ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

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第89話〝盗ってやる〟

時は溯って――

 

「――これで全員です」

 

 ある場所――〝黒の組織〟の集合場所は……九蛇海賊団によって壊滅させられていた。

 

「えぇ、お疲れ様」

 

「――これであの方も喜ぶ筈よ、お姉様」

 

「……それもそうじゃな」

 

 その海賊団を指揮するボア三姉妹はその事態を受けて、議論を開始していた。

 本当はすぐあの方――スサノオの元に参りたいと考えているハンコックはそうさせてもらえない状況にもどかしく感じていた……

 だが、妹達からその可能性を出された――そう宥められたハンコックは確かに一理はあると考え、とりあえず良い気分になる――が

 

「……ムッ!?――愛しきあの方の身に今、何かが起こっている!?」

 

 スサノオから褒められるのを妄想してだらしなく笑っているハンコックだが、すぐ真剣な表情を浮かべ直した――彼女はスサノオの異変を感じ取れていたのだ。

 確かに彼は今、小紫からの襲撃を受けているが……しかし、なんという恐るべき勘だ。

 

「お前達!!わらわはあの方の元に参るぞ!!」

 

「「え!?」」

 

 そして、そう宣言したハンコックにサンダーソニアとマリーゴールドは呆気に取られ、そして彼女を止めようとする。

 

「ま、待って――って!?」

 

「早っ!?」

 

 だが、サンダーソニアとマリーゴールドが目を大きく見開く。

 何せ――ハンコックはそれはそりゃ、もうビックリする程のスピードで駆け走っていた。

 あっという間にその姿が消えていったのに対して2人は呆然としていた……

 

          ●

 

「醜き獣が……!!よくもわらわの愛しき人を傷付けたな!!!」

 

「生かしてはおかぬ!!そなたを切りキザんで獣のエサにしてやる!!」

 

 ハンコックはオレに傷を付けた小紫に向かって怒りを込めてそう宣した。もっとも、彼女は目前の〝キマイラ〟が小紫であるという事実を知らないが……

 とにかく、突如のハンコックの登場に小紫は顔をしかめてしまう。

 

「……ここでハンコックか……!」

 

 ここに来てのハンコックの登場に小紫も不快感を覚えざるを得なかった。

 そんな彼女に構わずに感情のままに攻撃しようとするハンコックをオレは制止する。

 

「ハンコック!」

 

「はい♡」

 

 オレからの呼びかけに対してハンコックは恐ろしげな姿とは様子を一変させて可愛らく反応した。

 

「ありがとな!」

 

「!いいえ「ただ」――!?」

 

 ハンコックの手助けに対してのオレからの感謝に彼女は天にも昇る気分になれた。

 故に謙遜するハンコックだが、突如のオレからの続いての声に固まる。

 

「ここは全て――オレがやる……小紫とは真摯に向かい合うべきなのだからな……!」

 

「!?」

 

 小紫との事をハッキリさせたいと考えているオレがそう説明するが、その内容にハンコックは驚愕し素早く〝キマイラ〟――小紫に視線を向けた。

 

「――小紫!?そなたが!?」

 

「…」

 

 ハンコックがそう問いかけてみたが、それには否定せずに口を閉じている小紫に動揺しているハンコックもすぐ冷静になる。

 

「……〝悪魔の実〟じゃな」

 

 そう見当を付けるハンコックが指摘するものの、相変わらず黙り続けている小紫に対して彼女は問いかけを続ける。

 

「――それで……そなたがなぜスサノオさんと戦っているのじゃ?」

 

 真剣な表情を浮かべるハンコックが小紫にそう詰め寄る。その姿勢には小紫も顔を激しくしかめ――

 

「……うるさいな」

 

「なんじゃと?」

 

「私はスサノオを殺すんだよ。邪魔するな」

 

「…」

 

 小紫がその意向をハッキリ口にするとハンコックも顔を能面の如き冷たくする。

 

「……スサノオさん」

 

「!」

 

「すまぬが……少しわらわにやらせて下さい……あやつには言いたい事があるからな」

 

 オレにそう要求したハンコックの目は――小紫を鋭く凝視していた……

 

「な……待て――」

 

 その要求に対してオレが口を開こうとした瞬間、ハンコックはしかし聞こうとせずに素早く駆け出していった。

 

「〝万口熱息〟!!!」

 

 自身に向かってきているハンコックに対して小紫は攻撃を放ってやった。

 

「〝虜の矢〟!!!」

 

 その攻撃に備えてハンコックは投げキッスで巨大なハートの塊を作り出し、それを弓のように引き絞り――そこから数々の矢を広範囲に拡散させていった。

 ――その矢はもちろん、ただの物ではない……現にそれが突き刺された火炎は――石と化されたのだ。

 

「……ムッ!!」

 

 だが、その〝虜の矢〟でもスサノオをも焼いてきた〝万口熱息〟を全て石化させられた訳ではない。

 〝虜の矢〟により劣化させられた火炎がそれでもハンコックを焼き尽くそうとするが――

 

「〝芳香脚〟!!!」

 

 ハンコックの練度の高い「武装色の覇気」、そして〝メロメロの実〟の石化効果をも付加した両足で蹴られた火炎は石化され、そのまま――蹴りの衝撃で破砕されていった。

 

「!」

 

 そんな彼女に今度は――小紫が直で襲いかかった。

 

「〝全方猛攻〟!!!」

 

「〝芳香脚〟!!!」

 

 4頭全ての顔と両手を全て振り回して攻撃する小紫にハンコックも〝芳香脚〟で対応してみせた。

 

「――なぜ、そなたがスサノオを殺すというのじゃ!!」

 

 小紫の攻撃を凄まじい勢いで蹴り回す事で対応しているハンコックがそう問いかける。

 その問いかけに小紫は顔を激しくしかめ――

 

「……〜〜あぁ!もう!うるさい!私がどうしようが――あなたには関係ないじゃない!」

 

「ある!」

 

 小紫がたまらずにそう言い捨てたその言葉に対してハンコックはしかし、そう否定した。

 

「関係なら――あるとも……わらわにとってそなたは宿敵であるからじゃ!」

 

「!?」

 

 ハンコックが堂々とそう言い放ってきたのに小紫も目を見開く。

 

「……かつて――そなたと決闘した事がある筈じゃ」

 

「その時のそなたの姿勢は実に見事だった……あれこそはまさに確かな戦士じゃった……」

 

「そんなそなただからこそ、負けぬ訳にはいかぬと思ったのじゃ」

 

「……ッツ」

 

 その説明に小紫も動揺してしまう。彼女にとっては気に入らないハンコックが自身をそう評価してくれているのが信じられなかったのだ。

 そんな彼女に構わずにハンコックは言葉を続ける。

 

「――そして何より……」

 

 そう口を開くハンコックの目がカッと見開く。

 

「何よりあの方を想う者同士としても負けぬ訳にはいかぬと思ったのじゃ!」

 

「――は!?あの方を想う!?」

 

「あぁ」

 

 その宣いには思わず固まり首を傾げる小紫にハンコックは言い放つ。

 

「そう、あの方――スサノオを愛している者同士として!!!」

 

「……!!」

 

 その言葉に小紫は口をあんぐり開けてしまう。

 

「……へ?」

 

 ――そして、その言葉にスサノオ――オレも呆気に取られてしまった。

 何せ――

 

「……小紫とハンコックが――オレを――愛している……?」

 

 そう、2人がオレを愛しているという事実にオレも驚愕せざるを得なかった。

 ……確かに2人がオレに対して強き想いを抱いているのには勘付いていた。

 ……小紫のはさっき感じ取ってきたからこそ理解できた――否、理解できたと思い違っていた……

 ……ハンコックのは――あの胸クソ悪い天竜人共から解放したからこその敬愛だとオレは認識していた――

 

「……クソッタレ、オレって奴は……」

 

 ……自身の鈍感さを自覚したオレは歯を食いしばった。

 だが、今度は小紫が声を上げてきた。

 

「違う!!!」

 

「違う違う違う!!!」

 

「す、スサノオを私が愛す訳がなかろう!!!」

 

「だって……」

 

「わ、私がスサノオ…さんを愛してはいけないんだ……」

 

 激しく言い張る小紫だが、最後は――泣き言を吐いてしまった……

 小紫が気弱く俯いているのを目にするハンコックは鼻を鳴らす。

 

「……フン、なんという無様さよな〜」

 

「…」

 

 ハンコックからのそんな嫌味に小紫はしかし反応しない。そんな彼女にハンコックは言い放つ。

 

「……スサノオさんは――わらわがもらう!そなたはそうやって無様に俯いておくがいい!」

 

「……あ゛?」

 

 ハンコックがそう胸を張った途端に小紫から恐ろしい声が上げられてきた。

 そうして顔を上げた小紫の顔は――恐ろしかった。

 

「……フン」

 

 そんな小紫にハンコックはニャリとし――

 

「……スサノオさんはわらわのものじゃ!!」

 

「ざけんな!!!」

 

 そう宣言したハンコックに小紫はそう噛み付いた。

 

「スサノオさんを貴様なんかに渡してたまるか!!!」

 

「貴様に渡すぐらいなら――」

 

 そこまで怒鳴りつけた小紫の目がカッと見開く。

 

「私がスサノオさんを殺してみせる!!!」

 

 そう宣言した小紫の狂気溢れた目はオレにジロリと向けてきた。

 その姿勢にオレも唖然とした。

 

「――オォォォォ!!!」

 

 小紫が今度こそオレを殺そうと駆けろうとし――

 

「〝芳香脚〟!!!」

 

 ハンコックがそんな小紫を蹴った。

 またしても蹴られた小紫は――

 

「――あ゛ぁ゛あ゛あ゛!!!」

 

 そう咆哮し――激しく暴れ回っていた。その様子はまるで今度こそ獣の本能に呑まれてしまったかのようであった――

 ――おそらく、小紫は正気を失ってしまったのだろう。

 ――2つの想いの相克、ハンコックに対してのイラつき……色々な意味で限界だった小紫の精神はハンコックに蹴られた事でついに決壊され――狂気に堕ちてしまったのだ。

 

「あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 

「!!小紫ぃ!!」

 

 そんな小紫の姿にオレはすぐ鎮めようと動き――

 

「待つのじゃ!!スサノオさん!!」

 

「!?」

 

 だが、なぜかハンコックがオレを制止してきた。

 

「待つのじゃ」

 

「ハンコック!?どういう事だ!!」

 

 その制止がオレには訳が分からなく、そう怒鳴りつけた。そんなオレにハンコックは――

 

「……そなたは――まずは小紫に対しての想いをハッキリさせてくるのじゃ」

 

「今の半端なままじゃ――小紫を鎮めようにも鎮められぬ!」

 

「…!!」

 

 その言葉にオレも固まらざるを得なかった。

 ――その指摘通りにオレは今まで小紫に対しての想いにはお茶を濁してきたのだ。

 それを自覚していないオレだが、さっき気付いたのだ。そのきっかけこそが小紫の感情を感じ取れた時であった。

 そういう複雑さに対してオレは見覚えがあるような気がしていたが……思い出したのだ。

 そう、それは……オレ自身が小紫に対して抱いている感情であった。

 その源をオレがハッキリ自覚する――前に蓋をしてしまったのだ。それ故に今までその想いをハッキリさせていなかったといえよう……

 心当たりがあるオレにハンコックは言い放つ。

 

「ハッキリさせてくるまでは来るでない!!」

 

 そう言い切ったハンコックは小紫への対応に動き出していった。

 

「…」

 

 その姿を見届けたオレは――すぐ自身の想いに関しての分析を試みてみる。

 

「……そういえば、あの時――」

 

 そんな中でオレはふと――〝ギビマ〟での事を思い出した。

 そう、あれは――小紫がキリヤが仲良くしている様子であった……それを見たオレは変な気分になっていた――そう、イラついていたのだ。

 続いて思い出したのは――〝モンプル〟での事であった。

 その美貌により小紫が男女関係なく多くの視線を集まっている事があったが……それがオレにはなぜか――気に食わなかった。

 

『それはお兄さんがね――小紫を見るのはオレだけでいいと思っているからだよ!』

 

 その理由が分からないオレにヤマトがそう教えてくれた――

 

「……!!!」

 

 そんな中でオレはハッとする――

 ……今までの小紫に対しての感情を改めて見返してみて、そしてヤマトからの助言の内容を考慮してみたオレはついに〝それ〟を――理解した、できた……

 

「そうか……オレは――」

 

 呆然としているオレの口から〝それ〟が出される――

 

「――小紫の事が好きになっていたのか……」

 

 そう、オレ――スサノオは小紫にいつの間にか想いを寄せていたのだ。

 だが、オレはその想いに無意識に蓋をしてしまった。故に――今までその想いを自覚できずにいた……

 なぜ、そうしてしまったのかというと――

 

「……光月おでんの娘である小紫をカイドウの息子であるオレが愛する資格がないからと思ったからだ」

 

 そう――光月おでんの娘である小紫をカイドウの息子であるオレが愛する――そんな滑稽な事があろうか?

 父親譲りの真面目だといわれてるオレはその想いを不適格だと抱えないようにしていた。そうしなければ、小紫には恐縮だと思ったからだ……

 

「だが……これで良いのか?」

 

 その判断にオレは疑問を抱くようになる。

 ……っていうか、そもそも――小紫もオレの事を想ってくれていて、だからこそ苦しんでいる。

 そんな彼女を前にオレは……首をくわえる?――そんなの…そんなの!!!

 

「良い訳がねぇだろ!!!」

 

「ウォロロロロ!!そうだ!!」

 

「!?」

 

 認められなくて声を上げずにはいられないオレにその声が突如響かれた。

 驚愕するオレの前に――なんとカイドウが姿を現してきたのだ。

 

「お、親父「オレ達は!!」!!?」

 

「オレ達は――海賊だ!!」

 

「欲しいものは何としてでも手に入れてみせる!!」

 

「分かってるよなぁ!!?スサノオォ!!!」

 

 その言葉を最後にその姿は煙のように消え去っていった……まるで夢幻の如き事にオレは呆然する――が、やがて笑みを浮かべるようになる。

 

「……リュドドド……そりゃ、そうだ」

 

「――好きな女を頂いて何が悪ぃんだ」

 

 そうニッと笑みを浮かべるオレの表情は――晴やかだった。

 

          ●

 

「あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 

「ぬぅ!!」

 

 小紫の凄まじい暴れぶりにさえも対応できているハンコックだが、少し焦っていた。

 

「(今は対応できているが――元々の小紫の格闘センスが半端ではないからこそ厄介じゃな!!)」

 

 心なしか小紫の勢いにハンコックが少しずつ押され始めている。だが、そこに――

 

「ハンコック!!」

 

「!スサノオさん!!」

 

 突如オレがその間に割り入ろうとしてきた。

 

「世話をかけたな!!ここからオレに任せろ!!」

 

「ッツ!!――はい!!」

 

 その言葉に一瞬奇妙な表情を浮かべたハンコックだが、すぐそれを消しながら頷き――下がっていった。

 それを確認できたオレは小紫と向かい合い――呼びかけた。

 

「小紫!!!」

 

          ●

 

――私は光月おでんの娘。

 

――私は〝百獣〟に復讐する者。

 

――皆の為にスサノオを……殺す。

 

――スサノオさんを殺したくない……!

 

――ハンコックにスサノオさんを渡したくない!!

 

――だって……私は――

 

――スサノオさんをお慕いしているのだから……!

 

 それはあまりにも矛盾に満ちていて――混乱を極めている渦だった……

 その中には女の子がいた――それこそが幼い光月日和だった。

 俯きがちに座っているその子は――泣いていた。

 

「うっ、ううっ……痛いよ……」

 

「私――どうすればいいんだろう……」

 

 ――日和は自身が抱えている矛盾によって苦しまれていた。

 だが、その糸口も分からなく――ただ、座るしかなかったのだ。

 ――これからも痛み苦しんでいくのだろうか……

 

「―!」

 

「…?」

 

 だが、日和は顔を上げた――声が聞こえた気がしたから……

 そしてその声が響かれた瞬間、渦が粉砕されていった。

 その渦が粉砕されたのに目を見開く日和の前に――神々しい〝竜〟が君臨した。その口が開く――

 

「小紫!!!」

 

          ●

 

 オレの全力での呼びかけに小紫は――

 

「――はっ!!?」

 

 我に返った。

 それにつられて小紫は〝キマイラ〟の姿から人の姿に戻っていった――

 ――確かに小紫は狂気に堕ちてしまった……ただ、一度狂気に堕ちた事でかえって抱えているものを逆に発散できたのだろう。そうした事により一旦正気に戻れたかもしれない。

 

「正気に戻ったか」

 

「す、スサノオさん」

 

 〝竜〟の姿から人型に戻りながらその様子に安堵して笑みを浮かべたオレに頬を染めた小紫だが――

 

「ッツ!!――離せ!!」

 

 すぐ小紫は目前のオレを振り払おうとする。

 

「離せ!!私はお前を――」

 

「小紫」

 

「!?」

 

 だが、そんな彼女をオレがそう声を掛ける事で落ち着かせる。そして――

 

「……オレは」

 

「やっぱ……お前の事が好きだ」

 

 オレは小紫にそう告白した。突如の告白に小紫も固まった。

 

「な、何を……」

 

「……そりゃぁオレとお前の立場、因縁を考えると互いに忘れ合うとかのが一番だろうが――」

 

「――やっぱ、オレはこの気持ちを捨てたくねぇ……」

 

 そう言いつけるオレは小紫を真剣に凝視している。

 

「お前が欲しい」

 

「だから、お前をオレのものにする」

 

 オレがそう言うと小紫は頬を染め――しかし、悲痛そうに涙を流してもいた。まるで迷子のように。

 

「や、やめて……それを言わないで……」

 

「違う……私はスサノオを好きじゃない……愛してはいけないんだ……」

 

 小紫はオレに対しての想いと両親への罪悪感で胸が張り裂けられかけていた。そんな彼女にオレはあっけらんと言う。

 

「――じゃあ」

 

「オレがおでん達を忘れさせてやるぜ」

 

「……へ?」

 

 その宣言に小紫は呆気に取られた。

 

「お前のおでん達への想い等――このオレが塗り替えてやる」

 

「それこそ――お前の中から光月日和を消してやるぜ」

 

 そうオレは笑みを浮かべていた――その笑みは悪党の如きだった。そんな笑みに呆然としている小紫は吹き出してしまう。

 

「……悪い人ね」

 

 そう苦笑する小紫にオレはドヤ顔をみせる。

 

「リュドドド!オレは海賊だからな!」

 

「海賊として光月おでんからお前を盗ってやる!!!」

 

「覚悟しろよ?気に入ったものをそうそう放すとは思わねぇ事だぜ?」

 

 そう獰猛な笑みを浮かべたオレだが、その笑みは小紫には獰猛で――痛快だった……それが小紫の心をまだ蝕んでいるものを消し去っていった。

 

「……あぁ……」

 

 小紫は涙を流しながら――安堵するかのように微笑みを浮かべれた。そして――オレの胸に顔を寄せた……

 

「(……父上、母上、兄上、皆――)」

 

「(……私は――)」

 

「(この人のそばで生きます――)」

 

 小紫はそう決意した――そう、自身の想いに素直になる事を……そしておでん達との決別を……

 

 

――その華の心は今ここに――〝暴獣〟に盗られてしまった……

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