ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第81話〝共同戦線〟

 ――混乱している〝オーシャンヴァリー〟の中にはある扉が存在しているが……それが突如開かれ、その中から一見普通ではない武装集団が突如姿を現してきた!

 ――その集団こそが〝エッジオブパシフィック〟が結成した対非常事態チームである。彼らは地下の道を通り抜いて〝オーシャンヴァリー〟に到着してきたのだ。

 

「……!」

 

「これは……!」

 

 だが、そこで起こっている状況を目にした彼らは呆気に取られた――予想を越えたものがそこにいたからだ。

 

「……何だ、あの大きなものは?」

 

「……白き狼?」

 

 そう、彼らが目にしている状況中でもすごく目立っているもの――〝オーシャンヴァリー〟で最も高い建物の楼上に堂々と座っている白き狼の姿にヴォイジ達も訳が分からず、首を傾げざるを得なった。

 

「……あ!君!これはどうなっているの?」

 

 そんな謎だらけの状況の全貌を知る為に――まず、ゼンシャーは近くを慌ただしく駆け走っている人にそう声を掛けてみた。

 突然のその問いかけにその人は慌ただしくても丁寧に答えてくれた。

 

「――あの白き狼の下に行くんだよ!――そうすれば、あの狼が爆発と〝黒の組織〟から守ってくれるんだ!」

 

「「「!?」」」

 

 その説明にゼンシャー達は驚愕した。そんな彼らをその人は義務を果たしたというかのように置いてさっさと駆け走っていた。

 

「……どう思う?」

 

 あの白き狼が〝黒の組織〟の魔手から守ってくれるという眉唾物の情報に関してヴォイジ達は議論を始めた。

 

「……罠かもしれねぇぞ?例えば――集まっている人々をまとめて始末するとか?」

 

「……そういう可能性だとしたら……確かに手際が良いから高いと思うが――」

 

「……意外にただ助けようとしているだけかもしれないぞ?」

 

「……それに仮に――〝黒の組織〟の仕業だとしたら……奴らがわざわざそうする理由が見当たらない」

 

 ヴォイジ達は慎重にそう議論を交わし続き、しまいには――

 

「――あの白き狼に意図を聞くしかないな!」

 

 ヴォイジがその考えを口にした。その意見に関してもさらに議論を始める。

 

「……こういう状況では、それが一番なんだが――」

 

「……もしも、あの狼の目的が――害をもたらす為だとしたら……?」

 

 そのあまりに当然でもっともな懸念にヴォイジも笑みを浮かべながら続いての考えをも口にする。

 

「――もちろん!」

 

「――このオレがあの狼を倒してやる!」

 

「「「…」」」

 

 怯まずにハッキリとそう宣言したヴォイジに4人も思わず――苦笑を浮かべてしまった。

 ――彼の性格を知っている4人だからこそ、彼がそう言ってくるのを実は分かっていた――そして、同時に思う――そう、これこそが――ヴォイジなんだと。

 とにかく、彼らの間でそう話が決まった以上、あとは――急ぐのみだ。

 そう気合を入れてきたヴォイジはすぐ言葉を続ける。

 

「――さっきも言ったが……白き狼への尋問はこのオレが行う!」

 

 突如、任務内容を説明してくるヴォイジに4人、他のチームメンバー達もハッと我に返り――すぐ身を引き締めながら耳を傾ける。

 その様子を確認できたヴォイジは続いて指示を下す。

 

「――ノーグルとゼンシャーの隊は起爆装置の対処!」

 

「あぁ!」

 

「おう!」

 

「「「ハッ!」」」

 

 その指示に対して指名された2人と彼らが率いるメンバー達は果敢に頷く。

 

「――アルベリヒとリングの隊は避難誘導!」

 

「はい!」

 

「あぁ」

 

「「「ハッ!」」」

 

 続いてのその指示に対して指名された別の2人と彼らが率いるメンバー達も果敢に頷く。

 

「――分かってるな?お前ら」

 

「「「おう!」」」

 

 最後にそう確認するヴォイジにチームはそう雄叫びを上げた。

 ――そうなのだ。

 ――これ程の事態だ。仮に打つ手を間違えれば……悲惨な結末が待つのは間違いないだろう……

 ――そうさせない為に我々が命を賭けて活動しなければならないのだ。

 その事を深く理解しているチームの勢い良さに頷いたヴォイジは最後に締めておく。

 

「――よし!それでは――解散!」

 

 その言葉を合図にチームは素早く散らばっていった――そこから自身が請け負った使命を果たす為に……

 

 

――そうして〝オーシャンヴァリー〟での禍に対して〝エッジオブパシフィック〟が本格的に動き出し始める……

 

          ●

 

「……今のところ、異変はないね」

 

 その建物の楼上に堂々と座っている白き狼――ヤマトは足元に少しずつ集まってきている人々の様子を凝視し、そして周囲をも見渡して様子を確認してみる。

 彼女の目線からすれば、少なくとも――異変が見受けられないようだ……すなわち、ヤマト達の作戦は順調に進んでいるといえる――なんだが……

 

「……さっき聞いた事もあるし……それに――」

 

 さっき聞いた仲間からの情報を思い浮かんだヤマトは顔をしかめてしまう。

 ――作戦が進んでいる中である場所にて異変が起こっていたのをヤマト達は聞かれていたのだ。

 その規模は少なくとも、ヤマトがまだ動く程ではないが……軽くはないともいえる。それ故に厄介な事になったといえる。

 ……まぁ、そのトラブルに関しては仲間が対応しているだろうし――それに……

 

「……何か用?」

 

 突如鋭くながらそう言うヤマトの鋭い視線が横に向けられると――

 

「…」

 

 ――ヴォイジが立っていた。

 先程まで地に立っていた筈の彼はヤマトの意図を知る為に素早く彼女の元にまでも登ってきたのだ。なお、ヤマトもその近付いてくる気配を感じ取り、警戒感を覚えるように身構えている。

 

「……アンタは何者だ?何の為にここで何を?」

 

 そんなヤマトに対して同じように警戒感を覚えているヴォイジは慎重にそう問いかけてみる。その解答次第でこちらの出方が決まるだろう。

 そういう念を込められている問いかけに対してヤマトは――

 

「……我は〝大口真神〟なり――」

 

「……我は人々を救いに降臨してきたまでだ」

 

 ――彼女に似合わない調子で、厳かにそう言い放った。

 ――ヤマトの方にとっても目前の青年の身元と意図が分からないのだ。

 しかし、その上で今も進んでいる作戦を中断させる訳にはいかないと考えているヤマトは自身の作った設定の通りに振る舞う事にした。

 

「……オレは――」

 

 その振る舞いに対して眉をひそめたヴォイジはしばらく思案に耽り――やがて、ある事を口にしようとしてみた。

 

「……オレは――〝エッジオブパシフィック〟の人間だ」

 

「オレ達は――〝黒の組織〟から皆を救助しに来たんだ」

 

 そう、彼は自身の身元を明かす事にしたのだ。

 ――ヴォイジはヤマトの目的が人々を助けるか罠にかけるのか、どちらなのかちっとも見当が付けられないのだ……だが、時間も限られている。

 それなら――彼は賭けに出てみたのだ。

 ――事態が悪化してしまう危険性についても、今時点でももう既に十分悪い状況であるという事、そしてヤマトからの「人々を救う」という言葉を信じて身元を明かしてみたのだ。

 

 

 

 ――そして、その賭けに勝った。

 

「……!」

 

 ヴォイジ自身から明るされたその身元にヤマトが目を見開き、そして思案に耽る。

 ――やがて

 

「……僕はヤマト――暴獣海賊団の海賊だよ」

 

 ヤマト自身も身元を明かす事にした。彼女にとっても彼に身元を明るしておく事でこの出来事に関して暴獣海賊団が無関係であるのを証明しようと考えたのだ。だが

 

「!?海賊……!?」

 

 ヤマトのその身元に当然ながら驚愕したヴォイジに彼女は慌てながら言葉を続ける。

 

「待った待った!僕達は君達には何もしないよ!――僕達はただ人々を助けたいだけだよ!」

 

「…」

 

 ヤマトが必死にそう主張するもヴォイジが疑うのをやめられない。その様子にヤマトはため息をつき――

 

「……あ〜!――じゃあ!僕達は〝黒の組織〟を叩き潰したいんだ!それでどう!?」

 

 焦れったくなったヤマトが今度はそう主張してきた。その主張に対してもヴォイジは相変わらず険しい表情を浮かび続ける――が、突如吹き出してきた。

 

「!?」

 

「――君が」

 

 突如笑い始めたヴォイジにヤマトが肝を抜かれた。やがて吹き笑っているのを収めたヴォイジは意外に穏やかに微笑んでいた。

 

「……君達の目的がどうであれ――〝黒の組織〟の敵であるのは分かった」

 

「――なら、君達とも敵対する訳にはいかない……手が足りないからな」

 

 さっきまで疑ってきた筈のヴォイジは様子を一変させ、そう宣した。

 ――ヴォイジがヤマトの態度をずっと注視してみるうちに彼女の表裏がない性格が彼には一応信用に値すると判断されたらしい。

 そんなヴォイジに対してヤマトは釈然としない気分になっていた。

 

「……ん〜、何だかな〜……まっ、いっか!」

 

 だが、そう自身を納得させたヤマトはヴォイジに情報を話していった――そう、〝オーシャンヴァリー〟の中での起爆装置の置き場所とその数、〝黒の組織〟のメンバーに関しての情報を……

 

 

――〝オーシャンヴァリー〟は7つのエリアで構成されているが、各エリアにはそれぞれ3台ずつ起爆装置が置かれてある。

すなわち、〝オーシャンヴァリー〟には計21台の起爆装置が置かれている事になる。

――さらに、監視係と警護係としてその場の近くをさり気なく歩き回っている〝黒の組織〟のメンバーも存在している。

1台の起爆装置の置き場所に3人ずつ――すなわち、計63人もいる事になる。

 

――だが、その情報を把握した暴獣海賊団によって既に5台も停止され、15人も撃破されている。

 

 

「……なるほどな」

 

 ヤマトから説明されたその情報にヴォイジは唸った。

 彼には思った以上に厄介だと考えたからだ。だが、それでも情報を得られるのは有り難かった。

 そんな彼に対してヤマトはさらに説明を続ける。

 

「……それと――問題があと1点あるんだ」

 

「?」

 

 新たな情報の気配に首を傾げるヴォイジにヤマトはその情報を口にする。

 

「……連続殺人事件を知っているよね?」

 

 その問いかけにヴォイジは目を見開く。

 

「あぁ、知っているぞ――その事件に関してオレ達からも人員を出しているからな……ってまさか!?」

 

 そして、ヴォイジはそう答える――その途端に何かに気付き、冷や汗をかいてしまった。その様子にヤマトは重々しく頷き、口にする。

 

「……ここに犯人がいるらしい」

 

          ●

 

「……全く!こんな時に!」

 

 連続殺人事件の新たな被害者と思われる死体が置かれている場にテゾーロとその妻子が立っていた。

 ――実はさっき、その場で発見された死体に人々が慄いていたが、そこにテゾーロが姿を現し、その場を取り締めていた。

 

『ここはオレ達が何とかやるから逃げろ!――ここは何より命だろう!』

 

 テゾーロがその言葉を言い放つとそれに一理あると考えた人々はすぐヤマトの下に駆け向かっていった。

 そして、場に残っているギルド一家は――

 

「ハッテンからの情報によれば、〝黒の組織〟の可能性がかなり低いそうだし……」

 

 テゾーロは今立っている場に関しての情報からそうこぼしていた。

 ――ハッテンが入手してきた情報によれば……連続殺人事件は〝黒の組織〟とは無関係である。

 加えて彼らがその事件を模倣する計画もないらしい――彼らにとってもわざわざそうする理由がないからだという。

 

「……誰だか知らないが――本当にこんな時に余計な事をしてくれて……!」

 

 今まさにあまりにも大事が起こっているのに、それにも関わらずに新たな厄介事が起こってきてしまったという事実にテゾーロもイラつきを抑えられずにはいられなかった。

 だが、悪態をつく余裕もないテゾーロは死体を片付けておく事にした。このままにしておくと人々の避難が進めにくくなってしまうからだ。

 

「……あなた」

 

 ノヴァに死体を見せないようにその子を抱えているステラが死体を誰にも見えにくいように隠させている夫に心配そうに声を掛けた。

 彼女もこういう状況で殺人を起こされている事態に不快感を覚えると同時にその犯人がどこかに潜んでいる状況にも不安感を覚えていた。

 

「あぁ……君達も私から必ず離れるな」

 

 妻からの声にテゾーロもその不安を感じ取り、鋭くそう言いつけてやる。

 ――さっき爆発が起こってからギルド一家は身を固まっていたのだ。作戦が開始されてテゾーロが人々を避難させるように誘導しておく際にもだ。

 

「――よし!これでいい」

 

 死体が隠されているのを確認できたテゾーロはステラにも声を掛けておく。

 

「……犯人は――皆に任せて、私達は避難誘導を続けよう」

 

「えぇ!」

 

「あい!」

 

 作戦を滞りなく進める為に連続殺人事件の犯人を排除したいと考えているテゾーロだが――今は妻子がいる為に犯人探索より危険性が低い人々の避難誘導の方に注力する事にした。

 そして、犯人の方は仲間に任せざるを得ないが……

 

「……頼んだぞ。皆」

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