「その……申し訳ありませんでした///」
さっきまで騒いでいたオレと小紫は今、腰掛けながら顔を見合わせていた。小紫はさっきの様子から考えられない程に恥ずかしそうに揺れ動いていた。
それもその筈。さっきまで彼女は支離滅裂な態度をしていたのだから――今更ながら羞恥を感じてしまったのだ。
「リュドドド!!効いたぜ!!お前の激情は!!」
そういう様子がオレには可笑しくて、ついからかわずにはいられなかった。その言葉に小紫も羞恥心が強まり、顔を赤くしてしまう。
「(……か、可愛ぇ〜〜)」
そんな姿がオレの琴線に触れてしまっていた。
という訳でオレ達は互いに少し俯き、これ以上何も言えなくなった――少なくとも甘酸っぱい雰囲気がそこには展開されていた……
「……随分みせてくれるじゃな〜〜」
だが、その雰囲気を打ち破ってまで割り入ってきた者がいた――そう、ハンコックだ。
堂々としている彼女に対してオレ達はハッと視線を向けた。
「ハンコック……」
ハンコックの姿にオレの少し締まりがなくなっている表情も真剣になり直した。
――そうなのだ。今でこそ小紫に想いを寄せているが、それはオレに想いを寄せてくれているハンコックの事をぞんざいに扱う事にもなり得るかもしれねぇ……
オレ的にはハンコックをも傷付けたくねぇ……まぁ、偽善だとみられるだろうがな。
「……悪ぃな、お前がオレに想いを抱いてくれたってのに気付けなくて……!!」
「……だが――見ての通り、オレは小紫を愛している」
「お前の事は仲間として大事に思っているが……そういう感情を抱いていねぇ――」
「……お前がオレをどうしようが――受け入れてみせる」
ハンコックに対してオレは真剣にそう宣する――宣しなければならない。
もうこれ以上お茶を濁らせてはならねぇ……ハッキリさせるべきだから――
「……ハンコック」
そう宣しているオレを見ている小紫は続いてハンコックに視線を移す。その表情は――複雑だった。
彼女にはまず気に入るか気に入らない以前にスサノオと想いを伝え合えたきっかけなのがハンコックである。その事で感謝を覚えると同時に罪悪感も覚えた。
こういう状況ではまるで自身が美味しいところを持っていったと捉えられても無理ではないのだから――
そう申し訳なく感じている2人に対してハンコックは――
「何を言っておる?」
あっけらかんと言い放った。
「「……へ?」」
その想像の斜め上の反応にオレ達も呆気に取られた。それに構わずにハンコックは続く。
「――まさか、わらわを敗者と思っておる訳ではあるまい?」
「――言っとくが……!わらわはまだ負けてはおらぬと思っておる……!」
「「!?」」
ハンコックはそう断言した――そのあまりにも不敵な雰囲気にオレ達は目を見開く。
――なぜ、ハンコックがこうまで自信満々なのか……その答えを彼女が口にしてきた。
「――他でもならぬスサノオさんが心を盗ってやると言ったのじゃ……なら――」
「わらわが小紫からスサノオさんの心を盗っても問題はなかろう?」
「へ!?」
「……あ゛?」
ドヤ顔をみせるハンコックの主張にオレも固まり、小紫も――恐ろしげな声を上げた。
「…」
……そして、静かに立ち上がった小紫はそのまま歩き――ハンコックの前に立った。
「「…」」
そして対峙している2人の間にはまさに戦場の如き雰囲気が流されていた。
「……私からスサノオを奪おうというんだな……卑しき蛇めが……」
「フン!さっきの情けない姿勢がまるでウソのようじゃな〜…奇人が」
「「あ゛ぁ゛?」」
……2人は互いに相手に負けじと張り合っていた。それはまさに――「女の戦い」であった。
戦闘狂であるオレもさすがにその戦いには冷や汗を流しざるを得なかった……
「……しかし、小紫もそうだが――ハンコックもいい女だな」
「いい女が、それも2人ともこのオレを想ってくれていているとはな……」
「……光栄…って事か?」
ハンコックの魅力を認識できたオレはそんな彼女と小紫が揃って自身に想いを寄せてくれているという事実が信じられなく――しかし、照れくさくも嬉しく感じていた。
といえ、いつまでもそうしてはおけないとオレが2人の張り合いを制止しようとする。
「おい、お前ら――!」
「「!?」」
だがオレ、そして小紫達が気付く。その瞬間――その場に爆発が起こった。
「何事じゃ!!」
もっとも、その場にいたオレ達は勘付き素早く離れられたので、その難を逃れていた。
そして、オレ達はその爆発を仕掛けてきたであろう張本人を見てみるが……
「……!?あなた!?」
「?」
その者に小紫は驚愕した。一方でその反応にハンコックが首を傾げる。そして、オレは――冷静に凝視していた。
「……ここでかぁ」
「あぁ、ここで仕掛ける」
オレがそう呟いたのに対して返してきたのは――なんと、ヤヒコだった。
ただ、その様相は見違えていた。今までの活発的な様子から考えられない程に人形の如き無表情だった。
それに加えて今の身動きも警戒感を抱かせる程になっている。
これこそがヤヒコ――の本性だろう。
「……やはり、お前は――小紫に勘付いているようにオレ達にも勘付いているんだろう?」
自身が本性をみせたにも関わらずに冷静なオレの態度に目を細めたヤヒコがそう指摘すると小紫はハッとしオレに視線を向ける。
「……まぁな――お前、タングの奴には何かがあるなと思ってな――注意を払うようにしている」
その指摘をオレは肯定した――そうなのだ。オレはヤヒコとタングが入団を希望してきた時から2人には何かを感じ取れていた。
故に2人から気を逸らさないようにしていた――それこそ、ヤヒコを1人で行かせず自身の近くに配置するようにしておく程だ。
「……大した野生の勘だな」
オレがそう答えるとヤヒコがそう返した。その内容に眉を上げる。
「あん?野生の勘?」
「あぁ」
思わず復唱したオレにヤヒコは頷く。
「……オレの潜入力は評価されていてな――気付ける者がそうそういない程にな」
ヤヒコがそう説明する――自身の能力に自身を持っている一方でオレの勘に恐れ入るという内容にオレもニャリとしてしまう。
「……リュドドド!オレは〝暴獣〟だからな!!」
「……そりゃそうだ」
オレがそう言い放った――もっとも、それは屁理屈だが。ただ、その屁理屈にはヤヒコも妙に納得できたか頷いた。
――実は彼も〝暴獣のスサノオ〟はおろか暴獣海賊団のデタラメさを直で見続けてきた。だからこそか、ついそういう理屈には納得できてしまうのだろう。
頷いて――ふと、その頓珍漢に少し気付き首を傾げる彼にオレは問いかけを投げてみる。
「……それで――お前は何者だ?」
「〝黒の組織〟…でもねぇようだが?」
オレは倒れている〝黒の組織〟のメンバーに一瞬視線を向けながらそう口にする。
……もしも〝黒の組織〟だとしたら――メンバー達を倒してまで企みの阻止に動いているのが訳分かんねぇ。
仮にオレの目を欺く為だとしても――積極的に働いている。それに……彼が上手く隠しているようだが、その強さは今のところ遭遇しているメンバーのをあっさり超えているのも勘付いている。
その問いかけにヤヒコは――
「……いいだろう、答えてやる」
素直に答える事にしていた。そのあっさりさに答えないだろうと考えていたオレも小紫達も少しズッコケかけた。
その様子に首を傾げたヤヒコが口を開く。
「?……まぁ、まずは――」
「〝ヤヒコ〟は偽名だ。本名は――〝ペイン〟だ」
「オレは――」
「「CP9」だ」
ヤヒコ――ペインが明らかにしたその身元にオレは眉を上げた。
「!……つまり「世界政府」からの刺客か」
CP9――
正式名称は「世界政府直下暗躍諜報機関 サイファーポールNo.9」である。
それは――「闇の正義」の名の下に「世界政府」の命令の元、各地で暗躍している秘密部隊の事を指す。
そもそも、一般には政府の諜報機関サイファーポールにはCP1~CP8までしか存在していないという。
即ち、〝存在しない〟筈の9番目の部署といっていい。
彼らは「闇の正義」の名の下に政府に対し非協力的な市民への殺しを許可されている。
その特権故に明るみには出る事はなく、政府の指令を受け歴史の陰で活躍している。
彼らは反世界政府と思わしき組織への潜入捜査、「世界政府」にとって危険と見做された要人の暗殺等の政府への反抗意識を持つものが対象するのを主な任務としている。
そんな部隊の者がオレ達――暴獣海賊団に潜入してきているという事は……
「……あの鈍くせぇ「世界政府」がようやく腰を上げてきた――という訳か」
「世界政府」が暴獣海賊団を危険視してきたという事実にオレには――喜ばしく感じていた。
――そりゃ、「四皇」〝百獣のカイドウ〟の息子だという事実もあるかもしれねぇが……それだけでなく――実力と今までの暴れぶりをちゃんと評価されているように感じられたからだ。
そんなオレにペインは冷たく告げる。
「調子に乗りすぎたな。お前達はもはや――「世界政府」のターゲットだと見なされた」
「もう――逃げられぬぞ?」
そう宣言したペインにオレは――獰猛な笑みを浮かべた。
「リュドドド!!!」
「テメェらこそ――誰を敵に回したのか分かってんのか?」
「――テメェらこそ覚悟しろよ……!」
そう宣し返したオレの姿勢にペインは思案に耽けていた。
「(……スサノオはオレが担当するとして――)」
「(……各所に散らばっている者達はそれぞれアイツらが担当するんだったな)」
「(……「映像電伝鳥」の件もそろそろアイツが動くだろう)」
ペインはそう考えていた――そう〝エレインホール〟に所在する「CP9」は別に彼だけではないのだ。
●
「うわぁぁ!!高いッスよ!!」
――〝オーシャンヴァリー〟に向かって空中を飛んでいく数人がいた……フドウと明日郎とタングドーサムである。
なお、タングは翼を羽ばたいて空を飛んでいるフドウの足に掴まっていながら泣き言を吐いていた。
「黙れ!!――すぐ降ろしてやるからな!!」
「り、了解ッス!!」
そんなタングをフドウはまず黙らせ、そして自身のスピードを速めていった。
「スサノオさん……!」
慕っているスサノオの身を案じているフドウは〝オーシャンヴァリー〟に急いでいた――そんな彼を見つめるタングの目はどこか感情を感じられなかった……
「…」
●
その場所では激しい戦いが展開されていた。その証拠として爆発が次々に起こっていたからだ。
「――ええい!そろそろくたばれハマハゲ!!」
「うぅむ……如何なる仕込みを持ちですね」
その場で戦っているのは――うるティとキサメであった。そして、その相手は――
「そう言わずにオイラの芸術を見ろ!!」
「……それこそがオレの芸術だからな」
――デイダラとサソリであった……
●
「うわ〜…少し触れたくなくなったかも」
「――一体何かが来るのだ!?」
その場所でもまた戦いが展開されていた。そこではジャックグループが戦っていた。
「ゲハハハ!!」
「……さて、どうなるか」
――ルークとビショップと戦っていた……
●
その場所ではある2人が対峙していた――もっとも、その有様は一方的だったが……
その状況には暴獣海賊団は無関係だが――その戦いと同じような緊張感が漂っていた。
「そうか……テメェはスパイだったのか……!」
「そういう事だ――さて、ここで死んでもらうか」
――ノーグルは仲間だと思われたサブリングワルによって始末されようとしていた……
●
〝エッジオブパシフィック〟本社社長室――
そこに社長は相変わらずいるが――彼はその窓から〝オーシャンヴァリー〟を凝視していた……
彼は把握している今の状況、〝黒の組織〟の状態から次なる手を考えていた。
そのように思案に耽る社長に向かって陰で近付く影がいた…あ
「…」
その影は少しずつ社長に近付いているが……社長は気付かない。
「…」
その様子に好機だと考えた影は彼に素早く近付き――そして、手を掛けようとし……
「――はぁ!!」
「!?」
だが、突如社長が振り返りながら――蹴ってきた。その蹴りに肝を抜かれた影はそれでも両腕でなんとか防ぎ、後ろに下がっていった。
その影に対して身構える社長は口を開く。
「……僕は格闘術を心掛けているんだ――襲撃を受けやすい立場に置かれているからね」
「……上手く気配を隠していたね――僕が気付けたのも偶然だったし」
「…!」
そう言い放つ社長に対して影は攻撃を再び仕掛けた。今度は隠れる必要性が消えたので静かながらしかし、激しい攻撃だ。
その攻撃を社長は鋭い身動きでかわしながら――その顔を蹴り込んだ。
顔を蹴られてしまった影は一旦後ろに下がり――そして……黒マスクを落とした――
「……!!君は――」
露わになった影の素顔を目にした社長は驚愕する。何せ――
「……驚きですか?社長」
――コナンだったから……
――彼女もまた〝エッジオブパシフィック〟の中で暗躍しようとしていた……
●
「フン!!汚らわしき「世界政府」の飼い犬が……!!ここで始末してくれる!!」
「スサノオさん!!ここは私が――」
元から「世界政府」に嫌悪感を抱いている故にペインを積極的に叩き潰そうとするハンコックと汚名返上の為に自ら出ようとする小紫の2人だが――
「お前らはここで待機な」
オレがその2人を制止しておいた。
「え!?――しかし!」
「スサノオさん……!」
オレのその指示に小紫達が納得できなかった。だが、オレは――
「……オレは――」
「どうにもコイツとも真摯に向かい合う必要があるらしいからな……!」
そう考えているオレはペインと対峙していた――
――〝闇の正義〟が〝エッジオブパシフィック〟、そして〝暴獣海賊団〟にもその牙を剥こうとする……