ONE PIECE 荒ぶる暴獣の猛威   作:ウェイブロック

95 / 180
第92話〝永遠の美〟

 ――その戦いは少々異彩を放っていた。

 

「ムッ!!」

 

 ――〝クロウ〟が襲いかかってきたのに対してキサメは「鮫肌」を振って対応しているが……そのロボットから放たれる攻撃は異質かつ多彩だった。

 〝クロウ〟――それは毒刃、毒針、毒針等の様々なギミックが仕込まれている「殺人」に長けるロボットである。

 そんな〝クロウ〟のボディが解体され、空中に別々に浮かばされている数々の武器が如何なる方向から不規則な軌道を辿ってキサメに襲いかかっていた。

 

「フン!――ホワァ!」

 

 だが、さすがはキサメ。彼は上手く動いている事で襲いかかってくる〝クロウ〟をかわし、叩き込んで対応していた。

 

「ぬぅ!!」

 

 もっとも、狡猾な〝クロウ〟のイヤらしい攻撃にキサメも少し体勢を崩されざるを得ない。

 そこにその隙を待っていたかのようにそれが襲いかかろうとしていた――〝ビーエー〟だ。

 そのロボットは樽型のボディを大きく開閉させて敵を呑み込み、捕獲する仕組みになっているのだ。

 そのビーエーがキサメを捕獲しようとボディを大きく開閉させていて――

 

「そうはいきませんよ!!」

 

 ――その扉の枠にキサメは両足を付かせる事で自身を捕獲するのを阻止する。そして、自身に再び襲いかかってくる〝クロウ〟にキサメは視線を向け……

 

「フン!」

 

 〝ビーエー〟を弾きながら〝クロウ〟からの攻撃を「鮫肌」で振り回す事で対応してやった。〝クロウ〟からの攻撃さえからもかわせたキサメは着地し――

 

「!!」

 

 何かに気付いたキサメが突如その場を離れた。その途端にその地から――新たにロボットが湧き出てきた……〝サンショウウオ〟だ。

 その開けられた大口がキサメに噛み付こうとし――

 

「フン!!」

 

 キサメがそれに「鮫肌」を勢いよく叩き込んでやった。

 彼の魚人に恥じない怪力により大きなボディの〝サンショウウオ〟もたまらず吹っ飛ばされるが――

 

「!!」

 

 だが、その〝サンショウウオ〟は少しビビを入れられたものの、それでもそこまで酷く破壊されていない――それは地中活動を可能にしているだけではなく、盾としての役目をも持っている。

 すなわち、頑丈でできているのだ。

 

「!!」

 

 その硬質に軽く驚くキサメに新たな攻撃が仕掛けられてきた。今度は――〝ヒルコ〟だ。

 それは球型のボディを激しい勢いで回転させながらキサメにぶつけようとする。

 

「オォ!!」

 

 その攻撃をキサメは「鮫肌」を構えていた。しかも、その角度は鋭角になっている為に〝ヒルコ〟がその「鮫肌」を転がりながら通り、そのまま空へ飛ばさせていった。

 

「!!」

 

 だが、その瞬間〝ヒルコ〟から鋭利な尾がキサメに襲いかかる。

 

「――チィィ!!」

 

 突如のその尾に対してキサメはまだ体勢を整えていなかった。その為に彼はただ尾を身に受けるしかないのか――と思われたら

 

「何のぉ!!」

 

 キサメの筋肉が青筋を立て脈動しながら「鮫肌」を無理矢理振り上げてみせて――その尾とはぶつかり合った。

 最後までキサメにダメージを与える事さえも叶わなかった4体のロボットは一旦、それらの主人――サソリの元に下がっていった。

 そうして、キサメはサソリと対峙する。

 

「……さすがですね。如何なる状況でも対応するようにできているロボットだらけだ」

 

「これらをあなたが作ったのですか?」

 

 4体のロボットの出来の良さに面倒に思いながらも感心せずにはいられないキサメの問いかけにいつも無表情なサソリもどこか誇らしげにしていた。

 

「まぁな――これこそがオレの作品――」

 

「〝傀儡ロボット〟だ」

 

「その魅力を理解してくれて何よりだ」

 

 自身の作品にそう誇りを持っているサソリはキサメの反応に気を良くし、そう寛大に言い放った。

 彼も自身の作品を評価する者には寛容なのだ。そんなサソリにキサメが口を開く。

 

「素晴らしい腕ですね〜……〝黒の組織〟にもそういう者がいるとは――」

 

「……まぁ、あなたが本当に〝黒の組織〟の者だとしたらね」

 

 そう思わせぶりな言いぐさをしてみせたキサメにサソリが眉を少し上げるものの、否定はしなかった。

 

 

サソリ――

 

実は彼も〝黒の組織〟ではなく「CP9」に所属しており――そして、アーティストである。

デイダラと同じく彼も芸術に熱を入れているが、その信念は正反対であった。

デイダラが掲げる「儚く散りゆく一瞬の美」と違ってサソリの芸術は――「永らく後々まで残っておく永久の美」である。

正反対の芸術観な故にデイダラとサソリが言い争っているのもご愛嬌である。

そんな彼の芸術を体現しているのが他でもならぬロボットである――しかも、ただのロボットではない。

「朽ちずにいくらでも作り直せる多種多様なロボット」を求めて事細かに作り出してみせたのが――〝傀儡ロボット〟である

 その出来は対峙しているキサメでさえ感嘆を覚えた程だ。故に――惜しんでいた。

 

「――心が痛みますが……これも戦い」

 

「故に――これ程の作品を……破壊させていただきます」

 

 そう宣したキサメからは――獰猛な雰囲気を放たれた。その雰囲気にサソリも獰猛な笑みを浮かべる。

 

「……できるかな?」

 

 サソリがそう口にした途端にそれが合図であるかのように〝傀儡ロボット〟が動き出した。

 それに対してキサメも駆け向かった。

 

「――ホワァァ!!」

 

 まず〝クロウ〟と〝ビーエー〟から攻撃が放たれるが、それに対してキサメは避ける、「鮫肌」で防ぐ――一見一方的だが……実はキサメはそれを待っているのだ。

 

「!!(来た!!)」

 

 ――そして、キサメがそれに気付いたその瞬間に彼の足元から〝サンショウウオ〟が湧き出てきた。今度こそキサメを噛み付く為に……

 

「〝唐草瓦叩刻〟!!!」

 

 だが、実は〝サンショウウオ〟を待っていたキサメは「鮫肌」を――それが開けてきた大口の中へ突いてやった!

 口中を突かれた上に衝撃波を放たれた〝サンショウウオ〟のボディにはさっきよりビビを多く入られてしまった。

 しばらくボディが崩壊し始めるであろう〝サンショウウオ〟ごと「鮫肌」をキサメは――襲いかかってくる残りの3体に向かって振り上げてみせた。

 叩き込んだ衝撃で〝サンショウウオ〟が完全に破壊された上に残りの3体もビビをイラれながらも吹っ飛ばされていった。

 それらをキサメは追いかけながら更なる攻撃を加えようとする。

 

「〝唐草瓦叩刻〟!!!」

 

 キサメからの〝唐草瓦大剣〟を受けた〝クロウ〟と〝ビーエー〟は完全に破壊されていった――が、〝ヒルコ〟の方はビビをさらに入れられてなお、それでも動いていた。

 そして――まるでボールのようにあちこちで弾かれ続けられる。

 

「!」

 

 そうくる〝ヒルコ〟にキサメも警戒感を覚え身構える――その時

 

「!?」

 

 突如キサメが顔をそらした――すると、そこを刃が通った――それは〝クロウ〟の一部の刃であった。

 ――実は破壊された〝クロウ〟の一部がまだ生きていて、そしてキサメの隙をつこうとしていたのだ。しかも

 

「!!」

 

 そんなキサメを〝ヒルコ〟は容赦なく体当たりした。

 

「お゛ぉ゛……」

 

 その重い攻撃を受けたキサメもつい声を上げずにはいられなかった。そんな彼に〝ヒルコ〟の尾が刺そうとし――

 

「!!」

 

 キサメが剥いた白目に突如血走らせ、彼の筋肉も青筋を立て脈動する。

 

「〝鮫刻衝〟!!!」

 

 そして――「鮫肌」で〝ヒルコ〟を刻みながら叩き込んでやった。

 その技を受けた〝ヒルコ〟もついに――破壊された。

 

「…」

 

 その様、そして〝傀儡ロボット〟の数々の破片を凝視したサソリの顔は――冷めていた。生気が感じられない程に。

 そんな彼の少し前に立つキサメは口を開く。

 

「すみませんね……私もただでやられる訳にはいかないんで」

 

「気にするな。壊れたなら――作り直すまでだ」

 

 その一応の詫びにサソリは淡々とそう返した。続いて

 

「――といえ、オレの持ってきた〝傀儡ロボット〟は……これで破壊されたな」

 

 周囲の破片を見渡しながらサソリがあっけらかんと口にしたその内容にキサメは眉を上げる。

 

「……では、あなた本人が?」

 

「――まぁ、そうなるな」

 

 その言葉に応えるかのようにサソリは黒マントを脱ぎ放した。そして

 

「…!!」

 

 露わになったサソリの姿にキサメも驚愕する。

 

「その姿――」

 

「……あぁ、オレは――」

 

 その声にサソリも答えようとする。

 

「オレは自ら身体を改造してある」

 

 そう言うサソリの身体は――人間の肉体ではなかった。

 ――まず、その両肩にはプロペラが付いており、腹部には毒が染み込み先端が尖ったロープが付いてあるというサイボーグになっていた。

 「永遠の美」を執拗に求めているサソリは自身を迷いなく改造してきたのだ。

 

「まだ「永遠の美」を体現しているとはいえない程に未完成だがな……!」

 

「……だが、お前を殺すぐらいはできる」

 

 そう言い放ったサソリはプロペラとロープを不気味に動かす――その動作にキサメも身構える。

 

「最後の芸術作品――〝サソリ〟」

 

「ご覧下さいませ」

 

 サソリがそう宣した途端に彼が動き始めた。

 

「…!!」

 

 サソリが繰り出してくる様子にキサメも驚愕せざるを得なかった――何せ、彼は

 

「…」

 

 人形のように無表情なサソリが人間ではありえない振る舞いで駆けてきた――プロペラとロープを激しく振り回しながら……

 

「これは――腹をくくるしかありませんね!!」

 

 その戦闘スタンスの異常さにキサメも全力を出す事にした。

 

「…」

 

 そんなキサメをサソリは容赦なくプロペラとロープを振るう――

 

「オォォ!!」

 

 その攻撃に対してキサメも自身の身体を全力で動かし「鮫肌」を振り回す事で対応してみせた。

 といえ、サソリの身体が不自然に動いているのも合って予想外の方向からもプロペラとロープが襲いかかってきているのもあって、キサメの身体には少しずつ刻まれていった。

 

「〝唐草瓦叩刻〟!!!」

 

 そんな状況を変える為にキサメは〝唐草瓦大剣〟をプロペラとロープに叩き付けた。

 

「…!!」

 

 突如の大技を放たれたサソリはプロペラごと後ろに弾かれた。そんな彼をキサメは見逃さずに駆けていった。

 

「〝鮫刻衝〟!!!」

 

 そしてキサメの「鮫肌」がサソリの顔を刻みながら叩き込んだ。

 

「…!!」

 

 だが、突如キサメの顔が固まる――彼の鳩尾辺りには……ロープに貫かれていた。

 それによる痛みももちろんあるが――それだけではない。キサメの顔が固まった理由は……

 

「……あなた――」

 

「……驚いたか?」

 

 キサメが驚愕しながら言ってくるのに対してそう返したサソリの「鮫肌」を受けている顔は――皮膚が剥がれている為に機械としての面が露わになっていた。

 それでなお笑っているサソリには人間らしさが感じられなかった。

 

「いいだろう?これこそが――「永遠の美」への一歩ってやつだ」

 

「……あなたは」

 

 そう誇らしげに言うサソリにキサメは顔をしかめる。

 

「……あなたはそこまでロボットに――いや」

 

「心を捨てたいんですね」

 

「…」

 

 キサメがそう指摘すると痛いところを突かれたのか、サソリも口を閉じる。そして――

 

「……当然だろう」

 

 口を開き始めるサソリの表情は相変わらず無表情――なんだが、どこか悲痛そうにもみられた。

 

「〝心〟ってやつは――色々なものを引き起こしてきた……」

 

「それこそ――とんでもねぇ厄介事をな……」

 

「厄介事を引き起こし続けるなら――」

 

「〝心〟がない方が良い」

 

 そう言い張るサソリにキサメは目を細める。そんな彼にサソリは主張を続ける。

 

「……お前なら否定できまい?」

 

「……「魚人」であるお前なら――」

 

「…」

 

 サソリからそう言い放たれたその言葉にキサメも瞼を閉じる……そして思いを馳せる――そう、「魚人」の憎悪が絶えない血塗られた歴史に……

 そうしたキサメは――やがて口を開く。

 

「……この私は自分が何者なのか分からない上に」

 

「「魚人」の歴史にうんざりしていて、魚人島から去った……」

 

「そんな身だからこそ――あなたの考えを確かに否定できませんね」

 

 重々しくそう言うキサメにサソリも賛同されたと思ったのか、笑みを浮かべる。そこにキサメは言葉を続ける。

 

「……ただ、〝心〟ってやつは厄介事を引き起こしているものの――」

 

「――一方で色々なものをもたらしています」

 

「それに〝心〟があればこそ、生きる証になりませんか?」

 

「……そもそも〝心〟がなければ、それは――」

 

「――生きる屍と何の違いがあるんです?」

 

「…!」

 

 キサメがそう指摘してきたのが癪に障ったのか、サソリは顔をしかめ――

 

「―」

 

 キサメを貫いているロープを勢いよく振り回す。

 

「オォオオ!!」

 

 鳩尾辺りを貫かれている上に凄まじい勢いで振り回されているキサメはそう声を上げてしまう。しまいには――

 

「……武器を離してしまったな」

 

 それを目にしたサソリがそう冷笑した――そう、振り回されているキサメがたまらず「鮫肌」を離してしまったのだ。

 これでもはや打つ手もなくなったであろうキサメにサソリはトドメを刺す事にした。

 

「……終わりだ」

 

 そう呟いたサソリのプロペラが回転し始めた――とりあえず、ロープを引っ張ってキサメを近付かせようとし……

 

「……!?」

 

 突如サソリの方が弾かれ、そのまま空中に浮かばれていった。

 その状況に混乱したサソリだが、ハッとしてキサメの方に視線を向けると――

 

「えぇ、終わりです」

 

 そう笑みを浮かべたキサメは――建物の壁に横方向に立っていたのだ。よく見れば――彼の足は建物の壁を貫いていた。

 ――実は振り回されているキサメはまず「鮫肌」を離す事でサソリの油断を誘い――次に建物の壁に足を付けておく事で仮の足場ができた事、そしてサソリを逆に弾かさせ体勢を崩す事にも繋がった。そして――

 

「〝鮫瓦貫手〟!!!」

 

 キサメのまっすぐ伸ばした手の指がサソリの胸を――貫いた!

 

「!!!」

 

 胸を貫かれたサソリは目を大きく見開く。そんな彼にキサメは口を開く。

 

「……どうですか?――痛みは?」

 

「……痛いな」

 

 その問いかけに血を吐いたサソリはそう呟いた。そんな彼にキサメは笑みを浮かべる。

 

「……でしょうね、それこそが――」

 

「〝心〟なんですから」

 

 そう言い放たれたサソリはしばらく黙り――そして口を開く。

 

「……ロボットになりきれなかった人間……か……」

 

 そう呟いたサソリはそれっきり――黙った……

 

「…」

 

 それを凝視するキサメは静かに彼から腕を抜く。

 サソリが地に落下していくのにつられてキサメも建物の壁から足を抜いて地に着地していった。

 

「!!」

 

 上空がまるで太陽がもう1つ現れてきたかのように眩しくなっているのにキサメは気付き――笑みを浮かべる。

 

「……そちらも終わったようですね」

 

 

『暴獣海賊団 キサメ

  VS

 CP9 サソリ』

 

『〝エレインホール〟

「ある場所の戦い」』

 

『勝者 キサメ』

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。