爆発を起こされた上に他にも起爆装置が存在しているのだという可能性を示唆された事である意味〝黒の組織〟によって占領されてしまったといえるであろう〝オーシャンヴァリー〟――
――だが、その地下には……
「――急ごう!皆!」
「あぁ!分かってるってばよぉ!」
「――しかし……開設されてからさっそく〝ここ〟を使うハメになるとはね〜」
「あぁ……だが、現に今!役に立っているんだろ!?」
「全くだ」
……実は道が存在していて――そして、それをある集団が駆け走っていた――
――アルベリヒ、ノーグル、ゼンシャー、ヴォイジ、サブリングワル……その〝エッジオブパシフィック〟の幹部5人が率いるチームが〝オーシャンヴァリー〟に向かって駆け走っていた。
――そう、そこで起こっている出来事を対処する為に……
――そもそも、彼らがなぜ〝オーシャンヴァリー〟の地下を駆ける事ができているのかというと……
……実は〝オーシャンヴァリー〟の地下には――非常事態に備えて、道を密かに作られてあったのだ。それはもちろん――〝エッジオブパシフィック〟本社にまでも続いてある。
その地下の道の存在は幹部陣しか知らされない程に秘密にされているので〝黒の組織〟でさえも知らない筈だろう。
今時点で唯一のその優点を「映像電伝鳥」を渡したくないとも、人々を救助したいとも考えている〝エッジオブパシフィック〟は利用する事にした。
――そうして〝エッジオブパシフィック〟が結成したチームがその道を通って〝オーシャンヴァリー〟に向かって駆け走っていった。
「――分かってるな!お前ら!」
「「「オオッ!!」」」
一応チームの隊長を請け負っているヴォイジは仲間、部下達にそう確認を投げかけてみた。その確認に対して他の4人はおろか、部下達も応えて雄叫びを上げた。
「あぁ!――行うべき事は3つだったな!」
「おう!――奴らに気付かれないうちに人々をこの地下に少しずつ案内するんだな!」
「――そして起爆装置を見つけ、止める!」
「――もしも〝黒の組織〟の者がいやがったら……ソイツを討伐してやる……!」
今起こっている非常事態に対して対応すべき事を4人が改めてそれぞれ口にしておく。
その事に修正を言われない事で請け負っている任務内容を改めて確認でき、気合を入れている4人にヴォイジも頷く。
「よぉし!――行くぞぉ!」
「「「おう!!」」」
自身を含むチームに対しての激励として声を上げてみせるヴォイジとそんな彼につられて再び雄叫びを上げたチームがそのまま〝オーシャンヴァリー〟に向かって駆け走っていった。
――そこに囚われている人々を救助する為に……そして、〝黒の組織〟に立ち向かう為に……
●
だが――〝黒の組織〟、それに続いて〝エッジオブパシフィック〟も動き出している裏で――こういう思惑もまた蠢いていた……
――思わぬ出来事が起こったんだが……これは好機だ。
――あぁ……この機に乗じて「映像電伝鳥」を手に入れよう。
――それと……〝エッジオブパシフィック〟はもはや邪魔だから――この際に奴らを消そう。
――その罪は……ちょうど〝黒の組織〟がいる――アイツらになすりつけてやればいい。
――ソイツらに罪をなすりつけるなら……化けながらあの厄介な暴獣海賊団の戦力を少しでも削しておくのもいいかもしれんな。
――決まりだな。
……誰にも知られない闇の中でそんな陰謀が密かに進んでいた――
●
「急げ!――あの白き狼の下に行くんだ!」
「あそこまで行けば――白き狼が助けてくれるぞ!」
〝オーシャンヴァリー〟の中にいる人々はある一点――白き狼が堂々と座っている建物の下に向かって駆け寄っていた――そうして人々はその下に少しずつ集まっていった。
――白き狼の下を人々がなぜ目指し、必死に行こうとしているのかというと――
――そこにいれば、爆発はおろか〝黒の組織〟の魔手から白き狼が守ってくれるのだといわれたからだ。
そのいかにもウソ臭い噂に対して人々は――白き狼の幻想的で神々しき姿を目にした事で一欠片さえも疑念を持たずにすぐ信じ、駆け寄っていった。
そんな人々に希望を託されている白き狼――〝大口真神〟に変身しているヤマトは……
「……〜〜やっぱり――動かずにいるのはきつい……!」
全く動かずに座り続けているという状態に苦痛を感じていた……ジッとしていられずに動き回るタチであるヤマトは微動だにしないという性に合わない状況に参っていた。
――といえ
「……我慢我慢!――少なくとも人々の安全が確保されるまでは……!」
困窮している人々をほっとけないタチでもあるヤマトはその人々の為に自身のできる事を全力で行おうとしていた。
「――お兄さん達は…皆はやってくれているのかな?」
そして、起爆装置と〝黒の組織〟に対しての対応に動いているスサノオ達の動きにヤマトは望みをかけていた。
●
「……やはり、これは――予想外の事態だな」
今の〝オーシャンヴァリー〟の状況を陰から様子見している影が存在していた。それも1つではなく――数人も立ち留まっていた。
「……あの白き狼は――今も全く動いていないな……」
「……だが、人質共があの白き狼の下に集まっているぞ?」
「……どうする?――もしかしたら、これも人質共がここから逃げる為の作戦かもしれねぇぞ?」
その状況に関して数々の影がそう議論をしていて、しまいには人々が〝オーシャンヴァリー〟から逃走しようとするのを疑っていた。
仮にそうだとしたら影達には厄介な事になってしまう。何せ、事を思いのままに進行させる為に必要な筈の駒が手から離れていこうとしているのだから……
だが、焦っているように見受けられている影達に向かってその中で最も存在感がある1つの影が言い放つ。
「……仮にそうだとしても――ハッキリ分かりやすい動きが今のところみられねぇ以上、ほっとくしかねぇな……!」
「「「!」」」
「……でもよぉ」
その意見に影達が驚愕し、その中の1つがたまらずに声を上げるが、その影は言葉を続ける。
「そもそも――この騒ぎは〝エッジオブパシフィック〟の奴らから「映像電伝鳥」を手に入れる為にあえて起こしているだけだ」
「……裏を返せば――「映像電伝鳥」さえ手に入れられば――コイツらがどうなろうが――別に構わねぇよ……!」
〝オーシャンヴァリー〟での重要な筈の出来事をその影はあっさりとそう切り捨てた。
その言葉、不遜そうな雰囲気に影達が息を飲む中、その影は突如真剣になり――
「……といえ――監視を続けるべきだな……なんだかんだ言っても人質は必要だからな……もちろん――」
「――少しでも、人質共が妙なマネをしてきやがったら……ドカン……だ」
その影はそう獰猛な笑みを浮かべた。その笑み、言葉に影達もつられて笑みを浮かべた。
「ヘヘ……了解!」
「あぁ」
「だよな〜そりゃな」
――以上をもって、影達の総意は纏められた。
「――それに……起爆装置が対処される事はねぇんだ――だから問題はねぇよ」
「ヘヘ……確かにな」
陰からヤマト達の様子を見ている影達が続いてそう議論を交わしていた。
そう、起爆装置が対処されていない上に事態に今のところ異常が別にみられてもいないので……一応慎重に監視を続けておくが――別に大丈夫だろうと余裕な様子をみせていた……だが――
●
「……見つけた」
ある場所で黒い大天狗のような男――ハッテンはそれを見つけていた――そう、起爆装置だ。
「……さて、これを停止するには?」
その装置にうかつに手を出さない慎重なハッテンが視線を向けながら、そう問いかけてみる。その問いかけ先には――
「……それは――」
黒ずめの男であった……そう、彼こそが〝黒の組織〟のメンバーだ――もっとも今は様子がおかしいように見受けられていた……現に彼はハッテンに対しての敵意等の負の感情を持っていなかった。
――実は暴獣海賊団の中でも格別に見聞色の覇気に長けているハッテンはその力を漏れなく発揮し――その近くにいて力がありそうな〝黒の組織〟のメンバーを見つけ、〝幻火〟をかけておいたのだ。
その幻術にまんまとかかってしまったその男に案内をさせておく事でハッテンはまず1つの起爆装置を発見できたのだ。
――そして今、続いてその男からの説明を聞いているハッテンが起爆装置を停止させようとしていた。
「――よし!まず1つ」
その甲斐はあって、その起爆装置は――完全に停止されたのだ。これで爆発は阻止できた――ただし、この辺りのは。
「――他は!?」
すぐハッテンは男に問いかける。それに応えてその男から残りの起爆装置がそれぞれ置かれている場所と他のメンバーの居場所に関しての情報をたやすく口にする。
その情報を把握できたハッテンはさっそく電伝虫を手に取り――
「……あ!皆!――場所は――」
探索をしているであろう仲間達にもその情報を伝えていった。
その情報を無事受け取れた仲間達はそれぞれ、自身の近くの場所に置かれている起爆装置といる〝黒の組織〟のメンバーを対応しようと動き出し始める。
「これで起爆装置も奴らも対処できるだろう」
ハッテンはその事に笑みを浮かべるものの、すぐ心身を引き締めておく。
「――だが、僕達の動きが奴らにバレる事で爆破を早められるのもあり得るからな……急ごう!」
そう考えたハッテンは自身もまず――起爆装置の対処に動き回るのを決意する。
「――まぁ!ルナーリア族である僕には他愛ないがね!」
ルナーリア族特有の驚異的な機動力を持っている――それこそ父キングと兄フドウ以上のスピードをハッテンが持っているのだ。
自身のスピードに自信を持っているハッテンはニャリとする。
「……この〝火影のハッテン〟――」
「――爆炎さえ起こさせず、〝黒の組織〟の奴らも本当の闇に葬ってみせようぞ!!」
そう〝火影のハッテン〟が自身のやり方で事態を打開しようとする。
――〝火影のハッテン〟の暗躍により〝オーシャンヴァリー〟に起ころうとしている禍が収まれていくのだろう……と思われてた。
●
〝オーシャンヴァリー〟での非常事態に対しての対応が少しずつだが、順調に進んでいると思われていた中でそれは突如起こった。
「ギャアアア!!」
「「「!?」」」
ある場所で悲鳴が上げられて、それにその場にいる人々が一気に視線を向けた。その視線先には――ある小路を凝視しながら震えている女性が立っていた。
「あ、あぁ……」
「大丈夫ですか!?」
「何があった!?」
震えている女性に人々が駆け寄り、そして親切にそう声を掛けた。だが、それが聞こえていないのか女性は反応をみせずに震えているままだった。
「あ、あぁ……」
「「「……?」」」
そんな彼女の様子が気になってしまう人々はその視線先――小路に視線を向けてみると――
「「「……!?」」」
「な!?」
驚愕してしまう。何せ、そこには――
「…」
――1人の死体が横だっていたから……
「な…な!?」
「ば、爆発か!?」
それを目にした人々はやはり驚愕せざるを得なかった。そして、その者は爆発によって死んでしまったのかという声が出てきた。
「……い、いや……爆発じゃない!」
「あ、あぁ……こりゃ――ナイフのような物で殺されている!」
だが、別の人達がその意見を否定し、その者の死因をそう指摘した。そして、爆発とは無関係なその死因に人々が騒いでしまう。
「な、何で殺されてんだ!?」
「〝黒の組織〟か!?」
そう声が上げている中、この声も上げられてきた。
「……ま、まさか――れ、連続殺人事件か!?」
「「「!?」」」
その意見に人々が息を飲んでしまう。
――確かに〝エレインホール〟のあちこちで起こっている連続殺人事件での被害者はいずれも刃物でやられているといわれる。
それと同じようにこの者も刃物で殺されている以上――連続殺人事件の新たな被害者である可能性も否定できない。
「じ、冗談じゃねぇぞ!!」
「あ、あぁ!!こんな時に――ここに殺人鬼がいるなんて!!」
その可能性に人々が恐れ慄いてしまった。
――無理もない。〝黒の組織〟によって新たに爆発を起こされるかもしれないというすごく悪い状況であるにも関わらずに――連続殺人事件の犯人がいるかもしれないという可能性を受けて、人々の恐怖心が上がってしまったのだ。
――〝黒の組織〟によってもたらされた禍は思わぬところで起こった新たな禍の影響も受けた事で悪化し、更なる事態を迎える事になってしまう……