「――んオラァ!」
「ぐぁあ!!」
オレは目前の男――黒ずめの男を叩き潰していた……
もちろん、その男が所属している〝黒の組織〟の思惑を拒む為に……そして――
「――スサノオさん!これで!」
「おう!――これで全滅できた筈だろうな」
その様を見届けたヤヒコから興奮しながら掛けてきたその言葉に対してオレも相槌を打った――
――実はさっきハッテンとページワン達、そして共戦を結んだ〝エッジオブパシフィック〟から受け取った情報によって読み取れる、今身を置かれている状況は――
「……ハッテンが入手した情報の通りだとすれば――警護係・監視係は全滅できた筈だ」
オレはそう口にする通り――起爆装置の置き場所辺りをさり気なく歩き回っていた〝黒の組織〟のメンバー達はオレ達、そして〝エッジオブパシフィック〟の者達によって撃破された事になっている筈だ。
実は〝オーシャンヴァリー〟での監視係を請け負っている彼らは事態の異変――〝黒の組織〟に対しての抵抗を微かでも感じ取れば、すぐ上の者にその事を報告する仕組みになっていたのだ。
そうする事でその報復として起爆装置を起動させられる筈が――
その肝心の監視係が全員、一気に撃破された事で報告する余裕さえも与えられず――〝黒の組織〟が事態の異変をすぐ知らされる事はなかった……
……そして、監視係だけではなく警護係をも請け負っているそのメンバー達に警護される筈の起爆装置は――
●
「……これで終わりだな」
――ゼノンは自身が停止させた起爆装置を見下ろしながらそう呟いた。
――そう、彼もまた起爆装置を見事に停止させていた。その事で〝黒の組織〟への抵抗に貢献できたといえよう。
「…」
何か意味深そうに考えていながらも、黙って起爆装置を見下ろし続けているゼノンに対して声が突如響かれた。
『――終わったか!?』
「……フン」
――ページワンが電伝虫を由来してゼノンにそう確認してきたのに対して彼は何も言わず――鼻を鳴らしていた。
その無愛想な反応にページワンも当然ながらイラつくものの――
『チッ!……だが、つまり――停止させたという訳か』
「……〝黒の組織〟とやらの手駒はこれで完全に失われただろう」
ゼノンの態度が無愛想だが余裕満々なものである事からその事を勘付いたページワンに彼もそう宣した。
その言葉に対してページワンも相槌を打つ。
『あぁ……オレ達が対処しに行っていない所では――〝エッジオブパシフィック〟の奴らが対処しているようだし』
ページワンがそう指摘する通り、彼らが起爆装置の対処に動いているは動いているが……彼らだけでは全てのを対処できず、あっけなく爆破されてしまうのがオチだといえよう――
――だが、ページワン達だけではなく……〝エッジオブパシフィック〟のメンバーもまた対処に動いている。
その為に〝オーシャンヴァリー〟に置かれている数々の起爆装置は全て――停止されたのだ。
――これをもって〝黒の組織〟からの脅迫に狼狽える事も……そして従う必要も……なくなった訳だ。
●
〝対処完了〟という情報はもちろん――〝エッジオブパシフィック〟本社にも届いてきた。
「――本当か!」
『あぁ……確かに起爆装置が全て停止されただとよ』
チームのまとめ役な故に〝オーシャンヴァリー〟での事態を全て把握しやすいようにしているヴォイジからのその報告を受け取った社長は喜ばしそうに表情を明るくする。
「――暴獣海賊団の事を聞いた時は頭を痛くしていたが……」
――対処しに向かっていった仲間と部下達の事を信頼している社長でも〝黒の組織〟以外にも新たな勢力――それも海賊が滞在しているという事実に焦りまくり、なんとか糸口を探ろうと考えを巡らせ巡らせてきたが……
『ハハ!言ったろ!――大丈夫なんだってと!』
ヤマトと会話してきたヴォイジが晴れやかにそう主張した通り、暴獣海賊団は〝エッジオブパシフィック〟――〝エレインホール〟に害をもたらそうとするどころか、〝黒の組織〟に対しての抵抗になんと、力を貸してくれたのだ。
海賊が力を貸してくれたという事実に社長は混乱しながらも、事態が収束されようとしているという事に対しても安堵していた……
……だが、もちろん――
「……しかし、だからってそのまま信頼する訳にはいかない……その暴獣海賊団とやらにも警戒しておく必要がある――この状況ではかえってだ」
『あぁ、分かってる――例の連続殺人事件の新たな被害者かもしれないのが出てきてやがったのもあるし……オレも注意しておく』
――そうなのだ、起爆装置が停止された事で落ち着いてきたようにみられるものの、非常事態そのものがまだ収束されていない。
そういう状況である以上、警戒を続ける、強める必要があると社長はそう考えていた。その考えに対してヴォイジも同感であって、そういう姿勢を構えておくように心掛けていた。
そして、ヴォイジは問いかけてみる。
『それはそうとして――奴らからは?』
「いや、連絡がまだ来ないな……だが」
身を置かれている状況をさらに知る為のその問いかけに対して社長はそう答え、それから自身の考えを口にする。
「このままで終わりとは思えない――だからこそ、ヴォイジ」
『あぁ――皆にも気を付けるように言っておく』
その言葉、それから社長の意図を感じ取れたヴォイジも仲間、部下達にそういう姿勢を構えわせるようにするのを心掛けていた。
――こうして〝エッジオブパシフィック〟の新たな意向は決まった事になる。
「……気を付けろよ」
『おう』
今後の行動予定が決まった事でさっそく実行に移ろうと電伝虫を切ろうとするヴォイジに対して社長はそう声を掛けておいた。
社長からの突如の激励に肝を抜かれたヴォイジも笑みを浮かべ、そう返した。
社長達の議論が終わり、その電伝虫が切れられたのを見届けたコナンが長らく閉じていた口を開く。
「……社長。これから何をしますか?」
「……あぁ」
――〝オーシャンヴァリー〟での行動は決まっているからいいとして……本社に関してはまだ決まっていないのだ。
その指示を仰いでくるコナンに対して社長は自身の更なる考えを口にする。
「――起爆装置の問題が解決された事でもはや〝黒の組織〟を恐れる必要はなくなったかもしれない」
「――だが、計画を台無しにされた奴らは自暴自棄になり――メチャクチャに攻撃を仕掛けてくるかもしれない……」
社長がそう口に出してみたその可能性にコナンも一理はあると否定せずに頷く。
「……では?」
「あぁ」
そして、社長が何を考えているのかなんとなく勘付いたコナンがそう言ってみると社長も頷く。
「――奴らの襲撃に備えて警戒レベルをもっと高めておくように言ってくれ!」
「はい!」
――実は〝エッジオブパシフィック〟本社はもう既に警戒形態を展開しているが……〝黒の組織〟がヤケクソに激しい攻撃を仕掛けてくるだろうと考えた社長はそのレベルをさらに高めておく事にした。
その指示に従ってコナンは素早く社長室から出ようとする――
「…」
――そのコナンの目つきは鋭くながらも暗くなっていた……
●
「――よし、こんなもんかな」
ある場所でアルベリヒは――目前の男の身体を鎖で縛り付けていた……そう、自身が撃破した〝黒の組織〟のメンバー達を逃さないように縄をかけていたのだ。
その場にいるメンバー達は全員、アルベリヒによって拘束されて身動きできない状態になっていた。
その様子に満足しているアルベリヒはさっそく電伝虫を手に持ち――
「……リングの方はどうなったんだ?」
その場とは違う場所でやっているであろうリングに連絡を取ろうとしていた――
――だが……
「……あれ?」
アルベリヒはそう仰天の声を上げていた。
何せ――なぜか、リングとは連絡が全く取れなくなっていたからだ。
その事を疑問に思っているアルベリヒがもう一度試みようとしても――連絡が取れる事はなかった……
●
「ふぅ〜……なんとかなったな」
またある場所でノーグルは――能天気な様子で床に座っていた……実は起爆装置を停止させる役目を請け負っている彼は全て対処されられたのを聞いた途端に安堵し、身体の力が抜けていたのだ。
さすがの野性的で果敢な彼でも〝オーシャンヴァリー〟に起こってきてしまった出来事に対してゾッとせずにはいられなかった。
だからこそ、その危険性が低下されたのを受けてノーグルは肩の荷が少し下りた気分になったのだ。
『……お疲れさん、ノーグル』
「おう、お前もな」
そんなノーグルに対して電伝虫を由来してゼンシャーからそう疲労を労い、彼からもそう返した。
『……でも、まだ終わっていないよな?』
「あぁ、確かにな――まだ奴らが全滅していると確認できている訳じゃねぇからな」
「それに例の連続殺人事件の犯人もいるようだしな」
さっきの雰囲気とは一変したゼンシャーは今身を置かれている状況からその懸念を口にし、それに同感するノーグルも改めて状況を分析してみた。
さっきヴォイジから受け取った情報を元に今の状況を把握したノーグルとゼンシャーは今後、新たに来るであろう厄介事に備えて気を引き締めるようにする。
「……それとな、暴獣海賊団とやらにも注意する必要もある」
『……手を貸してくれたのにね』
「あぁ、だがこの状況では慎重に動くべきだ」
『……まぁ、それはそりゃなんだけど』
そんなノーグル達は続いて暴獣海賊団の事に関しても会話する。
〝オーシャンヴァリー〟での厄介事に対しての対処に手を貸してくれた事もあって、暴獣海賊団に恩を感じているゼンシャーにノーグルはそう釘を差しておく。
――例え、目が確かなヴォイジが暴獣海賊団の事に関しては大丈夫だと言ってきても、絶対という事はない。万が一に備えて慎重的に注意を払うべきだろう。
ノーグルが抱えているその考えに対してゼンシャーも否定しなかった。
「……とりあえず、まずは今オレ達がいる場所を出るか」
『うん』
とにかく次の行動に移ろうと動き出すノーグルにつられてゼンシャーも動き出す。
一旦電伝虫を切らしてから立ち上がろうとするノーグルだが――
「…」
そんな後ろ姿を凝視している目があった……
●
「――よし、なんとか着いたか!これで助かるな!」
「――でも、大丈夫かなぁ?」
「――ちょっと!大人しくしていろ!これ以上の面倒はごめんだ!」
〝オーシャンヴァリー〟で最も高い建物――そう、その楼上に堂々と座っているヤマトの足元に〝オーシャンヴァリー〟中の人々が大分集まっていた。
新たな爆発――〝黒の組織〟の魔手から逃れる為に守ってくれるといわれるヤマトの元に人々は駆け向かっていて――そして、大分集まれていた。
そのような状況中でそんな人々を凝視している集団がいた。
「……こうして人々が集まっているけど――」
その中のブラックマリアがそう呟くのに対して、その意図を勘付いたテゾーロは相槌を打つかのように頷く。
「あぁ……ここに置かれている全ての起爆装置は停止できたらしいから、もう心配はない筈なんだが――」
そう、人々を脅している起爆装置の対処完了の情報を受け取ったテゾーロ達の中は和気藹々としている空気が少し広がられるが――
「……でも、〝黒の組織〟が本当に全滅されているのかしら……?――ハンコックも動いているようだけど?」
その可能性を考えているステラからのその指摘にも同感しているテゾーロも頷く。
「――君が心配する事も分かっている……だからこそ、皆にはしばらくここにいてもらう」
――実はさっきからあらゆる可能性を考えているテゾーロがその可能性に対して手を打つ為にそう判断を下した。
そうして今後の意向がまとめられたテゾーロ達は人々に向かって視線を戻し、その様子見、そして周囲に対しても視線を配って襲撃に警戒するように構えていた。
「……今のところ、異変はないようね」
「そうだね」
テゾーロ達が人々と周囲を見渡すうちにマリアがその状況をそう解説するとテゾーロもその事に相槌を打つ。
そしてマリア達をも見渡して――重々しくも口を開く。
「……皆、少なくとも約30分は警戒しておいて!そうすれば、全て終わる!」
「「「おぉ!」」」
その激励にマリア達が雄叫びを上げる――その時だった。
「ギャアアア!!」
「「「!?」」」
人々の方向から突如その悲鳴が上げられたのは。
その悲鳴にテゾーロ達も驚愕し――
「な、何!?」
「わ、分からん!」
突然の事に肝を抜かれているテゾーロ達は当然混乱するが――
「分からんが……行くぞ!」
「「「お、おぉ!」」」
すぐ冷静になり、悲鳴が上げられている方向に駆け向かっていくテゾーロに呆気に取られているマリア達も我に返り、続けていった。
●
ヤマトの足元に避難している人々だが、その中からある女性が突如悲鳴を上げていた。
その悲鳴に人々が驚愕するのをよそに女性がある点に向かって震えている指を差しながら――叫んだ。
「な、ナイフよ!」
「「「……!!」」」
その女性が叫んだ通り、そこには――ナイフを手にしている青年が立っていて、剣呑な雰囲気を出していた。
「…」
その青年の目つきは暗かった。
――落ち着いていくかと思われた事態に更なる厄介事が起ころうとしていた……