〝オーシャンヴァリー〟に爆発が起こってしまったという事態が〝エレインホール〟中の人々に衝撃を与えていた。
「爆発!?」
「どこだ!?」
「あの方向――〝オーシャンヴァリー〟か!?」
爆発、その現場から煙が発生してきたのを視認してしまった人々はパニックになっていた。
そら、そうだ――平穏的な日常に突如〝非常日〟が転がってきたから……
――そして、そのパニックは〝エレインホール〟に広がっていった……もちろん、この〝ウォーターフライマイルストーン〟にも及んでいた。
「ど、どうする!?」
「あぁ……ここには爆発が起こっていないはいないが――」
「――だからって、ここが安全な訳でもじゃないからな……殺人が起こっているし」
「――なら!逃げるべきでは!?」
〝ウォーターフライマイルストーン〟の中にいる人々もそう騒いでいるが――そんな中には突然の事に驚愕するものの、すぐ冷静に状況を見極めようとしている集団が存在していた……
「えぇ〜〜っ!?爆発ぁ!?」
「あぁ!?――誰だハマハゲぇ!?」
……否、その中にも冷静になっていなく騒いでいる者が数人もいた。
「だまれ!お前らぁ!」
「どうしましょうか?フドウさん」
その騒いでいる数人――タングとうるティの2人を黙らせようとしている明日郎をよそにキサメが今後の動きをフドウに問いかけてみる。
「…」
そう問いかけられたフドウはしかし、黙り続けていた。そして騒がしい人々を見渡してみる。
「〜!〜!」
「〜!〜!」
「……スーッ」
その騒がしさにうっとうしそうに目を細めているフドウはスーッと息を吸い――
「喝!!」
「「「!!?」」」
フドウからの突如の〝喝〟に騒いでいた人々も一気に固まった。そして自身に向かって恐る恐る見てきている人々にフドウは重々しく言う。
「――やかましいぞ。貴様ら……集中しにくいではないか」
「「「…」」」
そう堂々としたフドウの凛とする言い草に人々が息を飲んでしまう。
「――それとな、冷静になる方が良かろう……騒いでいても良い事はないぞ」
「「「…」」」
フドウから一応言い足しておいた忠告に人々も少しよろめく――だが、そこに
「――いや!?待て!?」
「「「!?」」」
突如その声が場に響かれた。その声に人々が首を傾げる――なんなら、あのフドウまでも首を傾げるうちにその人物が前に出た。
「「「??」」」
人々から疑問の視線を向けられているその人物はフドウに震える指で指しながら――
「あんた……まさか――あの爆発と関係あんのか?」
「「「!!」」」
「「「……へ?」」」
そう出された疑念に人々がハッとする一方でフドウグループは呆気に取られた。そして彼に視線を一気に向けてみる。
――フドウの姿は黒い「不動明王」の如き……すなわち物々しかった――そりゃすごく。
なるほど――これは疑われても無理もないだろう。
「……いや、オレは無関係だ」
「そうそう!」
まさか、自身の姿によって疑われるハメになってしまったフドウは冷や汗をかきながら、そう主張していた。明日郎も慌てながらその主張を支持してくる。
しかし、それでもフドウに疑念の視線を向けてしまう人々。
「……あ!」
「「「!」」」
――そして、今度はデイダラが声を上げてきた。それにつられて場にいる人々が彼に一気に視線を向ける。
突如多くの視線にデイダラは怯むも口を開く。
「なんか見た事があるなと思ったら――〝火災のキング〟じゃね!?うん!」
「「「!?」」」
なんと、デイダラはフドウの事を――よりにもよって……〝火災のキング〟だと認識してしまった!
人々がその事に目を見開く中でフドウグループも驚愕せざるを得なかった。
何せ――フドウを彼自身の父と間違えるというミラクルが今まさに起こっていたから……
「――そうなのか!?」
「――お前が〝火災のキング〟なんだな!?」
「あ、いや……」
その声にフドウもさすがに困惑してきっていて、否定できなかった。何せ――ある意味間違っていないというか……
だが、今度はそんなフドウを凝視しているサソリも言い出す。
「――つまり、あの爆発は……百獣海賊団の仕業なのか?」
「「「!?」」」
サソリからのその仮説に人々がハッとする――が、すぐフドウが声を大きく上げた。
「違う!!!」
フドウが慌てながらハッキリと否定した――当然だ。こんなアホらしい事で百獣海賊団の名に泥を塗らせる訳にはいかないからだ。
――こんな事で父上とカイドウさん達、百獣海賊団の名に泥を塗らせる訳にはいかねぇ!!!
「ハッキリ違う!!!」
「あと!このオレが似てるのは否定できないかもしれんが、だからって〝火災のキング〟じゃねぇ!!!」
必死に――激烈な勢いでそう主張するフドウに人々は圧倒された。
「そ、そうか……」
「ち、違うのか……?」
その激しさにかえって毒気を抜かれていた人々がその主張を少々信じかけようとするものの――
「……いや」
またしてもサソリが再び口を開いてくる。
「仮に――無関係だとしても、あんたをこのままにしておくにはいかないだろう――どう見ても普通の人間じゃないし」
サソリが冷静にそう主張すると、その意見に人々も同感し始めてしまう。
「た、確かに……この状況でこの人達をこのままにする訳にはいかない……よな?」
「確かにな〜」
「ま、待て……オレ達は無関係だ。だから――」
そう考え始めてきている人々にフドウが焦りながらそう言うものの――
「あ〜……悪いが、大人しくくれるかな?これ以上もう厄介事を増やす訳にはいかないからな……」
フドウグループを拘束する――人々の総意はそうまとめられてしまった。
その総意に従って人々は――フドウグループを囲んでいた。
「ふ、フドウ……」
「…」
今の身を置かれている状況に冷や汗をかいた明日郎から声を掛けられたフドウは――白目を剥いていた……
●
〝エレインホール〟全域は〝オーシャンヴァリー〟での爆発により緊張感が漂っていた――
――ただ、ある場所では他の所でのとは違う意味で異様な緊張感が漂っていた……それこそ、この近くで爆発が起こってきても変わっていなかった……
そのある場所こそが――〝カエルダック〟が留まっている航路中でのある辺りであった。そこには2隻の海賊船も留まっている――だからこそ、異様な緊張感が湧き出ているかもしれない。
「「…」」
〝カエルダック〟の船上である2人の海賊が睨みつけ合っていた――
――そう、ジャックとハンコックが互いに相手を睨みつけ合っていた。
その2人の周囲辺りの空間は重々しく――誰もが声も手も出せずにいた……否。
「ジャック!」
そういう空間にも構わずにジャックに声を掛ける者がいた――ハクジだ。
「スサノオ殿に連絡しても構わんな!?」
ハクジは電伝虫を手に持ちながらジャックにそう確認してみた。
――彼的には〝七武海〟の1人と対峙しているという大事が起こっているだけでも大変であるのに――その上にこの近くで爆発が起こってきたんだ。
もはや対応範囲を超えていると考えたハクジはスサノオ達に報告する、今後に関して議論する必要があるとも考えていた。
その考えに対してはジャックも同感である。
「あぁ!そうしろ!――ただ、状況はペドロが説明しろ!」
「「あぁ!」」
だが、今の状況をある程度把握しているジャックがただそうするようにハクジ、そしてペドロに指示しておく。
――ハンコックとは茶番を演じながら糸口を探す必要があるってのに……!
――今、何か厄介な事が起ころうとしている……!
――だからこそ、スサノオさんに聞かなければならねぇ……!
そう考えまとめたジャックはハンコックに対して構える――が、すぐ呆れの表情を浮かべた。
何せ――凛々しい筈のハンコックはさっきよりさらになんともいえない表情を浮かべていたから……
その数々の感情が混ざり合わされている表情にそこからの意図を読みきれない人々が訝しげにしながら首を傾げていた。
だが、そんな中で彼女の事情を知っているある3人は内心ため息をついてしまう。
「「「(――あの女はスサノオさんにゾッコンだからな……)」」」
そう、その内心での呟き通りにハンコックは――スサノオに激しい好意を持っているのだ。
持っているからこそ――さっき、ハクジがつい口にしていた愛しき者の名をハッキリと耳にしたハンコックはもちろん〝歓喜〟した――が、すぐ〝苦痛〟してしまう。
――今のハンコックは〝七武海〟であるからだ。その立場に身を置かれているからこそ、海賊――それも「四皇」の息子達とは実は交流があるのを知らされてはならないからだ……それに――
「(――「世界政府」のうっとうしい目が今もあるのか、ないのかどうか分からんからな……!)」
そうなのだ――〝王下七武海〟に就いてきたばかりのハンコックに対して「世界政府」は一応監視を密かに行っているのだ――彼女がその立場を悪用する可能性が存在しているからだ。
その監視の目にはちゃんと気付いているハンコックも積極的にスサノオと暴獣海賊団、百獣海賊団との交流を行いにくくなっているのだ。ぜいぜい――電伝虫での会話、人目を忍んでの〝ワノ国〟の行き来と会話ぐらいしかできなかったのだ。
そういう事情からハンコックは自身の自由を縛っている監視の目をうっとうしく感じていて、ストレスを溜まっているのだ。
――それでもハンコックは監視の目に対して致命的な振る舞いをみせていないのは――〝王下七武海〟の立場を捨てない為だ。
――他でもならぬ「世界政府」そのものによって保証されているその立場・権力は色々な意味で使用できるからだ。
現に――その立場・権力を逆手に取った事で得られた恩恵もまた存在している――もちろん、その恩恵をスサノオ達にも分けて貢献している。
そういう意味でも便利な〝王下七武海〟の立場をまだ捨てないつもりであるハンコックだが――
「…(本当は――すぐに愛しきあの方の元に参りたい〜!!)」
さすがに今の状況ではハンコックも苦悶せざるを得なかった。
――いつものように振る舞えばいいだけの話だが……目前の相手が実は密かに交流がある暴獣海賊団の海賊だ。さすがに本気で叩き潰す訳にはいかないだろう。
だが――何よりなのが――この近くにスサノオがいるという事実である。
その事実を知ったハンコックにとっても別に愛着がない〝王下七武海〟の立場を放り出してでも愛しきスサノオの所に駆け寄っていきたいのが彼女の本音である。
「…(ええい!!――忌々しい「世界政府」の目さえなければ〜!!)」
身を置かれている状況によってハンコックはそう苦悶していた……
――もっとも……ハンコックに付けていた「世界政府」の目だが――実はもうとっくに外されていた……なぜかいうと――順調に海賊を狩り続けてきた彼女の振る舞いから無問題だと判断されたからだ。
それを知る由もないハンコックはただ――自身の立場に苦悶していた……
「……!」
だが、苦悶していたハンコックはハッとする――彼女に向かって攻撃が来ているからだ。
「――フン!」
だが、それに反応したハンコックはすぐ自身を回転させながら――回し蹴りを放った。
鋼の音がする。
――ハンコックの蹴りと――ジャックが振り下ろした専用の刀(ショーテル)が激突し、張り合っていた。
「……フン!突然じゃな」
「……〝なぜか〟無防備なテメェを見逃す筋がどこにもねぇからな……!」
ハンコックが苦々しくそう言うのにジャックはそう言ってやった。
――苦悶しているからこそ無防備にもみられているハンコックをジャックは攻撃しない訳にはしなかった。そうしなければ――不自然だからだ。
「……一理はあるじゃな!」
ようやく自覚した自身の失態に自省したハンコックは集中する事にした。
「――だが!わらわを倒せるとは思わぬ事だ!」
そう宣したハンコックはジャックに向かって激しき蹴りを放ち続けてきた。その蹴りに対してジャックもショーテルを振り回す事で対応する。
しばらく、ハンコックとジャックの張り合いが今ここに始まっていた。その凄まじさに人々も慄きながら――見惚れていた。もちろん、この女もだ。
「……〜!私も戦いたい!」
戦闘狂なヴァニカがそう言い出し――しまいには自身も戦いに混ざり込もうとした。
「いや!お前は大人しくしろ!」
だが、事情を知っているシシリアンは彼女に余計な事をさせないように抑えつける。
「……〜何でよ!!」
「何でもだ!!――いいから!!」
戦いをさせてもらえず反感を覚えたヴァニカとシシリアンは口喧嘩を始めてしまった。
やがて激化して戦いに化そうとする――
「シシリアン!」
「「!?」」
だが、そこにペドロが駆け寄ってきた。
「「エレクトロ」を出せ!!ここから撤退する!!」
「!!――分かった!!」
そして、そう指示してきたペドロに頷いたシシリアンは構える。そんな彼の隣にペドロも構える。
「「――オォォォォ!!」」
「「「!!!」」」
――その場には激しき雷が発生した。