が響かれた。

 その声の主が姿を現す――

 ――それは非常に艶のある美しい黒髪の絶世の美女だった。

 

「…わらわの獲物を………横取ったのは!!」

 

 その美女――

 

 

 

 ――〝海賊女帝〟ボア・ハンコックがそう言い放った。

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