〝オーシャンヴァリー〟に爆発を起こされてしまった上にその中にいる人々を人質にされながら、発明品「映像電伝鳥」を渡せという脅迫を受けてしまった〝エッジオブパシフィック〟。
――だが、彼らもただで指をくわえる訳にはいかない。攻撃を仕掛けてきた〝黒の組織〟に対しての抵抗を密かに進めていこうとしていた……
〝エッジオブパシフィック〟社長室
その部屋には7人が集まっていた――
「――よく来てくれたな……!」
そう切り出したのは――〝エッジオブパシフィック〟社長であった。
自身が頼りにしている者達が来てくれた事に満足する彼にこの7人の中での紅一点が声を掛けた――コナンである。
「――さすが、皆さんです。この事態を知ったら、自らからすぐ来てくれたのですから……」
自身から社長の元に向かった5人の察しの良さをコナンは褒めずにはいられないのだ。
そしてその称賛を受けて、ある青年が口を開く。
「――この事態じゃ、ここに来るのが1番だと――そう思ったからね!」
――それはクールな印象を与えるツリ目と薄い無精髭が特徴の青年……
――アルベリヒ。
自身の考えを口にした彼に続いて、ある青年の口も開く。
「――まぁ、まさか1人で現場に行く訳には行かねぇからなぁ」
――それは髪はボサボサで常にサングラスをかけており、スーツも着崩している青年……
――ノーグル。
不敵な笑みを浮かべる彼に続いて、ある青年の口もまた開く。
「そりゃ!1人より数人いれば何とかなるっしょ!」
――それは肩ほどまで伸ばした長髪とタレ目が特徴の優男……
――ゼンシャー。
明るくそう言う彼のそばでまたある青年の口も開く。
「――これまで散々やってきたからこそだな」
――それは短髪で無精髭を生やしていた大柄で貫禄がある青年……
――ヴォイジ。
苦笑しながらも懐かしそうにみせる彼に続いて、最後の青年も口を開く。
「……それより――急ぎましょう。時間が限られているし」
――それは緑の髪と黄色い眼と褐色肌が特徴な青年……
――サブリングワル。
――以上の7人が〝エッジオブパシフィック〟の幹部的役割を請け負っている者達である。
――彼らはもはや、〝エッジオブパシフィック〟の危機――否、下手をすれば……〝エレインホール〟の危機だといっても過言ではない非常事態に立ち向かおうとしていた。
「――あぁ!リングの言う通りだ!時間は限られている――さっさと急ごう!」
サブリングワル――リングからの勧告に社長は改めて気を引き締めた。
「――宣言されてから数分経ったよな?」
「……あと約54分だ」
その勧告、そして社長の姿勢を受けてコナン達も気を引き締めておく。
〝黒の組織〟による約束の〝時〟までの残り時間を突き当てられた事でかえってだ。
「――よし!やるか!」
社長がそう宣するのをきっかけに7人は今後の動きに関して議論を開始した――
――〝エッジオブパシフィック〟は〝エレインホール〟に起ころうとしている禍に立ち向かおうとする……
●
〝オーシャンヴァリー〟――
その中にいる人々のほとんどはパニックになっていて、動き回っていた。
「――クソォ!ここから逃げたいのは山々だが……」
「あぁ……逃げたら――爆破するとハッキリと言いやがった……うかつに出る訳には――」
だが、それでも人々は〝オーシャンヴァリー〟から出ない――否、出られないのだ。
――人々がいざ、〝オーシャンヴァリー〟から出ようとしていたら……その途端に頭にさっき〝黒の組織〟が出してきた恐ろしい脅迫が思い浮かんでしまった――
――〝オーシャンヴァリー〟から1人でも逃げる――等の余計な事をしやがったら……容赦なく爆破してやる。
その重々しい声が頭に甦えた瞬間、人々の足がピタっと止まり――震え上がってしまった。
――〝黒の組織〟からの脅迫が人々の心を蝕んでいき、〝オーシャンヴァリー〟から出させずにいた。
――といえ、その脅迫に従って〝オーシャンヴァリー〟から出ないだとしても……だからって、人々の身の安全が保証されている訳ではない。むしろ、危機に変わりはないのだ。
もはや、万事休すといっても過言ではない状況に置かれている人々はどうすべきか分からなく――焦燥しきっていた。
だが、そんな人々に――一瞬、大きな影がかかっていた。
「「「!?」」」
「何だ!?」
一瞬といえ、大きな影が自身達にかかってきた人々は混乱し、その影がどこに行ったのか探そうと周囲を激しく見渡していた。
「――あれ!」
そんな中である人が〝オーシャンヴァリー〟の中で最も高い建物を指差しているとそこには――
「――ウォォォォォン!!!」
――幻想的な白き狼が吠え立てていた……
――〝大口真神〟にまだ変身しているヤマトが〝オーシャンヴァリー〟で最も高いであろう場所に駆け寄り――その楼上に堂々と座っていた。
そう、さっき人々にかかっていた大きな影は駆けていたヤマトのものであった。
とにかく――その白き狼の神々しさ、美しさに人々が見惚れていた。まるで神の使いが君臨してくれたという神話の中での出来事に巻き込まれたようで焦燥しきっていた心もようやく少し安らかになっていった。
そんな人々に向かって突如現れた人物が声を掛けた。
「おぉい!アンタら!」
「「「!?」」」
その呼びかけに見惚れていた人々が我に返り、視線を向けた。その視線にその人物はある事をハッキリと言い放った。
「――あの白き狼の下に行くんだよ!」
「「「!?」」」
「ど、どうして!?」
その勧告に人々が呆気に取られ、その中の1人がそう問いかけずにはいられなかった。
そのもっともな疑問にも言葉を続けられる。
「あの白き狼の元にいると――」
「いざという時は白き狼が守ってくれるんだ!」
「「「……!」」」
その事に人々が顔を見合わせ――
「「「――行く!!」」」
すぐ白き狼――ヤマトの下に駆け寄るのを決心した人々はすぐ足を進めていった。
「――オレはまだ知らない人にその事を言い回してくる!」
その様子を確認できた人物は他のまだ知らないであろう人にも勧告しようと他の所に駆けていこうとする。
「あ!――オレも言い回してくる!」
だが、その考えに対してもっともだと考えた数人も協力しようと他の所に向かう事にした。
――やがて〝オーシャンヴァリー〟の中にいる人々は身を置かれている逆境から脱しようと動き始める……
そして、その動きを眺めているヤマトは満足気に頷く。
「――よし!なんとかなりそうだ!」
ヤマトはそう呟いた――そう、人々のこういう動きは実はヤマトの思惑であった――人々を助ける為の。
ヤマトがやろうとしている事、それは――
●
時は少し遡って――
「――よぉし!」
ヤマトは笑みを浮かべながらそう吠えた。
その咆哮にヤマトグループも人々も目を見開く。
「や、ヤマトさん?」
つい、そう問いかけずにはいられないテゾーロに向かってヤマトは口を開く。
「――テゾーロさん!僕の考えた作戦があるんだけど!」
熱っぽくそう言うヤマトだが、その目は真剣だった。その目と言葉に驚愕したテゾーロもすぐ真剣になり――耳を傾げた。
「――どのような?」
テゾーロからの問いかけに対してヤマトは考えた作戦を説明し始める――
まず、〝オーシャンヴァリー〟の中にいる人々を全員――ヤマトの下に集まらせる。そう、1人さえも漏れなくだ。
そして、その状態で仮に爆発が起こってきたとしても――ヤマトがその爆発から人々を守るようにする。
それで人々の身が守られる事になるかもしれない。
なお、パニックになっている人々を集まらせるには――ヤマトが変身している〝大口真神〟の姿を利用しようと考えている。
現に人から神の使いだと崇められている。ならば、それを利用して集まらせるように誘導しようと考えている。
「――どうかな!?」
作戦を説明し終えたヤマトはテゾーロの反応を確認してみる。
対するテゾーロは――思案に耽けていた。彼にとっても悪くはないと考えているからだ。ただ――
「……ヤマトさん」
「うん?」
呼びかけられたヤマトが耳を傾げてくるのに対してテゾーロは感じた作戦での懸念を口にする。
「その……大きな風貌のあなたが動き出すだとすると――〝黒の組織〟の奴らも勘付くのでは?」
その可能性を口にしてみるテゾーロにヤマトは――
「……それなんだが――少しも動かずに大人しくしようと思う」
「そうすれば――警戒をするだろう奴らもやがて飽き飽きするんじゃない?」
「……ん~不安があるな」
ヤマトが苦し紛れにそう言うが、その意見にはテゾーロは良いだとは感じられなかった。彼にしてみれば、運良く〝黒の組織〟の者達が見逃してくれるのを期待するといえるから――すかわち、賭けでしかなかった。
「否定できないね」
その意見に口にしていた本人であるヤマトも同じように考えていたらしく、否定できなかった。
「――でも、他に思い付かなった」
「……そうですね」
ヤマトが苦し紛れにもそう言ってくるのにテゾーロも頷かざるを得なかった。
――といえ、人々を助けようとするのも分かるし、作戦もそう悪くはない……なら、ここはやはり――
「――ヤマトさん、そろそろスサノオさんに連絡しても?」
「もちろん!」
テゾーロがそう主張してみるとヤマトも異議がなく、力強く肯定した。
そして――
●
「(そして、少し手を加えた作戦を開始した!)」
ヤマトはそう考え浮かんでいだ。
そう――ヤマトが考えた作戦は手を少々加えられた形で開始されていた。
ヤマトは改めて足下の人々の様子を確認してみると――
「(……うん、今のところ大丈夫そうだ)」
――〝オーシャンヴァリー〟の中にいる人々が少しずつヤマトの足下に集まってきていた――作戦は順調に進行している証である。
「(……それに〝黒の組織〟の奴らは何も言ってこないな)」
続いて――〝黒の組織〟の出方をも確認しようとヤマトは周囲を見渡してみるが……別に異変はなかった。
その事に少し安堵しながらも油断する訳にはいかないと意識を入れ直しておくヤマト。
そこに――
「ヤマト!」
「!――お兄さん!」
突如のその声にヤマトもパァッと顔を明るくする。そして彼女が顔を向けると、その視線先には……スサノオ――オレが空中を飛び浮かんでいた。
「来てくれたんだ!」
「あぁ――爆発の現場にお前達がいると知ったら、そりゃな」
そう、〝セレエクスオ〟の頂点から〝オーシャンヴァリー〟で爆発が起こってきたのを視認したオレ達はまず、他グループの安否をすぐ確認してみた。
そして――ヤマトグループが爆発の現場にいるのを知ったオレ達は〝風雲〟で空を飛び浮かび――その現場に向かっていったのだ。
なお、ヤマトグループから人々を助ける為の作戦を耳にしたオレは自身達も参加する事で作戦に手を少し加えておいた。
それこそが――
「――ハッテンはもう?」
「あぁ――ハッテンがもうやっている筈だ」
ヤマトからの確認にオレもそう言っておく。
――ハッテンは裏工作の分野関連には長けているのだ。だからこそオレはハッテンを起爆装置を探しに行かせる事にした。
ハッテンもそれに従えて――まず、ルナーリア族特有の機動力でオレ達より先に〝オーシャンヴァリー〟に向かっていった。今はそこでの起爆装置を探し回っている筈だ。
「ハッテンなら、約1時間内でも見つけ出せるだろう」
「だね!」
ハッテンの能力を知っているオレはそう考えていて、その意見にヤマトも賛意を示した。といえ――
「――万が一もある。だから、お前はここで準備していろ」
「うん!」
万が一の可能性をも考えているオレはそう指示しておき、ヤマトも異議せずに頷く。
「――オレは行くぞ」
「うん!――任せた!」
そして、自身が請け負っている役目に集中しようとオレはヤマトから飛び向かおうとする。それを理解するヤマトもオレ達の助力に感謝しながらそう言った。
その言葉に頷いたオレは空中を飛び浮かんでいく。そして、空中で飛び待っているページワンとゼノンとヤヒコ達に合流した。
「――スサノオさん!オレ達は〝黒の組織〟って奴らを倒せばいいんですね!」
「あぁ!」
そう確認してくるページワンにオレは肯定する。するとゼノンとヤヒコが口を開く。
「……どうでもいいが――せっかくだ。全力で潰す」
「――初陣ですから!全力でやりますよ!」
気合を入れている2人にニャリとしたオレは宣言する。
「〝黒の組織〟とやらを〝虚無〟にしてやるぜ!」
――〝エレインホール〟に起ころうとする禍に暴獣海賊団もまた立ち向かおうとしている……